止めてください!!師匠!!   作:ホワイト・ラム

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今回の犠牲者は鬼人 正邪です。
下克上?なにそれ?というレベルでひどいめに合います。
彼女のファンの人は閲覧注意です。


蘇る禁忌!!触れては成らぬ力!!

皆さんどうも!こんにちは。

私の名前は詩堂(しどう) (ぜん)

偉大で優秀なお師匠様の元で、仙人目指して日夜修業中です。

 

目標はまだまだ遠いけど、千里の道も一歩から!!

毎日どんどん修業して、がんばって行きます。

 

……うん、別に底なし沼にダイブした訳じゃないよな……

けど、もう戻れないんだよな……だ、大丈夫、うん、そう……たぶん、きっと……

俺は間違ってない……ハズ……

どうしよう、自信無くなってきた……

 

「あら~?私の修業が不満?」

 

「そんな事ありませんよ!!ははは!!」

 

 

 

 

 

秋も深まった今日この頃、善たちは秋の恵みを楽しんでいた。

本日のメニューは、松茸の土瓶蒸しと松茸ごはん、そしておそらく今期最後になるであろう落鮎だ。

 

「にゅふふ♪にゅふふっ♪」

橙が上機嫌で落鮎を突つく。

猫又である橙にとってやはり魚はごちそうらしい。

 

「う~ん、卵がホクホク!」

卵を食べながら橙が自身の頬に手を当てる。

どうやら当たりを引いた様だった。

 

「松茸ごはんもおいしいぞー」

善の隣では、芳香が大盛の松茸ごはんを嬉しそうに食べる。

 

「お……とと……」

反対側では、小傘が土瓶蒸しの銀杏を箸でつまもうと四苦八苦している。

 

「はぁ……秋ねー」

おちょこに出汁を注いだ師匠がほっこりたため息をつく。

 

そんな中……

 

「卵が入ってない……」

小さな声で、善がつぶやく。

不幸なことに、善の鮎に卵が入っていなかった。

当然だが、卵を持っているのはまだ産卵していないメスのみ、見た目など気にせず適当に取っているのだが……

 

「あ……銀杏が……」

善の箸から銀杏が転げ落ちて、床に落ちる。

 

「なんか、運悪い……」

 

「辛気臭いわね、そんな顔するんじゃありません!」

なんというか善は、基本的に運が悪い人物だ。

だが――

 

「最近特にツイてないんですよ……」

洗濯物に鳥の糞が落ちていたり、転んで財布の中身をばらまいてしまったり、不思議と最近の善に不幸が重なっている。

 

「なんか、前世辺りで悪い事でもしたの?」

遂にはおかしな被害妄想が始まる!!

 

「善の前世は確か……私が人間だった頃、近くに住んでた悪ガキだったわね。

ずっと一緒に居たいって言ったから、魂に細工して輪廻の度に私の近くに現れるように……」

 

「何ソレ、怖い!?」

十中八九嘘なのだが、『輪廻』という物があるなら嘘とは言い切れないのが恐ろしい所だ。

 

「冗談よ、本気にしないで?

善の前世は知らないけど、実は私の血を引いてるのは確かね……

左首筋の裏を見てみなさい?そこには十字型のアザがあるでしょ?

それは、私の一族に見られるアザなの」

師匠が自身の左首筋のアザを見せる。

善が自身に首筋をみると、()()()()()()()が!!

 

「そ、その血の宿命(さだめ)!?」

 

「おー?ソレ、昨日書いてた落書きだぞ?」

 

「あ、芳香ちゃん!しっ!」

芳香の指摘に、師匠が慌てたような声を出す。

 

「落書き?

あ、拭いたら落ちた!

ずいぶん手が込んでますね……」

 

「だって、最近善がちっとも私にかまってくれないから……」

そう言って師匠が子供の様に唇を尖らす。

 

「まったく……師匠は……修業で忙しいのもあるんですよ……

午後からまた、命蓮寺に行く用事も有るし……」

困ったように善が息をつく。

 

「ねぇ、さっきの話だけど私、あなたを弟子として育てているし、それに此処あなたん家だし、育ての親って事に成らないかしら?

