東方化物脳 ~100%の脳が幻想入り~ 不定期更新   作:薬売り

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九人の欲と一人の希望 VI 『死人』

零「用はなんだ」

布都「自分の意思についてだ」

零「わかった、聞こう」

 

こいつは、明らかに『布都ではない』なにかだ。

妖怪が取りついている……うまく隠れているが何となくわかる。

神子や屠自古は分からないだろう。

 

布都「疑問なんだけど、自分の意思を貫くってさぁ、それはただ回りの意見を聞かない自分勝手な人間になれって意味じゃあない?」

零「そうは言ってない。俺が言ってるのは自分の意思を心の中に仕舞わず、ちゃんと回りの人にわかってもらえって言ってるんだ」

布都「そっかぁ…」

 

なんだこいつ……品がどんどん悪くなっている。

 

布都「じゃあ…私も自分の意思を示そうかなぁ」

零「………」

布都「テメェを殺してやるぜぇ!!」

零「かかってこいよ」

布都「死んで、悔やめ!!」

神子「何を…してるのです……?」

 

神子?そこに神子が居たのだ。

 

布都「え…あぁ、み、神子様じゃあないですか。これは…あれですよ。戦闘の練習です。より本当の戦いに近づける為に演技をしてましてぇ」

神子「そうですか……もうひとつ、良いですか」

布都「ええ、なんなりと」

神子「()()()()()()()?()

 

その言葉で布都は…否、妖怪は青ざめた。

 

布都「し、質問の意図が分かりません…」

神子「そのままです。言葉通りの」

布都「私は、布都ですよ。認知症ですか?」

神子「貴女は本物の布都と、性格が違う。態度が違う。雰囲気が違う。そして、私の呼び方も違うのですよ。本物は『太子様』と呼びます。貴女は『神子様』と呼びました」

布都「ッ!!ド畜生がァァァァッ!!」

零「俺からしたら、ド畜生はテメェだよ」

 

零は布都を殴った。いや、殴ってはない。零の腕は布都を貫通させている。でも、傷はついていない。つまり、布都の中にいた妖怪を殴っていたッ!!布都の体に干渉して、直接妖怪に攻撃をした。よって、布都はその場で倒れそうになったところを零に支えられて、妖怪は飛んでいった!!

 

妖怪「貴様らァァァッ!!」

屠自古「何事だ!?」

妖怪「……ッ!!」

 

妖怪は、屠自古の首を軽く絞めた。

 

妖怪「こいつの命がなくなってもいいのか?」

零「ハァ……」

妖怪「なんだ?溜め息?頭がおかしいのか?こいつは、人質だぞ!?」

屠自古「私は人質になった覚えはないな」

妖怪「はあ?」

屠自古「もし私が、雷を扱える人間だったら?」

妖怪「ッ!!グガァァァァァァアアッ!!!!」

 

妖怪はヨロヨロと倒れ、屠自古は解放される。

 

妖怪「……」

零「質問だ、お前はなぜ俺を狙った」

妖怪「フフ……」

零「あ?」

妖怪「フハハハハハハハハハハハ!!!」

零「なッ!?」

 

突然、笑い出したのだ。

 

妖怪「『あの人』の事を言うわけがないだろうが!!そしてまだ、俺は負けてないぜ?」

屠自古「ッ!?体が…動かないッ!?」

 

布都の体が勝手に起き上がり。

近くにあった刃物を持ち、布都に近づいていった。

 

神子「布都!!」

妖怪「無駄だよ!!こいつは今、俺が遠隔操作してんだからな!!触れた生き物はいつでも操れるのサァ!!」

 

妖怪が言い終わった瞬間、布都の動きが止まった。

 

妖怪「なんだ?早く動けよ」

零「俺も遠隔操作出来たとしたら良いのになぁ」

妖怪「何だと……テメェ、どこまで俺の邪魔をしやがる!!」

零「さあな」

妖怪「クッ!!だが、テメェは能力が大量にあるから、それぞれに分散した力が弱いんじゃあないか?ほら、ちょっとずつだがこの女に近づいてるぜ!!」

零「ッ!!」

 

俺の弱点が分かったようだ。

ヤバい、このままじゃあ!!屠自古が!!

……!!神子が妖怪を殺そうとしている?

 

妖怪「おっと、神子さぁん…今俺を攻撃してみろ?操っている間に俺が死んだら操っていた対象もお陀仏だぜ?」

神子「なッ!!」

妖怪「零くぅん。そろそろ操ってる右手が限界じゃあないか?右手が千切れそうだよ?ン?」

零「クァッ!!」

 

右手から血が吹き出ている。

ゴキゴキと音が聞こえる。

 

妖怪「もう、テメェの腕は限界のようだなッ!!」

零「ッ!!!!」

 

ぼと………

 

腕が取れた。

 

零「ウガァァァァアアアッッ!!」

妖怪「ハハハハハハハハ!!!!死んでしまえ!!」

屠自古「グッ!?」

 

屠自古は両足を切断された。

 

屠自古「グァァァァァァァッッ!!!」

妖怪「いい光景だな!!さあ死ね!!」

零「やめろおおお!!!」

 

グチュ………グチュ……

 

グチュグチュグチュグチュ

 

刃物は何回も屠自古に刺さる。

屠自古の表情は次第に消えていった。

 

妖怪「ギャハハハハ!!!」

屠自古「…………」

零「…………ぁ……」

妖怪「次はお前……あ?」

 

零は、怒りでなにもわからなかった。

妖怪が見た光景は、生え変わった腕、周囲の霊力、零がチャージしたとてつもない力。

 

妖怪「お、おいおい。なにやってンだよ」

零「……」

妖怪「な、なんで疲労してる状態でたてるんだよ……」

零「………」

妖怪「近づくな!!俺に寄るんじゃあねぇ!!」

零「『インフィニティ』………」

妖怪「は?……な、なん…だ?痛いぞ。痛い…痛い痛い、イタイイタイイタイイタイッ!!!!」

零「苦しんで死ね……」

妖怪「ウガァァァァァアアアッ!!!!」

 

次の瞬間、妖怪は木っ端微塵になった。

布都は、生きている。どうやら操ってないらしい。

 

神子「零さん…」

零「守れなかった……な…にも……」

 

零は、意識を手放した。


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