止めてください!!師匠!!   作:ホワイト・ラム

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さて皆さまお待たせしました。
長らく続いてきたこの作品、結構初期から考えていたネタです。
明るさは少ないですが、それでも楽しんでいただけたら結構です。


横断!!生命の境界!!

キィ……キィ……

 

真っ白い霧の中、河の中を一人の老人が船に揺られていた。

老人の目の前には、よれた刃を持つ鎌を持った死神。

この三途の河で死者を渡す役割を持つ死神、小野塚 小町だ。

 

「なぁ、儂は地獄逝きなのか?」

 

「さぁねぇ?アタイの仕事は死者を裁くことじゃないからねぇ。

けど、河の広さで人の生前の罪の重さを大体予想は出来る」

必死な様子の老人に対してあくまでのんびりと、自身のペースを全く崩さず小町が答えた。

 

「なら――」

 

「けど、この霧じゃ無理だね。

辺り一面真っ白さね。これじゃいつ向こう側に付くかわかったもんじゃない。

ま、雨が降ってる訳じゃないんだ。気長に行こうや」

 

「この河を渡りきった時が、儂の死か――」

 

「そうだね、といってもだ。例外が無い訳じゃない」

何処かあきらめた様につぶやく老人に対して、小町が答える。

 

「それは――?」

 

「確かに、渡り切れば死さ。

けど、向こうへ行った後、戻ってくればどうかねぇ?

試したことは無いけど、閻魔の誰かが地獄か、どっかに割り振る前に戻っちまえば……

いや、あり得ないか。忘れとくれよ」

あり得ない妄想だと、小町が笑って否定する。

 

バシャ――

 

「ん、魚か?惜しいねぇ……霧が晴れたたら、景色や河の色をもう少し楽しめたのに……」

 

バシャ――!

 

「ち、近いぞ……?」

老人が、小さくうろたえる。

小さな物音にさえ不安を感じている様だ。

 

「まったく、男ならもっとシャキッと――」

 

バチャン!!バシャ――バチン!!バシャシャン!!

 

「この、音は――まさか……!?」

何かの音に気が付いた老人ががたがたと震えだす。

 

「ちょ、ちょっと!どうしたのさ!

水音がなんだって――!?」

 

バチィン!!

 

霧の中の船の上、真っ赤な血のような色をした稲妻が二人の前に降りる。

それは人だった。

いや、人の形をした何かと言う他無かった。

 

道士の着るような紺色の中華服の上着に黒の長ズボン、そして首に巻き付いた赤と青の長い布地。

両手両足からは、血のような力を流し、水面を蹴って移動していた。

『ソレ』は老人と小町の乗っている子船のヘリに足を乗せ、そのまま踏台にして河の彼岸、あの世へと走り去っていった。

 

「なにが――?」

一瞬の出来事、あの存在が踏んで傷ついた船の傷が無ければ、白昼夢でも見たと忘れるトコだった。

 

「やっぱり、やっぱりだぁ!!」

老人が両手を合わせて、必死に念仏を唱え始める。

それはもう、必死過ぎて何を言ってるか分からないほどだった。

 

「あれはなんだい!?」

 

「里に、里に出るバケモンだ!!

誰も退治できない!!誰も逆らえない!!誰も機嫌を損ねちゃならねぇ!!

だから、誰も噂しねぇ、誰もヤツの正体を知ろうとしねぇ!!

ヤツは、奴は邪帝皇だ。誰も本当の名前すら知らない、本物のバケモンだ!!」

 

 

 

 

 

「ズーちゃん!!永遠亭へ!道案内よろしく!!」

 

「お、おー!」

倒れる師匠を善が抱き上げ、ズーちゃんを自身の胸へ押し込んで、最後に自身の額に札を張り付けすさまじい速度で走り始める!!

風を切り、川を飛び越え、竹林へと急ぐ!!

