これからは
なるべく早く投稿するように頑張ります。
本当に申し訳ありません。
皆さんどうも!こんにちは。
私の名前は
偉大で優秀なお師匠様の元で、仙人目指して日夜修業中です。
目標はまだまだ遠いけど、千里の道も一歩から!!
毎日どんどん修業して、がんばって行きます。
……うん、別に底なし沼にダイブした訳じゃないよな……
けど、もう戻れないんだよな……だ、大丈夫、うん、そう……たぶん、きっと……
俺は間違ってない……ハズ……
どうしよう、自信無くなってきた……
「あら~?私の修業が不満?」
「そんな事ありませんよ!!ははは!!」
さ、さぁ!気を取り直して今日も修業です!!
「ねぇ、このやり取りすごい久しぶりじゃない?」
あ、師匠もそう思います?不思議ですね。
ミーン!ミンミーン!!ミーンミンミーン!!
すでに何処にいてもセミの声が聞こえるようになった人里。
そんな中を善が一人で歩いていた。
「アッチィ……」
じりじりと熱気が善の気力を奪っていく。
額に汗が浮き、流れていく。
今日は前々から、約束していた芳香と出かける日。
しかし師匠が先に行けと言うので一人で人里までやって来ていた。
そんな善の前に立ちはだかる影が一つ!!
「お、おい!!いつまでも俺たちが、お、お怯えている!!
だけだと思うなァ!!きょ、今日こそ年貢の納時だ!!」
目の前の男は青い作務衣に、手には針と酒瓶を持っている。
「えっと?誰ですか?」
「うるせぇ!!今日こそ目に物見せてやる!!」
男は自身を鼓舞するためか、それとも恐怖を誤魔化すためか、大きく酒瓶を煽った。
吐き出す息に酒臭い匂いが混ざり小さく善が顔をしかめる。
(酔っ払いかよ……ツイてないなー……
まぁ、芳香が来る前で良かったとするか)
善はそう考えるが、真実は全く別の処にあった!!
震えて酒瓶を煽る男の周囲に、息を潜めじっと見る複数の目が有った。
「この作戦成功すると思うか?」
「大丈夫だ、あの針は博麗の巫女も使う対妖怪用の針だ。
それだけじゃない、あの服の内側には巫女に大枚はたいて書かせた札が大量に仕込んである!!いくら
問いかける男に対して別の男が答える。
この男たちは人里の有志達が集まった集団!!
善を討伐するための、勇気の使途なのだ!!
「今日でアイツに怯える日も終わりだ!!」
片方の男が勢いよくそう言うと――
「……もう、もう、終わりだ……」
もう一人の男がひどく怯えた様子で指さした。
「いやだぁ!!助けてぇ!!死にたくない!!」
さっきまで善に向かっていた男が、善に引きずられている!!
「な、バカな!?妖怪用の針は!?大枚はたいて買った札は!?」
男が視線を横にずらすと、そこには無残にひん曲がって折れた針が地面に突き刺さっていた。
男の服は暴れた衝撃か、破れてしまっている。
「酔ってまた暴れられても困るからな。
酔い覚ましにはコレだよな」
「はぁ、はぁ、はぁ、いやだ、死にたく――うわっぷ!?」
善が井戸に近づき、汲んだ水を男に掛ける。
本人は酔い覚ましのつもりなのだが――
「ゲホ!?ゴッホ!!た、助けて……おぼ、溺れる!!溺れる!!」
恐怖にかられた男には拷問でしかない!!
それどころか、水を飲んでしまい激しくせき込む!!
「ひでぇ……どうしてあんな事を――」
「見せしめ……見せしめだ!!逆らったら
様子を伺っていた男二人が震えあがった!!
「もう、こんなことしちゃダメですよ?」
にっこりと笑い、善がその場を後にする。
周囲には人だかりができ、笑顔でその場を去る善を戦慄しながら見ていた。
「ふぅ、たまに来るとあんなのが居るから困るんだよな~」
酔っ払いを撃退した(と思っている)善が鼻歌を歌いながら再び約束の場所まで歩いていく。
「……今更だけど、これってデートだよな……」
女の子と待ち合わせして、遊びに行く。
思いなおさなくても、立派なデートな気がしてきた。
「け、けど……芳香は死体だし――いや、死体だからって差別するなよ!!」
自身の考えにセルフで突っ込みを入れる善。
その瞬間――ドンッ!!
善の腹に何にかが当たった衝撃がする!!
