東方化物脳 ~100%の脳が幻想入り~ 不定期更新   作:薬売り

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心の隙間の温かみ VIII 『知名』

男が妖怪の脳天をナイフでほじくっている。

それは、八つ当たりと、村を襲っていた妖怪を退治して感謝されるという二点を報酬に戦った後である。

 

男「どうしてだよッ!!どうしてッ!!俺は讃えられないんだッ!!」

 

ただただ、生々しい音だけが響いた。

 

男「幾ら悪人を殺しても、殺しても有名にも評判にもされやしねぇッ!!」

 

暫くナイフで抉っている内に、楽しくも嬉しくもないのに、笑ってきた。

狂気じみたその笑い声。

 

男「………ならいっそ」

 

お前が悪となればいい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

零「……ッ!?」

 

今の記憶は……?いきなり俺の頭の中に入ってきた。

もしかして、今のはこの島を支配している悪神か?しかも、最後の言葉…『お前が悪となればいい』……話の流れ的におかしい。『俺が悪となればいい』じゃないのか?

しかし、何故いきなり……?

 

青蛾「零?どうかしたの?」

零「あ、あぁ……気にするな」

 

こんな入り込んできた記憶なんてどうでもいい。

目指すは島の奥地。霊魂の集う場所。

 

零「そこまで時間はかからない筈だ」

紫「なんなら、私の能力を使いましょう?」

零「え?君の能力?」

 

紫の能力……?一体なんだ?

それらしき現象は何回かあったが……

 

紫「私の能力はね……」

 

パチンッと指を鳴らした。

瞬間、落下したような感覚。いや…これはッ!!落ちているッ!?

 

紫「『境界を操る程度の能力』よ」

 

そして、俺の視界は暗転した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男「誰だ!?」

■■「お前…そんなにこの世から注目をされたいか?」

男「な、何?」

 

正しくその通りだ。俺はこの世から注目されたい。

だが、そんな理由で妖怪退治をやっているなんて知られたら、格好が悪い。

 

男「そんなはず…ないな」

■■「それなら、何故一瞬でも悪になろうと思った?」

男「……それは」

■■「注目をされたいから、だろう?」

男「ッ!?」

 

図星。先程から正論で突いてくる。

こんなの、嫌だ。苦でしかない。そう、この頃思っている自分がいる。

 

■■「良いじゃあないか。夢のない者より断然にな」

男「……」

■■「なればいいじゃないか。悪に……お前のスゴさを理解しようとしない奴等を支配しろ」

男「支配……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

零「………」

 

またか……俺は顔を上げ、回りを見た。

森。しかし、霊力が強い。

 

紫「どう?凄いでしょ」

零「あぁ、驚いた」

紫「フフン♪」

 

分かりやすく上機嫌になった紫。それを呆れたように見ている藍。

二人は、よく考えると凄いコンビだよな。

世界で一種の妖怪と伝説の大妖怪である九尾(キュウビ)。そもそも九尾が式と言うのも少し面白い。

 

藍「…どうかしました?」

零「んや、気にするな」

藍「難題ですね。その口癖、直したらどうです?気にするなって本当に無責任な言葉ですよ」

零「………」

 

説教されました。


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