止めてください!!師匠!!   作:ホワイト・ラム

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今回で、紅魔館編は終了です。
後日談があるかな~程度です。


悲痛!!悪魔の願い!!

私はリンジーノ・R・バイト。

紅魔館で執事長をさせて頂いております。

皆さまどうか、気安く『レジル』とお呼びください。

白いシャツに黒いジャケット、そして仕立ての良いズボン。

青と赤のネクタイを締めれば、それが私の戦闘服(仕事着)

太陽がのぼる前に私の仕事が始まります。

 

チリーン……!!

 

早速お嬢様のお呼びですね。

さぁて、今回は何をお望みですか?

 

 

 

 

 

…………名乗り口上はこれで良いですかね?

 

…………え?…………うん……いいと思うよ?

 

お嬢様?

 

 

 

 

 

紅魔館の使用人室、今日も此処から一日が始まる。

 

「起きろー、あさだぞー!!」

メイド服を着た芳香が、善を起こす為に部屋に入って来る。

その時丁度、善が着替えを終えた所だった。

 

「おう、もう起きてるぞ?っていうかお前なんでまだメイド服なんだ?気に入ったのか?後、顔上向けろ、第一ボタンが留まってないぞ?」

芳香のボタンを直しながら善が尋ねる。

 

「おー!!この服かわいいから気に入ったぞ!!」

ボタンを留めてもらうと、楽しそうにその場で芳香が飛び跳ねる。

 

「もう少ししたら、師匠が来るはずだから一緒に帰れよ?お前一人じゃまた遭難するだろうからな……」

芳香を伴って、使用人用食堂に向かう。

今日は朝から、そこの調理の仕事が有るのだ。

 

 

 

「ふんふふふ~ん♪」

善が手早く調理をしていく。

上機嫌で、茹で上がったソーセージをさらに盛り付ける。

 

「執事長……なんだか、ご機嫌ですね?」

珍しく調理を手伝っていた小悪魔に話しかけられる。

 

「そうですかね?別にいつも通りの積りなんですけどね?」

 

「お客さんが来てから、張り切ってませんか?」

ニヤニヤと小悪魔が善を肘でつつく。

 

「な!?そんな事ありませんよ、早く作り終って食事しましょう」

 

「クスクス、そういう事にしておいてあげます」

作り終えた料理を運びながら、小悪魔が再度笑った。

 

 

 

「うん!!今日も美味いぞ!!」

善に朝食を食べさせてもらいながら、芳香がはしゃぐ。

最初は他の妖精メイド達も引いていたが、慣れとは恐ろしく半場受け入れられていた。

 

「さて、と……ご飯が終わり次第、師匠を待つために門に行かなきゃな……」

前日、善はレミリアによって師匠の出迎えを申し付けられていた。

というか、手紙にもその事を希望することが書かれていたらしい。

 

「あれ?」

予定で目が回りそうだった善が、この時いつもなら食事を食べにくるフランが来ていない事に気が付く。

 

「おかしいな……まだ寝てるのかな?」

多少の疑問を残しつつも、善は自身の仕事を果たすべく芳香を連れ歩き出した。

 

 

 

 

 

時間は飛び昼の少し前。

 

「ようこそ紅魔館へ、お待ちしておりました」

 

「あら、あなたが執事服なんて、馬子にも衣装ね」

恭しく頭を下げる善を見て、師匠が笑って口元を隠す。

 

「私も着替えたぞー!!」

見て見てと言わんばかりに、芳香が師匠に自身のメイド服を見せつける。

 

「まぁ、かわいいわ。芳香は元がかわいいから何を着ても似合うわね」

笑いながら芳香の頭を師匠が優しく撫でる。

 

「ところで――」

芳香から善の視線を向ける一瞬!!時間にして一秒もないタイミングで師匠が冷めた冷ややかな視線を善に投げつけた。

 

「芳香にメイド服を着せて――ずいぶんお楽しみだった様ね?」

底冷えする様な、周囲の温度が5度くらい下がったようにさえ感じる、言葉を繰り出す!!

 

「えっと、コレは私の趣味ではなくて――」

 

「4日も芳香が帰らないからおかしいと思ってたのよね。

まさか、善が芳香をメイドにしていたなんて……一体どんな淫らなご奉仕をさせたのかしら?」

 

「さ、させてませんよ!!させる訳ないでしょ!?」

 

「さぁ?どうかしらね?あなたの性欲は私の予測を遥かに上回るもの……

家に帰ったら、どんな事をしたのか芳香とあなたの体にた~っぷり聞いてあげるわ」

 

「体に!?」

家に帰ると拷問が決定した!!その日まで震えて眠れ!!