ハッとして前を見ると、5歳くらいの女の子が倒れていた。
人里の人にしては珍しく青いワンピースを着ていた。
「ごめん。考えごとしてたんだ!」
反射的に謝り、その子に手を出す。
「……あ、わかい……ちちうえ?」
その子は呆然としたような顔で善を見る。
「ん?若い?」
「ハッ!わ、若い乳に飢えた男ですわ!!
え、ええと、家出中なので失礼します!!」
そういうとその子はスタコラと走り去ってしまった。
「何だったんだ一体?」
「あー!!いたー!!」
その子を見送った善に後ろから声がかかる。
声の方を見て善が目を丸くする。
「え?芳香、か?」
善の視線の先にいたのは善のプレゼントした緑のワンピースを着た芳香だった。
だが、それだけでは無い!!靴は赤いヒール成っているし、頭にはカチューシャまで乗っている。
わざとらしくない程度に化粧もしている様だった。
「善、やっと見つけたぞ?」
完全な美少女が善の目の前まできて、優しく微笑む。
そのかわいらしい貌に善ご胸がドキリと大きく鳴る。
「や、やっぱりどっかおかしいか?」
何も言わずフリーズする善を見て、芳香が心配そうに自身の姿を見る。
「ち、違うぞ?あんまりにもお前がかわいいからびっくりしたんだ」
慌てて善が取り繕う。芳香の姿は善をフリーズさせるには十分すぎるほどだった。
「そうかぁ?それならうれしいぞ!」
心配そうな顔から一転、ぱぁっと花が咲くような笑顔へと変わる。
「じゃ、どっか行こうか?なんか食べようぜ?甘味処が近いか?」
この辺のうまい処があったと言って、善が歩き出そうとするが――
「ぜ~ん?私の事食べてばっかりだと思ってるだろ?」
ジト目で芳香が善を見る。
「いや、そんな事は――有るかも……なら、適当にぶらぶらするか?」
「おう!そっちの方がいいぞ!!
けど、その前に――――善に、て、手を繋いでほしいんだ……」
顔を真っ赤にしながら芳香が手をこちらに差し出す。
「え?」
目の前にある白いほっそりした手を見て善が息をのむ。
「だめ……か?」
「い、いや……大丈夫です。それをすることは私はできます」
芳香の目を見て否定出来なくなった善が、芳香の手を取る。
緊張のあまり、英語訳を失敗したようになってしまったが二人とも気が付きはしない。
本当の恋人の様に指を絡ませると、死体特有のひんやりした感触が伝わってくるが、握っていると少しずつ暖かくなる。
芳香も照れると体温が高くなるんだなーと、ぼんやりと善は考えていた。
「す、すごいな。こんなにちゃんと出来るなんて」
「ぜ、善が毎日ストレッチを手伝ってくれるからな!!」
お互いがお互い余裕のない会話。
そういえば初めて会った時は、芳香の両手はまっすぐで曲がらなかったことを思い出す。
「そ、そういえば善はいつもそのマフラーをしてるな。
も、もうすぐ夏だし熱くないのか?」
芳香の方も、誤魔化すように会話を振ってくる。
「せ、せっかくのプレゼントだしな?
それにほら、コレ師匠の羽衣みたいでかっこいいじゃないか?