ほーら、ママよ~、おいでー」

今度はふざけて両手を広げておいでおいでする。

 

「ふ、二人は親子だったのか!?」

師匠の言葉に、いまいち理解できていない芳香がびっくりする。

 

「あら、芳香ちゃんも私が作ったキョンシーだから、私は産みの親よ?」

 

「あの、師匠?それだと芳香と私は兄妹になるんですが……」

 

「ぜ、善は私のにーちゃんだったのか!?」

 

「違う!!」

再び芳香に対して、善の声が飛ぶ。

その様子を、小傘や橙が微笑ましそうに見ていた。

部屋の隅で人参をかじっていたズーちゃんが、やれやれと言いたげにため息をついた。

 

 

 

 

「はぁはぁ……はぁ、はぁ……ウッ!?」

ゴホゴホと咳をして、地面に透明な唾液が零れる。

ボロボロの布を纏い姿を隠す()()の髪の一部が布切れの下から現れる。

白髪混じりの黒い髪に赤いメッシュ、そして頭の上に2本の小さな角。

息を潜め、周囲に生物の気配がない事を確認してゆっくりと石の上に腰を下ろす。

 

「へへ、巻いてやったぜ!愚図共が!」

ここに居ない追っ手に向かってペロリと舌を出す。

彼女の名は鬼人 正邪。

幻想郷の抱える問題児の一人である。

彼女が目指すのはズバリ下克上!

強い妖怪を倒し、自らがその上に立つのが目的。

そのために、日夜様々な活動をしているのだが……

 

「くっそ、痛ぇ……

吸血鬼共の館は失敗だったな……」

脇腹を抑えると、未だに傷口から血が流れ出ている。

この傷は、前回紅魔館を襲った時の物だった。

偶然居合わせた男から、メイド長の弱点を聞き出したが、その情報はガセで返り討ちに合ってしまった、さらになぜか妖精を毒殺した罪まで擦り付けられ、今の今まで投獄されていたのだ。

 

「だが次の策はもう練ってあるぜ……」

正邪の言葉が、暗がりに消えていった。

 

 

 

 

 

「ごほっ!、ごほっ……!

埃が……あー」

命蓮寺にある蔵から善が出てくる。

 

「おう、お疲れさん!」

埃まみれの善をマミゾウがねぎらう。

 

「あー、埃臭かった……」

 

「掃除するつもりじゃったんじゃが、終ぞ後回しに成っての。

ホレ、駄賃をやるからお前んトコのキョンシーになんか買ってやれ」

煙管を吹かしながら、マミゾウが善に封筒を押し付けてくる

 

「ありがと……」

思わぬ臨時収入に、少し戸惑いつつも善が帰ろうとする。

その時、廊下の向こうから星が慌てた様子でやってくる。

 

「あ!詩堂君!私の宝塔見てませんか!?」

 

「いえ、見てません……」

 

「そうですか……」

ひどく落胆した星が再び何処かへ走って行く。

その時、そっと彼女のポケットが()()()

そして、ポケットからこぼれたカギを軒下にいた誰かが素早く拾う。

 

「ん!?」

一瞬、手の様な物が見え、自身の目をこする。

 

「おかしいな……今、手っぽいものが……」

不思議そうに善がつぶやいた。

 

 

 

「(やった!やったぞ!遂に手に入れた!!)」

正邪が星から盗み出したカギを使いとある部屋の錠前を開く。

そこは善の掃除した蔵とはまた違う場所。

あるのは目が眩む位の金銀財宝、古今東西の貴重な道具。

星の能力は『財宝が集まる程度の能力』、その為こうした財宝を保管する部屋という物が存在している。

 

「みんな売払って、資金調達だ!」

そう言って、周囲の道具を物色し始める。

目的は金目の道具。

そして、もう一つは『強い力を持つ武器』。

価値のある道具とは、貴重であるという意味だけでなく、強力という意味もある。

正邪が利用した一寸法師の持っていた、打ち出の小槌の様な道具を探すのも正邪の目的。

 

