止めてください!!師匠!!   作:ホワイト・ラム

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今回は早苗さんがひどい目に遭います。

早苗さんファンの人。
のんびりした守矢神社一派が見たい人の願いは容赦なく踏みにじられますので、それが嫌な人はブラウザバックしてくださいね。


乱闘!!神対巫女!!

皆さんどうも!こんにちは。

私の名前は詩堂(しどう) (ぜん)

偉大で優秀なお師匠様の元で、仙人目指して日夜修業中です。

 

目標はまだまだ遠いけど、千里の道も一歩から!!

毎日どんどん修業して、がんばって行きます。

 

……うん、別に底なし沼にダイブした訳じゃないよな……

けど、もう戻れないんだよな……だ、大丈夫、うん、そう……たぶん、きっと……

俺は間違ってない……ハズ……

どうしよう、自信無くなってきた……

 

「あら~?私の修業が不満?」

 

「そんな事ありませんよ!!ははは!!」

 

さ、さぁ!気を取り直して今日も修業です!!

 

 

 

 

突然だが、幻想郷に神社は一つではない。

外の世界を隔てる結界、その間に立つ博麗神社。

そして、妖怪の山にも神社がもう一つ――

 

「暇だなー」

妖怪の山の中の神社の縁側で、守矢神社の神の一柱、洩矢諏訪子が暇そうに足をぶらぶらさせていた。

幼い容姿に、カエルをイメージさせる緑の目のついた帽子。

あどけなさと、老獪な怪しさを含んだ不思議な表情。

 

「信仰自体がわずかだが減っているようだね。

そろそろ秋というのもあるが……」

後ろの別の女性、こちらは凛々しさをたたえた顔立ちで、背中に注連縄を背負っている。

 

「神奈子様ー、諏訪子様ー」

暑い中を、誰かが2柱に向かって走ってくる。

胸まである緑の髪と、腋の露出した服装。

 

守矢神社の風祝いにして、現人神。

東風谷 早苗だった。

 

「お帰り早苗」

 

「おかえりー」

2柱が出迎える。

 

「最近神社の信仰が減ってる理由が分かりました!!」

 

「なに!?」

 

「なんなんだい?」

早苗の言葉に2柱が反応して見せる。

信仰の減少は死活問題である2柱が食いつく。

 

「秋巫女の仕業です!!!」

早苗が、そう言い放った。

 

 

 

 

 

「秋巫女様の土作りが始まりますよ~」

河童の作った拡声器で、少女が声を上げる。

 

うおおおお!!と男の団体がとある場所を目指して走っていく。

 

「…………ん……」

地面に紅葉の生えた小枝が四方に刺さり、区切られた地面。

10歳にも満たないであろう少女が、身の丈に合わない様々な装飾がなされた、大きな鍬を構える。

秋巫女と呼ばれた様に、赤く色付いた紅葉を思わせる色の袴に、なぜか腋が切り取られ肩をだしている巫女服の上。

土で汚れるからなのか、足元は何も履かずに裸足だ。

 

「あ、あき、秋の訪れをつ、告げる紅葉を見せる静葉様。

秋の豊かな実りり、の恵みを授けてくだ、さる穣子様。

そして、信仰していただく皆様の為に、こ、この鍬を振るいます!!」

うっすらと青味が付いた灰色の長い髪を揺らすと、頭と鍬の鈴が小さく鳴った。

男たちは、目の前の幼女と言っても過言ではない巫女を見る。

 

言葉の端にも、ためらいや吃逆があふれ、とても緊張している様が見て取れる。

だが、そう不馴れな姿は言い換えると初々しさであり、幼い子が初々しさを感じさせながらそれでも、役割を全うしようとしている姿は庇護欲求をすさまじく掻き立てるモノであった。

ぶっちゃけると、幼女カワユスお持ち帰りしたい!!!となる。

 

リン……リン……!