 

 

 

永遠亭の玄関。

ノックを手早くして、返事も聞かず扉を開ける。

丁度、出かけようとしていた輝夜と鉢合わせる。

 

「し、詩堂?どうしたの――」

 

「輝夜さん、師匠を助けてください!!」

師匠を抱きかかえたまま、善が頭を下げる。

 

「無理よ――」

師匠の様子を見て、輝夜が答える。

輝夜は残念ながら医者ではない、だが師匠の状況を見たら助からない――否。

もうすでに死んでいる事はたやすく理解出来た。

 

「刃物――死神の鎌か何かね……胸をざっくり。

これはもうアナタの師匠じゃないわ。

これは――」

 

「お願いです!!師匠を!!」

輝夜の説明など聞いていないとばかりに、善が今度は土下座をする。

まだ、彼は認められないのだ。

何事かと、駆け付けた永琳も同じく目を伏せる。

 

「詩堂君、私は確かに命に対する仕事をしてるわ。

けど、死者を生き返らせることは私では――いいえ、禁忌とされた蓬莱の薬にすら不可能よ。

死ななくすることは出来ても、死者を返す事は出来ないわ……」

なだめる様に、永琳が話すが――

 

「師匠は出来ました。芳香は死体だって――」

 

バチン!!

 

「いい加減にしなさい!!」

輝夜が善の頬を殴る。

その目には涙が浮かんでいた。

 

「認めなさいよ!!帰ってこないのよ!!

アナタの師匠は、アナタの師匠は――」

 

「言うんじゃない!!それ以上は!!それ以上俺の前で!!」

輝夜の襟を善がつかみ上げる。

 

「輝――」

 

「まって、永琳」

輝夜が永琳を手で制す。

善は輝夜の襟をつかんだまま、泣き始めた。

 

「くっそ、なんで!!なんで今になって!!

1400年生きた仙人じゃないのかよ!!

狡猾で悪辣で邪法を操る邪仙じゃなかったのかよ!!

俺に、自分の技を全部教えてくれるんじゃなかったのかよ!!

う、ううっ、ぐす、ああ、ああ、あああ~!!」

ボロボロと善が泣き出す。

 

「詩堂、聞きなさい。私たち蓬莱人は死なない永遠の存在。

けど、それでも別れは有るわ。大切に思うイナバが死んでいった事だってある。

それは仕方ない事なの、痛みを抱えてあなたは生きていくしかないのよ?

大丈夫、あなたが忘れなければあなたの師匠はあなたの心の中でずっと生きてるわ」

優しく輝夜が諭す。

 

「永琳。せめてもの手向けに詩堂のお師匠さま綺麗にしてあげて」

 

「分かったわ……」

永琳が師匠だったものを優曇華の用意した担架に乗せる。

 

「ねぇ、詩堂。考えたことある?

肉に形成された動物を、全部元の生きてる状況につなげなおしたらって……

機械とかのからくりはバラバラにしても、戻せばちゃんと動くわよね?

けど、動物は元通りに成らないの。どんなにしっかり生きてるのと同じにしても……

それは、死んだ瞬間に魂が失われたから――魂が離れたら死ぬのよ」

 

「なら――」

善が輝夜の手をつかむ。

 

「ひっ!?」

顔を上げた善の顔を見て、輝夜は悲鳴を上げた。

善の目には怪しい輝きが宿り、その輝きは狂気とすら呼べるモノだった。

 

「生きてるのと同じにして、魂を戻せば……」

 

「止めなさい!!それは踏み込んではいけない領域よ!!」

危険な事をつぶやく善を輝夜が止める。

そう、それは決して犯しては成らない領域で――

 

「あはは、邪仙の弟子はやっぱり邪仙か……」

自嘲気味に笑う善。

 

「輝夜さん。お願いが有ります。

師匠の体を直すのは永琳さんに頼みますけど――

私を殺してくれませんか?」

冗談ではない事は、輝夜にもすぐわかった。

 

「こ、ころし?」

 

「そうです。私も死んで師匠を追いかけます。

大丈夫です、体が無事なら私は自分の体に戻ってきますから」

以前、フランに体を破壊された時の事を思い出す。

そう、本来なら魂は消えていくハズだが、善はそうは成らなかった。

抵抗する力は!!自身の死にすら抵抗して見せた!!

