止めてください!!師匠!!   作:ホワイト・ラム

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さて、今回は鬼人 正邪がメインの被害者です。
彼女のファンの人、彼女と一緒に下克上したい人は注意してください。


侵入者!!下克上の天邪鬼!!

私はリンジーノ・R・バイト。

紅魔館で執事長をさせて頂いております。

皆さまどうか、気安く『レジル』とお呼びください。

白いシャツに黒いジャケット、そして仕立ての良いズボン。

青と赤のネクタイを締めれば、それが私の戦闘服(仕事着)

太陽がのぼる前に私の仕事が始まります。

 

チリーン……!!

 

早速お嬢様のお呼びですね。

さぁて、今回は何をお望みですか?

 

「私も働くぞー!!」

 

「いいけど、無理するなよ?」

 

 

 

 

 

紅魔館の朝は、控えめに言って「戦場」だ。

特に朝早くから、仕事をする者はその傾向が顕著だ。

だがその忙しい時間にあえて、善は使用人たちを集め演説を始める。

 

「さて、皆さん。噂で聞いてるかもしれませんが、今日から私が咲夜さんの代わりに復帰することに成りました。

短い間ですか、レミリアお嬢様から一時的に『執事長』の肩書を頂いております。

私の指示に協力をお願いします」

善の言葉に多くの妖精メイドたちが頷く。

今ここに集まっている使用人の8割以上は善が以前、この屋敷で働いていた事とその実力を知っている。

 

「今この屋敷は、危機的状況です。多くの解決すべき問題があります。

今日は皆さんにとって激務と言える一日になるでしょう。

しかし!!使用人とは、本来そういう物!!

他者に奉仕することを仕事とする私たちにとって、この状況は不名誉極まりません!!紅魔館の使用人は十六夜 咲夜以外は皆、無能な給料泥棒なのか!?

違う!!断じて違う!!皆さんの力で、使用人の栄誉を取り戻しましょう!!」

善の厳しい言葉にプライドが刺激され、妖精メイドやゴブリンたちの目に光が宿る!!

初めて善を見た者もその言葉に心を震わせた。

冷やした冷水を思わせるような、心地よい厳しさを胸にする。

 

「それから、もう一人。咲夜さんの代わりのメイド長代理が入ってくるから、そっちもよろしく」

善の言葉に、全員が首をかしげる。

 

「おー、私がえーと……」

 

「(メイド長)」ボソッ

 

「そうだ!私がメイド長の代理だぞ!!

よろしくー!」

話す内容を忘れ、善に耳打ちされながら芳香が自慢げにメイド服を翻す。

 

「ぜーん、私しっかりできたか?」

 

「もちろんだ。さすが芳香だぞ?何をやっても上手だし、メイド服も似合ってるぞ?」

さっきまで厳し顔をしていた善が急にデレデレして、芳香をほめたたえ始める。

 

「うわぁ……」「ええ……」「執事長、あの子好きだから……」「基本はかっこいいんだけど……」「たまに無性に無能になるのよね……」「大丈夫なのこの人?」「ゆ、有能ではあるのよ?」

突然心配になった妖精メイドたちが噂を始める。

何はともあれ、善を主体にした紅魔館再生計画が始まった。

 

 

 

 

 

「ん?なんだ?騒がしいな……」

紅魔館から少し離れた木の上、一人の妖怪が望遠鏡をのぞく。

白と黒の髪に赤いメッシュが入り、体中に矢印をイメージさせた服を着た妖怪。

天邪鬼 鬼人 正邪だ。

彼女は、幻想郷全体にマークされている危険な妖怪で、現在も「下克上」を目指し様々な所で活動を続けている。

そんな彼女の次のターゲットは紅魔館だった。

 

「最近活気が落ちてきたと思ったが……なんだ?