 

秋巫女が鈴の音と共に鍬を振るい、畑を耕していく。

秋が近いといってもまだまだ夏日、直射日光に当たりながらの作業は幼い秋巫女の体力を奪っていく。

一生懸命働き、畑を耕し汗が飛び散り畑をわずかに潤す。

現代の時間で大よそ30分。

わずかな部分であるが、秋巫女の『開墾という名の舞』が終わった。

 

「以上で、秋巫女様の舞の午前の部は終了します。

次は正後からとなります」

ナレーションと共に、小さな袋を持った男たちが畑の隣に作られた場所に集まってくる。

 

「皆様、ありがとうございますね」

秋巫女が笑い、男たちからお布施を貰い、さっき耕した畑の土を袋に入れて握手する。

 

「秋巫女様、ありがとうございます!これで来年の豊穣は間違いなしです!!」

 

「ああ~、やわらかい手だぁ……畑仕事で鍬を持っていた様には思えない……」

 

「あ、秋巫女様!!ら、例年もきっと来てくれますよね!?」

男たちの荒い鼻息を受けながら、秋巫女が困ったように笑う。

やがて、お布施を貰いすべての土を配り終えた秋巫女が、みんなにお辞儀する。

 

「皆様、たくさんの信仰ありがとうございます。

穣子様のお力がこもった御神土が無くなったので、もらえなかった方は午後の部までお待ちください」

露骨に聞こえる落胆の声、秋巫女はお布施の溜まった台を掲げて、2柱の待つ神社へと入っていった。

 

 

 

「秋巫女お疲れ!」

 

「お疲れ様……」

穣子、静葉が秋巫女に話しかける。

 

「…………」

秋巫女は黙ったまま。お布施の束を神棚に置くと――

 

「ああああああ!!!もう!!!帰りたい!!

帰りたい帰りたい帰りたい!!」

床に転がってバタバタと手足をめちゃくちゃに動かし始めた!!

 

「あら、何が不満なの?あんなにかわいかったのに?」

青い髪をした邪仙が笑う。

その後ろに控えるキョンシーが近寄って来て、秋巫女の顔に付いた土を払ってくれる。

 

「お疲れ様だぞ()

 

「あ、芳香?その名前は今出しちゃダメよ?

今のこの子は、神様に使える巫女様なんだから」

おかしくてたまらない様に師匠が笑い出す!!

 

「なんで……なんでこんなことが起きてるんだぁああああ!!」

秋巫女と化した善の慟哭が社の中だけ反響して消えた。

 

 

 

 

 

事の始まりは15日前に戻る。

 

「ッ……」

 

「まだ痛むのか?」

墓の中を歩く善が、わずかに痛みを感じて足を引っ込める。

その様子を芳香が気が付いて気使ってくれる。

 

「ああ……相当無茶したみたいだからな……」

休憩とばかりに、近くの墓石に腰かけて、未だに杖が離せない善が自嘲気味に笑う。

 

「そうか……可哀そうだけど、私がその分善を守ってやるからな!!」

任せろ!と言わんばかりに芳香が善に話す。

師匠に弟子入りした当時みたいだな。と二人で笑い合った。

その時、墓の入り口から二人の見たことのある人物が走ってきた。

 

「あ!詩堂く~ん!!」

 

「詩堂君……杖、どうしたの?」

両人揃って、紅や黄色の鮮やかな服を着た2柱組の神。

妖怪の山にいる秋姉妹だ。

 

「穣子様、静葉様。すこし無茶しただけですよ。

何か御用ですか?」

二人はいつも山の社付近にいて、外に出ることは珍しい。

片方だけ、という事は有るかもしれないが少なくとも善は2柱が同時に社を開けるのを見たことは無かった。

 

「そうだったそうだった!聞いてよ詩堂君!!

