止めてください!!師匠!!   作:ホワイト・ラム

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最近少し不思議なことが起きました。
この作品の評価が上がったり下がったりを繰り返して……

どうしたんだろう?
まぁ、高評価が来れば素直に嬉しいですし、低評価が来れば素直に悔しいです。

まぁ、これからも頑張っていきます。
それでは今回もスタート!!


認知不能!!閉じた瞳の妖怪!!

俺……じゃなかった、私の名前は詩堂 善(しどう ぜん)

ただ今、仙人目指して修行中です。

師匠の修行は厳しいけど、きっとそれも私の事を思っての事。

 

うん……そう、たぶん。おそらく、きっと……あれ?どうして涙が出るんだろ?

と、兎に角今日もがんばります……はぁ……

 

 

 

 

 

「おかわり!!」

 

「はいはい、すぐにつけて来るからな」

芳香が空っぽになった茶碗を差し出して来る。

善はそれを受け取って、お櫃から米を盛り始める。

 

「あ、わたしもおかわり!!」

 

「はいは~い」

同じく善の反対側に座っていた女の子も茶碗を差し出してくる。

其方に対しても、茶碗を受け取り米を盛る。

 

「はい師匠、お待たせしました」

 

「頼んでないわよ?」

新しく付けたご飯を師匠に差し出すが、その言葉通り師匠は今現在手に茶碗を持て居る最中、おかわりは必要無いはずだ。

 

「ん~?おかしいぞ?今日は小傘さんも橙さんもいない……

私を含めて、茶碗が四つ?あれ?なんで四つもあるんだ?」

数が合わない事に善が混乱し始める。

何度数えなおしても、茶碗が一つ多い。

 

「それ、私の!!」

 

「え?」

善の隣に居た子が善から茶碗を奪い、パクリと口にほおばった。

 

「お?」

 

「あら」

芳香と師匠が同時に、この異常な事態に気が付いた。

見慣れない子が一人、当然の様に()()()()()

 

「お味噌汁もちょうだい!」

今度は空になったお椀を差し出した。

 

 

 

 

 

「古明地こいし?」

 

「そうそう、私の名前」

漬物をポリポリ齧りながら、いつの間にか居た少女が楽し気に笑った。

不思議な話だが本当にいつの間にか、一人増え当たり前の様に生活していたらしい。

 

「ぜ~ん?あなた、年上が好きって公言してるけど……

なんで小さな女の子ばかりと仲良く成るの?あなた本当はロリコンの変態――」

 

「違いますよ!!小傘さんや橙さんとかフラン様が勝手に寄ってくるだけです!!

何度も言いますが、私の好みは年上、巨乳、包容力の3つです!!これだけは譲れません!!譲れませんからね!!!」

何時になく善が力説する!!

最早周囲の人間には聞き飽きた善の主張!!

しかし、小さい子ばかりを集める善、この主張本当なのか?

 

「はいはい、あなたの好みはこの際どうでもいいわ。

所で貴女、一体何時から家に居たの?」

興味津々といった表情で師匠がこいしと名乗った少女に尋ねる。

お茶を飲み干し、小さくげっぷをした後、少し考えた後……

 

「う~ん、あんまり覚えてないけど……このおにーさんが、お屋敷でお仕事を始める少し前位かな~」

ぽわぽわした表情で話が一同は一瞬にして凍り付いた。

お屋敷とはおそらく紅魔館の事だが、そうなると一ヶ月以上前の話だ。

この子は一ヶ月以上居た事になる。

誰にも、全く気付かれず。

 

「師匠気が付きました?」

 

「いいえ、正直全く。面白いの能力ね、興味深いわ」

人に気が付かれないのではなく、人に気にされなくなる。

非常に珍しくそして非常に強力な力である。

 

「けど、なんでこの家に?」

 

「えへへ、遊んでたら帰り方が分かんなくなっちゃって~

あと、此処は居心地が良かったしねー。

そのまま居ついちゃった、テヘ」

イタズラがばれた子供の様に、舌を出して笑う。

 

「何その適当な理由……」

 

「おにーさんの事はずっと見てたよ?

死体のおねーさんと組手してる時も、ごはん作ってる時も、青いおねーさんに術を教えてもらってる時も、お風呂に入ってる時も、ネコの子と遊んでる時も、二人で寝ている時も、ベットの下にある本を取り出して――」

 

「ストップストップ!!ストーップ!!!言わなくていい!!もうそれ以上お願いだから言わないでね!!」

ヤバい事まで言われそうになった善がこいしの口を押えた。

振り返ると師匠と芳香がひそひそと、ロリコンだの、優しい言葉で騙しただの、幼い肢体に夢中だの不穏な単語を囁き合っていた。

その目は完全に犯罪者を見る瞳!!

