止めてください!!師匠!!   作:ホワイト・ラム

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今回は、なかなかのスピードで投稿できたと思います。
このペースを保ちたいですね。


極悪!!華愛でる加害者!!

俺……じゃなかった、私の名前は詩堂 善(しどう ぜん)

ただ今、仙人目指して修行中です。

師匠の修行は厳しいけど、きっとそれも私の事を思っての事。

 

うん……そう、たぶん。おそらく、きっと……あれ?どうして涙が出るんだろ?

と、兎に角今日もがんばります……はぁ……

 

 

 

 

 

人里から離れた小さな丘、通称『太陽の丘』。

そこに小さな家が建っており、そこに一人の妖怪が住んでいる。

彼女の名は風見 幽香。幻想郷でもトップクラスの実力者である。

恐れるモノなど何もないであろう彼女……

しかしそんな彼女にも悩みがあった!!

 

「友達が……出来ない!!」

バキン!!

妖力の衝撃で使用しているテーブルがひび割れ破壊される!!

お気に入りのお茶のセットが床にぶちまけられる!!

しかしそんな事は、今の彼女には些細な事!!

今、彼女が抱えている問題の方がよっぽど重要だった。

 

風見 幽香は孤独だった。

強く麗しくそして美しく……

四季の華を愛でて闊歩する、孤高の存在である。

だが、だが……!!

 

「友達が出来なぁい!!」

当人は結構なさみしがり屋だった!!

今日も一人ボッチライフを送る……はずだった。

 

 

 

 

 

「え?宅配便?」

善がマミゾウから聞かされた言葉を繰り返す。

 

「そうじゃ、実は花の種と肥料を頼まれておったんじゃが、その役職のモンが腹痛で休んでの。

他のモンは仕事が忙しい時期じゃし、ほれ……

やれ花見やら、やれ春告精が出現しただので手が離せんのじゃ。

悪いが行っとくれんかの?もちろん小遣いは弾むぞい?」

キセルを口に咥えながら、ウインクを飛ばすマミゾウ。

 

「まぁ、バァちゃんの頼みなら……特に用事も無いし。

今日中で良いんだよね?」

 

「おお、行っとくれるか?

じゃ、花の種と肥料を積んだ台車が裏に停めてあるから頼むぞい?

金はもうもらっとるから伝票にサインだけ頼む」

善の返事を聞いた瞬間マミゾウの顔がぱぁっと明るくなる。

そして手早く目的地の地図と伝票を差し出す。

 

「バァちゃん……俺が断らないの解って言った?」

余りにも準備が出来過ぎている事から、善がうすうす勘付いていた事を口に出す。

それに対してマミゾウが二ヤリと笑い、悪びれもせず答えた。

 

「化け狸が人間化かして何が悪い?むしろこっちが本職じゃよ」

悪戯っぽく笑って見せてる。

 

「はぁ、小遣い期待してるからね?」

 

「まっかせぃ、そっちは葉っぱじゃのうて、本物にしたるわい!」

丸め込まれた感を感じながら、マミゾウに見送られ裏の台車の所に行く。

確実に過積載と言える量の荷物が、山のように積まれたリヤカーが停まっていた。

そのリヤカーに鎮座する肥料の山……

その光景をみて善は小さくため息を付いた。

 

「目的地は……そんなに遠くないな。

太陽の丘?」

ため息を付いても仕方ないと、目的地を再確認して善は台車を引いて歩き出した。

 

 

 

 

 

「すいませーん。二ツ岩組の者でーす、風見 幽香さんいますかー?」

太陽の丘に建つ一件の家をノックくする善、此処まで来るのにそこまで距離は無かったのだが、いかんせん量が量だ。

仙人の力をもってしてもそこそこの重労働だった。

 

「い、今、開けるわ!」

上ずった声が聞こえ、小さな家の扉が開かれた。

その瞬間善に衝撃が走る。

 

(あ、やべぇ……スッゴイ美人……スッゴイ好みのタイプ……)

善は目の前の美女に眼を奪われた。

赤いチェックの服とスカート、たわわに実った胸。

気の強そうな瞳、そして醸し出される年上の出来るお姉さん感。

年上好きの善にとっては、一瞬で心が奪われた。

*ちなみに善の(見た目は)好みタイプの人に、師匠、藍がランクインしている。

 