今のうちに打って出るべきか?あそこを乗っ取れたら、食料と住むところには困らない……さて、どうする?」

試案する様に腕を組んで静かに考え始めた。

 

 

 

 

 

「へぇ、こんな立派な食事が出るなんて……驚きね」

食堂にて、師匠が目の前の朝食に笑みをこぼす。

焼きたてのクロワッサンに、サラダ、ポーチドエッグ、茹でたソーセージにコーンスープ。見た目の味も館の主人や客人に出せるクオリティの物だった。

 

「さす――」

 

「さすがレジルね!!」

レミリアの言葉にフランが自身の言葉をかぶせる。

 

「うふふ、そうね。昨日は見ただけで死にそうな見た目してましたものね。

どう?吸血鬼さん、私の弟子の血はおいしかったかしら」

ポーチドエッグにナイフを突き刺し、黄身を絞り出しながら師匠が笑みを二人にぶつける。

 

「……」

 

「ん……」

師匠の嫌味たっぷりな言葉にレミリア、フラン両名が顔を伏せる。

 

「全く、何をやってるのかしら……

自身の配下の面倒すらまともに――」

 

ダァン!!

 

師匠の言葉に耐えかねたのか、レミリアがフォークを机にたたきつける!!

そして、殺意のこもった目を師匠に向ける。

 

「なに?私の事、無礼な客人として追い出す?それもいいかもしれないわね。

その時は善を連れて帰るだけですけど?」

善を連れ帰るという切り札を、師匠はちらつかせて見せる。

その言葉に、館の主は黙るしかなくなる。そう、久しぶりに飢えたがあんな思いはしばらくはごめんだ。

 

「カットフルーツをお持ちしました!!」

その時、善が皿に盛られたフルーツを持ってくる。

 

「あ!レジルー!りんごある?フランりんご食べたい!!」

さっきの話など知らないとばかりに、フランが明るい声をだす。

 

「はいはい、たくさんありますよ。けど、本命はぶどうですね。

妖怪の山にいる秋の神様からの直送品ですよ?」

フランの小皿に、ぶどうをりんごを多めに置いてくれる。

 

「師匠大人しくしてますか?立場を利用して、レミリア様たちに嫌がらせしてませんよね?」

 

「まぁ!そんな事私がする訳ないじゃない」

心外だ!と言わんばかりに師匠が頬を膨らませる。

 

「そうですか、じゃ、まだ仕事が有るので失礼します」

そう言って手早く部屋から出る。

言葉の通りまだまだやることが有るのだろう。

 

「ふふふ、どうやらお前もあの弟子には甘いようだな?

確かに、この館に引き抜かれたら困るものな?」

師匠の猫を被った姿をみて、レミリアが面白そうに羽を揺らす。

 

「あら、そうかしら?あの子は私に夢中なのよ?

お子様の吸血鬼なんか、見向きもしないんだから」

自身たっぷりに話す師匠を、フランがじっと見ていた。

 

「お子様……」

笑う度に揺れる師匠の胸、その次にフランは自身の胸に手を当ててみる。

 

「……あう……」

なんというか、貧しい。いろいろと足りない。戦力差は圧倒的。

例えるなら、あちらが柔らかい餅、こちらは……クッキーだろうか?

 

「……おねぇ様!!牛乳!!そこに有る牛乳とって!!全部飲むから!!」

 

「ちょ、フラン?一体どうしたの!?」

 

「負けてられないから!!」

ひったくる様にレミリアから牛乳を受け取り、かなり大きな瓶の中身を一気飲みした!!

 

「あらあら」

師匠はそれをほほえましく眺めていた。

 

 

 

 

 

「1・2班のゴブリンの人は、図書館側の壁の修復をお願いします。

3班は妖精メイドC・D班の人と共に館内の瓦礫の撤去をお願いします。

基本は妖精さんで大きくて持てない物の、補助をゴブリンさんに、男の意地見せてもらいますよ?」

 

「「「「おー!」」」」

数人のゴブリンが妖精メイドを引き連れ、部屋を後にする。

 

「妖精メイドA班は中庭の草むしりの役を、B班は私と一緒に夕食の仕込みです」

てきぱきと善が仕事を分け、指示を出す。

妖精メイド数人と、調理室へ入り野菜を切りはじめる。

 

「芳香、保管庫に野菜――ええと、人参、玉ねぎ、ジャガイモが有るらしいから取って来てくれ。野菜スープを多めに作って昼に出す、夜はそれを使用人用のカレーにするから、そのつもりで」

 

「わかったー」

芳香がパタパタと走っていく。

大鍋に野菜を仕込んでいくが――

 

