止めてください!!師匠!!   作:ホワイト・ラム

91 / 103
今回は水着回。
水着回です。ポロリも有るよ。本当だよ?
まだ今年は海に行っていない作者です。


ようこそ夏!!欲望の海!!

皆さんどうも!こんにちは。

私の名前は詩堂(しどう) (ぜん)

偉大で優秀なお師匠様の元で、仙人目指して日夜修業中です。

 

目標はまだまだ遠いけど、千里の道も一歩から!!

毎日どんどん修業して、がんばって行きます。

 

……うん、別に底なし沼にダイブした訳じゃないよな……

けど、もう戻れないんだよな……だ、大丈夫、うん、そう……たぶん、きっと……

俺は間違ってない……ハズ……

どうしよう、自信無くなってきた……

 

「あら~?私の修業が不満?」

 

「そんな事ありませんよ!!ははは!!」

 

 

 

 

 

トントン……トントン……トントン……

 

「誰か来たのかな?」

墓場の一角、木に水をやっている小傘がドアを叩く音に気が付き、如雨露を地面に置く。

 

ドン、ドン!ドン、ドンドン!!

 

焦らすな!とでも言いたいように、扉を叩く力はどんどん大きく成っている。

そのドアを叩くのは小柄な幼女、紫色のチューブが胸の丸い球体に伸びている。

 

「あ、古明地……さん、だっけ?」

 

「今日お兄さんは?」

こいしがドアをなおも叩きながら、善を探す。

 

「今日は出かけてるよ。えーと、紅魔館ってところに遊びに行ってるの。

うみ?ってので遊ぶんだって」

善が教えてくれた情報を小傘が教える。

楽しそうに笑う善の姿が印象的で、自身も興味があったがどうやら「うみ」は水場らしく、傘の自分が雨以外で濡れるのはなんとなく嫌で、お断りしたのだ。

 

「今頃、ハメを外して遊んでるんだろうな~」

まだ見ぬ「うみ」を想い、小傘がつぶやく。

願わくば、いつも心労の祟っている彼が、今日だけはゆっくりと羽を伸ばせることを祈った。

 

 

 

 

 

「ヒャッホォ!鮮やかなスカイブルー!!白い砂浜!!来たぜ海!!

そして、水着の美女(師匠)美少女(芳香)!!俺の夏、始まったな!!」

紅魔館の一室、レミリアが作り上げた人口の「海」の部屋で、善が波の音に心躍らせる!!

 

「善、もう秋だぞ?寒くないのか?」

 

「水を差すんじゃない!今、俺は青春を満喫しているんだ!!

所で師匠は?」

 

「…………善はソレばっかだなー」

ここしばらく見たことのない位の笑顔を浮かべる善を見て、辟易しする芳香。

好きなものは、仕方ないのだろうがもう少し節度を持ってほしいと思う。

キョンシーである芳香ですらそう思う。

 

「芳香の水着可愛いぞ?」

 

「本当か?えへへ、そうかぁ、似合うかぁ」

中華風のワンピースタイプの水着を善が褒めてくれる。

芳香もまんざらでもない顔で、照れたように笑う。

 

「あ、師匠!!こっちこっち――……ええ……」

 

「あら、何か文句でもあるのかしら?」

師匠の姿を見た善が露骨にテンションを下げる。

その姿は、ノースリーブの青いワンピースでサンダルという出で立ち。

確かに薄着ではあるのだが……

 

「なんで、海なのに水着じゃないんですか!?」

 

「だって、肌焼きたくないし、海水って嫌いなのよ。

だから、今日は此処でゆっくりさせてもらうわ」

そう言うや否や、ビーチに置かれていたビーチチェアに腰かけ、日傘の下でトロピカルドリンク片手に本を読み始める。

 

 

 

 

 

「えー、つまんないのー」

こいしがつまらなそうに、頬を膨らませる。

そういえばこの前のバーベキューの時も居たなーと、なんとなく小傘が思う。

 

「お茶位なら、出すよ」

小傘が師匠から渡されたカギでドアを開ける。

 

「あ、お二人ともおはようございます」

扉を開けると橙が丁度玄関前を横切った。

彼女は小傘とは違い鍵など持っていないハズだが、どうやって入ったのだろうか?