熱いから、そんなにきつく巻かないでスペースを開けてるんだ」
「そうなのかー」
ギクシャクした会話をしながら目的もなく歩いていく。
しかしすぐに会話のネタが尽き気まずい沈黙が流れる。
「ま、まぁ。芳香は俺にとって大切な人だからな。
お前からのプレゼントを大切にするのも当然――あ”」
会話を持たせようと結構大胆な事を言ってしまったと善が冷や汗をかく。
そんな善の様子を見て芳香が口を開く寸前――
「あー!こんな所にいた!!ずっと探したんだからね!!」
突如善が見知らぬ妖精に指を突き付けられる。
「へッ?」
「んあ?」
善と芳香両名が同時に素っ頓狂な声を上げる。
芳香はもちろん、善すらその妖精を知っていなかった。
「えっと、誰でしたっけ?」
アメリカの国旗を模したワンピースタイプの服を着た妖精。
こんな強烈な個性を持った人は忘れないだろうが、善にはやはり見覚えはなかった。
「んん!?よーく見たら別人?面影はあるけど別人かー」
相手は結局人違いだと分かったのか、妖精がっくりと肩を落とす。
「なんか、ごめんね?」
落ち込む妖精を見て、善が小さく謝る。
「あー、いーよ、別に。また探すだけだから」
善たちに背を向け、妖精がまたどこかへ飛ぼうとする。
「待ってくれ!!私たちも一緒に探すぞ!!」
妖精の背中に芳香が言葉を投げつける。
「芳香、いいのか?せっかくの休みなのに?」
「善はこーゆーやつを放っておけないだろ?」
知ってるんだぞ?と言いたげに芳香が問いかける。
「そうだな。じゃちゃっちゃと探すか」
芳香に笑いかけ、妖精との3人で目的の人を探し始めた。
と言っても妖精の探す人の特徴は要領を得ず、バラけた所で連絡手段はないので入れ違いになる可能性が高いため、3人固まっているだけなのだが。
「うーん、大通りを見るべきだよな?」
「それなら、先に小道をつぶした方がいいんじゃないかー?」
仲良く話す二人を見て、妖精がいたずらっぽく笑う。
「おにーさん達やさしいカップルだね」
「な、ち違うぞ!!善と私は――えっと……善と私の関係はなんだ?」
顔を真っ赤にして芳香が否定する。
「えー?けど、嫌いじゃないんでしょ?」
なおもその妖精はにやにやと笑い続けている。
「はいはい、芳香をからかうのもコレ位にして。
また探すよ?」
妖精を諫めるように善が言葉を紡ぐと、近くで男同士の争う声が聞こえてきた。
どうやら喧嘩している様だった。
「お前のずさんな作戦の乗った俺がバカだった!!」
「うるせぇ!!邪帝皇が規格外すぎるんだ!!」
「どーせ、札の金をケチったんだろ!?」
「ちげぇよ!!そんなんならお前がやればよかったんだ!!
俺はもうごめんだ!!アイツみたいに溺れさせられたくない!!」
「もう遅ぇよ!!俺たちがヤツを消せなかったから終わりなんだよ!!」
激しく言い争う男たちの周りにギャラリーが出来ていく。
「二人とも、別の場所を探そうか?」
芳香はともかく、幼い容姿の妖精に見せるのは気が引けて善がその場を離れようとするが――
「ああー!いたー!!見つけたよ!!おにーさん達ありがと!!
アタイ、クラウンピース!!今度お礼するねー」
人込みの中に目的の人物を見つけたのか、妖精が駆け出した。
手を振りながら人込みの中に消えていった。
「ふぅ、嵐のような妖精だったな」
ため息をついた善が、芳香に話しかける。
「な、なぁ……善は私が大事なのか?大切に思ってるのか?」
試すように、祈るように静かに芳香が善に聞いてくる。
「ああ、大切だよ。おまえは俺の――」
「その先は聞きたく無いぞ!!」
自身の言葉を以て、芳香が善の言葉を拒絶した。
「わ、私は善が嫌いだ!!大嫌いだぞ!!
すてふぁにぃばっかり見てるし、ロリコンだし、未熟者だからだ!!
も、もう帰るぞ!!」
早口でまくし立て、芳香がその場から走り去った。
「芳香……?」
呆然とする善。
その後、家で顔を合わせても寝る時間になっても芳香は善と一言も口をきいてくれなかった。
今日の結果はさんざんだったと言えるだろう。
「…………………あー……………」
時は深夜の自宅。
芳香は縁側に座って、呆然と月を見ながら虫の声を聴いていた。
「むぅ………」
中庭の池に映る月を見ても、虫の声を聴いても心の中のモヤモヤは消えなかった。
「どうすればよかったんだー?」
胸中を埋めるのは、善の言葉。
あれからずっと善の顔と共に胸の中で響き続けている。
「あら、ため息なんてついてどうしたの?」
一体いつからいたのか、月を眺める芳香の後ろに師匠が笑みを浮かべて立っていた。
「…………善に……『大切な人』って言われた……」
うつむきながら、芳香が静かに答えた。
「まぁ!良かったじゃない。
ふぅ~ん?やっとそこまで行ったのね」
にやにやと笑いながら師匠が芳香を茶化した。
「良くないぞ!!良くなんて……ないんだ……」
茶化す師匠の言葉を遮り、芳香が再び俯いた。
「私は……私はキョンシーだ!!生きてないぞ!!死体だぞ!!
