東方化物脳 ~100%の脳が幻想入り~ 不定期更新   作:薬売り

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心の隙間の温かみ IX 『揶揄』

俺が予想するに、多分布都を襲った妖怪。名前は知らないが、その遠隔操作系の能力を持ったあの妖怪が関係している筈。

いきなり入り込んできた記憶の中の声、男に話しかけていた声が、アイツだった。

あいつはもう死んでいる。つまり、アイツに襲われたことのある人間が死後、悪神となりこの島を支配しているのだろう。

 

藍「零さん。中心部はどの様な状況でしょうか?」

零「急かすな。待ってろ」

 

俺は『ナビゲーター』で状況を確認する。

 

零「………ハァ」

紫「…?」

零「いやなに、そこまで強くないように思える」

紫「でも、この殺気……」

零「取り巻いている霊達、集められていると言うより『護らされている』ようだ」

 

まるで細胞。核を核膜が覆っているように、悪神を霊達で覆っている。

そしてこの島は細胞質基質。悪神の殺気が細胞膜。……うんうん、我ながらいい例えだ。

 

零「とりあえず、近付くだけだったら危険じゃあないらしい」

 

え?と皆は耳を疑った。

何故、そう言えるか。俺達がテリトリーに入ってきているのに、確りした攻撃を受けてない。

さっきの矢も当てる気はなかったし、そこから出てきた霊も説得如きで成仏だ。それに中心部の悪神、まるで生きてる気がしない。こう言うときは大体、敵を目の前にして戦う気がない時である。

 

紫「うーん、じゃあ行きましょう」

藍「もう少し慎重になった方が…」

紫「臆病ね」

藍「むぅ……」

 

中心部に迫れば迫るほど景色は不気味になってゆき、雲の色が青紫になったり、木から血液が出てきたりしてる。決して竜血樹じゃない。白樺だ。

そんな景色を数分見ながら歩いて、中心に着いた。

そこには大きな核のようなものがあり、中に人影が見える。コイツが、悪神だ。

 

零「……」

 

先程、悪神がまるで生きてる気がしないと言ったが、ちゃんと生きてるし、証拠に膨大な殺気がある。

戦う意思がないのに殺気だ。

この不思議な感覚、どういうことなのだろうか。

 

紫「にしても、殺気はもうないのね」

零「え?」

 

紫ほどの妖怪なのに、この殺気を感じられない?俺単体に向けての殺気か?

その時、不思議な感覚が蠢く。蠢きながら、蝕むような気がした。

 

紫「零?」

 

意識が遠退くような気がした。まるで何者かに崖から突き落とされたような……感覚。

視界が完全にブラックアウトした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

れい……れい……零…

 

青蛾「零!!」

零「ん……」

青蛾「大丈夫?」

 

気絶いていたのか?確かに殺気は強いが、この俺が気絶をする程ではない。

何が起きた?

 

零「…あー、すまない。心配をかけてしまって。大丈夫、俺は元気だ」

青蛾「そう、良かった」

 

というか、なぜ膝枕?今、彼女に膝枕をされている。

…まぁ、気持ちいいし良いか……いや、良くねぇよ。永琳がいるってのに……

 

零「どっこいしょ」

青蛾「まだ寝てて大丈夫よ」

零「え?」

 

青蛾は俺が起きようとするのを止めた。

 

青蛾「今、美鈴達が漢方薬作ってくれているから、疲労回復のね」

零「俺のためにか?」

青蛾「えぇ、そうよ。だから、まだ寝てていいわ。あの悪神は攻撃しないらしいし」

 

その悪神に背を向け、そう言った。

……今日は、彼女に甘えよう。その、えっと、決して浮気ではない。うん、絶対。

俺はそのまま彼女の太股に頭を置いた。柔らかいです、はい。

 

青蛾「フフ、それは何よりよ」

零「え?」

青蛾「口に出てたわよ」

 

やッベーマジかよ。この場に永琳がいなくて本当に良かったと思う。浮気と勘違いされそう。

……勘違いだからな?

ていうか、女性の太股に対し「柔らかい」って、なんか変態っぽい。違うからな?俺は変態なんかじゃあないからな?性欲は人並みだし……うん、変態じゃあない。

 

……でも、前から人にこう甘えたかったという願望は、少なからずあった。それは認めよう。

何故か今は青蛾のことを綺麗に思える。いや、元々綺麗な顔立ちだし、近くに顔があるからそう思えるのか?

 

青蛾「可愛いわね」

零「む、嬉しくないな」

青蛾「でも、貴方ってカッコいい……って部分もあることはあるけど、顔は物凄く可愛いわ。男としてね?」

零「よくわからないな」

青蛾「そう?ざーんねん」

 

不意に彼女はニコッと笑った。その行動に心臓が跳ねた。

可愛い。そう思った。ヤバイ、正直惚れそう。いや、もしかしたら……

 

零「………」

青蛾「………」

 

こんな、まるで妄想のような出来事が、あっていいのだろうか。永琳がいるのに…な……

青蛾は無言で、顔を近付けてきた。まさか……

 

青蛾「口付け…していい?」

零「お前……」

青蛾「二番でも良いから……貴方のことが…」

零「……」

 

ある意味、絶対絶命である。

……もういいや。俺は目を瞑る。

 

青蛾「………」

零「………」

青蛾「………」

零「………?」

 

中々来ない?い、いや、別にその、口付けを待ってた訳じゃねぇし?

その、なんだろう……えっと、うーん………取り合えず違うから!!

 

しかし、気になるは気になる。

俺はゆっくりと目を開けようとしたが、半分空いた瞬間、見開いた。何故か?驚いたからだ。

 

青蛾「…う………」

零「せい……が…?」

 

彼女が血を吐き出しているのだ。

横目からは青蛾の腹が見えるが、そこからは緋色の液体が服を伝い、中心には鋭利なものが突き出ている。

 

俺は急いで顔をあげた。そこには悪神がいる核から突き出た何かが、青蛾を貫いていた。

その何かはすぐに核へ戻る。そして、その場に倒れ込む青蛾の血が俺に飛び散った。勢いよく血は吹き出て、頭の中が真っ白になった。

 

零「青蛾ァッ!!」

 

俺はひたすら、彼女を呼び掛けた。『治癒の細胞』を傷口に垂らす。治らない!?

 

零「そんな……青蛾!!青蛾!!青蛾!!」

青蛾「零…」

 

青蛾は俺の手をとる。

 

青蛾「もういいよ…貴方の『治癒の細胞』も効かないなら、私はもうダメね」

 

やめろ…

 

青蛾「今まで、貴方の力になれて良かったわ」

 

やめろ

 

青蛾「ありがとう、零」

零「やめろォッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ごめんね、れい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

零「ああああああああああああああああああああッ!!!!!!」

 

青蛾が、喋らなくなった。眼の光はスッと消え、彼女の体温も消えた。

 

彼女の手は一ミリも動かない。動かない。うgヵない。uごカなィ。動かない。




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