止めてください!!師匠!!   作:ホワイト・ラム

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今回は、少々グロテスクなシーンがあります。
被害者が輝夜さん&妹紅さん。

二人のファンの人は気を付けましょう。


誘い!!不死者の悲鳴!!

皆さんどうも!こんにちは。

私の名前は詩堂(しどう) (ぜん)

偉大で優秀なお師匠様の元で、仙人目指して日夜修業中です。

 

目標はまだまだ遠いけど、千里の道も一歩から!!

毎日どんどん修業して、がんばって行きます。

 

……うん、別に底なし沼にダイブした訳じゃないよな……

けど、もう戻れないんだよな……だ、大丈夫、うん、そう……たぶん、きっと……

俺は間違ってない……ハズ……

どうしよう、自信無くなってきた……

 

「あら~?私の修業が不満?」

 

「そんな事ありませんよ!!ははは!!」

 

さ、さぁ!気を取り直して今日も修業です!!

 

 

 

 

 

「ふぅ……熱いなぁ……」

最早見慣れた何時もの墓場。最近増えてきた雑草をあらかた抜き終わり井戸の水でのどを潤す。

 

トタトタ……

 

善が視界の端にこちらに向かって走ってくる小柄な少女をとらえた。

永遠亭にいる輝夜の使いの妖怪ウサギだ。

 

「やぁ、ズーちゃん。遊びに来たのかい?」

最近人化してばかりでまだうまく言葉を話せない彼女はフルフルと首を横に振ってジェスチャーで自身の意思を告げる。

カサカサとスカートのポケットから一枚の手紙を出す。

 

「えーと、なになに?」

要約すると輝夜がまたゲームの相手をしてほしいという物だった。

 

「どうしよっかな?」

 

「いいじゃない。行ってきなさいよ。

かつて時の権力者が欲っした姫からの直属のご指名なのよ?」

 

「うわぁ!?」

突如耳元にかかる師匠の声で善が驚く。

さっきまでいなかったのに、唐突に師匠が現れた。

 

「お師匠様の顔をみて、その態度は何ですか!!まったく、失礼しちゃうわ」

わずかに師匠が頬を膨らませ、不機嫌な態度をとる。

 

「いきなり現れたら、誰でも驚きますよ!!なんで師匠は平然とパーソナルスペースを無視するんですか!?」

 

「確か入ってほしくない、個人の空間だったかしら?別にいいでしょ?

お師匠様特権ね。

そんな事より、私も少し出かける積りだしあなたも出かけてきなさい」

言われてみれば、師匠の横には大きな風呂敷が置かれている。

初めて見る大荷物だ。

 

「?どこかに行くなら私も――」

 

「大丈夫よ。けど、2~3日開けるかもしれないからその間芳香のごはんをお願いね?」

 

「わかりました……」

芳香に出かける旨を伝え、妖怪ウサギに導かれながら永遠亭へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

「おじゃましま~す……」

一匹のウサギに導かれ、迷いの竹林を抜けた先。

不死の姫君が住まうと言われる永遠停がある。

 

「ひぎぃ!?」

ゴンッ!!

善が扉を開けた瞬間、鈴仙が驚き頭を打って気絶する。

 

またか。

 

といったリアクションで善が、なおもこちらを誘うウサギについて長い廊下を進んでいく。

最近街中でも別の2羽組のうさぎに絡まれた。

片方は杵を持っており振りあげた瞬間、それを頭に落として自爆して、もう一方はなぜか食べていた団子をのどに詰まらせ自爆した。

 

(ウサギの妖怪ってそそっかしい人が多いのかな?)

そんな事を考え、廊下を進んでいく。

 

その途中、銀髪の美女とすれ違う。

 

「詩堂君じゃない。また姫様のお相手かしら?

何時もありがとうね?」

そういって柔和な笑みを浮かべる女性はこの永遠亭の薬師の八意 永琳。

善の好みにドストライクな美人の女性である。

 

「お、お邪魔してます!!」

 

「うふふ、そんなにかしこまらないで?輝夜の友達は私にとっては大切なお客人なのだから、ゆっくりしていってね?」

 

「は、はい!!」

去っていく永琳の(倒れた鈴仙を引きずっている)後ろ姿をみて、笑顔の余韻に浸っているとチョイ、チョイっと一つの扉を指さしてうさ耳少女が立ち止まる。

最早見慣れた豪奢な作りの襖だ。

 

「ありがと、ズーちゃん」

善がここまで導いたうさ耳の少女の頭をなでるとくすぐったそうに笑った。

垂れた耳がぴくぴくと動く。

 