考えても仕方ないと、小傘はすぐにあきらめた。

そう、橙は本当にいつの間にか家の中にいるのだ。

本人曰く化け猫だそうだが、本当なのか小傘は怪しく成って来たなーと思った。

 

 

 

 

 

「あれ?そういえば、芳香は何処に――」

楽しみにしていた師匠のまさかの水着レスに善が落ち込む。

師匠の水着はあきらめ芳香と遊ぶことにする。

 

「ぜーん!これ、たのしいぞー!」

何処かで見つけた浮輪で遊ぶ芳香!!

しかし!!その姿ははるか遠く、海の向こうまで流されている!!

完全に波にさらわれている!!

 

「うわわわわ!!流されてる!!流されてるぞ!!

待ってろ、すぐに行くから!!」

善が慌てて、海に飛び込み泳ぎ始める。

 

 

 

 

 

「そういえば、お腹空いた!」

こいしが突然、ちゃぶ台を叩いて元気に自身の空腹をアピールする。

 

「少し図々しいですよ!もっと、節度を持つべきです!!」

こいしに向かって、橙がくぐもった声で注意する。

くぐもる理由は当然――

 

「はいはい、橙ちゃんも善さんの布団の中から出て言おうね?」

 

「こうしていると、善さんの香りに包まれて……

抱きしめられてるみたいです!!体中に善さんの臭いがマーキングされ――」

 

「軽く何か作ってくるね!!」

遂には枕に顔を押し付け、ハスハスと深呼吸を始めた橙を置いて小傘が台所へ走った。

なんというか、これ以上橙の奇行も見たくないし、こいしの予測不能な会話も聞きたくなかった。

 

「善さんいつもよく無事だなー」

なんだかんだ言って平然と過ごしている善のすごさに、少し関心した。

 

 

 

 

 

「海の家まであるのか……」

砂浜の端、実際の海岸にあるような海の家に善が懐かしい気持ちになる。

 

「お腹空いたぞー」

 

「ああ、そうだな。何か食べようか?」

 

「私にはかき氷をお願いね」

善の問いかけに、本に目を落としたまま師匠が注文を付ける。

それに了解の意を示し、善が芳香を連れて歩いていく。

 

「いらっしゃい!」

元気に挨拶を返してくれるのは、小悪魔だった。

パーカーを着こんで、両手のヘラで焼きそばを焼いている。

 

「あ!小悪魔さん、図書館は良いんですか?」

 

「パチュリー様にはちゃんと言ってありますよ。

ソレより、何か食べて行ってくださいよ、お嬢様にはちゃんともてなす様に言われてるんですから」

笑みを浮かべる小悪魔、鉄板で炒められる麺にソースを垂らすと辺り一面に良い香りがブワッと広がる。

焼きそばのソースの焦げる香に、自然と善も空腹を感じる。

 

「コレ、コレ食べたいぞ!!」

それは芳香も同じようで、よだれを垂らしながら善の袖を引っ張る。

 

「まいど~」

小悪魔が手早く、皿に大盛に盛り付け奥の席に持っていく。

 

「いただきまーす」

芳香が大喜びで、焼きそばを食べ始める。

その様子を見ながら、今度はかき氷を小悪魔が作り始める。

 

 

 

 

 

「はーい、お蕎麦が出来ましたよ――って、お酒くさ!?」

お盆に持った蕎麦を落としそうになりながら、小傘が顔を歪める。

橙かこいしかは分からないがどちらかが酒を昼間にも関わらず、空けてしまっているらしい。

 

「大体ですね、善さんは胸で判断しすぎなんです!!」

ドンと音を立て、机におちょこを置く橙の顔はもう真っ赤だ。

 

「わかるー、おねーちゃんも『あの人は、人としての理性が外れてます』って言ってたー」

けらけらと笑う、こいしも手にグラスを持っている。

 

「二人とも、まだお昼なのに……」

いつの間にか始まっていた酒盛りに小傘が苦言を呈すが……

 

「だーいじょうぶ、別にお仕事とか無いしー。

仙人のおばさんは、お金とお酒を上げれば歓迎してくれるしねー」

 

「帰ると藍しゃまがうるさいんです……

きっと更年期障害ですね、にゅふふふふ!!!」

各方面から怒られそうな言葉を平然と吐く二人。

鬼の居ぬ間の洗濯ならぬ、師匠の居ぬ間の暴言だ。

今の橙とこいしは、止める者の居ない為ハメを外しているのだろう。

 

「はぁ~きちんと片付けてよ?