 

「だから――」

 

「何を言ってるんだ!!」

善の後ろ、永遠亭の入り口に芳香が立っていた。

漸く善に追いついた様だった。

ほんの少しして、小傘と橙も追いついた様だ。

 

「善さん……」

 

「みゅう……」

芳香の後ろで、悲しそうな目でこちらを見る小傘と橙、言いたい事は3人とも同じ様だった。

 

「詩堂……みんなアナタの事を想ってくれてるわ。

この子たちを残して死ぬなんて出来る?

ねぇ、アナタのお師匠様の施術は永琳でもしばらく掛かるわ、その間その子達としっかり話し合いなさい」

輝夜が3人の方へと善を促す。

後ろ髪を引かれる思いをしながら、善の言葉を待つ3人の元へ行く。

 

 

 

「みんな、聞いて欲しい。師匠が――死んだ。

輝夜さん曰く、死神が手を下したらしい……」

 

「そんな……」

小傘が悲しみから口を押え、橙は静かに視線を地面に落とした。

対して芳香は善をずっと見たまま、視線を離さない。

 

「で、善はどうするんだ?」

芳香の言葉が投げかけられる。

 

「師匠を追う。一回死んで、あの世まで言って師匠をまたこっちに引っ張ってくる」

 

「出来る訳ないだろ!?」

芳香が善に食って掛かる!!

 

「なんでだ?俺は前、一度死んで復活したぞ!!」

 

「それは、まだ完全に死んでなかったからだ!!」

 

「一度、完全に死んだ人はもう……」

芳香の言葉に便乗する様に、橙が話してくれる。

小傘の様に目に涙がたまり、今にも泣きだしそうだ。

 

「やてみなきゃ分かんないだろ?」

 

「じゃ、じゃあ――善さんはどうなるの?」

小傘が遂に口を開いた。

 

「どうなるって、普通に戻って――」

 

「戻ってこれなかったら!?善さんまで死んだら!?」

堰を切ったように、小傘が言葉を並べる。

向かう先は彼岸、そう。死神たちのいる生者の居ない死者のみの世界。

当然帰ってこれる保証などありはしない。

 

「私はいつも言ってたぞ?死ぬのはダメだって。

覚えてるか?」

芳香が善に尋ねる。

そう、何か命に係わることが有った時、芳香は必ずそう言っていた。

 

「悪いな、無理だ。今回だけは、死ぬ必要がある」

 

「止めてくれ……たのむ、善までいなくならないでくれ!!

私のそばから離れないでくれ!!」

 

「わ、私も!!私も嫌だ!!」

 

「私もです!!死ぬなんて、ダメ!!」

芳香に続き小傘、橙まで善にしがみ付く。

3者とも悲しいのだ、師匠の死を悼んでいるのは善だけではないのだ。

だが――

 

「ごめん、みんな。

諦めることは出来ない。

ここで諦めたら、一生後悔する。今ここでやらないと、俺の心が死ぬんだ。

俺は足掻いていたい、困難に立ち向かいたい。諦めてする後悔よりも、失敗してする後悔の方が何倍も良いんだ。

諦めて、逃げて、忘れたフリはもうできないんだ」

優しく諭すように、3人に話す。

泣き出す3人の背を優しくなでる。

 

(みんな、俺の為に泣いてくれるんだな……)

ここに居る知り合いはまだ出会って2年もたっていない。

相手が妖怪だという事を加味して、今まで生きてきた中の100分の1も共に時間を過ごしていないのではないだろうか?

だが、それでも死ぬかもしれない自分の為に、必死で止め涙さえ流してくれる。

その事実が善にはうれしかった。

 

そして同時に、()()()()()

 

帰れるかどうか分からない旅路。

自身も3人との別れがつらくなる。

 

始めに小傘が善から離れた。

 

「行ってらっしゃい……善さんなら、きっと戻ってくるよね」

 

次に橙が善から離れた。

 

「絶対帰ってきますよね?善さんはすごい人ですからね!!」

 

無理して笑顔を向ける二人。

尚も芳香は善にくっついたままだった。

 

「善、絶対、絶対帰って来てくれ……

私を一人に――」

 

「しないさ、絶対にだ。

明日みんなで出かけよう、小傘さんと橙さんを誘って……

椛さんやにとりさん、静葉さんと穣子様のいる山にハイキングに出かけような。

勿論師匠も一緒だぞ?