「あ~、やっと来たわね。待ってたのよ?」

襖が開いて、中か輝夜が顔を出す。ちなみに目の下の隈がすごい事になっている。

最近こんな天狗を見たなーと善が一人思う。

 

「どーも、輝夜さん……あの、コレなんですか?」

そういってポケットから一枚の紙を取り出す。

上質そうな見た目と質感の紙に、乱雑な文字で――

 

『詩堂~野球(ゲーム)しようぜ~』とだけ書かれていた。

 

「中島か!?某海の一家の友人か!?」

 

「え?誰よそれ、っていうかせっかく呼んであげたんだから、さっさと入りなさいよ」

ゲームのコントローラーを持ちながら手招きする。

輝夜の後ろ、部屋の中をのぞいたら何時もの様に大量のごみが散乱している。

 

「はぁ、時の権力者が欲っした姫の正体がコレとは……」

なんというか、非常にいたたまれない気分になる善。

 

 

 

 

 

数分後~

 

『いやだぁ!!死にたくない!?うわぁああ!!うっ、はぁ……

私の、私の野望は不滅だぁああああ!!!!』

テレビ画面の中、善の操るキョンシーのキャラが消滅する。

それと同時にGAMEOVERの文字が躍る。

 

「ふぅ、やりぃ!私の勝ちね!!」

輝夜が興奮気味に立ち上がる。

 

「あー、くっそ!!」

それに対して本気で悔しがる善。

なんだかんだ言って仲良くゲームをする二人、変な所で波長が合うのかもしれない。

 

「姫様ー、そろそろ食事をとってください……」

すごすごと鈴仙がこちらを見ながら、お盆を差し出す。

善と目が有った瞬間に、ビクッと体が震える。

 

「じゃ、また後で取りに来ますから……」

鈴仙が逃げるように部屋を後にした。

 

「なんか、嫌われる事したかな?」

以前、転んだ拍子にスカートがめくれパンツをマジマジと見てしまったのがいけなかったのだろうか?

 

「むー……」

悲しそうな顔をしている善に気が付いたうさぎが優しく励ます様に頭をなでる。

 

「ズーちゃん……ありがと」

座っている善と立っているうさぎ、うさぎの胸に丁度善の顔が当たる。

 

「なに?うちのイナバに名前つけてるの?ゲぇ~プ!」

鈴仙の持ってきた食事を寝転がりながら、口にする輝夜。

何というか、いろいろ汚い。

 

「Zooって確か外来の言葉で動物園だったかしら?

うさぎだから動物園?」

 

「違いますよ、ズーって言うのは地図の図です。

竹林を進むための地図で、ズーちゃん」

今さらながらに善が説明すると。ズーちゃん本人がショックを受けたような顔をする。

本人自身知らなかったようだ。

 

「へ~、なんというか……センスないわね」

味噌汁を飲み干して、再び輝夜が横になる。

 

「食べてすぐ寝ると、牛になりますよ?」

 

「うっさいわね。なる訳ないじゃな――あ!

そう言えば、今日出かける用事が有ったんだわ。

詩堂、付いてきなさいよ。ちなみに拒否権はないから」

 

珍しく?輝夜が、鏡で髪と服をなおす。

永琳に一声かけると、迷いの竹林をずんずん進んでいく。

 

 

 

 

 

「えーっと……場所は此処で、時間もあってるハズ」

 

「おーい、輝夜-」

輝夜がキョロキョロとしていると、竹林の奥から白い髪をした赤いモンペを履いた女が出てきた。

フレンドリーに手を振り、こちらに近づいてくる。

 

「妹紅~」

彼女の姿に気が付いた輝夜も同じく手を振りかえす。

友達と会う約束があったのかな?と善が思う矢先で!!

 

「死ねやコラァ!!」

 

「脳漿晒せぇ!!」

突如妹紅が、腕に炎を巻き付け輝夜を殴る!!

それを間一髪で避けた輝夜が、自身の言葉の通り取り出した蓬莱の玉の枝で相手の額をかち割った!!

 

ガボッ……

 

何かがつぶれるような音がして、妹紅と呼ばれた少女が頭から血とナニカを流して倒れる。

 

「ふぅ、とりあえず一回ね」

 

「うわぁああああ!!こ、殺したぁあああ!!

か、輝夜さん!?何やってるんですか!?やばいですよ!!

ゲームのやりすぎで現実の区別がつかなくなったのか!?