善さん嫌がるから」

半分黙認しながら、小傘がちゃぶ台に蕎麦を置いて箸に手を付ける。

 

「そういえば、初めて善さんと食べたのはうどんだったな」

ちゅるりと麺啜りながら小傘がつぶやく。

初めて会った雪の日の事を思い出した。

 

 

 

 

 

「すいませんね、お仕事も有るでしょうに……」

 

「あはは、気にしないでくださいよ。

なんだかんだ言って、私自身うれしいんですから」

朗らかに答える小悪魔。

この笑みを見ていると彼女が悪魔であるという事を忘れそうになる。

 

「けど、鉄板系って大変じゃないですか?」

少し前に、師匠たちとバーベキューをしたが善は鉄板の熱気に()てられ、熱中症をおこし倒れてしまったことがある。

 

「相変わらず優しいですね、けど大丈夫です。

人間より丈夫――ん?人間だっけ?ま、いいです。

詩堂さんよりは丈夫ですよ。そ・れ・に……」

誘うような笑みを浮かべ、小悪魔が善の前に体をさらす。

 

「ちゃ~んと、薄着ですから」

小悪魔は大きめの赤いパーカーを着ていた。

だが、裾が長く股下ぎりぎりの長さとなっており、パッと見下には何も来ていない様に見える。

さらに、ほっそりした白く長い足と、豊かな胸がパーカーのやぼったい生地を押し上げている。

何時も見るまじめな、司書風の服とは違った趣があった。

 

「……」

自身でも無意識に、善は唾を飲み込んでいた。

 

「アハッ!いけないんだぁ……

自分の師匠に、キョンシーに、妹様まで……

女の子をあ~んなに侍らせてるのに、私にも気が有るんですかぁ?」

 

「侍らせている訳では……」

善としては全くそのつもりは無いのだが、小悪魔の指摘に居心地が悪くなる。

 

「アハハッ!良いんですよ?(悪魔)の前では、理性なんて捨てて――あ”」

何かに気が付いた小悪魔が、小さく声を漏らした。

その瞬間!!

 

「ん?――いぎゃ!?」

善の後頭部に激しい痛みが走る!!

 

「ぜーん!!ぜーん!!何をしてるんだ!!」

ガリゴリと芳香が善の頭をかじり続ける!!

 

「痛い!痛い!!痛い!!!スッゴイ痛い!!」

逃げる善をなおも芳香が必要に追い続ける!!

そのまま二人は、走って逃げていってしまった。

 

「あ~あ……善さん本人は簡単に堕とせそうなのに……」

小悪魔はチラリと、視線を師匠の方へと向ける。

ビーチチェアに寝転ぶ師匠、さっきと同じ様に見えるがその手にはしっかりと札を握っている。

そして此処から出も分かるほどのプレッシャーを感じる。

 

「周りのガードが固すぎるんだもんな~」

小悪魔はその場で、降参とでも言いたげに両腕を上げて見せた。

 

 

 

 

 

「見つけちゃった……」

こいしが善のベットの下から、一冊の本を取り出す。

表紙には水着の女の人が大胆なポーズを取っている。

 

「ちょっと、勝手に漁っちゃダメだって!!」

小傘が必死になって、止めるがこいしは内容を見ながら「おおー」だの「すごーい」だのを繰り返すばかりだ。

 

「にゃぁああああ!!ぜ、善さん、こんなものまで!?」

いつの間にか、別の本棚を漁っていた橙が本を取りこぼす。

小傘の目の前で、ページがめくれ……

 

「ねこ?」

無数の猫たちの写真が現れた。

 

「な、なんて本なんでしょう!!こんなあられもない姿をさらして!!

こっちなんて、紐しか着ていません!!」

橙が指さす写真には、猫が毛糸玉で遊び体に毛糸が絡まっている写真だった。

タダの猫の写真だが、同じ猫である橙にとっては意味合いが違うらしい。

 

「善さんは、触手とかが好きなんでしょうか?」

橙が不安そうに毛糸に身をからめとられた猫の写真を見る。

 

「そんな事ないと思うけどな……」

小傘がおずおずと訂正する。

 

 

 

 

 

「うわぁあああ!!?!?なんだ、なんだコレ!?」

海で泳いでいた善が、紫色したヌメヌメした触手にからめとられる!!

海中から、巨大なイカの様な生物が善の全身に触手を絡ませる!!

 

「海って、あんなの居たかしら?」

本から、目を上げて師匠が不思議そうにイカの様な生き物を見る。

 

「あッ!?ちょっと!!海パンに触手を伸ばさないで!?