「あ、コレ、ご注文の花の種と肥料です……

何時ものを50袋ずつ……」

 

「あら、ありがとう。待っていたわ」

リヤカーに積まれた肥料を、幽香に見せる善。

二コリと幽香が笑い、善も愛想笑いをする。

 

「丁度今、お茶を入れようと思っていたの、良かったら一緒にどう?」

 

「いいんですか?では、是非!」

幽香からの願っても無い誘いに、善が喜んで幽香の家へと入って行く。

善からは見えなかったが一瞬幽香がニタリと笑みを浮かべた。

 

「ゆっくり、寛いでね?」

キョロキョロと周囲を見回す善をみて、幽香が台所へ逃げる様に足を運ぶ。

 

 

 

「やった、やった、やったわ!!何時もはすぐ逃げ帰るのに人を呼び止めるのに成功したわ!!

うふふふふふふふふふふふふ!!これで、これを切っ掛けに私の友好的な面を見せれば……!!

お友達が出来るかもしれないわ!!ハァ、ハァハァ……!!」

友人が出来るかもしれない!!幽香はその事実に興奮を隠しきる事が出来ない!!

*ちなみに何時もは……

 

『お茶でも一緒に――――』

 

『ま、まだ死にたくなぁぃいぃぃっぃぃ!!!』

 

となる。

 

 

 

その頃善は……

(きれいな部屋だなぁ……それに、なんだかいい匂いがする)

まさか招待されるなんて考えていなかった善、しかも美人からの誘いだソワソワしないはずが無かった。

 

「おまたせ、お茶が入ったわよ?」

 

「わぁ、ありがとうございます!」

幽香がトレイにクッキーと紅茶を入れてきた、アップルティーの良い香りが部屋に広がった。

 

「お茶も、お茶菓子も遠慮しないで好きなだけ飲んでね?」

 

「いただきます!!」

再度礼を言うと、善が笑顔を浮かべる幽香の前で、紅茶に口を付ける。

その時善の首に巻いているマフラーが揺れた。

 

(マフラー?この暖かいのに?部屋の中なのに……?)

 

ドクン!!

 

幽香の中で何かが動いた!!

 

(だ、ダメよ……!!今は、こんな所で……!!)

……

………………

…………………………

…………………………………………

 

「ふん!!」

ガクン!!

 

「わっと!?」

幽香の足払いによって、善が椅子事床に落ちる!!

 

「何を――」

 

「何の積り?」

抗議しようとした善を遮って、幽香が善のマフラーを掴む!!

 

「私の部屋でマフラー?常識を知らないのかしら?防寒具は外でしなさい!!

それとも、それは馬の手綱かしら?

いいわ、特別にあなたに乗ってあげる!!」

 

「え!?うわ――」

善を無理やり四つん這いにさせ、幽香が背中に乗る。

そしてマフラーを馬の手綱の様に引っ張る!!

 

「ほら!!駄馬は、家の外に行かなくちゃね!!早く走りなさい!!」

足で善のわき腹を蹴る!!

 

「ひ、ひーん!!」

泣きそうな声を出して、善が家の外へと四つん這いのまま走らされる。

ぐいぐい首を絞めて、善をマフラーを使って操る!!

 

「ほぅら!!こうされるのがお好みよね!!

あーっはっはっは!!あーはっははは!!」

さらに幽香がいつも持っている傘で、何度も善の尻を叩き続ける!!

パチィン!!パチィン!!と風を切る音と共に肉が叩かれる音が響く!!

 

「そうよ!!いい顔に成ってきたじゃない!!」

 

「は、はひぃん!!」

太陽の丘に幽香の笑い声と善の悲鳴が響き渡った。

…………………………………………

…………………………

………………

……

 

「いやー、本当に美味しいですね」

 

「ハッ!!」

善の言葉で幽香が()()()()()()()()()()()

幽香には困ったクセが有る、それは彼女が極端に他者を加虐するのが好きな性格である事。人は彼女をこう呼ぶ、究極(アルティメット)加虐(サディスティック)生物(クリーチャー)――USCと。

 

そして彼女は目の前の少年から、ナニカを感じ取っていた。

あどけない人懐っこい笑みの奥に、今まで何度も何度も何度も被虐を受けたであろう、熟練の被虐者オーラを……その天性の加虐性で感じ取っていた!!