師匠はそこの言葉を残し、図書館に向かって歩き出した。

 

「じゃーなー善!!」

芳香が師匠の後を付いていく。

善は善で他の仕事がまだ残っているのだった。

 

 

 

 

 

「あれ、フランお嬢様まだ起きてないのかな?」

フラン用に一人分残しておいた、食事に手が付いていない事に善が気が付く。

 

「う~ん。持って行ってあげましょうかね」

トレイを受け取ると善はフランのいる地下へと向かっていった。

 

 

 

 

 

「コレと……コレ、あとこれもお願いできるかしら?」

紙に数冊の本のタイトルを書いて小悪魔に渡す。

 

「あ、はい。少々お待ちくださいね」

小悪魔がリストを持つと、パタパタと飛んでいく。

 

「おー、本がいっぱいだぞ!!」

芳香が師匠の隣で、適当な本を取り出しぺらぺらとめくっていく。

 

「傷付けちゃだめよ?希少な物も多いんだから」

心配そうに師匠が声を掛ける。

 

「安心しろ。本当に希少な物は、もっと奥に厳重に封印されている」

師匠に後ろから声を掛ける人物がいた。

この屋敷の主レミリアスカーレットだった。

 

「あらあら、吸血鬼さん。直接顔を合わせる事が出来るなんて、思いもしませんでしたわ」

振り返り、外見用の表情に素早く変わる。

 

「まぁ、座れ。今咲夜に紅茶を持ってこさせる」

レミリアに促され、テーブルに座ると同時に紅茶が出現する。

 

「へぇ、便利な能力ね。

(紅茶がカップの端を濡らしていない……超高速とは違う類ね……瞬間移動にしては、温度が紅茶の92度から91度、もっとも飲み頃の温度……なるほど、時間操作――いや時間停止系か……)」

自身に出された紅茶に口を付けながら師匠が、今の状況を整理する。

 

「一体私に何の用でしょう?弟子入りなら、お断りしていますわ。

私の様な未熟者は弟子を一人育てるだけで手いっぱいですもの」

 

「その弟子の事についてだ」

レミリアが、赤い瞳を師匠に向ける。

通常の力の弱い妖怪なら、それだけですくんでしまうであろう瞳を受けなお師匠は涼し気だった。

その姿を確認し、レミリアはゆっくりと口を開いた。

 

「うちの妹がお前の弟子を気に入った様だ。だから、()()()

レミリアの言葉を聞いた瞬間、師匠の動きが一瞬止まる。

 

「お断りします。あの子を拾ったのは私、せっせと此処まで磨いた原石を手放す気はありませんわ」

余裕を崩さぬ師匠の様子に、レミリアの口角が嗜虐的の歪む。

 

「勘違いするなよ?コレは『お願い』ではない。お前の弟子を寄越せという『命令』だ」

音もなく、首すじに咲夜のナイフが師匠に突きつけられる。

 

「ここで、ドンパチするつもりかしら?」

 

「安心しろ、此処は図書室を模した結界の中だ。

私の友人の魔女が、そういうのが得意でね」

 

「あらあら、怖い怖い。けど、善は私から離れるかしら?」

 

「離れるさ、もう運命は動き出してるからな!!」

 

 

 

 

 

「フランお嬢様?起きてますか?朝食をお持ちしまし――ッ!?」

扉を開き、善がトレイを持ってフランの部屋に入っていく。

一瞬にして善は、この部屋の異常性に気が付いた。

破れ、壊れた無数の家具。少し前に自分が縫ってフランに渡したクマまでもが原型を残していない!!

そして、部屋の中央に立つ生気のないフラン。

 

「あ、レジルだー。おはよー」

 

「お嬢さま!?どうしたんですか!?この部屋は!?」

トレイを、唯一無事だったタンスに置き、フランに駆け寄る。

善が近付くと、フランが不気味な笑顔を顔に張り付ける!!

 

「ねぇ、レジル。レジルは私の事好き?」

 

「は?……え……いや、嫌いでは……ないですよ?」

いきなりの質問に、しどろもどろになりながらも答える。

 

「私、レジルの事好きだよ。遊んでくれるし、ごはんおいしいし、見ていて楽しいし……

ねぇ。()()()()()()()()

 

「はい?何を言って――」

突如、フランが牙をむき善の首筋に噛みつこうとする!!