「レジル執事長!もうすぐ、メイド志望の方がやってくるのでその面接をお願いします」

一人の妖精メイドが、ボードと紙を持ってくる。

どうやら、レミリアが面接することもあるが、現在は師匠の接待(監視含む)も有るのでそっちに掛かれないらしい。

 

「分かりました。芳香が戻ってきたら一緒に料理をさせてください。

アイツ、力はあるから大鍋とか移動させるのは出来るハズですから」

紙とボードを受け取り、善が面接室の準備をする。

ひとしきり終わったあと、とあることに気が付く。

 

「そういえば、正面玄関は美鈴さんのせいで半分、緑と一体化していたな……

まずは、そこをやるべきだったか!!」

善が慌てて、外に飛び出す。

 

 

 

「ここが、例の屋敷……」

一人の町娘が、紅魔館の募集を見て息を飲む。

 

「紅いっていうより、緑だな」

蔦が這った壁を見て、わずかに笑みを浮かべるが――

 

「ん?誰だあれ?」

一人の少年が、門の奥から出てくる。

そして、壁の蔦に手を付き、血の様に紅いナニカが一瞬、体から放出される。

 

「んな!?」

その後、館に絡まってた蔦がすさまじい勢いで枯れていく!!

まるで命を()()()()()()()様に、美しい緑は枯れその後、塵と化して消えてしまった。

 

「な、なんだ……」

異様な光景に、町娘がその少年を見る。

僅かに、その少年と目が有った気がして――

 

「うわぁあああ!!」

気が付いた時には逃げていた。

思い出すのは、里に密かに流れる紅い力を使う邪帝の噂。

里内でもタブーとされる力を見た少女は必死になってその場を逃げだした!!

 

「あれ?メイド志望の人ってあの人じゃないのか……ま、いいや」

必死になって逃げていく人を皆がら、善がつぶやいた。

踵を返して、館に帰ろうとした時――

 

「おい、アンタ。仕事の募集を見て来てやったぜ」

正邪の声が善の耳に届いた。

 

 

 

「では早速お願いしますね、着替えてえーと、地下の食糧チームへ行ってください」

 

「はい、わかりました。執事長!!」

キラキラした正邪の目を見て、善がその場を後にした。

 

「……にっひっひ、ここまで上手くいくとはな……」

正邪が善の去っていったドアを見て、舌を出す。

館に近づいてきた町娘から、屋敷の奉仕の仕事だと見抜き、帰っていく様子を見て彼女に成り代わった。

目論見は上手くいき、善は自分を普通の人間だと思い、人出不足を理由に即時採用した。

そして、さらに運のいい事に早速一人になる事が出来た。

 

「さーてと、食糧庫で腹を膨らませたら、あとは計画を詳しく練るか……」

館に入ってしまえばこっちの物、メイドとしての立場も手に入れているから、ゆっくる周囲の状況を知る事が出来る。

 

「お、氷室だ」

地下の部屋、その一室をみて正邪が興味本位であける。

涼しい風に頬を緩ませるが、奥に人型の何かが有った。

 

「人間か?食糧庫にこんなものが有るなんて――」

流石吸血鬼の館、と言おうとした時!!

その死体が動き出した!!

 

「おっと、寝てしまったぞー」

 

「うえぇ!?!??」

急に動き出した死体に正邪が大声を上げる!!

 

「んー?お前は誰だー?」

 

「あ、お前、いつかの墓に居たキョンシーじゃないか!?

なんでここに?」

芳香に見覚えがあった正邪が、指摘する。

そうだ、メイド服で分からなかったがこのキョンシーは確かに見覚えがある。

 

「んー?誰だ?私は今、メイド長代理だぞ?」

 

「メイド長代理?」

芳香の言葉に、正邪が反応する。

この館のメイド長は十六夜 咲夜だ。

それが、なぜかこのキョンシーが代理と言う。

 

「そうだぞ?メイド長が病気だからなー」

そう言って、頼まれていたジャガイモと玉ねぎを持って氷室を出ていく。

 

「なるほど、メイド長の不調がこの屋敷の惨状の原因か……」

すべてに納得がいった正邪。

なるほど、確かに今は限りないチャンスの様だ。

 