ああ、脱げる!!脱げちゃう!!」

イカに逆さ吊りにされ、重力に従い海パンが脱げそうに成っていく。

 

「助けてください、師匠!!」

 

「やぁよ、めんどくさいもの……

ん、冷たい!きーんと来たわ」

師匠はかき氷を一口含むと、自身の目頭を押さえた。

 

「あーあ、パチュリーのイカ、また暴れてる。

キュッとして……ドカーン!」

 

バァン!!

 

突如イカが弾ける様にして、破裂した!!

その衝撃で、善が海に投げ出され、水切りの石の様に3度水を切って砂場に漂着した。

 

「いてて……何が……むぅ!?」

頭を押さえる、善が顔を何者かに抱きすくめられる。

 

「だーれだ?」

 

「……フランお嬢さま」

心辺りある声に、善が顔を上げる。

 

「はい、せーかい!」

予想通り、フランが同じく水着で立っていた。

 

 

 

 

 

「詩堂ー、遊びに来てあげたわよー?」

 

ガチャ

 

「すいません、今詩堂さんいないんです……」

ドアの隙間から小傘が申し訳なさそうに顔をだす。

食事の終わり、呼び鈴が鳴った気がして小傘が玄関に向かった。

そこには、びっくりする位の美女がいた。

 

「えー、詩堂いないの?せっかく妹紅の店が早く終わったから、私が直接足を運んだのに……

時代が時代なら、男は泣いて喜んだわよ」

ぷんすかと怒る美女の影に隠れるようにして、一人の少女が申し訳なさそうに頭を下げていた。

 

「ええと……」

 

「ああ、私に会うのは初めて?

この子は見たことある?」

輝夜がおどおどする小傘に気が付いて、足元の少女を抱き上げて見せた。

 

「は、はい……ズーちゃんですよね?」

 

「(コクコク)」

少女が肯定する様に頭を振った。

善にも聞かされたことがある。

曰く永遠亭への道案内。曰く自分が付けた愛称がいつの間にか本名に成っていた。曰く人間に化けれるが、うさぎ時代の癖で上手く声帯を使えず、身振り手振りで会話する等だ。

 

「私は、蓬莱山 輝夜。よろしくね」

そう言って輝夜はにこやかに笑った。

 

 

 

 

「レジルー、スイカ割りしよ!

咲夜に頼んで二つ持ってきたよ」

太陽が少し特殊なのか、炎天下の部屋の中でフランが楽しそうに胸に抱いたスイカを見せる。

 

「おー、スイカー」

早速気が付いた芳香が、目をキラキラさせる。

 

「良いですね。海って感じがしてきましたよ――」

スイカを見た善が、後ろに振り返って走り出した。

目指したのは、パラソルの下の師匠だ。

 

「師匠!師匠もスイカ割りしましょうよ!!」

 

「……胸に抱いたスイカを見て、思い出したでしょ?」

サングラスを取る師匠の目は善を責め立てる様な形だ。

 

「ギクゥ!?……ち、違いますよ!師匠も一緒に思い出作り、しましょうよ!

本当は、日焼け止めとか塗りたかった……」

 

「最後、本音が出たわね」

ため息をついて師匠が立ち上がった。

そのまま善の肩に、両手を置く師匠。

 

「あの、師匠?」

 

「はーい、今日の折檻始めるわよ?えい!」

師匠が地面に向かって全力で善を押し込む!!

齢1400年を超える仙人の力で、善は思いっきり砂浜へ押し込まれる!!

通常の人間なら、大けがだが善もタダの人間ではない!!

つぶれる事無く無事に砂浜に、押し込まれていく!!

そして、手早く善の周囲の砂を固める!!

 

「動け……ない!?」

哀れ、善は砂浜から首だけ出ている状態にされてしまった。

 

「動いちゃダメよ?」

嫌にいい笑顔を浮かべた師匠が、善の頭にスイカを乗せる。

 

「芳香ちゃーん、こっちよー」

優しい声色で、師匠が芳香を呼ぶ。

 

「ん……おー?こっちか?」

フランに目かくしをされた芳香が、棒を手にこっちにフラフラ歩いてくる。

 

「うおぉぉぉ!?ストップ!!芳香ストップ!!回れ右だ!!」

善が必死になって、回避しようとするが……

 

「いけ、いけー!!」

 

「みぎみぎー!!」

 

「行き過ぎ行き過ぎ!!」

 

「キャハハハハ!!壊れちゃえ!!」

4人に分裂したフランが煽り立てる!!