実は最近、秋も近いって事もあるんだけど信仰が増えてきてるの!!」

 

「へぇ、良かったじゃないですか」

わざわざ自慢しに来たのかと、疑問に思いながらも善が笑顔で応える。

 

「そうなのよ!けど、いつもより信仰が多くてね?」

 

「……ちょっと気に成って調べたの……」

穣子、静葉が代わるがわる言葉を紡ぐ。

 

「そしたら!前、詩堂君がうちの神社の畑、耕したのを見てた人がいてさ~」

 

「……一緒に田植えしてた猫が人気の原因みたいなの……」

その言葉に善が幾らか前、穣子に頼まれ?脅され橙と一緒に畑を耕したのを思い出す。

 

「へー、そうなんですね」

 

「あー!もう!詩堂君は鈍いなー。

女の子に対してもそうなの?拉致監禁されても知らないよ?

後ろから刺されても知らないよ?」

 

「美人の人ならアリです!!」

とっさの言葉がまさかのコレ!!

一瞬神2柱がたじろいだ!!

 

「とにかく!可愛いは正義なの!!

可愛いキャラが居ればうちの信仰UPは間違いなし!!

このチャンスを逃す手はないわ!!」

 

「……詩堂君……お願いできるかな……?」

懇願する二柱には申し訳ないと思いながら善は首を横に振った。

 

「また橙さんと?けど、体がまともに動かないんですよ……

杖がなきゃ、まともに歩けいないし……

山を登るなんて、まして畑を耕すなんて――」

 

「できるわよ?」

善の後ろ、家の方から師匠の声が聞こえてきた。

嫌な予感を抑え、後ろを振り向くと案の定――

 

「私に良い考えが有るの。

善、あなたにとっても良い話よ?」

まるで悪戯を思いついた子供の様な顔で、師匠が笑っていた。

 

 

 

そこからは話はトントン拍子に進んでいった。

 

以前紅魔館の事件後に用意した、『詩堂娘々』の体に再び善を入れる師匠。

善繋がりで交流が有った、命蓮寺のマミゾウとのコネクションによって、見た目はただの小屋だった2柱の社の改築と、商売仲間を呼んでの社の近くに屋台の配置。

一部人里の商人も参加しているらしい。

秋姉妹をクッションにして、椛、にとりをはじめ一部の天狗と河童を取り込み、さらに売り上げの一部を収めることを条件に大天狗に妖怪の山の中での商売の許可。

あらゆる下準備を終え、守矢神社の様に人里の人間を来やすくした。

 

「はぁ……私ってすごい人を師匠にしてるんですね……」

師匠はこの交渉を大よそ一人で行ってしまった。

最後にマミゾウを混ぜての天狗との交渉の終わった帰りに、善が一人つぶやいた。

 

「あら、今更気が付いたの?

安心しなさい、私はあなたに仙術だけを教える積りはないわよ。

私の持つ、話術、占術、邪術、秘術、禁術、錬金術、体術、武術ets……

そして、考え方や思考まで、全部を教え込んであげるわね」

 

「……が、頑張ります……」

余りに離れすぎた師匠の力に善が何とか答えた。

 

「かかか!善坊も大変じゃの、邪仙の弟子は」

 

「あら、おばあ様。私は請われたから教えているだけですわよ?」

マミゾウの言葉に、師匠がしれッと答えた。

 

「おお、そうじゃった。例の物完成したぞい?」

そういって、マミゾウが一着の秋色の巫女服を見せる。

それは、おぞましい事に()()()()()()()()()()()()()だった。

 

「えっと、まさか……?」

最悪の想像の善が、冷や汗をかき始める。

 

「新しい神社には、()()()()()が必要よね?」

 

「そうじゃ、出来れば可愛いおなごが良い。

()()()()()()からの」

わざとらしく、実にわざとらしく師匠とマミゾウの会話が繰り返される。

 

「……いやだ……私は……」

半場己の運命を悟った善が震えだす。

目の前の絶望に、いつもの様に抗おうとする。

 

しかし、悲しいかな。

 

今の姿では本来の力が使えない。

 

無力かな。

 

今目の前にいるのは、物の怪たちの大将と呼べる大妖怪。

 

無情かな。

 

今、嬉しそうに服を宛がってくるのは、1400年の時を生きる邪仙。

 

勝てる見込みは――0%!0%!!0%!!!