本能が訴える!!この男を加虐したい、と!!

 

(耐えろ、耐えるのよ、風見 幽香!!ここで、ここで怯えさせたら全てが水の泡よ!!)

自身を叱咤して、己の中の加虐性を押し込める!!

そんな彼女の葛藤を知らず、ニコニコと楽しそうに善はお茶を続ける。

 

「なんだか、いい匂いがしますね。アレ、アロマキャンドルですか?」

窓際に飾ってある花びらの入ったガラスコップのキャンドルを指さした。

 

「ええ、そうよ。バラの香りを閉じ込めたの。

ああいうの好きなの?」

 

「はい、良い香りがして好きですよ?」

……

………………

…………………………

…………………………………………

 

「そう、なら……」

幽香が棚に有った予備のキャンドルを持ってきて、火をつけた。

辺りに甘い香りが広がっていく。

 

「たっぷりと、あげるわ!!」

 

「な、何を――うわぁ!?」

ビリィ!!

力任せに、善の上着を破り捨てる幽香。

白い肌が、さらされ腰を踏みつけ捕縛する。

振り返った善の怯えた表情が、幽香を刺激する!!

 

「ほぉら、あなたのだぁいすきな、キャンドルよ?」

ゆっくりキャンドルを傾けると同時に、溶けた蝋が善の背中に零れる。

 

「アツゥイ!!」

踏んでいる足を通して善が体を震わせるのを感じる幽香。

2滴3滴と解けた蝋を零すたびに、少年が震え幽香の口が吊り上がっていく!!

 

「今日は特別にもう一つあげるわね?」

さらに、もう一つのキャンドルに火をつけ両手に構える。

 

「さぁ、垂れる、垂れるわよ……うふふふ……」

 

「あ、ああ、ああ!!アッチィ!!」

…………………………………………

…………………………

………………

……

 

「ちょっと、乙女っぽい趣味ですかね?」

 

「ハッ!?」

はにかむ善をみて、幽香が再び現実に戻ってきた。

目の前には、少し恥ずかしそうにする善。

 

「そ、そんな事無いわ!!花の良さがわかる男って素敵よ?」

 

「本当ですか?嬉しいですね」

言葉通り受け取った善、屈託のない顔で褒められたことを喜ぶ。

己の本性を悟られぬ様に必死になってごまかす幽香。

 

「あら、もうお茶請けが無いわね?男の子だし沢山食べるハズよね、もっと持ってくればよかったわ」

皿に乗せて有ったクッキーが無くなった事に幽香が気が付いた。

これを理由に、この場を去らなければ……!!

この少年を、加虐しまうかもしれない!!

 

「あー、お昼前なんで食べすぎちゃいました……ごめんなさい」

そう言えばもうすぐ、昼食の時間だ。

見た目は育ち盛りの少年だ、この食欲も仕方なしと幽香は判断した。

 

(心象は悪くないハズ、此処で帰せば……

けど、もし私が食事をご馳走したとすれば?

そんな事すれば、確実に友達っぽわよね!!)

己の嗜虐性を押さえ、友情を育もうとする幽香!!

 

「もうそんな時間なのね?今朝、私が焼いたパンで良ければ、食べて行ってくれない?私一人じゃ食べきれないのよ」

にこやかに、あくまで自然な笑顔を心がけて幽香が善をさそう。

さっきからこの少年の一動作一発言毎に幽香の嗜虐性が刺激される!!

心の中では「加虐したい心」と「友達に成りたい心」が激しくぶつかり合っている!!

 

(ああ、いじめたい……この子を泣かせたい!!

涙を溜めた目でおびえた表情をさせたい!!)

もはや、ポーカーフェイスも崩れかけ、その顔には怪しい笑みが張り付てるが、幽香の胸ばかりに気を取られている善は気が付かない!!

この場は非常に微妙な、それでいて奇跡的なバランスの上で成り立っていた!!

 

「そんな、食事まで……流石に悪いですよ」

 

「沢山焼きすぎちゃったのよ。腐らせて捨てるのはもったい無いでしょ?