「これは……小槌か?」

正邪が一つの小槌の様な道具を拾う。

『様な』としたのは、形は小槌なのだがなぜか札を大量に張り付けてあり、厳重に封印されているからだった。

 

「これは……使えそうだ……!」

正邪が札を剥がし始める。

槌の面の片方を外した時、鬼の顔の様な装飾があるの気が付く。

 

「……おっ!?」

装飾の鬼が一瞬正邪の方を見た気がした。

驚き小槌を落とす、正邪が慌ててそれを拾おうとする時、善が姿を見せた。

 

「あなた誰ですか!?この寺の者じゃありませんね!!」

 

「くそ、見つかっ――な!?」

その瞬間、正邪の持つ小槌が引っ張られる様に善の方へと独りでに飛んだ。

 

「この小槌、なんで此処に?」

善が無意識にその小槌に手を伸ばす。

 

「く、そ」

不味いと思った正邪が善の隣を通ろうとした時――

 

「ぐぇ!?」

突如すさまじい力で、首元を引っ掴まれる!!

 

「テメェ!!放しやがれ!!」

 

「うう~ん!強がりな子は良いねー!」

突如善の口調が変わる。

こちらを小ばかにした様な、非常に軽い口調へ。

 

「は、な、せー!!」

正邪が善に向かって横薙ぎの手刀を放つ!!

しかし、その手の先に善はすでにいなかった!!

 

「ん?怪我してるじゃないか、可哀そうに」

正邪の視界の下、正確には左下後ろにしゃがむようにして、善が座っていた。

そして――

そのまま、邪がのシャツの下から善が手を入れる。

 

「バ!?バカ野郎!?何をして――痛ッ!!」

 

「刺し傷?包丁か、ナイフか……

女の子に肌になんて事を……」

善が無遠慮に、正邪の素肌に指を這わす。

 

「こ、コイツ!?」

今度は足で蹴りを放つが、その時にはもうすでに善はそこにいなかった。

 

「乱暴な子だね~」

正邪が蹴り上げた足の指先にさっきの姿勢のまま立っていた。

 

「てめぇ!ナニモンだ!!

何処の妖怪だ?見たこと無ねーぞ?」

 

「ヤダなぁ、俺は仙人。まだ修業中だけどね?」

よっ、と小さく声を上げて、正邪の足から下りる善。

治しておいたよ?の言葉に、自身の脇腹の痛みが無くなっていることに気が付く。

 

「どうなってるんだ……?」

 

「うーん?生きものの体はみんな抵抗力を持ってるんだよ。

病気に成らないのも抵抗力のおかげ、傷が治るのも抵抗力のおかげ。

それをちょーっと、俺の能力で後押ししただけ」

にやにや笑いながら、手のひらで小槌をくるくる回して遊ぶ。

その時――

 

バタバタバタ!!

 

「なんだか騒がしいね?」

 

「チぃ!騒いだんでバレちまったか!!」

善と正邪の両人が、こちらに向かって走ってくる人の足音を聞きつける。

仕方ないとばかりに、正邪が何も持たずに宝物庫から逃げ出す。

財宝の場所まで行って、何も手に入らなかったのはシャクだが捕まるよりは良い、と自分を納得させる。

 

「響子ちゃんは可愛いね~」

 

「ぜ、善さん!?」

中庭で善が響子を後ろから抱きしめて頭を撫でる。

お腹や足に手を伸ばし怪しい手つきで、何度も響子を撫でまわす。

 

「うふふふ、俺はね?響子ちゃんみたいな、小さな子が大好きなんだよ?」

 

「あぶねー!?何してんだお前!!」

正邪が慌てて、響子から善を引きはがしその場を脱出する。

そのまま命蓮寺の少し離れた廃屋を利用した隠れ家に善を連れてくる。

 

 

 

「どっかで見たことあるんだが……う~ん?」

隠れ家の中で正邪が既視感のある善を見て首をかしげる。

紅魔館で一度見ているが、今回の小槌を持って暴走する姿と雰囲気がかけ離れていることで正邪は理解出来ていなかった!!