*お見苦しいシーンが流れるので、しばらく音声のみでお楽しみください。

 

「さぁ、善。可愛くなりましょうね?」

 

「ほほうぅ、コレはコレで良いモノじゃのォ」

 

「着ません!!そんなの絶対着ませんからね!!」

 

「我まま言うんじゃありません!半分はあなたの為なのよ?」

 

「私の心は半分どころか全壊ですよ!!」

 

「善坊、男はあきらめが肝心じゃぞ?おっと、今はおなごか?」

 

「この体でも男ですよ!!しっかりついてます!!」

 

「私の趣味よ!いいでしょ?」

 

「うむ、通向けじゃの!!」

 

「恥ずかしがらないの!どっちの体でも、私の見た事の無い部分なんて無いんだから」

 

「ほう?おぬしらそういう関係じゃったんか?」

 

「まさか!まだまだソコまで行くにはこの子は未熟ですわ。

実力を付けてからなら――どうかしら?」

 

「……ブクブク……」

 

「しまった、気絶しておる」

 

「精神が耐えられなかったのね」

 

「「まぁ、この方が都合が良い(んじゃがの)わね!」」

 

 

 

 

 

そして再び今へ――

 

サクサク……サク……サク……

 

「むぐ……むぐ……レベルの高い味ですね……

流石は……むぐ……むぐ……作物の……むぐ……むぐ……神……」

神社の出店の中、敵勢調査の名目の元で早苗がフライドポテトを味わう。

外はサクッと、中はホクホクだ。

 

「あ!スイートポテト!!神奈子様と諏訪子様にも――って危ない危ない!」

夢中になりかけて、早苗はとっさに自分の頬を叩いて正気に戻った。

そう、今は敵勢調査だ。遊んでいるヒマなどない――!!

 

「焼き鳥ー!藤原の焼き鳥だよー!!

オラ!輝夜ぁ!!声もっと張れェ!!!給料差っ引くぞ!!」

 

「うぐぐ……妹紅ぉ……覚えておきなさいよ……!!」

 

「ああ!?誰が妹紅だ?ん、ん?バイトの輝夜君よ~?」

 

「うぐ、う……す、すいませんでした、妹紅()()……」

コントの様なやり取りをしている焼き鳥屋を見る。

くぅ~と早苗のお腹が鳴った。

 

 

 

「ああ……すっかり敵の術中なのですね……おいし」

焼き鳥を食べながら、早苗がつぶやく。

備え付けの椅子に座りながら、辺りを見回す。

 

「男の人が多いですね……」

此処は、豊穣を司る神も祭っている。

そうなれば、『豊穣を願う者』が集まってくるのが普通という物。

だが、これは明らかに人数が多い。

 

屋台まで出てまるで縁日だ。

そして――

 

「スイートポテトに、フライドポテト……場所によってはもっとハイカラな物も……」

明らかに、幻想郷の物では無いであろうモノまでも縁日の屋台として出ている。

それは遠回しに、外界の知識を持つ者がこの神社の中心にいることを意味する。

 

「新しく里に来た、外来人……ではありませんね」

そう、そんな人物が仮にいたとして、秋姉妹に加担するメリットは無いし、秋姉妹も怪しい外来人を雇用したりはしないハズだ。

 

「そして……妖怪でもない」

当たり前だが、妖怪のハズも無いのだ。店の中に妖力を感じさせる店員はいた。

だがその妖怪たちにとって神に与する必要は全く無いし、たとえ商売のメリットはあってもそれならほかに良い稼ぎ方がいくらでもある筈だ。

 

「居るハズです……この楽しさに隠れた中に……

外界の知識を持ち、尚且つ妖怪を利用し、神の力すらも足掛かりにして。

『何か』をたくらむ存在が、この中に――!」

自身の恐ろしい想像に震える早苗。

 

『新しい異変か』とさえ疑ってしまう。

 

 

 

そしてその早苗の思う、黒幕は――

一人静かに泣いていた!!