善はそれを突発的にはたいて回避する。

痛みを感じ、右肩を見ると服が破れ血が流れていた。

 

「何をするんですか、お嬢様!!」

肩を押さえながら、善が尋ねる。

 

「ねぇ……ねぇ、ねぇ!ねぇ!!レジルは、仙人に成りたいんだよね!!私知ってるよ?昨日夜、パチュリーに頼んで仙人の事教えてもらったんだ。

不老長寿になりたいんでしょ?なら、私がレジルを不老不死にしてあげるよ……

私がレジルを噛んで、私の眷属にしてあげる!!

そうすれば、とーっても簡単に長生きできるよ!!

だから……だから私の、眷属(モノ)になって!!」

 

いつも以上にかみ合わない、フランの言葉。

善はいつもとは別の意味で、恐ろしい物を感じた。

 

「ごめんなさい……お嬢様。

私は、お嬢様の眷属には成れません。私の欲しい物はソレじゃないんです。

さ、朝ご飯を食べましょう?今日も、やることが――」

 

「違う!!違う!!違う!!」

フランの体から、妖力があふれ出し、踏み抜いた床がひび割れる!!

ビリビリとうねる妖力に善が、ひるんだ。

 

「お嬢様……紅魔館の執事をしている間は――」

何とかフランをなだめようと善が、近づいていく。

 

「ソレ、後何日?もう10日無いんでしょ?たった、たった10日でレジルは私の前から消えるんでしょ?」

 

「お嬢様……」

 

「成れ……私の、私の眷属に成れ!!

私の物に、私の物にしてやる!!」

牙をむいて、フランが善に跳びかかる!!

 

「な――ぐぁ!?」

フランが善を壁に叩きつける!!

善の両手を、自身の両手で押さえつけ目を真っ赤にして牙を善に突き立てようとする!!

 

ガチン!!ガジン!!と目の前でフランの血走った顔と牙が何度も善を狙う!!

 

「放せ――!!」

バチィン!!

と弾ける様な音がして、フランがその場から飛びのく!!

 

「へぇ……こんな事出来るんだ――」

フランが自身の手から流れる血を見て、つぶやいた。

 

「師匠の所で手に入れた力です……」

善の両手に赤い雷のような、弾ける気が巻き付いていた。

 

「生意気ぃ!!レジルをボロボロにして、私に助けてくださいって命ごいさせてあげるから!!」

フランが、レーヴァテインを構える!!

炎が巻き付き、ますます剣か槍か杖かさえも解らなくなる!!

 

「死なない程度に――壊してあげる!!あはははっははははははは!!!」

狂気を纏うフランの一撃!!

咄嗟に善は、札を探すが持ってきていない事に気が付く!!

使用人室に行かなくては無い!!

 

「逃げるしかないか!」

そう決心した、善のすぐ脇を圧倒的熱量をもつ物質が通り過ぎていく!!

石造りの壁がヒビ入り、わずかに石が解ける!!

 

「くっそ!!」

扉を突き破り、善が走り去る!!

逃げるのも、戦うのも道具が無くては出来ない。

それほどに、フランと善の実力差は有った。

 

 

 

 

 

「ぐふっ!?…………お嬢……様……申し訳……ありませ……ん」

本棚に叩きつけられた咲夜が、意識を失い倒れる。

 

「普通の人間が此処までやるなんて、正直びっくりね」

師匠が笑いながら、倒れる咲夜に視線を向ける。

余裕の態度だが、完全に無傷とは言えなかった。

 

(正直言って状況は拙いわね……思った以上に札を使い過ぎた……)

自身の持つ札が心もとない事を、師匠が僅かに不安に思う。

 

ガラララ!!ガシャーン!!

 

その時足元から聞こえた、音に師匠が一瞬だけ意識を取られる。

 

「どうやら、地下でも始まった様だな……」

 

「?」

 

「お前の弟子をフランが獲りに行ってるのさ。

最悪私はここでお前を、足止めすればいいだけだ」

余裕の態度をもってレミリアが、戦闘が始まって以来初めて椅子から立ち上がった。

紅魔館の主が来る!!

 

 

 

 

 

「アハはッハハハハハ!!逃がさない!!」

フランの投げた、レーヴァテインが壁を突き抜け、廊下を走る善を狙う!!