 

「お?ナンパ?ナンパなのかな~?

最初に家に連れてくるトコをみて……かなり積極的だね!!」

 

「気のせいか……」

紅い瞳をして、へらへらしながら小槌で遊ぶ姿は正邪から、既視感を奪い去った!!

 

「……まぁいい!!お前、下克上に興味はないか?

どうだ?今の、幻想郷をぶっ壊して、弱者が踏みにじられない世界をつくらないか?」

芝居かかった口調で、正邪が善を誘う。

コイツは使える。それが正邪が善に下した判断だった。

強大な力を持つが、どうやら頭は大したことは無く、なぜか小槌の様な道具まで使える。

正邪は善を利用して、最後には罪を着せて自身の身代わりにすべく、スカウトを始めた。

 

「お、デートの誘い?良いよ!遊びに行こうか!!」

 

「お、おい!?お前!!」

善が立ち上がると、左手に正邪を抱える。

そして上を向くと――

 

「とう!!」

剣の様になった小槌を振るい、天井に穴をあけそこから大空へと飛び出した!!

 

「な、何してんだ!?」

悲鳴を上げる正邪、下を見るとせっかく用意した隠れ家が崩壊するのがみえる。

もともと廃屋だ。それが人一人出られる穴などあけられて無事なハズは無かった!!

 

「そんな……」

正邪の脳裏に、あの廃屋をアジトにするまでの苦労がフラッシュバックする!!

 

 

 

 

 

「よしっと、とうちゃ~く!

あれ?なんで泣てんの?」

 

「う、うるせぇ!目にゴミが入っただけだ!」

努力が無へと帰した正邪は、静かに涙を流す。

 

「(くっそ、コイツ絶対ぎゃふんと言わせて――)」

 

「助けてー」

 

「!?」

正邪の耳に聞き覚えのある声が響く。

この声は、自分が散々利用して捨てた――針妙丸の声だ!!

 

「あー、やっぱ良いわねー、何とかして外に連れ帰れないかしら?」

虫籠に閉じ込められた彼女を眺めるのは、外界から来たと思わしき眼鏡の少女。

彼女の趣味なのか、文字の様な物が掛かれたマントを羽織っている。

 

「たーすーけ――あ!正邪!!助けて!!」

針妙丸がこちらに目を向けた瞬間、正邪に緊張が走る!!

当然だが正邪は逃亡中の身、名前を呼ばれるのは非常に拙い状況!!

 

「(ここは、無視だ、無視!)」

露骨に目をそらす正邪、関わってはいけない。

ここから静かに逃げようと善に声を掛けようとするが――

 

「針妙丸ちゃん、ちーっす!元気ー?」

 

「話しかけんなー!!」

へらへらと針妙丸に話しかける善を見て、正邪が大声を出す!!

 

「おー、持ち運べる自宅って便利だねー」

 

「違うよ!!この人、人さらいなの!!助けて!!」

籠の中から、必死になって針妙丸が籠を抱える少女を指さす。

その少女は善を指さして固まっていた。

 

「あれ?アンタ昔、ウチの近くに住んでた――」

 

「さ!野生にお戻り!!!」

 

「あ、ちょっと!?」

手早く少女から眼鏡を奪うと、妙な掛け声とともに空に向かて眼鏡を投げすてた!!

 

「あ、あんた何するの――」

 

「ハイ、ドーン!!」

詰め寄る少女を無視して、空中にある眼鏡に向かって小槌を投げつける!

小槌は空中で眼鏡を破壊して、ブーメランのように再び善の手に戻ってくる。

 

「な、私の眼鏡!?」

 

「んじゃーねー!」

少女から虫籠をひったくると、善は再び正邪を抱えて、里の人込みの中へ消えていった。

 

 

 

「二人ともありがと……」

里の中の正邪の隠れ家で針妙丸がお礼を言う。

 

「お礼とか寒気がするね!」

天邪鬼の性か、針妙丸にお礼を言われたことで正邪に自己嫌悪に陥る。

 

「詩堂君も――あ……」

針妙丸が、善の腰の小槌を見て固まる。

それは彼の師匠に見せられた物と酷似しており、そして今まで見た小槌よりもずっとおどろおどろしい妖気を発していた。

 

「正邪!!それを取り上げ――」

 

「へん!ヤダね!誰が頼みなんか聞くかよ!」

正邪が断ると同時に、善に変化が見え始めた。

 

「針妙丸さんは可愛いですね……ちいさくて、元気で……すごくかわいいですねぇ?」

善が酷く興奮した様子で、針妙丸を撫でる。

なんというか、本能が危険を激しく訴える!!