 

「はぁ……心が消耗していく……

ダメでしょ……弟子って普通こんなんじゃないでしょ……?」

休憩時間、社の隅で善が体育館座りで密かに涙を流す。

弟子ってなんだっけ?という今更な事を考え続る!!

 

「まぁまぁ、おかげですごい人気だよ?

10日分くらいで、投入した分は回収できたって、タヌキの親分さんも喜んでたよ?」

 

「……全部……詩堂君のおかげだよ?」

仕方なしとばかりに、秋姉妹が善を励ます。

開始以来ここまで人気が出たことがなかった2柱はホクホク顔だ。

 

「本当ですか?」

感謝されている事実に、善が顔を上げる。

しかし――!!!

 

「その分たくさんみんなに見られたって事だなー」

 

「うわぁあああああ!!!!!死にたい!死にたい!死にたいぃ!!!」

芳香の一言で止めを刺された善!!

大ダメージを受けて、叫びだす!!

 

「うわぁあああああん!!せめて巫女服かえません?

腋がなぜか露出してるし、おかしいでしょ?」

 

「え?幻想郷では巫女はみんな腋出してるよ?」

 

「んなわけないでしょ!!嘘つくならもっとまともな嘘を――」

 

「いや、そっちのが人気あるんだって!

この前、おじさんが『秋巫女様の腋から、胸が見えそうなんだよ!!』って興奮してたよ?

別に男の娘だし、上半身裸はOKだよね?」

何かをたくらむ様な、穣子の言葉に善がとっさに胸を押さえた!!

 

「脱ぎませんからね!!あと、男の子のイントネーションおかしくないですか?」

 

「何言ってるの?善はどこに出しても恥ずかしくない男の娘よ?」

またしても微妙に違うイントネーションで師匠が話す。

 

「さ、午後の部始めるよ!!!」

 

「あー……もうですか……」

時計を見た穣子が善を促す。

しっかり予定は詰まっているのだ、やらない訳にはいかない。

土のついていない服に着替え、きれいにした鍬を持って再び社の外へと出ていった。

 

「うひひ!うちの神社始まって以来の繁盛だね~。

もっと、詩堂君をこき使ってうちの神社を盛り上げるぞー!!

ゆくゆくは、パッと出の守矢すら潰して――うひひひひひ!!」

 

「……欲が絡むと、醜くなるのは人も神も同じなのね」

やれやれと言いたげに師匠が見ていた。

 

 

 

 

 

『秋巫女様の舞、午後の部が始まります』

拡声器の声を聴いて、早苗が秋巫女が舞う畑に近づく。

ファンがいるのか、男が目の前でスタンバイして待って居るが早苗が近づいたタイミングで『奇跡的』にトイレに行きたくなったのか、その場所が丁度開く。

 

「力……使っちゃいましたね」

早苗がつぶやく。早苗にも力がある。

それは『奇跡を操る程度の力』現人神である早苗は世界その物に影響を与え、自分の運を良く出来るのだ。

 

「さて、一番怪しいのはあの巫女です」

早苗の目が鋭くなる。

見たことも無い人間、しかし明らかに人外の力を持つのは分かっている。

 

「みんなが見ている今こそが、チャンス!!

その正体を暴きます……!」

早苗が、秋巫女を睨む。

すこしづつ力を解放する――!

人間でも、妖怪でも、関係ない。

自分は神なのだ!!妖怪の山は神奈子様、諏訪子様――そして自分がやっと見つけた安住の地!!