 

「ぐぅ!?ぁあああああああ!!!!」

体を無理やり逸らし、回避しようとするが背中を撫でる様に炎を纏ったレーヴァテインが通り過ぎる!!

 

「アハハハハハハハハ!!早く私にお願いしないと……まるこげに成っちゃうよ?」

完全にフランは遊んでいた。

無理やり、倒しても心まで折る事は出来ないと理解した為――

 

「何度でも、何度でも!!何度でも!!!アナタを痛めつけてあげる!!

痛くて苦しくて怖くて辛くて悲しくて絶望して――――涙でボロボロになったあなたが私に頼むまでずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと続けるから!!」

 

狂ったように笑いながら、分身した二人のフランが善の両手を引っ張る!!

グギグギと骨が軋み、関節が激痛を訴える!!

 

「ぐぅあああああ!!!!」

 

「どうしちゃおっかな~」

 

「ぺキぺキしちゃおうか?」

左側のフランが、恋人同士がするように自身の指と善の指を絡める。

そして――

 

「エイ!!」

ボギボギボギ!!

 

「い―――ギャァアアアアアアア!!!」

木琴を鈍くしたような音をたて、善の左手の親指以外が全て逆側にへし曲げられる!!

 

「じゃーわ・た・し・は……えーい!!」

今度は右側のフランが、善を壁に叩きつける!!

数度の戦闘で、脆くなっていたのか壁が砕け鼻を打った善が鼻血を流す。

 

「ごぶぅ……」

鼻と口から漏れる血を右手で拭う善。

立ちあがろうと、足に力を入れる。

 

「ねぇ、私にも頂戴?」

フランが、善の右頬を指で切り傷を付け、流れ出る血を舐めとる。

 

「ツッ!!」

傷口に舌でほじくられる痛みを感じながら、善がフランを振り払う。

 

「あー、おいしいなー。これから毎日コレが飲めるんなんて、夢の様!!」

くるくるとその場でフランが笑いながら飛び回る。

 

「ねぇ、そろそろ私の物に成る気になった?早くしないと……死んじゃうよ?」

倒れる善の目の前にフランが降り立ち、顔をすぐそばまで近付ける。

 

「断ります……私は、仙人以外に興味は――」

 

「チッ、うっさいな!!もう!!仙人仙人って!!」

レーヴァテインを振りあげ、善の左腿に振り下ろす!!

 

ボギィ!!

 

「ぐぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

目を見開き、血が出るほど歯を食いしばる!!

 

「ねね、良い物見せてあげる」

 

「フーッ!!フーッ!!痛!!」

フランが善の左腿の傷に自身の指を滑り込ませる!!

グジュ……グチッ………………………ブジン!!

 

「あは♪取れた、見て見て!!レジルの足の骨!!」

フランがまるで、珍しいオモチャを見つけたかのように、善の目の前に血だらけの骨を突きつける。

 

「これでもう、歩いたりで出来ないね!!」

 

「……………………」

笑顔のフランと対照的に善が、無言でフランを睨む。

その瞳にまだ光は宿っている。

 

「何?その目は!?諦めなさいよ!!もうその足じゃ、逃げるどころかまともに生きる事も出来ないのよ!?私に頼んでよ!!

『フラン様の眷属にしてください』って言いなさいよ!!」

 

「……………………嫌です」

 

「~~~~~~~ッ!!!ああああああああああ!!!

どうしろっていうのよ!!どうすれば満足なのよ!!!」

善を持ち上げ、廊下の向こうまで投げ捨てる!!

その方向は使用人室だった。

 

「はぁはぁはぁはぁ……」

その事に気が付いた善が這いずりながら、使用人室のドアを開ける。

 

「善!!どうしたんだ!!?」

中に居た芳香が、倒れる善を抱き上げる。

 

「よう……少し……子供のわがままに付き合っちまったんだ……お前こそ……師匠はどうした?」

師匠と一緒にいったハズの芳香を見て、善が疑問を呈す。

 

「私だけ、壁抜けで結界から外に出れたんだ。善を助けてやれって言われて……」

 

「そうか……心強いな」

芳香に肩を借りた善が、机の中から師匠の仙術包帯と2枚の札を取り出す。

 

ギシィ!!

 

それと同時に、壁が壊されフランが飛び出して来る!!

 

「みぃ~つ~け~たッ!!」

善を見ると同時に、レーヴァテインでわき腹を殴りつける!!