味方はゼロだ!!紅魔館の海!!

 

「はぁい、芳香ちゃんストップ。そこで振り下ろして?」

 

「まて、待つんだ芳香!俺の頭脳をこの世から消しては成らない!!!

待つんだ芳香ぁ!!」

 

「行って良いわよー」

 

「「「「行って行って!!」」」」

師匠フランの声が飛ぶ。

 

「行って良いって言ってるぞー」

芳香が目かくしをしたまま、金属の棒を振り上げる!!

 

「まて、待つんだ!!あぁあああああ!!!」

 

「フルスロットル!!」

芳香の棒が善の頭のスイカを叩き割った!!

*善は仙人の特殊な訓練を積んでいます。読者諸君は絶対に真似しないでください。

 

 

 

 

 

「あら、あの木って桃の木?」

輝夜が墓の端に植えられた、真新しい一本の木を指さす。

 

「そうです。この前、山に居る豊穣の神様からもらったんです。

丁度1年と少し――善さんが、幻想郷に来た時と同じくらいに芽が出たんですって」

 

「へぇ、こっちに来た詩堂と同い年……

『桃栗三年柿八年』なんて言うけど、私にとっては一瞬の様なもの……

けど、あなた達との出会いはきっと詩堂にとっては衝撃的よね」

目の前に並ぶ、3人の妖怪を見て輝夜がつぶやく。

 

「(それにしても、見た目が少し幼くないかしら……まさか、詩堂……)」

少し心配になる輝夜。

木の枝を一本つかんで見せた。

 

「いないのは仕方ないわね。

けど、少しくらい何か――」

輝夜が力を籠めると、その枝だけが超高速で成長を始める!!

アッという間に桃が3個ほどなる。

 

「まだまだ、本来は実をつけるのは先……

けど、いつか、詩堂とは普通に実った桃を食べたいわね」

桃をもぎながら、小傘に渡す。

 

「今、切ってくるので待っていてくださいね」

笑みを浮かべた小傘が、走ってゆく。

その背中はとても幸せそうに見えて、輝夜は小さく笑みを浮かべた。

 

「いつか、大きくなったこの木の下で……」

輝夜は目を閉じて、桃の香りを楽しみながら、たくさんの友と一緒に木の下で笑い合う善の姿を夢想した。

 

 

 

 

 

ピシ……パキ……

怪しげな音が、善の埋まった地面からする。

 

「なんの音かしら?」

 

「あ!多分これは――」

 

 

 

紅魔館地下

 

「妹様……今頃あの仙人モドキと……」

地下の掃除をしながら、咲夜が歯ぎしりをする。

海で遊ぶ約束をした以上、お嬢様の決定には逆らえない。

咲夜は気に入らない仙人モドキにせめて関わらない様に、地下の掃除を一人で引き受けたが……

 

「ああもう!!今頃、水着の妹様とイチャコラしてると思うと、むっかつく!!

あー、私も海でお嬢様たちとアレやコレした!!

砂浜と海カモン!!」

うらやましさと、嫉妬と、誰も居ない解放感から瀟洒な咲夜のテンションが少し狂う。

その時!!

 

ピシ……パキ……

 

「え?」

頭に、少量の砂が降ってきた。

上を見上げると、天井にヒビが!!

そして、砂と僅かに水が流れている!!

次の瞬間!!

 

ドガ!バキ!!

 

「えぇええええ!!!??」

 

「おぉおおおおお!??!?」

天井を突き破り大量の砂と海水が!!

実はここは丁度善たちの居た、海の下!!

師匠の衝撃と芳香の衝撃、そして善の体が削岩機の役割を果たし、床を打ち抜いたのだ!!

すさまじい衝撃と砂と水の奔流が咲夜を襲った!!

 

「か、カモンとは……言ったけど……」

無数の砂と泥水、そして仙人モドキの水着がかなり危ない所まで、脱げかけているのを見て咲夜の意識はゆっくりと暗く――ポロリ――した。

意識を失う瞬間咲夜は思った。

 

「最後に見る景色、汚すぎる!!」




ポロリありましたね。
こうしてみると、かなり善の知り合いは増えました。
長期連載ですからね。しかしまだまだ出ていないキャラも多いという事実。
全キャラとの絡みを書きたいですが、難しいですかね。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。