東方化物脳 ~100%の脳が幻想入り~ 不定期更新 作:薬売り
紫「このオホーツクを渡れば島に着くのね?」
零「あぁ、そうだ」
紫「それじゃあ、早速いきましょう!!」
零「待て待て、俺も久し振りに来た。昔からの友人たちに挨拶をさせてくれ」
紫「友人たち?」
俺達は紫と藍を連れ、森の中へ入った。
森の樹々は入り乱れて躓きそうになるも、何とか奥へ進んだ。そして……
藍「ハァ……ハァ……一体何処まで…」
零「静かに」
藍「………」
耳をすますと声が聞こえる。
零「イランカラプテ!!」
藍「え?」
紫「こんにちはって意味よ」
暫くすると俺たちに向けて話しかける声が聞こえた。
??「誰だ?」
零「神田零だ。仲間を連れた来た」
??「合言葉は?」
零「
??「零!!久しいな!!さぁ、入れ!!」
すると目の前の地面がいきなり空いた。それまでは踏んでも跳んでもただの地面だったのにと、藍は驚いている。
その穴から、小さな人間が現れた。コロポックルだ。
零「久しいな。一尺」
一尺「その名前は嫌いなんだ。背はそこまでないし、俺の器にしては小さいからな」
零「はいはい、今まで通り『シャク』って呼ぶよ」
義経「シャクさん、お久しぶりです」
一尺「おお、義経じゃないか!!久しい面がこんなにも……そこのベッピン達は?」
紫は至って平常に自己紹介。対して藍は唖然としながらも、自己紹介を始めた。
紫「八雲紫です。こちらは私の式の…」
藍「や、八雲藍です…」
一尺「紫さんに藍さんね……そんなことより早く入りなよ!!」
零「おう、分かった」
俺達は一尺に続いて中へ入っていった。
藍「綺麗……」
一尺「だろう?何せ我らが先祖、少名毘古那様から授かった理想郷だからな」
零「何度見ても絶景だな」
紫「そうね」
零「え?初めて来たんじゃないのか?」
紫「え、あぁ、絶景って所に共感したの」
零「なるほど」
そこには幻想的な風景、町を照らす炎の光、天上に滴る小さな雫、それが落ちた緑の泉、所々に生えた草、全てが美しかった。
一尺「大きい人用の通り道はこっちだ」
決して広くはないが、確かに通れる道。実は俺が来た時の為だけに作ってもらった道なのだ。
紫「でも、地面に理想郷を作ってよかったの?もし、地面が掘られたら……」
一尺「ハッハッハ、いらん心配さ。此処と彼処は異次元の場所にあるのさ」
紫「そうなの。だからか…」
一尺「ん?どうかしたか?」
紫「いえ、なんでも」
しばらく歩くと、開けた場所に出た。
ここは人間が人数いても座れる程に広い場所。ここは元からあった場所だ。
一尺「さぁ、座りな」
一尺の言葉で皆は腰を下ろした。芳香は足を伸ばして座ってる。
気付くと周りにはコロポックル達が大量にいる。
一尺「それで、どうして蝦夷なんかに?」
零「いやぁ、ただの里帰りさ」
一尺「お前の里は幾つ有るんだっての」
零「ハハハ。でも、目的が此処で出来ちゃってね。な?」
紫「えぇ」
紫はゆっくり頷いた。
一尺「へぇ、聞かせちゃあくれないか?」
紫「わかったわ」
一尺「ハァ、幻想郷ねぇ?」
紫「はい」
一尺「良いんじゃないか?零も付いてるんだし。実現するさ」
零「照れるな」
と言っておきながら、フッっと笑う程度。
一尺「にしても、まさか俺らもその幻想郷に招待する気じゃあねえよな?」
紫「そうしたいですが、嫌なら構いません」
一尺「弱いねぇ。ま、でもそうだね。その船になる気はねぇな。俺達は蝦夷で充分さ」
紫「分かりました」
イペタムに土下座してまで幻想郷を創りあげようと思っていた割にはすんなりとしている。
俺達という協力者が出来たことにより余裕ができたか?
一尺「にしても……『一寸』は元気かねぇ」
零「さあな」
藍「え、あの…一寸って…あの一寸ですか?」
一尺「なんだ?御伽だと思ってんのか?チッチッチ、実話だよ」
藍「えッ!?」
藍は分かりやすく驚いた。手を地面に着け、前屈みに一尺の言葉に興味を持った。
なんだ?一寸の愛好者か?
一尺「俺の息子である『少名一寸』の本当の話、聞きたいか?」
藍「息子!?」
一尺「おうよ、息子さ。実はだな、奴を姫様の所に送ったのは俺達なんだぜ」
藍「御地蔵様が老夫婦に授けたんじゃなかったんですか!?」
一尺「そんなの話の誇張さ。いや、逆か。膨大な話を抑えたんだ」
一寸自身が、そうやって語っているからな。
一尺「お父さんに迷惑は掛けたくないんだとよ。親孝行な奴だよなぁ?」
藍「そうだったんですか……」
一尺「昔は『零さんのような強者になりたいです!!』なんて言っててな!!」
零「そうそう!!あの頃は泣きそうになったね。嬉しくて」
一尺「俺も泣きそうになったな。妬ましくて」
藍「やっぱり零さんってお強いのでしょうか…?」
一尺「ッたりめーよ!!なまら強いぜ。なんてったって、性格に似ねぇ『神殺しの零』って二つ名を持ってんだからな!!」
取り残された紫。青蛾達は他のコロポックルと話している。
紫「………居場所がない」
小声で呟いた。
その声が零に聞こえたらしい。零は振り返り、紫に話した。
零「そうだ。なんならこれからについて話そうか。シャク達の意見も聞いてさ」
それなら君の居場所は有るだろう?と言うように零は笑った。
ありがとう、やっぱり貴方は私の知っている零だ。そう呟かず心の中で思った。