 

「ぐぅ!!」

芳香を巻き込んで、善が吹き飛ばされる。

 

「しまった!!」

その衝撃で、善が手に持っていた2枚の札を放してしまう!!

空気中を舞い、一枚はフランの近くへ。

もう一枚は、善とフランの間に落ちる。

 

「これを!!」

 

「させない!!」

善とフラン、二人が同時にその札向かって跳びかかる!!

 

 

 

 

 

「取った!!」

フランが手にした、札を善に見せびらかせる。

もう一枚の方の札を拾い上げ……

 

「仙人の力なんて――こう!!」

ビリィ!!

あっけない音をたて、あっさり札が引きちぎられる!!

炎で燃やされ、炭へとなっていった。

 

「あはははははは!!どう?レジル?あなたの希望はまだ何かある?」

 

「……くそ…………」

 

()()が最後だよね?」

フランが視線を芳香に向ける。

 

「今日から、貴女のもらって来たレジルの笑顔は私の物だよ?

そこで、じっくりレジルが壊れるのを見ててね!!」

レーヴァテインを振りあげ、芳香を狙うフラン!!

 

「待て――!!」

片足で跳びあがり、フランと芳香の間に自身の体を滑り込ませ、指の折れた左手でレーヴァテインをガードする!!

紅い炎と赤い気が反発し合って、周囲に人の肉が焼ける匂いが充満する!!

 

「わっと!!いったい何してるの!」

フランが慌てて、レーヴァテインをどかす。

 

「芳香……無事か?」

 

「わ、私は大丈夫だ……けど……善が……」

お互いを心配し合う二人。

未だ壊れぬ絆――すべてを壊す者が未だ壊せぬ物…………

 

「うわぁあああああああ!!!壊す!!壊してあげるから!!!!!!!!!!!!!ああああああああああああああ!!!!壊す壊す壊す!!壊すああああ壊す!!!!」

 

「ごぼっ?」

フランがレーヴァテインを善の腹に突き刺す!!

皮膚と内臓と骨を貫通して、石の壁に突き刺さる!!

仙人としての力を使えば、死は免れるだろうが非常に危険な状況なのは間違いない。

最早、善の生死など関係なかった。

ただ、気にくわないモノを壊すだけの存在にフランは成っていた。

 

「貴女を――壊せば……レジルは私を見てくれるよね?」

壁際に追い込んだ芳香の目の前で、フランが歪に顔をゆがめる。

最早笑っているのか、泣いているのか、怒っているのかさえわからなかった。

 

「よしかぁああああ!!!うぉおおおおおおおおお!!!」

善が自身の腹に突き刺さったレーヴァテインに手を掛ける!!

 

「きゅっとして――――――」

フランが右手を構えると同時に、善の視界にある物が飛び込んできた。

そしてソレに手を伸ばす。

 

「どかー……」

 

「むぅん!!」

手を握ろうとした、フランを善が押しのける!!

突き飛ばされたフランが目を白黒させる。

 

「何で!?どうして動けるの!?」

芳香に肩を貸してもらい、右手にへし折れて半分になったレーヴァテインを持った善を睨む。

 

「なにって……コンティニューしただけですよ……」

ポロリと善の口から何かが零れる。

青い色をしたガラスのようなパーツ……

 

一瞬既視感を感じたフラン、アレは何かと思考を巡らせる。

そして答えにたどり着いた。

 

「それって……私の……」

 

「そう……前にもらった……羽の結晶ですよ!!」

フランの羽の結晶!!それはその名の通り吸血鬼という最高クラスの妖怪の一部!!

欠片とは言え、大量の妖力を含む!!

それを善は取り込んだのだった!!

だが!!

 

「止めなよ……人間にとって妖力は猛毒だよ?死んじゃうよ?」

震えながら、フランが止める。

この行為ははっきり言って自殺行為以外の何物でもない。

 

「お嬢様は何言っても聴かないでしょ?なら、私は――自分の力で此処を出ていきます。

芳香ァ!!でかいの一発やるから、俺の体支えてくれ!!」

 

「わかったぞーー」

芳香が善を強く抱きしめた。

 

「ま、待って!!それ以上は!!それ以上はだめだよ!!本当に死んじゃうから!!」

 

「ダメ押しのコンティニュー2回目!!」

ポケットから、もう一つのフランの羽の結晶を取り出す。

 

「だ、だめぇええええ!!」

フランが跳びかかるのを無視して、2個目の結晶をかみ砕き妖力を体内に取り込む!!