だめだ、だめだ、だめだ……
善はもっと大切にすべき人がいるはずなんだ……そういう事は生きてる女の子とするべきなんだ……
グズグズと遂には泣き出してしまい、廊下をわずかに濡らした。
師匠はいつもより小さく見える芳香を見下ろしていた。
「それも、そうよね。
じゃぁ――――――
「え?」
師匠の言葉に、到底信じられないという表情をした芳香が顔を上げた。
「私なら問題なしね。
あの子、年上好きだし、私生きてるし、それどころかもう同棲してる上にご両親に挨拶まで済ませてるのよね~」
「え?え?」
呆然とする芳香の前で師匠が体をくねらせる。
「昼は子弟として過ごして、夜は恋人として過ごすのね~
うふふ、なんだか想像しただけで楽しく成ってきたわぁ」
「ま、待て!待つんだ!!な、何かおかしいぞ!?
そ、そうだ!善の気持ちはどう――」
「どうとでも成るのよね~。
だってあの子、びっくりする位誘惑に弱いもの。
ちょ~っと胸の開いた服を着て、ちょ~っと誘惑すればコロッと落ちハズよね」
なまめかしいポーズを取って、服の胸元を開ける師匠。
その姿に芳香の脳内に、善が喜んで師匠に飛びつく姿が浮かぶ!!
弱い、善は非常に誘惑に弱い!!
その事は芳香の中でも確定している!!
「うふふ、善にはたっぷりと私に奉仕してもらわなきゃね?
ああ、安心して?偶には芳香にも善を貸してあげるから」
楽しそうにくるくるとその場で回って見せる。
「あ、あわあわ……」
「さぁて、善は急げよね?……善だけに」
呆然とする芳香の前で、師匠がニコリと笑い善の部屋に向かう。
そんな師匠の前に芳香が走りこんで両手を広げ、とおせんぼする。
「だ、ダメだダメだ!!ダメだぁ!!
う、うまくは言えないけどそんなのダメだぞ!!
とにかくダメだぁ!!」
師匠はそんな芳香の必死な顔を見て笑みをこぼした。
「うふふ、芳香は善が大好きなのね。
なら、しっかりそばに居なきゃね?じゃないとすぐに誰かに取られちゃうわよ?」
師匠の言葉に芳香がハッとして走り出す。
「善!ぜ~ん!!」
わき目も振らず一直線に善の部屋に向かったようだ。
「あ~、かわいい。初々しいわぁ……
芳香ちゃんのあんな顔初めて見た」
また新しい楽しみが出来た。とつぶやき師匠はスルリと壁の中に消えていった。
けど――
「早く取らないと……私が本当に貰っちゃおうかしら?」
クスクス笑いと共にその言葉も消えていった。
その言葉を聞いていたのは誰もいなかった。
「ぜ~ん!!昼は私が悪かった!!ごめん!!
許してくれ!!」
バタバタと走って芳香が善の部屋のドアを開ける。
「うわ。よ、芳香!?」
突然現れた芳香を見て、善が自身の後ろに何かを隠す。
「善?何を隠したんだ?」
「な、なんでもないぞ?本当に何もないから、な?な?」
ジト目で芳香が善を睨む、その視線に耐えかね善が座ったまま後退する。
「反対側から見えてるぞ?」
「え、マジか!?」
芳香が指摘すると、善がその場で背を向けて自身の背後を確認する。
クルリと振り返った善の後ろ手には、すてふぁにぃがしっかりと握られていた。
「またすてふぁにぃか……」
うんざりしながら芳香がつぶやいた。
「え、あ!こ、これは……そう!『拾ってください』って書かれた箱の中にあったんだ!!可哀そうだから、連れてきただけでそんな深い意味は――」
言い訳がましく善がすてふぁにぃを抱き寄せる。
その情けない姿に芳香は――
「言い訳無用だ!!そんなものばっかり読んでる善は制裁だぞ!!」
怒り顔で牙をむき爪を立てる!!
「や、やめろぁあああ!!噛むな!!引っ搔くな!!
うわぁあああああ!!すっげぇ痛い!!!!ごめん!!許して!!
悪かった!!俺が悪かった!!」
「ふーッ!!フーッ!!すてふぁにぃを捨てるか?」
謝る善から爪と牙を外して問いかける。
しかし――
「それは出来ない!!すてふぁにぃ大事。
それを捨てるなんてとんでもない。OK?」
こんな状況でもソコだけは譲れない!!善の魂の奥の奥まで染み付いた煩悩である!!
「善のバカぁ!!!!!」
「いぎゃぁああああああ!!!」
善の悲鳴が墓場に響き渡った
今回の話は前回と全く同じ時間軸です。
善と完良は何度もニアミスしてます。