なかなか筆が進みません……
面白いってなんだろう?
俺……じゃなかった、私は詩堂 善(しどう ぜん)
住職を嫌々……ではない、心から住職目指して頑張ってます!うん……そう、たぶん。
……あれ?なんか今おかしくなかったか?いや、あってる気がしてきた……どっちだ?
ま、いいや。
大きな鍋に少しずつ味噌をこし、お玉に少しとって小皿に入れ味を見る。
「ふーむ……少し薄いかな……響子先輩お願いできますか?」
「先輩にまっかせなさい!!」
そう言ってない胸を張る響子。
味噌汁を作っているのは詩堂 善!!
現在師匠に言われて命蓮寺で煩悩を消す修行中!!
師匠は命蓮寺の聖に前もって話を付けていてくれたため特別(キツめの)待遇!!
現在は食事当番に割り振られ先輩の幽谷 響子と共に食事の準備中!!
響子が善から小皿を受け取り味噌汁の味を見る。
「うーん……薄いどころか少し濃いくらいかな?」
そう言って小皿を返す。
(これでもまだ濃い方なのか……)
そう思って今の味を覚える善。
何時も師匠の所で師匠と芳香の朝食を作っているため、多少料理にも慣れているがやはり場所が変わるとそうも言ってられないらしい。
先ず住人の好みの味付けの濃さが違うし、人数も大きく違う。
何よりここは寺で有るため殺生に関する物が使えない所謂、精進料理を作らなくてはいけないのだ。
使える素材に条件が有る事は、予想以上に善に苦戦を強いていた。
(うーん……焼き魚は無理か……材料好きに使っていいって言われたけど何をメインにするべきだ?味噌汁、白米、豆腐……圧倒的に主役が足りない……)
何度考えてもどうすべきか思い浮かばない。
「響子先輩、毎朝みんな何食べてます?」
遂に命蓮寺の先輩である響子に直接聞く事にした。
「え?毎日?昨日はおそばだった、うどんやお漬物が多いかな?あとこんにゃく?」
あごに指を付けながらそう話す。
「そうですか……麺類か……それも有りか……」
響子の言葉から何を作るか思いついた善はさっそく調理を再開した。
目当ての材料を探し適当に棚を開けていく。
ガチャ!
(あ……これ……)
調理の途中でお酒を見つけた、しかもなかなかの良いお酒。
(ここ寺だよな?なまぐさものってダメなんじゃないか?い、イヤ、調理酒か檀家の人が間違って渡してきた的な……うん、そうだよな!!聖さんがそんな戒律に甘い訳ないよな!!)
無理やり自分を納得させる、自分の憧れ(主に乳に)の人がお酒で酔っ払っている姿はあまり見たくない。
因みに善の師匠はしょっちゅうお酒を飲んでいる!!
それだけなら良いのだが……
「ぜ~ん。一緒にのみなさぁい!!師匠めいれいよぉ~!!ほら、ほらぁ~」
「ちょ!?師匠、どんだけ飲んでるんですか!?うわ!!ちょ、酒臭い!!」
「清楚な私に向かって酒臭いですってぇ?何言ってるのかしらぁ?ほら!!フローラルな香りよぉ~嗅ぎなさい!!」
酔った勢いで酒を飲ませたり、抱き着いて来たり自分の匂いを嗅がせようとする!!
酔っていても相手は美人!!思わず反応しちゃう!!ビクンビクン!!
善!!(理性的な意味で)絶体絶命の大ピンチ!!
(けど……普段清楚な聖さんがが酔った勢いでってのも良いな!!)
思わずにやりとする善。
コイツ一向に懲りない!!
*ここには煩悩を消しに来ています!!
「あれ?どうしました?」
戸棚を開けたまま動かない善を不審に思った響子が、話しかけてきた!!
ビクッと体を反応させる!!妄想中に話しかけられると思わずびっくりしちゃう!!
「い、いや。なんでもありませんよ?チョーットねずみがいたから驚いただけです」
その場を何とか誤魔化した。
暫くして目的の食材が見つかり調理は間もなく完了した。
「さて、響子先輩。一緒に運ぶの手伝ってもらえますか?」
二人で食事を食堂まで運ぶ。
食堂に命蓮寺のメンバーが一堂に会する。
先ずは住職の聖、毘沙門天代理の寅丸 星、その監視のナズーリン、船長の村紗 水蜜、雲居 一輪と見越し入道の雲山。
実の事を言うと善は聖以外と顔を合わせるのは初めてなのだ。
昨日の夕刻に師匠に連れてこられ、聖に会され「明日の朝の掃除と食事の用意をお願いします」とだけ言われ、その後響子にだけ色々教わるようにと会されたのだ。
「善さん。皆さんに自己紹介をお願いします」
聖に促され、善が立ち上がりみんなの前に出る。
響子を含めた7人の目が善を見据える。
「えっと……たった今聖さんから紹介が有りました、詩堂 善です。実は昨日の夕方位から師匠……私に仙人の修行を付けてくれてる人です。に連れてこられてここに来ました。精神修行が目的です、少しの間になると思いますが皆さんよろしくお願いします!!」
そう言って頭を下げる善。
緊張のせいか、だいぶ支離滅裂な自己紹介になってしまった。
「みなさん、善さんと
聖がなにかの合図の様ににっこりと笑う!!