現代なら通報待ったなし!!

 

「ええと、古明地って旧地獄のさとりさんと同じ苗字だよね?

知り合いだったりする?」

 

「おねーちゃんだよ?私の」

 

「ああ、姉妹なんだ。良かった、身元は分かった。

丁度旧地獄には行きたかったし、送って行くよ。

構いませんよね?師匠」

 

「今のあなたなら実力的には大丈夫そうね、性癖的には不安なのだけど……

まぁ、いいわ。行ってらっしゃい」

師匠の了解を受けた所で、未だに続く芳香の射す様な視線を背中に受けながら、出かける準備をする。

そしてそそくさと逃げる様に、部屋を去って行った。

 

帰ったら、絶対に誤解を晴らすという誓いを立てて(死亡フラグ)

 

 

 

妖怪の山中腹部。

善の目の前に、旧地獄へとつながる穴がぽっかり開いている。

前に師匠と一緒に地獄へ行った事がずいぶん前の事に思える。

 

「あれから俺は……」

様々な思いが胸の内にあふれるが、口から出る事は無かった。

迷いを振り切るかのように頭を振り、こいしが近くに居る事を確認してから穴に飛び込んだ。

 

すさまじい速度で、周囲の景色が変わっていく。

半分自由落下しているのだ、無理もないだろう。

壁面が近付いた時、洞窟内の壁を蹴って方向変換をする。

壁から壁へ、地面から天井へ、仙人として手に入れた脚力と研ぎ澄まされた反射神経で落下の勢いを半場殺し、半場利用しつつ洞窟内を進んでいく。

 

初めて地獄に向かった時には、こんな事が出来る様になるとは思っても無かった。

それだけ自分が師匠の技を習得しているのだと、今更ながらに実感した。

 

「ここからはまた、平面か……こいしさん、ついて来てます?」

ほぼ直角だった洞窟は、緩やかな斜面になりやがて善の居るほぼ横ばいの洞窟へと変化した。

余裕が出来た善は、こいしを呼んだ。

 

「ついてきてるよ~、おにーさん足速いね。

少し疲れちゃったよ」

帽子に付いた汚れを払いながら、こいしが無邪気に笑った。

 

「ねぇ、おにーさん何かあったの?」

 

「ん?何か?」

こいしが善の横に立ちながら、尋ねて来た。

 

「最近元気ないみたいだよ?」

 

「別にそんな事ありませんよ?むしろ修業が身についてきて喜ばしい限りです」

意図して笑顔を作り、こいしに笑いかけた。

 

「嘘だ。私にはわかるよ、おにーさん何か隠してるでしょ?

心が読めなくてもおにーさんを見てたから、()()()

こいしの言葉に善の表情が引きつった。

その言葉はカマをかけているのではなく、確かな真実を言っているという確信があったからだ。

 

「地獄はいい思い出が無いので緊張してるんですよ。

それだけです、そう、それだけ」

お前に話すことはない、という態度で善が何度も「それだけ」という単語を繰り返した。

そうこうしている内に、洞窟を抜け、橋を越え、旧地獄の活気が見えて来た。

 

「せっかくだから家まで来てよ。おねーちゃんも喜ぶからさ」

さっきの雰囲気は一転、ころころと音のする様な笑顔を浮かべ、こいしが善を地霊殿へと誘う。

 

「さとりさんってやっぱり妖怪だったのか……」

 

「おねーちゃんは悟り妖怪だね、心の中を覗けるんだよ!!私には無理だけどね」

善のつぶやきに、自身の閉じた瞳を手にしながら善に説明をする。

なんとなく妖怪である事は知っていたが、どんな妖怪なのか知らなかった善にとってなかなか驚きの情報だった。

 

「心の中が覗ける……か」

 

「そうだよ!!だから、おねーちゃんの前では変な事は考えちゃダメ!!だよ?」

こいしが指で〇を作り、オーケーサインを出す。

 

「うーん、意図して考えないって、辛いな……」

 

「ダメだよ?絶対にエッチな事を考えちゃダメだからね?」

そう言って、自身の指の輪っかに、反対の手の指を突っ込んで出し入れし始めた。

激しく何度も、指が円の中を出し入れする!!