こいしちゃんの家のある、旧地獄の温泉地にも行こうな?偶にはゆっくり羽を伸ばしたいもんな?

人里へ行って、阿求さんと一緒に小鈴ちゃんの店をのぞいて、妹紅さんの店で夕飯にしような?」

溢れてくる。

思い出が、懐かしさが――

 

善は何も持たずにここに来た。

だが、いつの間にか本当に多くのものに囲まれていたらしい。

なんて、なんて自分は幸せなんだろう?

 

だが、コレじゃ足りない。師匠がいない。師匠がいない明日なんて欲しくは無かった。

 

(欲張りかな……欲張りだよな)

自身を止める最後の手が、善から離れた。

善はもう3人の方を振り返らなかった。

 

 

 

 

 

「あんたって本当にバカね……史上まれにみるバカよ!!」

輝夜が開口一番に、そう言って頭を殴ってきた。

 

「輝夜さん……」

 

「さっき語った、未来予想図私がいないんだけど!?

明後日は私に24時間耐久でゲームに付き合いなさいよ!!

ん!!」

突き出すように出した手には、濃い紫の色の液体が満たされた小瓶があった。

 

「アンタのその力を考慮して濃度を調節した毒薬よ……

本来は薬なんだけど……

ぎりぎり致死傷のハズ、あんたはコレで仮死状態になるわ。

アナタの抵抗する力なら、きっとすぐに生き返ってしまう。

だから、私の力で何とか仮死状態を維持するわ。

けど、あんまり長くは出来ない。

アナタの肉体と私の精神的な問題でね……」

そう言って、輝夜が指を3本立てる。

 

「3時間よ。3時間がぎりぎりの時間。

それまでに、あなたの師匠を取り戻しなさい!」

 

「輝夜さん、ありがとうございます」

善は輝夜に連れられ、師匠の隣に寝かされた。

 

「永琳ごめん、こんなこと……」

 

「いいのよ輝夜。貴女がしたいことが私のしたい事だもの……」

永琳の輝夜の短い会話。

確認の後に、永琳の持つ毒薬が善の血管に注射された。

 

「あ、ねむ、く……」

ソレから3分ほどで、善は眠る様に息を引き取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザザー、ザザザー……

 

波の音が聞こえる。

目を覚ますと、そこは三途の河。

濃い霧がかかって、向こう岸は見えない。

 

「来たか……なんとか、向こう岸に渡る方法は――」

 

「船かなぁ?けど無いっぽいよ?やっぱり、無理やり死んだからかなぁ?」

 

「うお!?」

善のすぐ横、生意気そうな顔をした少女が立っていた。

頭に生えるのは2つのうさ耳。

その姿は――

 

「ズーちゃん?なんでここに?」

 

「なんでって、道案内。

死んだはいいけど、どこ行けばいいか分かんないでしょ?」

 

 

 

 

 

「逝ったわね……」

永琳が善の死亡を確認して、メモを取る。

 

「ねぇ、永琳。

死んだことないから、わかんないけど……

詩堂の魂ってどうなってるの、今」

 

「自分の師匠の魂を追ってるでしょうけど、場所が分かるとは――」

 

パァン!!