「にひ、やっと私にも運のツキが来たようだな。

まってくださーい、メイド長代理ー」

正邪はチャンスを生かすべく、芳香についていくことにした。

 

 

 

「えーと、切ってー、切ってー」

芳香が善に貰ったレシピを見ながら、野菜を切っていく。

 

「はい、次はコレ」

正邪が芳香を補助する様に料理を手伝う。

放っておくと、芳香は自身の爪で野菜を切り始めるので注意が必要だ。

 

「はい、肉!!ああもう、なんで私がこんなことを!!」

正邪がぶつくさ文句を言う。

そうだ、ここで芳香が失敗して、目立てば自分の計画がおじゃんだ。

正邪は必死になって、芳香のサポートをしていく。

 

「うーん、コレとこれ?」

 

「違う!こっちだ!!」

芳香が間違う度に、正邪が訂正を入れていく。

 

だが、正邪は重要な事に気が付いていなかった。

芳香は戦うためのキョンシー、その爪には毒が付着している!!

そして――!!

 

「味見-」

 

「あ、コラ!直接木べらを舐めるな!!」

芳香の唾液にも毒がたっぷりと!!

 

 

 

 

 

時間は過ぎ、夕食の時間。

正邪の芳香によって、使用人分のカレーが完成した。

 

「お、ちゃんと出来てるみたいだな」

主人と客人分の夕食を出し終わった善が、顔を出す。

 

「ぜーん、私がんばったぞー」

 

「おおー、そうかー、よくやったな。

正邪さんもありがとう」

 

「ふん!」

正邪は褒められた瞬間、反射的に悪態をついた。

 

「二人とも、食べて来てくださいよ」

そう言って、善は別の鍋にお湯を張り始めた。

 

「ん?まだ、何かするのか?」

 

「ええ、咲夜さん風邪らしいから、お粥を作ろうと思って……」

棚から、梅干しを取り出しネギを刻もうとして、やめる。

 

「あ、そうだ。薬味のネギは外しておかないと……

咲夜さんネギは見たくもないだろうから」

そう言って、善がネギを下ろす。

善の言葉を聞いた正邪に天啓が走る!!

 

これは使える!!

 

「執事長、私が行きます。挨拶も兼ねて」

 

「え、けど……」

 

「粥くらい私だって作れるから、ほら、さっさと行った!」

追い払うような正邪の言葉に、善が少し困惑しながらも了承する。

 

「分かりました。じゃ正邪さんよろしくお願いします」

 

「ぜーん!カレー、早く食べたいぞ!!」

 

「分かった、わかった」

善がカレーの鍋を持って、部屋を出ていく。

その背中を正邪がにやにやと笑いながら見ていた。

 

 

 

「そうだよ、メイド長が弱ってるなら、むしろ人質にしてやればいいんだよ!!

へっへっへ!これで、この館は貰ったも同然!!」

メイド服を脱ぎすて、お湯の張った鍋を蹴倒しながら笑う。

正邪がある物を手にしながら、邪悪な笑みを浮かべた。

 

 

 

カラぁん!

 

「!?」

一人の妖精メイドが、喉を抑えながらその場で倒れる!!

カレーを一口食べた、次の瞬間に悲劇だった!!

 

「大丈夫ですか!?何が――」

善が驚くが、まだ悲劇は終わらない!!

次々と、妖精メイドたちが倒れ始める!!

 

「ああ!!」「うぐぅ!?」「お、お腹が痛い!!」「なんで……?」「うげぇあ……」「ひ、ひぐう!?」「あああああ!!」「なんで、と、トイレ――」

 

あっけない音を出しながら、メイドたちが次々と!!

さっきまでメイドだったものがあたり一面に転がる!!

 

「い、一体なにが起きたんだ!?」

善があり得ない状況に戦慄した。

 

 

 

 

 

「ふぅ、熱も下がった様ね。体も特に不調は無し……」

咲夜が自身のベットで背伸びをする。

腋から抜いた体温計は平熱を現す温度を示している。

 

「この調子なら、明日から業務を再開出来るわね。

何時までもあの、キョンシーや仙人モドキに好きにさせないんだか――」

その時、咲夜の部屋のドアが蹴破られる様に開かれる!!