 

「なんでこのタイミングでソレをやった!?」

 

「え?あ、ごめーん。無意識にヤっちゃった!!」

こいしが形だけの謝罪をして、自身のスカートに手を突っ込んだ。

ワザとか、本当に無意識か非常に審議が分かれる部分だ。

だがニヤニヤと楽しそうに、こいしが笑っているので、ワザとである可能性の方が高い。

 

「……楽しんでませんよね?」

 

「嫌だなー、おねーちゃんじゃないんだから、他人をいじめて喜んだりしないよ!」

今度はぷんすかと頬を膨らませる。

怒ったり、ふざけたり、ころころと表情が変わって見ていて楽しい。

 

「なら良いんですけど……ってかさとりさんの趣味……」

 

「あれ?おにーさんじゃない?どうしたの?」

苦笑いを浮かべる善に、背中から声が掛かった。

楽し気で軽快なこの声には、聞き覚えがある。

 

「お燐さん、久しぶりですね」

 

「観光?あ、こいし様、帰ってきたんですね」

お燐が視界にこいしを入れて、ぱぁっと明るく笑う。

久しぶりなのか、非常にうれしそうだった。

 

「や、ひさしぶり~」

歯を見せて二コリとこいしが笑う。

 

 

 

 

 

「へぇ~、地上に……」

 

「そうだよ!!このおにーさんの家に居たの!!」

お燐とこいしが並んで話している、善は帰ろうとしたが二人に呼び止められ地霊殿へと招待された。

こいしがお燐の猫車を引いて、善がネコの姿になったお燐を抱いている。

橙とは違う、美しくしなやかな毛並みは撫でていて楽しい。

 

「さとり様が心配――ゴロゴロ……してました――ゴロゴロ……

おにーさん!!今話してるから、ノドを撫でないで!!」

思わずお燐のノドを撫でてしまった善、お燐に叱られてしまい少し落ち込んだ。

 

「だって、ネコって抱かせてくれないし……

橙さんは、なんか撫でてると不自然に息が荒くなるし……

普通に抱けるネコってお燐さん位しかいないんですよ!!」

 

「む、むぅ……それなら仕方ない、かな?

ちょっとだけだよ?」

善に釘をさして再び撫でられに戻るお燐、その表情は満更でもない様子。

夢中になって善はお燐をなで続ける。

 

そうこうする家にひと際大きな家の前で止まる。

旧地獄の主、古明地さとりの家、地霊殿だ。

 

「久しぶりの我が家だね!!おにーさんも来て!!来て!!」

こいしに手を引かれながら、善は再び地霊殿の門をくぐった。

 

「おねーちゃーん!!ただいまー!!」

靴を脱ぎ捨てると、廊下の方まで叫びながら走って行った。

 

「あーあ、靴を脱ぎ散らかして……」

お燐を下ろして、こいしの靴をそろえると自分も靴を脱いで上がる。

 

「おにーさん、しっかりしてるねー」

先に上がっていたお燐に感心がられる。

 

「芳香が、こんな感じなんで……

私がしっかりしないとダメな部分が多いんですよ」

善が困った様にしかし楽しそうに笑った。

その時奥の方からドタドタと、再び足音が聞こえて来た。

 

「おねーちゃん!!友達連れて来たよ!!」

 

「はいはい、一体誰を連れて――――き!?」

こいしがさとりの袖を引っ張りながら走ってきた。

善を見た瞬間!!さとりの表情が凍る!!

 

「どうも、さとりさん。ご無沙汰してます」

 

「う、うわぁああああ!!!」

善を見た瞬間!!さとりのトラウマがフラッシュバックする!!

師匠にからもらった羞恥!!痛み!!苦しみ!!それらをありありと思い出してしまう!!

それだけではない!!前に見た善の心の中のR18な妄想シリーズも、さとりはしっかり覚えていた!!

 

『今すぐ帰ってもらいなさい!!』

 

そんな言葉がさとりの口から出かけた。

しかし!!しかし彼は珍しく妹が連れて来た友人!!

無下にしていいのか?そんな事をしたらこいしが悲しむのでは!?

 

「よ、よく来たわね……ゆっくり、していって……ね?」

苦渋の選択!!彼女は、善をもてなす事にした!!

