東方化物脳 ~100%の脳が幻想入り~ 不定期更新 作:薬売り
出発の日の前日。隋の王から呪いを解いてくれたお礼を頂いたが、旅にこれ程の大金は要らないので九割は神子達に寄付することにした。
そして、やはり美鈴は付いてくるようだ。
零「本当に良いんだよな?」
美鈴「はい!!師匠に付いていきますよ!!」
零「な、ならいいんだが……」
うん。師匠に忠実な愛弟子ですよ。なんか、俺には勿体無いね。
まだ先の話だが、いつかは師匠離れしないといけないわけだ。師匠離れをしたら、弟子をつくる気で修行を挑んでほしい。
若しくは、誰かを守る存在になってほしい。自分勝手な師匠の願いだがね。
美鈴「そう言えば、あれから青蛾さん見てないですね」
零「そうだな、どこにいるかも分からん。かれこれ二週間位は経ってるし」
そう、青蛾が忽然と姿を消したのだ。いや、『ナビゲーター』をしたら多分分かるんだろうけど、彼女人生は彼女の自由だ。そっとしておくのが正解なんだろう。
まぁ、確かに彼女の行方は気になるけどな。
芳香が死んだことを隋の人達に伝えるのは辛かった。
やはり、芳香はみんなから愛されていたらしい。みんな悲しんでいた。泣いている者も居た。
妖怪に怒っていた者も、悔しがっている者も。
美鈴「なんか、師匠に出会ってそんなに経ちませんが、濃い人生です」
零「多分これからも濃いぞ。なんせ、何者かに狙われているからな」
美鈴「そ、そうですか……」
苦笑い。まあ、そうだろうな。
あんな辛い体験はこれっきりが良いだろう。だが、そうもいかないんだよな~。
まぁ、この星に着いた以上そうなる運命……この星…か…。
俺は何者なんだろうか。
そもそも、宇宙に居たんだから永琳に会えるだろうと思っていたが、元々の種族になれなかった。元々何かが分からなかったから……皮肉だ。
人間にならなかったら永琳に会いに行けるが、人間にならなかったら永琳に会えなかった。
残酷過ぎる。それも、苦しいほどに。
美鈴「師匠?」
心配した美鈴が、俺の顔を覗き込む。
零「いや、なんでもない。気にするな。ほら、明日に向けて体を休めよう。お休み」
美鈴「分かりました。お休みなさい」
さて、もうそろそろ出発の時刻になる。
結局、青蛾は現れなかった。
美鈴「ああ~いよいよ師匠の故郷に行くのですね~ウキウキします!!」
零「そうかそうか、良い所だからな」
美鈴「青蛾さんは……どうしたのでしょうか」
零「うむ。彼女の人生だ。自由にさせてやってくれ」
美鈴「は、はぁ。でも最後くらい、顔だけでも見せてくれれば……」
??「最後じゃあないわよ!!」
美鈴「こ、この声は?まさか!!」
俺達は声のした方へと視線を向ける。
そこには、相変わらずの青蛾。そして……
二人「「芳香(さん)!?」」
芳香がそこに居た。顔にお札をつけて。
青蛾「待たせたわね!!」
芳香「待たせたぁー」
零「待たせたって……どういうことだよ?」
青蛾「キョンシーです。だから、記憶はないけど…」
美鈴「えぇ…?」
青蛾「……なんか反応がおかしいわね?」
おかしいもなにも……
零「いや、気持ちはうれしいよ。ありがとう。でも……何て言うかな…」
うん。気持ちは嬉しい。
俺のことを思ってかもしれないが……だがな…
芳香「レイ」
零「ッ!?」
美鈴「えッ!?」
青蛾「えッ!?何で!?」
芳香「あるぇー?なんでこの人の名前分かるんだろー?でも…なんか安心する!!」
青蛾「この娘には…零の名前は言っていないのに……」
曲がらない腕をブンブン振って、「ちーかーよーれー」とか言ってる。
なんか、俺の名前を言ってくれた瞬間、涙が出そうになった。脆くなったな。
俺は、芳香の頭を撫でた。気持ち良さそうにしている彼女の笑顔を見て思った。
零「青蛾、ありがとうな」
青蛾「どういたしまして。これからよろしく!!」
美鈴「これから?」
芳香「これからぁ?」
青蛾「えぇ、零についていくわ。彼女、生前に零の弟子になってみたいとか言ってたじゃない?だから、ね?」
あの時か。よく覚えていたな。
零「そうだな。一緒に行こう」
青蛾「ヤッタ!!」
芳香「ヤッタァ」
零「まぁ、その前に体の柔軟性が必要だな」
芳香「だな」
イチイチ繰り返すな、コイツ。可愛い奴め!!
頭を撫でるといい香りがする。お札の効果か?分からんがな。
取り合えず可愛い。後ろで小さくガッツポーズしている青蛾もな。
とは言え、これからの旅は楽しくなりそうだ。美鈴、青蛾、芳香…そして俺。うん、謎過ぎる。
次の旅を楽しみながら、船の出航を待った。