自然の気を取り込むのと同じ要領で、体に大量の妖力がまわる!!

妖気が人体を攻撃しようとするが、抵抗する力で無理やりねじ伏せ取り込んでいく!!

 

「仙人舐めんな!!」

へし折れたレーヴァテインに気を纏わせ頭上に振りあげる!!

善の赤い気に反応したのか、善の持つレーヴァテインに青白い炎がまとわりつく!!

 

「必殺!!【邪帝の鉄槌(ルシファーズ・ハンマー)】!!!」

振りあげたレーヴァテインはフランではなく、壁を破壊する!!

壊した壁から、吸血鬼の弱点である日光が降り注ぐ!!

 

「熱ッ!!」

突如降り注いだ日光に、フランがひるむ。

善はゆっくりと光の道を歩き出した。

 

「ま、まって!!レジル!!」

フランに背を向ける善。

追いすがろうにも、日光の中には手が出せない。

 

思い返せば、善は一回としてフランを倒すことを目的にした攻撃をしていなかった。

全て、逃げる為だけだった。

 

「善ー、良いのか置いてきて?」

 

「はは……まともに話できる状況じゃ……ねーよ……やべぇ……目がかすんできた……」

芳香に連れられる善の体中から血が流れている。

 

「あら……ずいぶんボロボロね?」

師匠が同じく、屋敷の上部から出て来る。

 

「あれ、師匠無事だったんで?」

 

「ええ、あの吸血鬼の従者をキョンシーにして、後は私の鑿で天井に穴をあければ余裕だったわ」

それを聞いて安心したのか、善がゆっくり倒れる。

 

「レジル!!」

自身の体が焼けるのを無視して、フランが善の元に走って来る!!

 

「ああ!!ああああ!!私が、私が悪いの!!お願い!!レジルを、レジルを助けて!!こんなことする気なかったの!!ただ、私のそばにいてほしかっただけなの!!」

泣いてフランが師匠に、まとわりつく。

その泣き顔に対して、師匠が笑顔で答える。

 

「無理ね。コレはもう死んでるわ、魂が体に戻ろうとしても、体が壊れちゃどうしようもないわね。

ほら、見てごらんなさい。()()()()

 

「え?」

善の体から薄らとした光が漏れ出す。

そして最後に体から脱皮するように、一匹の蝶が出て来る。

 

「レジルの……」

 

「魂ね」

ふらふらと蝶が、空に向かって飛んでいく。

 

「いや……行かないで!!行かないでえええええええ!!!」

フランが必死になって手を伸ばすが、遠く遠く届かない。

 

「行きなさい。芳香」

 

「おーう!!」

師匠の命令で、芳香が飛び出して――食べた。

グシャ!!ムシャ……ムシャ……

 

「あ……あ……」

 

「行くわよ。はぁ、善には期待していたんだけど……はぁー、無駄な時間食ったわね」

芳香を連れて、師匠は帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「善、起きなさい」

 

「ん……んん?なんですか師匠?」

 

「あれ?師匠少し背、伸びました?」

 

「あなたが小さくなったのよ?今の方が前よりかわいいわね。

芳香ー、鏡見せてあげて?」

 

「わかったー」

芳香が、巨大な姿見を持ってくると……

 

「な、なんじゃこりゃー!?」

鏡に映ったのは……中性的な容姿をした幼い子供だった。

 




集え!!カリスマブレイカー!!

レミリア様のカリスマをブレイクせよ!!
カリスマブレイカー大募集!!

用意する物、カリスマを壊そうとする強い気持ち。
皆の好きなシチュエーションでレミリア様のカリスマをブレイクしよう!!

突然の納豆でブレイク!!

「ふ~ん、ふふーん……!?うわぁ!?私の紅魔館が納豆におおわれている!?誰がこんなことを!?」

咲夜の告白でブレイク!!

「お嬢様……実は……私の本体は胸のPADなんです、この体は適当に洗脳しているだけに過ぎないのです……」

「マジで!?」

サプライズパーティでブレイク!!

「「「「おめでとーう!!」」」」

「え!?なになに!?今日私の誕生日って知って――」

「いや、なんとなく騒ぎたくなっただけです」

思い人からの告白でブレイク。

「お慕いもうしております!!」

「うッ……うれしい……夢じゃないわよね?」

「ええ、もちろん」

不憫なレミリアが書きたかったんですが書けなかったのでここに。
因みにいないと思いますが本当に募集されても困るだけなので、各自勝手に投稿してください。

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