 

「あ、あの、さとりさん?なんで、胸の目を思いっきり手で閉じているんですか?」

 

「ふぁ……ファッションよ!!気にしないで!!」

自身のサード・アイを無理やり指で閉めながらさとりが渇いた笑いを零した。

 

 

 

「お燐、お客様の相手をして!!」

 

「は~い」

叫ぶ様にお燐を呼びつけると、客間に送り込む。

さとりはお燐の彼が意外と仲が良いのを知っていた、お燐を使って自身の心を落ち着かせるまでの時間稼ぎをすることにした!!

 

「こいし!!なんであんな男を連れて来たの?知らない人を地霊殿に連れてきちゃダメでしょ!!」

紅茶の準備をしながら小さく、小言を言ってこいしを諫める。

 

「ええ~?悪い人じゃないよ?」

 

「あなたは心が読めないから、あの男の怖さが分からないの!!

何をされるか、分かったもんじゃないんだから……」

 

「一緒に寝たりー、ごはん食べたりー、運動したりしてたよ?」

こいしの言葉にさとり、本日2回目のフリーズ!!

お茶を入れる体制のまま、張り付いた笑顔を浮かべる。

 

「え、寝た?一緒に?え、え?」

 

「同じベットでー」

*無意識下の行動です。

当然ですが、善本人は最近布団が狭いなー程度にしか思っていません。

しかしさとりには、善のイメージと混ざって最悪の状況しか浮かばない!!

……

…………

………………

『お嬢ちゃん、一人なの?家においで、ごはん食べさせてあげようね』

 

「うわぁーい!!」

食事後……

 

『ぐへへへ!!さて、宿代をもらおうか!!』

 

「きゃー!!」

………………

…………

……

 

「わ、私がしっかり見てなかったばっかりに……

悪い男に引っかかってしまったのね……!!

ごめんね……ごめんね、こいし……!!」

何時ものさとりなら、少し考えてみればわかる事なのだが、それだけ彼女には余裕がなかった!!

ポットを落とし、ぽろぽろと空しく涙を流す。

 

「???、私お燐の所行ってくる!!

おにーさんさっきお燐を抱きたいって言ってたから、私も混ざって来る!!」

そう言って楽しそうに笑って、走り去っていくこいし。

 

「お、お燐まで!?年上だけでなく、と年下も守備範囲なの!?

彼は性欲の権化なの!?」

さとりの目が、何かを決心した者の目へと変わる。

 

 

 

 

 

「おにーさん!!あーそーぼ!!」

お燐を撫でている善に、こいしが飛び付こうとした。

 

「うぁあ!?」

しかし善は咄嗟にお燐を離しこいしから逃げる!!

 

「どーしたのおにーさん?」

 

「な、なんでナイフを持ってるんですか!?」

こいしは善に指摘されて、自身が初めて手にナイフを持っているのに気が付いた。

切っ先がキラリと光る。

 

「あれ~?どうしてだろ?おにーさんをエントランスに飾りたいと思っていたら、自然に……」

 

「ナチュラルに殺そうとしたの!?怖いよ!!止めてね!!」

善がこいしを止めようとした時、扉が勢いよく開いてさとりが顔を出す。

まともではないさとりの表情に善が困惑する。

 

「えっと……?」

 

「それ以上、私の妹とペットに指一本触れさせないわ!!」

さとりが走り、近くにあった椅子を手にして善に殴りかかる!!!

 

「わわ!?なに!?何が起こったの!?」

 

「はぁあああ!!旧地獄の支配者を舐めるな!!」

 

次はテーブルを掴んで善に向かってフルスイング!!

妖怪の力で叩かれた善は、テーブルごとステンドグラスを叩き割り地霊殿の外へと投げ捨てられた!!

 

「一体どうなってんだ!?この姉妹!!」

 

「お空!!追撃!!」

 

「了解~」

 

「ギィやぁあああ!!!」

お空を呼びつけ、善の飛んでいった方へと光弾を大量に打ち込んだ!!

断末魔と共に善の悲鳴がかき消えた!!

 

「終わったわ……悪は去ったわ。

こいし、お燐、お空。貴女達は私の家族よ、私が何が有っても守ってあげるからね」

 

「おねーちゃーん!!」

 

「さとりさまー!!」

さとりにこいしとお空が抱き着く。

一見家族の絆を繋ぎなおしたこの光景。

 

「おにーさん、大丈夫かな?」

お燐だけが、犠牲となった善の心配をしていた。




自分の家族の為に、恐怖に打ち勝ちその相手と戦う。
主人公っぽいですね。

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