 

「なに!?銃声!?」

部屋のすぐ近く、鈴仙の部屋で銃声が聞こえる。

鈴仙が武器として銃火器を持っているのは知っているが、暴発させたのは聞いたことが無かった。

 

「師匠!!大変です!!この子が!!」

鈴仙が仲間のイナバを一匹抱いて走ってくる。

頭からは血を流していて――

 

「突然、この子が自分の頭に銃を突きつけて!!」

 

「自害したって言うの?」

鈴仙の言葉をきいて、抱きかかえられているのはズーちゃんだと気づく。

 

「なんで――道案内の積り?」

さっきの会話を思い出す。

そう、死者なら死者が何処へ向かったか分かる筈だ。

死者は同じ道を歩む。この子は善を案内するために自らを捧げたのだ。

 

「なんで、なんでみんなバカばっかりなのよ!!」

輝夜が死体となったズーちゃんを抱きしめ慟哭した。

 

 

 

 

 

「いやー、魂だけって便利だねぇ。

声帯が無くてもバリバリしゃべれるよ~」

善の服の内側、ズーちゃんがうさぎ姿で話す。

 

「河渡ってる時くらいもう少し、静かに出来ません!?

ってか、そんな口調だったのか……」

 

「そーです!!ご主人に名前を貰ったこの『錦雨(にしきあめ) 玉図(ぎょくと)』こと、ズーちゃんは生まれてこの方この口調で~す!

いや~しゃべれないって、結構苦痛なのよ~」

決死の意を決めて、善は河の上を抵抗する程度の力を使い走っていた。

水の気の流れを踏み、沈む足を一瞬だけアメンボの様に水の上に立ち、沈む前に新たに一歩を踏み出すことを繰り返し、何とか走って河を渡っていた。

 

 

 

 

 

ザァツ!!

 

石の砂利に足が付く、三途の川の向こう岸。

そこに善は降り立った。

 

行く先は荒野に続く一本道、遥か視線の先大きな山が見える。

 

「人はねぇ、49日かけてあの山を越えるのさ。

そしてや~っと出会った閻魔様に、死を告げられて地獄か天国か決まるんだよ」

玉図の言葉を聞いて、善がその道を走り始めた。

ひたすら走るまま時間が過ぎてくが――

 

ジャキン!!

 

善の目の前、鎌の様な物が地面に突き刺さる。

頭上を見上げると、死神が立っていた。

 

「お前誰だ?今日のリストに無い奴だぞ?

!!――おい!!」

死神を無視して、善が走り始める!

突如、死神の視界が90度回転する。

一瞬遅れて気が付いた、自分は攻撃されたんだと。

 

「侵入者、侵入者だ!!あの世に侵入者が来たぞ!!」

トランシーバーのような道具で、この付近一帯の死神に応援を呼ぶ!!

 

メキャン!!

 

倒した死神の持つトランシーバーを踏みつけ破壊する。

拙い状況だ。応援を呼ばれた。

 

「ズーちゃん飛ばすよ!!」

足に力を入れ、気を集中させる。

地面を蹴るのではない、地面や空気中に走る気の流れ、それに沿うように自身の足を乗せる。

 

イケる――!!

 

「気功翔天脚!!」

バッと飛び出し、気の流れに乗る。

そしてその流れをたどる様に自身の気を反発させ高速で飛ぶ。

イメージとしては流れる川の上を、一歩ごと飛翔しながら飛ぶ感じだ。

 

倒した死神はすでに遥か後方、何時か他の死神に出会うだろうが待っているよりもましなハズだ。

 

景色が高速で流れてく、全身で空を切り走り続ける。

 

「え――」

善が遥か前方、立つ人物の顔を見て足を止める。

 

「よう――久しぶりだな」

その出会いは何時か果たされるモノだったのだろう。

その出会いは必然だった。

その出会いは様々な名で呼ばれる。『運命』『宿命』『因果』『因縁』そして――『奇跡』

 

「なんで、お前が此処にいるんだよ」

 

「俺、今は死神なんだ」

一つは凛々しく、一つはあどけなさのある非常に似通った顔。

お互い言いたいことはたくさんあった。

けど――そして次に出す言葉は同じ立った。

 

「「出来れば会いたくなかった」」

 

死神――詩堂 完良。

仙人――詩堂 善と遭遇。




再会する二人の兄弟。
栄光を歩む兄と、自らの幸福を歩む弟。

出会うハズの無い別れをしたが、因果と運命の末再びここに。

次回、ついに長い因縁に決着が付く!!

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