東方化物脳 ~100%の脳が幻想入り~ 不定期更新 作:薬売り
ユーベ「フフフ……貴方のフルネームと、『元々の名前』を知っている理由を教えてほしいんですね?そうなんでしょう?」
零「フルネームは、まだいい。いや、良くはないが……それより、『元々の名前』ってのはなんだ?俺が何者か分かるのか?だとしたら何故わかる」
ユーベは落とされた腕を拾って、まるで元は自分の物ではなかったかのように、気持ち悪がって持ち上げた。
ユーベ「他人のものには興奮するんだけどなぁ……うわぁ、エグいな…」
零「………」
ユーベ「…で、何故知っているか、ですね。良いでしょう。教えてあげれる所までは教えましょうか……。さて、まず……というか、全部そうなんですが、貴方の名前を知ったのは『黄泉』で知りました」
零「なに?つまりお前は…」
ユーベは俺の言いたいことを悟ったように、話した。
ユーベ「はい、死んでいます。そして、一時的に生き返りました。岩が置いてあったって隙間がありますからねぇ。僕のような体を虫に変身できる者や物を遠隔操作出来る者は出入りが出来るんですよ。因みに、遠隔操作した岩をそのままにはしません。黄泉の中と外では環境が違いすぎて、私達にも悪影響が及ぶんです」
アイツもか……あの、布都を操った妖怪もか。
そしてこいつ。須佐之男は……分からない。だがアイツも俺のことを捜していたようだった。
零「で?なんで俺のことを知ってる?」
ユーベ「ダメダメダメダメダメ。これ以上は教えられませんねぇ」
零「は?」
ユーベ「これ以上話せば『あの人』に殺されてしまうのでね」
『あの人』……いったい誰なのだ。
黄泉の住人……あまり黄泉には詳しくはない。勿論、行った記憶もない。有名な者で言えば…伊邪那美大神とか?いや、接点がない。うむ…やはり分からない。
零「………」
こんなことをしている場合じゃあない。早くこの屑を殺さねばならない。
名前を知っている事に、不思議になり、聞きすぎた。
ユーベ「あ~あ、僕のもげた腕が視界に入るなぁ。潰そ」
グシャァ…と音をたてながら足で潰した。
そこには血が飛び散り、広範囲に広がっていった。
零「『熱の細胞』」
ユーベ「おやおや、またそれですか。それ結構熱いんですよ。私のような妖怪じゃあなければ溶けているでしょう」
零「そりゃ結構。狙ってやってるんだよ」
ユーベ「全く…一時的にとは言え、黄泉に帰す気ですか?」
零「いい勘してるじゃあねぇか」
ユーベ「良いじゃないですか、かかってきてください」
零「良いだろう……ハァッ!!」
思いきり蹴った。地面を。今までで最速の速さ。
この屑の顔面から骨が見えるほど溶かしてやるッ!!
零「ウオオオオオオオオオッ!!」
ユーベ「ウグッ!!………」
だが……ユーベは零の腕を掴んだ。
そして、笑いながら……こう言った。
笑いながらだ。殴られている途中に笑いながら。
そして、視界が歪んだ。
吐き気がする。
ユーベ「アッチィィィィィッ!!」
零「うッ!?」
ユーベ「ハァ……ハァ……い、痛いよ……フフ…まぁ、いい。これでようやく術にかけれた。次は貴方達ですよ?」
青蛾「………いや、それはないようね」
ユーベ「は?」
美鈴「師匠の攻撃は続いている」
ユーベ「ハッハッハ!!何を言っているんですか!?零さんはここに倒れ込んで……ハッ!?」
居ない。辺りを見ても居ない。
零の姿が見えないのだ。
ユーベ「ど、どこだッ!?」
青蛾「居るじゃあないの貴方の近くにね」
何かに足を掴まれた。
恐る恐る下を見る。そこにはッ!!ダイヤモンドよりも硬、青い手が、飛び散った血から出ているのだッ!!
ユーベ「なんだこれはッ!?」
零「俺の手だよ」
ユーベ「ッ!?」
そこには、血から出ている零の上半身があった。
零「さっきお前、腕を潰しただろう?その時、血が飛び散った。その時思い付いたんだよ。『自分の細胞を分裂させ飛び散った血の中に潜り込む』ってね」
ユーベ「なんなんだ…貴方はッ!?」
零「俺は、細胞一つ一つが生きているんだ」
ユーベ「クソッ!!」
零「言っとくが、吐き気は俺の細胞達が破壊する。お前の呪いは俺には効かねぇよ」
ユーベ「ッ!?」
零「死んで償え。お前はこの世界に必要とされていない」
ユーベ「やめろ…」
零「…ダメだね。『熱の細胞』ッ!!」
ユーベ「グァァァァアアアアアアアアッ!?熱いィィィィィッ!!」
ユーベ=ナイトバグがどんどん溶けてゆく。
次第に体から出てきた油に火が付き、全身を火が覆う。
骨が見えてくる。どうやらもう本人は死んだようだ。
俺は手を放し、自分の細胞を集める。
ユーベは、もう動かない。喋らない。
零「……芳香はッ!?」
芳香を見れば、付いていた虫はもう消えていた。
零「芳香ッ!!しっかりしろッ!!」
返事がない。死んだようだ。
瞳は輝いていない。
零「クソッ!!」
青蛾「……零」
零「身近な人が死ぬのはこれで二度目だ…俺が芳香や屠自古に関わっていなければ死んでいなかった」
青蛾「零。こっちを向きなさい」
そう言われたのでそっちを向いた。
すると…
パアァァァァァン……
ビンタをされた。
青蛾「貴方のせいじゃない。全部自分のせいにしないで。大きい責任を一人で持ち込もうとしないで。貴方がその責任に押し潰されているのを見たくはないわ。私達が居るのよ。重い荷物を皆で持つように、大きい責任は皆で背負いましょう?」
零「……うっ……うう………」
初めて泣いた。
その光景に美鈴は驚くような動作をする。
青蛾は、抱き締めた。
この俺を、迷いなく。抱き締めた。
青蛾「安心して。芳香ちゃんは私が何とかするわ」
そして、俺達はその廃墟を去った。