自首、しましょう。罪を償てください」

なぜか達成感を味わう輝夜と対照的に、目の前でたった今起きた殺人に善が動揺する。

 

「ああ、大丈夫よ。だってこいつは――」

 

「しょっぱなから、やってくれるじゃないか?え?!」

さっきまで倒れていた、妹紅と呼ばれた少女が立ち上がり、後ろから輝夜を羽交い絞めにする。

 

「な、離しなさい――――ぎゃぁああああ!!!!」

 

「焼き加減は何がお好みだぁ!?」

突如輝夜が悲鳴を上げ、辺りに嫌な臭い――何かが焦げる匂いが漂う!!

よく見ると、妹紅の手が輝夜の頬をつかんで焼いている!!!

辺りに漂う匂いは輝夜の焦げる匂いだった!!

 

「あわあわあわあわ……」

目の前で起こるスプラッタバトルに善が震えあがる!!

脳天かち割りに始まり、顔面焼却!!

静かで平和な竹林は今やバイオレンスが支配する地獄の装いを見せている!!

 

びちゃ……

 

「ひぃ!?」

自らの足元に飛んできた眼球と目が合い、善が小さく声を漏らした。

 

「詩堂ー、それ、こっちにパスして!!」

到底良い子に見せれるものではない顔をした輝夜が、善の足元に落ちた自身の眼球を指さす。

 

「む、無理無理無理無理!!」

到底触る気が起きない善は全身を使って無理を連呼した!!

その後も、目の前で二人による殺し合いが続けられた!!

 

 

 

 

 

「ふぅ……一時休憩ね」

 

「ああ、そうだな」

輝夜と妹紅、さっきまで殺し合っていた二人が離れる。

服はボロボロだが、体は二人ともすっかり元通りだ。

 

「どう?詩堂?私の華麗な戦いっぷり見えくれた?」

 

「んだよ。今日は珍しく男連れかよ?」

石の上で胡坐をかきながら、妹紅がこちらに言葉を投げかけた。

 

「えっと――」

 

「はぁ?珍しくないわよ。むしろ私、姫よ?これくらい当然でしょ?」

善の言葉を遮って、輝夜が言い放つ。

 

「おいお前、コイツだけはやめておいた方がいいぞ?

まともに家事一つ出来ないからな」

バカにしたような口調で、妹紅が輝夜を指さす。

 

「あー、それ分かります。部屋とか片付けれないし……

っていうか、永琳さんの方が見た目的には好きなんですよねー」

ビッグなバスト=正義!!善の中の絶対的不変のルール!!

そう!!正直着物で分かりにくいが、輝夜の胸は慎ましやかなのだ!!

善の食指は動かない!!

だが、これを面と向かって言うとさっきの妹紅の様にされるので秘密だ!!

 

「ちょっと!?詩堂!!私を裏切る気!?」

善の言葉に気を悪くした輝夜が、拳をその場で振り上げた。

 

「いや、最初から輝夜さんの味方って訳では――」

 

「裏切者ー!!」

輝夜が怒りを込めた視線で善を睨む!!

 

「はははッ!お前なかなか見る目が――って、あれ?アンタ……」

 

「何か?……あ、店長さん」

ここにきてやっと初めてお互いの顔をしっかり見た善と妹紅。

相手の顔には見覚えが有った。

 

「知り合い?」

 

「うちの店の常連」

 

「行きつけの店の店長です」

輝夜の問いかけに二人がお互いに相手を紹介する。

 

「ほら、焼きやってるだろ?結構な頻度で来てくれるんだよ」

 

「安くておいしいので毎回助かってます」

善が頭を下げて、妹紅にお礼を言う。

 

「ぷっ!男連れとか言って全然関係の無い奴じゃないか!!

なんだ?少し優越感に浸りたかったか?ん?」

芳香や師匠、さらには椛と一緒に来ている事から、妹紅は善と輝夜が特別な関係で無い事をすぐに見抜いた!!

 

「うっさいわね!!けど詩堂はこっちの味方よ!!

うふふ、あなたは自分の常連客に応援される私に負けるのよ!!」

不敵な笑みを取り戻し、輝夜が再度蓬莱の玉の枝を構える。

 

「そっか……私を応援してくれたら、今度焼き鳥割引するぞ?」

その一言で善の目が変わる!!

 

「マジっすか!?妹紅さんファイト!!ほら、ズーちゃんも応援して!!

せーの!!も!こ!う!も!こ!う!」

 

「うー……!ぼ……ごう……ぼご……」

二人そろって、必死になって声を張り上げる!!

 

「ちょっとー!?何本格的に裏切ってるのよ!?

アンタねぇ!!」

憤る輝夜!!しかし善は動揺しない!!

 

「仕方ないんですよぉ!!芳香が……芳香がめっちゃ食うんですよ!!

