東方化物脳 ~100%の脳が幻想入り~ 不定期更新 作:薬売り
にしてもだ、この島の殺気は静かだ。多分この殺気に気付いているのは、俺と気を扱う美鈴と仙人である青蛾。この三人だけだろう。いや?紫も微妙な表情をしている。
殺気と言うのは基本、大きければ大きいほどその者は強い。しかし、この殺気は小さい訳ではない。この島全体を、まるで縄張りを示すように覆っている。
しかも、この殺気はわざと気付かれないようにされてる。そんな器用な事を出来るのは………
零「どうやら、この島は呪われているようだな………多分、悪神かなにか」
紫「悪神…?」
零「霊魂が島の中心に集まってる。更にその中心に神力を感じる」
先程、『ナビゲーター』でこの島を調べた。奇妙なことに中心に霊魂が神力を纏うように集まっている。
人間の反応を少なく、最早その命ももう僅か。
義経「死者をなんだと思っているんだ」
零「……命の尊さを知らぬとは、愚か過ぎるな」
周りの者は揃って頷いた。その悪神、滑稽で思わず失笑をしてしまう。
何も言えん。
紫「でも、相当強いわ。油断はならない……藍、この島に悪神が逃げないよう結界を張りなさい」
美鈴「そんなことしたら悪神に存在を気付かれてしまうんじゃ……」
零「宣戦布告さ。これ程の愚神、小さな挑発にも乗るだろう……いや寧ろ」
瞬間、零の足元に矢が刺さった。
零「もう乗っているだろう」
その矢から黒いオーラのようなものが溢れ出て、そこから霊が出現した。
美鈴や紫、藍や青蛾はその場で構えた。が…
芳香「成仏せよ、親不孝者共」
青蛾「え?」
芳香の、突然の発言に皆も俺も驚いた。先程から黙り混んでいた芳香が開いた口から出てきた言葉は芳香らしからぬものだった。
霊「………」
芳香「親に産んでもらい育てられ、それらを護るべく自らは戦士となったのだろう?それを途中で目的を忘れ、いざ死んだら恨めしくこの世に参ってくる」
異様な事だった。
それは怒りからなる言葉である。何処か八つ当たりのようにも聞こえる。
芳香「恥を知れ」
霊「………!!」
芳香「お前を冥土で待っている親をいつまで待たせるのだ?悲劇ぶるなよ。どうすることも出来ない者の方が余程悲劇なのを思い知れ」
その言葉に、霊は刀を降ろした。そして、その姿は薄れゆく。
零「お、おい。芳香……」
芳香「……うん?どこ、ここ?」
そこ瞬間、表情や仕草など、全ていつもの彼女のものとなった。
やはりだ……彼女は、生きていた時に戻ろうとしている。記憶を呼び覚まそうとしている。
芳香「零~頭撫でて~」
俺はいつものように彼女を撫でる。いつものように暖かい。なんなのだろう。
彼女は死者。しかし、死者とは程遠い。
死者であり、死者ではない存在。近い内、彼女は記憶を完全に取り戻すのかもしれない。
俺は芳香の笑顔を見つめながら、そう感じた。