東方化物脳 ~100%の脳が幻想入り~ 不定期更新 作:薬売り
美鈴「私の蹴りを指で止める……何者ですか?」
零「旅人…かな?日本のね」
美鈴「へぇ…あんな小さな島のような国にもこんな強いお方はいるのか…」
零「神様にもなったことがあるぜ」
美鈴「こりゃ期待が出来そうだ…なッ!!」
美鈴は零に、拳を振りかざす。見事に零の右頬に当たった…ように見えたが、拳の独特の感触はない。顔で受け流したのだ。
そのまま回転しながら、殴ってくると予想した美鈴は左腕で受け止めようとした…だがしかしッ!!
零「ガードのタイミングが早い。バレるぞ俺に」
美鈴「なッ!?」
なんと、零は美鈴の背後で、美鈴を腕で絞めているのだッ!!
零は美鈴が左手でガードしたのを見て、拳が効かないのが分かった。そこで、美鈴の体に沿って零の体を回転させて、背後に回ったのだ。
美鈴「…お強いですね」
零「お前は、俺の閉めている腕に『氣』を送り込み、この状態を逃れようとしてるな?」
美鈴「ッ!?」
何故バレた?と言う顔をしている。
まぁ、『ディア』を使えますから。
戦闘中はあまり使わないようにしてるが、余裕の声質で話していたから、気になったって訳さ。
そして、バレたことによって、相手が対処法を知っていると思い込む。実は考えていないがな。唯一の逃げ場は無くなる。
美鈴「ハァ……ハァ……」
危機、それが彼女の頭に過っている言葉だろう。
彼女がヤケクソで氣を使ったらピンチ。つまり、俺も危機の言葉が過ってる。ちょっと困るなぁ(笑)
俺がこんなに余裕な理由は、簡単。彼女がヤケクソを起こさないことを信じているから。
見るからに、彼女は戦闘のベテラン。ヤケクソは流石に起こさないだろう。と言う意味で、信じている。
零「君は、一つの拳を俺に向けた。それだけでほぼ敗けの状態だ。つまり、俺と君の差は目に見えているだろう?ここは、潔く認めた方がいい。」
美鈴「……99999戦中、99999勝でした。初めて敗けを味わい、誠に光栄です。『降参』です……」
その言葉を聞いて、俺は腕を離す。
美鈴「お手合わせありがとうございました」
零「敗けを認める君は、嫌いじゃあないぞ。悔し涙もまた闘い。次に向けての力になるんだ」
美鈴「……はい」
初めての敗け。それを認めたことで悔し涙を流す。
彼女のいい経験になれたと思うと嬉しいが、女の子を泣かせたことに、不快を感じる。
青蛾「スゴいわね…芳香ちゃんと同じ…いや、それ以上かも知れないわ」
零「芳香ってそんな強いのか?意外だな…」
青蛾「武術を独学ね」
零「へぇ…」
青蛾「あら?そろそろ帰りましょうか。宿の手配はしているらしいから」
零「そうだな、そろそろ…」
美鈴「待ってください!!」
零「ン?」
美鈴「そ、その…で、弟子にしてくださいッ!!」
零「……ン?」
弟子…か?
いや、別にいいが…俺は日本人。彼女はこの母国を離れることになるんじゃあ…
美鈴「日本にでも、地獄でも天国でも…どこへでも付いていきます!!」
それはそれで怖い。だが…そう言うことならば…
零「良いぜ?」
美鈴「あ、ありがとうございます!!」
師匠か~。少し、にやけてしまうな。
別に、彼女の真剣な気持ちを、軽い気持ちで受け入れる訳じゃあないが、にやけるもんは、にやけるぜ。