 

「ウチで飼いたい……そうだ、飼おう。

毎日ご飯をあげて、お風呂に入れてあげて、夜は一緒に寝ましょうね!!」

 

「せ、正邪ー!助けて!!」

妖しい妖気を漏らす善!!

このままでは彼の愛玩動物にされてしまうと、悲鳴を上げる!!

 

「うふふふふ!!」

正邪の目の前で、針妙丸が善に撫でられる。

可愛い、可愛いと狂ったように連呼するその瞳には間違いなく狂気が宿っていた。

 

「正邪ぁああ!!」

もう何度目かも分からない針妙丸の声、そしてそれをかき消す善の嘲笑。

 

「おい、そいつを放せ……!」

 

「ん?」

 

「そいつを利用して良いのはアタシだけなんだよ!!」

なぜか分からない、助けを求める声など無視するのが天邪鬼なのに、正邪はその声を無視できなかった!!

 

「掛かって来いよ!!邪仙モドキ!!この天邪鬼様が相手してや――」

 

「あら、善こんなとこに居たのね?」

 

正邪が啖呵を切った時、壁に穴が開き本物の邪仙が顔を見せる。

その瞬間、善の気は霧散して穏やかな笑みすら浮かべる。

 

「あー、お師匠様!!」

嬉しそうに、邪仙の腰に手を巻き付け抱き着く。

 

「遅いから心配したのよ?命蓮寺で、宝物庫破りが在ったって聞いたし……

あなたの気の残滓を追って来たんだから。

あら、ふーん……そういう事ね」

師匠が善の腰に揺れる小槌と、正邪を見て大よその検討は付いたとばかりに頷いた。

 

「お騒がせしちゃったわね。けど、いい勉強になったでしょ?

封印されてる力は容易に開けちゃダメって。

さ、善帰るわよ?」

 

「はーい、お師匠様!!」

邪仙とその弟子は、壁に開いた穴の中に音もなく消えていった。

 

「な、何だったんだよ……」

引っ掻き回すだけ、引っ掻き回して邪仙達は消えていった。

だが、無事に切り抜けたという確かな安心感に、正邪が満足感を覚えしりもちをついた。

 

「へ、へへ、アイツら逃げやがった……」

 

「正邪ー!!正邪大丈夫!?」

虫籠から逃げ出した、針妙丸が正邪に走り寄る。

 

「おい、礼なんて言うんじゃねー!

アタシは天邪鬼だ、礼なんて何の足しにもならねーんだよ!!」

そう言った正邪の顔は、なぜか分からないが少しだけ幸せそうな顔をしていた。

 

 

 

 

 

「師匠ー、師匠好きー、愛してるー」

半分空中に浮きながら、善が師匠に絡みついてる。

 

「はぁ、また小槌の暴走ね。

まさか、賢者様が命蓮寺に隠してたなんて、びっくり。

何はともあれ、早く取り上げて――」

 

「しーしょー……すきー」

 

「……も、もう少しこのままでも、良いわよね?

そう、これは、小槌に慣れる為の修業……修業なのよ!」

師匠が言い訳がましく幸せそうな声で言った。




出来れば入れたかった、正邪と師匠の会話。
「ねぇ、天邪鬼さん。なんで人は良い子じゃないといけないと思う?」

「へん!なぜって?そんなの親の都合に決まってるだろ!?」

「うふふ、違うわ。
嘘つき……卑怯者……そういう『悪い子』こそ本当に悪い大人の格好の餌になるからよ?」

師匠は、邪悪なセリフが似合いますね。

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