 

ガチャン――!!

 

「ウォラァ!!クソ館のクソメイド長!!

覚悟しなァ!!!テメェを人質に取って、お前の主様からこの館を乗っ取ってやるぜ!!」

正邪が中指を突き立て、下品に舌を出しながらズカズカと部屋に入ってくる。

だが、その姿は異様の一言。

 

「お前の弱点は分かり切ってんだよ!!コレだろ!!」

そう言って、自身の手に持つ緑のネギを見せる。

頭のハチマキにネギ!!両手にネギ!!足にまでネギ!!そして首にもネギ!!

まさにフルアーマーネギ!!緑のぷぅんとした匂いが部屋を包む!!

 

「はっははは!まさか、あのメイド長様の怖がるものがコレとはなー!!」

勝ち誇った様に、正邪が大声で笑い散らす!!

 

「…………」

咲夜が小さく微笑み、自身の力を使う――

 

カチッ――!

 

「はっは――は!?」

一瞬にして、正邪の目の前に大量のナイフが現れる!!

 

グサグサグサグサァ!!

 

「いえぇああああ!!??」

血だらけで正邪が倒れる。

その前には着替えて何時ものメイド服に戻った咲夜が瀟洒な様子で立っていた。

 

「実は、少し鬱憤が溜まってて……準備運動も兼ねて少し付き有ってもらおうかしら?」

スッとナイフの腹を正邪の頬に当ててぺちぺちと叩く。

 

「だ、誰がお前の――ギャァ!?」

グッサァ!!

 

正邪の脇腹にナイフが刺さる!!

妖怪で死なないとはいえ、非常に痛い!!

 

「さ、頑張って逃げて?」

 

「い……」

あくまで笑顔で微笑む咲夜に対して、正邪の首筋にナイフより冷たい感覚が走った。

 

 

 

 

 

「最近暗い事件ばっかりですね……」

紅魔館での短期の仕事が終わり、思わぬ臨時収入を手にした善が居間で、文々。新聞を読む。

その中でも一つ興味のそそられる見出しが有った。

 

「あ、この前の事件だ」

善が見るのはこの前起きたばかりの事件。

紅魔館にお尋ね者妖怪の鬼人 正邪が押し入り使用人たちの食糧に毒を入れ、さらに咲夜を人質にしようとした事件だ。

結局咲夜の尽力によって、正邪は倒され人里に突き出されたようだ。

なぜか全身にネギを装備した、血だらけの正邪が拘束される写真が見出しとして載っている。

 

「やっぱり、賊の仕業だったのか……」

 

「怖いわね。私の料理と別だったのが幸いしたわね」

善のつぶやきを聞いて、師匠がため息をつく。

 

「こ、こわいなー」

そして、芳香が目をそらしながら賛同して見せた。

 

 

 

「あー!っていうか、結局水着は!?水着!!」

 

「まだ言ってるの?」

本人にとっては重要な事を思い出した善が、大きな声で騒ぎ出す。

それに対して師匠はうんざりしたような顔をする。

 

「いや、だって……それが目的、的な?」

 

「そう、そんなに着たいのなら、好きなだけ着せてあげるわ!!」

師匠が一枚の札を出して、善の頭に張り付けた。

 

 

 

パシャ、パシャ!

 

「うーん、とっても可愛いわよ?」

師匠がカメラを持って、河の近くで遊ぶ子を写真で取る。

 

パシャ、パシャ!

 

「師匠、もう、止めましょ!?すっぱり諦めますから!!」

 

「いいえー、まだまだ撮るわよ?」

レンズの覗く先、そこには仕縁の姿にされた善が、水着を着ていた!!

仕縁の体は師匠の作ったキョンシー、当然師匠は簡単に使役できる!!

 

「さぁ、もっと脱いでましようねー?」

 

「!? 嫌だ!!いやだぁ!!うわぁああああ!!

止めて!!止めてください!!師匠!!」

 

「あら、ちょっと過激ね」

善の制止を無視して、無常のシャッター音が響いた。




個人的にもっと正邪は書きたいキャラですね。
なんというか、師匠が巨悪の根源から、正邪はアンチヒーロー感があります。

ボッコボコにされる、アンチヒーローって良くないですか?

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