(おお、笑顔を向けられた……ヤバイすごいうれしい)
「はーい。質問、質問!!」
セーラー服を着た錨を持った少女が手を上げる。
質問など意図していなかったのでテンパる!!
「えっと……村紗さんでしたっけ?どうぞ」
「ああ、私の事は水蜜でいいよ。そんな事より善は何の妖怪なの?」
興味深々と言ったように聞いてくる。
「え……妖怪じゃないです……仙人修行中です……」
「なーんだ、つまんないの」
善の答えにつまらなそうに村紗が答える。
(いま俺って素で妖怪に間違われたの!?)
地味にショックな善!!しょっちゅうヤバイ薬などを実験で投薬されているのでそろそろ胸を張って「人間です」と言えなくなってきたのが悲しい!!
「へぇ。人間が仙人にねぇ?どうしてなろうとしたのさ?人間捨てるって事だからね?ソレ」
次に雲山を連れた頭巾の様な物をかぶった女、雲居一輪が質問をする。
「……ッ!!それは……幻想郷じゃ弱いと生きていけないから……」
「別に人里で畑耕して暮らせばいいじゃない?なんで仙人?しかも師匠はあの邪仙なんてある意味人里よりずっと危険な気がするんだけど?」
一輪の容赦ない追及が来る。
しかし善が反応したのは追及に対してではなかった。
「『邪仙なんて』?もしかして俺の師匠の事を今『なんて』って言いました?」
一気に善の纏う雰囲気がガラリと変わる!!
気弱なナヨっとした頼りない冴えない男から、得体のしれない『ナニカ』を内包した存在に。
ゆらぁと自然な動作で右手を動かす、その瞬間雲山がいち早く反応し善と一輪の前に割り込む!!
それとほぼ同時に命蓮寺全員の悪寒が走った!!
まるでこの世のすべてを否定し押しつぶすような……善悪の概念に左右されない絶対的な存在が自分たちを消そうとしたような。
逃げられない「死」を一瞬にして
「えっと?皆さんどうしました?急に怖い顔して……何かマズちゃいました?」
善はそのまま右手で自分の頬をかく。
すっかり先ほどまでの雰囲気は消えていた。
本人自身もなぜ皆が表情を変えているのかわからない様だった。
「だ、大丈夫ですよ?ちょっと雲山が一輪に対して過保護なんです」
誤魔化すように聖がフォローをいれる。
「そうなんですか。まぁ、仙人に憧れて修行を付けてもらっていると思ってください」
善は一輪に対してそう答える。
「さ、さあ、みなさん今日の朝食は善さんと響子さんが作ってくれましたよ?冷める前に戴きましょうか?」
聖が話題をそらすようにみんなの意識を朝食に変える。
「あ、はい。台所に立派な椎茸、たぶん出汁を取るためなんでしょうが今回は味噌を軽く塗って焼きました。ご賞味ください」
そう言って善は自分と響子の作った朝食を配膳する。
なかなかの高評価がもらえ、その後御堂の中で聖たちとお経を読んだり、写経をしたりした。
「いたた……正座って地味に辛いな……」
お経、写経、さらには座禅という正座3連コンボを食らい、しびれる足を気にしながら廊下を歩いていた。
「あ、善さん」
後ろから声がかけられそちらに向く善。
「聖さん。こんにちは」
「はい、こんにちは。私と星はこれから街に行って説法をしてきます、暫く寺を開けますがよろしくお願いします」
「はい、解りました」
そう言って聖を門の所まで見送る。
「うーん……なんか一気に手持ち無沙汰だな……庭の掃除でもするか」
朝門の前は掃除したが庭はまた落ち葉が来ているだろうと思い、箒片手に庭に向かう。
「おお……コレはなかなか骨が要るな……」
命蓮寺の庭はすっかり落ち葉で紅く染まってしまっている。
気合いを入れて掃除を再び始める。
「ふむ。善殿掃除か?」
後ろから野太い声を聴き振り返る。
「ああ、雲山さんですか。ええ聖さんが出かけてしまって手持ち無沙汰になってしまって……サボってる訳じゃないですよ?」
「分かっておるわ。今朝は一輪が悪い事をしたな」
その場で頭を下げる雲山。
厳つい顔をしている雲山が頭を下げるというのは何とも居心地が悪い。
「き、気にしないください。確かに少しむっとしましたけど師匠が邪仙なのは事実ですし……まぁ結構酷い目に会されていますから。あはは……」
そう言いながら自身の頬をかく。
「それでもじゃ。身内の失礼はちゃんと謝罪せねばならぬからな……」
尚も深々と頭を下げる雲山。
「もういいですよ。俺気にしてませんし、それより今日の朝食はどうでした?」
「む?椎茸のみそ焼きか?あれはワシは好きじゃったな……」
そのまま二人で仲良く掃除しながら話した。
顔は厳ついが話してみると、話の内容自体に非常に含蓄のある言葉で善としては非常に楽しく話す事が出来た。
「ふぅ~掃除もひと段落ですね、後は集めた落ち葉を燃やして……」
「ムッ!!またアヤツか……」
突如雲山が何かに気が付き、飽き飽きしたように言う。
「どうしたんですか?雲山さん?」
「ほれ、アレ見てみ、たまに来るんじゃよ……」
そう言って空の一角を指さす。
そこには……空飛ぶ木製の船、小さく人が乗っているのが見える。
「あ……布都様だ……」
「知り合いか?」
「ええ、お恥ずかしながら……一応私の……身内に入るんでしょうか?師匠の身内なんですけど……」
不味いと思いながらも正直に布都との関係を話した。
「そうか……まぁこの寺は防火処理がしてあるから大丈夫じゃ」
雲山はそう言ってくれるが……
「雲山さん、俺をあの船に投げてくれませんか?何とか説得してみます」
「危険じゃぞ?やるのか?」
「あの高さなら、たぶん大丈夫ですよ」
「ならば……ふぅん!!」
雲山は善を自身の掌に乗せ、布都の船に向かって投げた!!