それを訳の分からない輩に蹂躙されてたまるものか!!

 

「さぁ――奇跡の力よ。あの存在の正体を皆の前に!!」

早苗の奇跡の力が発動する!!!

 

 

 

「あ……この、感覚は――」

 

ドサッ――!

 

皆の目の前、秋巫女が急に倒れ動かなくなる。

 

ざわざわ――ざわ――ざわざわ――

 

急に倒れた巫女に、周囲のみんなが慌てる。

それもそうだろう。人はとっさの事に反応できない者が多い。

そして『奇跡的』に近寄って様子を見ようとする者もいない――!

 

「大丈夫ですか!」

早苗がその様子を見て、巫女に近づく。

コレこそが合法的に秋巫女に近づく唯一のチャンス!!

 

「意識はありますか?」

助け起こす様に、うつ伏せで倒れる秋巫女に手を伸ばす――が!!

 

ボコッ!

 

「え?」

突如、土の中から手が現れて早苗の手首をつかむ!!!

 

やったぞ……復活だ……永かった……本当に永い間だった……

 

地の底から、響くような重々しい声が響く。

そして、腕の生えている地面から、赤い液体が漏れ出す。

 

「い、いや……」

 

「だが、復活だ……たった今から!!完全に復活だ!!

わぁあははっはははああっははああははっは!!!」

狂ったような嘲笑と共に、土地に満ちていた気を吸収した善が蘇る!!

コレこそ、師匠の作戦!!

神気が宿る場所の力を、仙人として吸収し復活する事!!

神が作る清浄な気は、仙人にはピッタリの力だった!!

 

「いやぁああああああ!!!」

 

「う、うわぁあああ!!!」

目の前に突如現れた存在!!

邪帝皇の噂を知っていて、姿を見たことのある住人は一斉に逃げ出した!!

知らない者達も、周囲の逃げまどう人々を見て、同じように逃げ出した!!

 

「いやぁ……た、助けてください!!」

妖怪退治に楽しさを見出す早苗すらも、その存在を見て慌てて逃げ出す!!

それほどの、それほどまでにその存在は恐怖に満ちていた!!!

 

 

 

 

 

「んー!復活ぅ……体が自由に動くってたのしー!」

体をほぐしながら善が嬉しそうに、師匠たちと下山する。

 

「ぜーん!!良かったなー」

 

「おう!今日は腕によりをかけてうまいモノ作ってやるぞ?

あ、それと最近さぼりガチだった、柔軟体操もな?」

 

「分かったぞー!!」

 

「あらあら……二人は仲良し――いいえ、ラブラブね?」

 

「そ、そんなんじゃないぞー!!」

 

「「「あっははははは!!」」」

夕焼けに3人の笑い声が響いた。

 

 

 

 

 

「ねぇさん……何も残らないね……」

 

「そうだね……穣子ちゃん……」

邪帝皇が復活した場所として、二人の神社はすっかり寂れてしまった。

それどころか、例年より人が来ない――来たとしても慌てて帰ってしまう。

という事に成った。

結局は元通りという事だった。

 

 

 

 

 

「早苗ー、出てきなよー」

 

「まだ、出てこないのか?」

諏訪子、神奈子が部屋にこもりっきりの早苗を不安そうに見る。

 

「そうなんだよ、話しかけても『最初から私を利用する気で……』とか『私が復活の手伝いをしてしまった』とか言って、出てこないんだよ」

 

「何が有ったんだろうね?」

2柱が滅多に落ち込まない早苗が落ち込む様を見て心配する。

 




さて、これで基本主人公たちがメイン2人を残して全員集合しました。

十六夜咲夜→嫌われてる。
鈴仙・優曇華院・イナバ→怖がられている。
魂魄妖夢→仲は良い、友人。
東風谷早苗→危険視される。

主人公系には、ほぼ嫌われていますね。
その分ロリキャラには好かれていますが……

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