分かります!?たった一回外食するだけで、家計が……家計がぁ!!

バイトさせられるぅ!!バァちゃんの所でグレーなバイトさせられるぅうぅぅぅ!!」

何かトラウマでも触ったのか、必死な顔をして頭を押さえる。

その鬼気迫る表情に、輝夜は勿論妹紅まで冷や汗を流す。

 

「家計の為なら、ムチャクチャ応援しますよ?

そ~れ!!も!こ!う!も!こ!う!」

 

「あーもう!!あんた何でそんな俗っぽいのよ!?

仙人でしょ!?なんで仙人が焼き鳥食べて、家計を気にしてるのよ!!」

 

「ふっ!輝夜。所詮お前のモテ期はもう終わっているんだよ……!!

そう!!引きこもって、ゲームばっかりのお前に、誰かとの友情なんて出来る訳ないんだよ!!」

休憩は終わりとばかりに、妹紅が座っていた石から飛び出し、背中に不死鳥型の炎を纏う!!

 

「くッ!!」

 

「これで止めだぁああ!!!」

輝夜を狙う妹紅!!

だが、輝夜は回避行為をしなかった!!

代わりに不敵に口元を緩め――

 

「詩堂!!手伝ってくれたら、焼き鳥全額おごるわよ!!

因みに友達も同伴可!!」

 

「よぉっしゃぁあああああ!!!!」

輝夜の言葉に善が弓矢の様に飛び出る!!

炎を纏う不死鳥を正面から、殴りつける!!!

赤い炎と紅い気がぶつかり合い、不死鳥が霧散する!!

 

「ぐはぁ!?流石に卑きょ――」

倒れた妹紅を、善が後ろから羽交い絞めにする。

炎で対抗しようとすぐが、身動ぎどころか怯みもしない善に妹紅がわずかに恐怖する。

 

「ふふふん?今日は私の勝ちみたいね。

あなたの敗因は――――財力よ!!」

 

「そんなことで勝ち誇んな!!

っていうか、忠告してやる……本気で後悔することになるぞ!!」

必死な顔で妹紅が説得するが――

 

「はぁ?後悔なんてする訳ないじゃない?

今夜の祝賀会はアンタの店でやってあげるわ!!」

蓬莱の玉の枝が、再度妹紅の頭にめり込んだ!!

 

 

 

 

 

その日の夜……

 

「ね、ねぇ?詩堂?そろそろやめない?」

 

「いやです。あ、妹紅さん、特上盛り10種追加で20皿」

 

「はぁい、まいど!」

すでに顔面蒼白の輝夜、目の前の並ぶ無数の皿、皿、皿、皿、皿……

優に100皿は超えたであろう焼き鳥はなおも二人の胃袋へ消えていく。

恐ろしい事に、今日は貸し切り。この皿すべてをたった一組の客が食べたことになる。

 

「うまいなー!!!すごくうまいなー!!!」

目を輝かせ、芳香が夢中で焼き鳥をほおばっていく。

そんな芳香を見て、善が優しく笑った。

 

「はっはっは……たくさん食べろよ?今日は奢りらしいからな!!」

 

「うわぁーい!!もっとー!!」

 

「ねぇ!?詩堂、聞いてる!?聞いてるの!?もうやめない!?」

ガクガクと震える輝夜!!

だが止まらない!!!キョンシーの食欲は一向に止まらない!!

育ち盛りの仙人と、食べ盛りのキョンシーに満腹の二文字はまだ見えない!!

 

「妹紅さーん、鳥飯5個追加でー」

 

「詩堂!?アンタ鬼!?」

まるでそこに輝夜が居ないであろう完全無視の態度!!

 

「特上盛り10種、ひとまず5皿ね。

ああ、輝夜。現状での伝票ね?」

震える手で、輝夜が伝票を見る。

そこに書かれた額は――

 

「ふぁぁああああああああ!!!!!!!」

静かな夜の人里に、輝夜の悲鳴が響き渡った。

 

 

 

月の姫君 蓬莱山 輝夜……………………破産!!




死なず老いずの蓬莱人。

死なずって言うのはどうなんでしょう?
細胞が変化しない=全く同じに再生する(劣化しない)なら老化はしない。
それは簡単に分かります。

死なずの条件ってなんだろ?
一説によれば、魂の形を固定してるのだとか。
固定された魂に、全く同じに再生する体のコンボ……

不死って考察が楽しいですよね。

因みに永遠に生きるって言われても、実際永遠生きてみないと確かめようがないですよね?
9という数を知っているには10を理解していないといけないのと同じ。

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