「ふんふふ~ん、さて今日も太子様の為、寺を焼くか」
そう言って右手に火を出し命蓮寺に近づく。
「どうも~、布都様!!こんにちはぁああああ!!」
その時善が飛んできた!!
「おおっ!ぜ、善ではないか!?なぜこんな所に!?いたぁ!!」
ゴチンと空中で額をぶつける!!
「いたたたた……何故ここにお主がおるのだ……」
「いま、この寺で修行中なんです……いたた」
お互いに額を押さえながら状況を話し合う。
「ふむ、師匠に言われてな……何故よりにもよってここなのじゃ?我に言えば道教と物部の秘術をその体にじっくり仕込んでやるものを……今からでも遅くない!!我と修行せぬか?」
船の上で胸を張る布都。
(なんで胸のない人に限って胸を張るんだ?新手の威嚇なのか?)
「いえ、それは良いですから。下におろしてくれません?」
「ああ、解った今下ろして……」
「布都ぉおお!!お前私の団子を食べただろ!!」
空中で船がぐらっと揺れる!!
突如茶色い服を着た女が現れ布都に詰め寄ったのだ!!
「と、屠自古!?我は、我は知らなかったのだぁ!!許してくれぇい!!」
「問答無用!!今日こそやってやんよ!!」
バチバチィ!!と屠自古と呼ばれた女性が火花を散らす!!
「お、い、今は善殿が居るのだぞ?」
「容赦はない!!」
バチバチバチィ!!
「「ぎゃああぁっぁああっぁあ!!」」
布都さらには善すら巻き込んで電流が走る!!
もちろん船にずっと乗ってい居る事は出来ず二人して落下する!!
「おお……太子様の加護じゃな……下が柔らかい……」
「うごぉ……ふ、布都様……どいて……ソレ俺です……」
善の上に布都が落ちた!!小柄とはいえ威力はなかなかの物!!
腹部が凄まじく痛い!!
実は運よく善はさっき集めた落ち葉の上に落ちていたのだ!!
本当ならば死んでいたかもしれない……
「善!!しっかりしろ!!仇は我が必ず打ってやろう!!」
そう言って善の上から立ち上がる。
「……そんな事より……医者……マジでコレやばいかも……」
助けを求めるが布都は知らんぷり!!
「うぉぉおおお!!屠自古ぉおぉお!!ゆ"る"さ"ん"」
両手に炎を屠自古を迎撃する!!
「いや……だから医者……ん?何の音だ?」
パチパチと音がする!!
布都は先ほどから炎を使っているため、火の粉が善の近くに落ちる!!
善の下には枯れた落ち葉!!日時は秋で空気が乾いている!!
さらに落ち葉を燃やそうと密集していたため……
早い話非常に良く燃える!!
「ぎゃぁあああああ!!!熱い!!アッツ!!あっつう!!!熱い!!熱いった!!」
服の間に燃えた落ち葉が入り込む!!
「ほわっつちゃー!!」
何処のかの映画俳優みたいな声を上げ飛び起きる!!
「うわぁああ!!!善!!大丈夫かあ!!」
布都が気が付き大声を上げる!!
「池じゃ!!池に運ぶんじゃ!!」
パニック!!パニック!!まさにパニック!!
*その後雲山が駆けつけ善を池に投げ入れ事なきを得た!!
うほほ!!布都ちゃんが上だと!?
それについて一回やってみたいシュチュエーションが有る!!
「布都ちゃんはかわいいな~。膝の上に座りナヨ!!」
布都「うむ、苦しゅうないぞ。……我の尻に何か固い物が当たるのだが?」ニヤニヤ
「ああ、それは……
パァン!!
「トオサン、カアサン……遂にやったよ……僕も今そちらに行きます……」
パァン!!
あれ?なんかおかしいぞ?どこだろう?
途中までは合ってたのに……
ま、いっか。