美味しい内に食べてくれないかしら?」

遠慮する善を引き留め、再び台所に入り、今度はパンを持ってくる。

今朝焼いたばかりで、小麦の良い香りが善の鼻をくすぐった。

「これも作ったの」と言って幽香がイチゴのジャムを置いてくれる。

 

「いただきます」

眼を輝かせて、善がパンにかじりついた。

夢中になってパンをほおばっていくのを幽香はじっと見ていた。

 

「あっと……!」

慌てすぎたのか、善の手からパンが逃げる。

そのパンはまっすぐに床に向かって――

……

………………

…………………………

…………………………………………

 

「せっかく私の作ったパンを落とすなんて、何様の積りかしら?」

 

「ご、ごめんなさい……」

突如豹変した、幽香に善が戸惑う。

幽香はにっこり笑って、テーブルの料理をすべて床にぶちまけた。

 

「いいのよ、気にしないで。それよりも、()()()()()()()()

善の首根っこを掴んで、床に押し付けた!!

 

「あ、そんな……床に、落ちた物を――」

 

「食べるのよ、豚みたいに這いつくばって!床を舐めながら食べるの!」

尚も強い力で、幽香が善を床に押し付ける!!

 

「い、いやです――勘弁して――」

 

「あらぁ?最近の豚は人の言葉を話すのかしら?

ねぇ?豚はなんて鳴くんだったかしら?ほら、ほら、ほら!!

鳴いてごらんなさいよ!!」

 

「ぶひ、ぶひぃぃ!!」

 

「そうよ!!良い声に成って来たじゃない!!」

…………………………………………

…………………………

………………

……

 

「よっと!」

善が手からこぼれたパンを空中でキャッチして口に放り込む。

 

「セーフ、こんなパン落としちゃ、勿体ないですからね。

風見さん、ご馳走様でした。

パンもジャムも紅茶も全部おいしかったです」

さっきの欠片が最後の一つだったのか、もうすでに善のテーブルの上には何も残っていなかった。

手早く帰り支度を始める。

 

「ハッ!!……あ、ええ、お粗末様。

ねぇ、私とお友達になってくれない?

また、一緒に食事しましょ?」

オドオドと、珍しく躊躇しながら幽香が手を差し出す。

 

「私で良ければ、喜んで。風見さん」

 

「私の事は幽香って呼んで?善くん」

不意打ち気味の「善くん」に思わず驚く善。

 

「わ、解りました……幽香さん……ま、また来ます……」

テレ臭くなって、善は逃げる様に太陽の丘を後にした。

 

 

 

 

 

「耐えきった!!耐えきったわ!!そして私にも遂に……ついにお友達が出来たわ!!」

すさまじい笑顔の幽香!!

さっきまで抑えていた加虐衝動を満たす様に、岩を!!地面を!!近くにいた妖怪を破壊し続ける!!

その笑顔!!まさに究極加虐生物!!

 

「はぁはぁはぁ……けど、何時か、善くんの……悲鳴も聞きたいわねぇ……」

すっかり更地になった、クレーターの真ん中で幽香が笑った。

 

 

 

 

 

その頃善は……

「ねぇ、善?あなたが紅魔館から借りて来たこの本の中の写真……

コレは何?」

縄でグルグル巻きにされた善が木の枝から逆さで吊るされている。

そして師匠の手には、一枚の写真。

 

メガネをかけた小悪魔が、何時もの司書風の上着のボタンをすべて外しその地肌が見えている、首からへそさらには腰までの艶めかしいラインが素敵だ。

スカートはめくれ、下着こそ見えないがストッキングも脱げかけて……

端的に言えば非常にクル写真だ。

そして、小悪魔の口に咥える紙には『オカズの差し入れです(はぁと)』の文字が。

 

「流石小悪魔さん……誘惑が上手いな~」

現実逃避気味の善が語る。

 

「セイ!」

 

「グホ!?」

善に容赦なく師匠の拳がめり込む!!

 

「アレは、小悪魔さんが勝手に!!お願いです!!信じてください!!」

 

「ええ、信じるわ。けど殴るわね」

 

ボゴン!!

 

「うえ……頭に血がの上っちゃいます……」

 

「あら、大変!!頭に穴をあけて血を逃がしてあげるわね」

鋭い針を持って師匠が迫る!!

 

「ファ!?やめて!!止めてください!!師匠!!」

 

「はぁ~い、頭ぐりぐり~」

 

「あ”あ”あ”あ”!?」

 

加虐完了!!




地味な疑問、幽香さんに押し花見せたらどうなるんだろ?

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