最近熱くて、なかなか書く気が起きない……
スランプ以外で書けなくなるとは……
俺……じゃなかった、私の名前は詩堂 善(しどう ぜん)
ただ今、仙人目指して修行中です。
師匠の修行は厳しいけど、きっとそれも私の事を思っての事。
うん……そう、たぶん。おそらく、きっと……あれ?どうして涙が出るんだろ?
と、兎に角今日もがんばります……はぁ……
3月の半ば、善たちの住む家の居間に3人の住人が集合していた。
家族会議ならぬ、師弟会議とでも言うべきか……
今回の議題は?
「さて、いきなりだけど……今、我が家は財政難よ」
ため息を付くように師匠がそう話す。
「財政難?特に贅沢をした気は無いんですが……」
「私も毎日ご飯は4杯までで我慢してるぞー!!」
善と芳香がほぼ同時に口を開いた。
ちなみに芳香はあまり我慢していない。
「実はちょっと高い買い物をしちゃってね?そのせいなのよ」
テヘッと師匠がウインクし、舌を出す。
かわいらしいがなかなかにつらい状況である。
「ええ……師匠のせいじゃないですか。
なんで私たちに相談するんですか?
って言うか、今更ですが生活費的なのは何処から出てるんですか?」
「あら、家の収入源が気になるの?確かに弟子から授業料も取ってないし、芳香のメンテナンスには定期的にお金も使うし、気になるのも当然よね。
実は、人里の人に私の作った薬なんかを売ってるのよ、効果は抜群で里に行く度に
『頼むよ、仙人さん!!……薬を……薬を売ってくれぇ……金はいくらでも――」
「もういいです!!それ以上言わなくても良いですから!!それ以上はいけない!!」
そこまで口に出し善がそれ以上の師匠の言葉をかき消す。
『聞いてはいけない』本能がそう判断した!!
「うふふ、冗談よ。ちゃんと墓場の死体から使える内臓を取り出して――」
「ああもう!!知らない!!私は何も知らない!!ああ!!しまったー!!突然耳が遠く成ったぞ!!難聴系主人公にジョブチェンジしてしまった!!あーあーあーあ!!なーにーもーきーこーえーなーいー!!」
耳を押さえ大きな声をだして、必死に師匠の言葉を聞かない様にする!!
知ったら最後!!知らなかった自分にはもう戻れない!!
「はぁ、全く冗談を冗談と解らない弟子はダメね」
残念な顔をしながら、やれやれと腕を上げる。
「さて、結局馬鹿な事をしていても自体は好転しないわ。
善、あなたに一月分のお休みを上げるわ。
何処か他の所で仕事して、家にお金を入れなさい!!
勿論自主修業は怠ってはダメよ?」
びしっと善に対して師匠が指を突きつける。
善は不満げな態度だった。
「財政難の原因は師匠でしょ?何に使ったかは知りませんが、そこは節約するだのして乗り切ってくださいよ。
流石にコレは弟子の仕事の範疇を超えてます!!」
「黙りなさい。いい?弟子の物は師匠の物、師匠の悩みの種は弟子の物よ。
という事で黙って私の為に働いてきなさい!!」
物わかりの悪い子供に言い聞かせる様に説明を始める。
「ええ……なんですか?その一方的に搾取されるだけの関係は!?」
空気に耐え兼ねたのか、ちゃぶ台の上にある自身の湯呑のお茶を注ぎ口を付ける。
「それに、前言ってたじゃない。『私を養ってくれる』って」
その言葉に、善が固まり手に持っていた湯呑を落とす。
足に熱いお茶が掛かるがそんな事気にならないほど、背筋に冷たい物が流れるのを感じた!!
「ねぇ。お父様?私を養って?」
師匠が子供の様に高い声をだして、善に寄りかかる!!
「ちょ!?アンタまさか覚えて――」
「ええ、もちろんぜーんぶ覚えているわ。あなたが私を膝の上にのせて無遠慮に体を撫でまわしたり、お尻に固い物が当たっていたのを……
ああ、あのまま戻らなかったら、無垢な私は善の歪み切った性癖の餌食にされる所だったのね!!
ああ、恐ろしいわ!!」
さっきまでの甘えた態度は一変!!
冷酷な冷たさを目に溜めながら善の耳元で師匠が話す!!
気が付くと、善の胸の当てていた師匠の手に禍々しい雰囲気を纏う札が握られている。
「あ、あひ……」
「ねぇ、善?ここで解体されてキョンシーにされて、馬車馬のように働かされるのと自分で仕事を探すの、どっちが良い?」
冷たい目が善の目ををじっと覗き込んでいる。
選択権は……ない!!
「い、いやー。たまには社会勉強も良いですよね!!適当に仕事探してきます!!」
「私も手伝うぞ!!」
逃げる様に、というか完全に逃げだが、慌てて居間から飛び出した!!
善の後を事態を理解していないのか、芳香が楽しそうに付て来る。
善の部屋にて……
「所で善。お尻に当たっていた『固い物』ってなんだ?」
「事実無根だ、お前は知らなくていいんだよ」
芳香の疑問に優しく善が答える。
「さて、働くって言っても何の仕事をすべきだ?急に仕事って言ったってな。
なるべく楽なヤツが良いんだけど――」
ガラッ!!
「善さん!!話は聞きましたよ!!私に任せてください!!」
突然善の部屋の押し入れが開き、中から橙が出現する!!
自信満々といった様に胸を張る。
「橙さん?……一体いつから押し入れに?っていうか、平然と不法侵入……」
善が指摘するが橙は気にしない!!
というより無駄である事を善は半分理解しており、半ばあきらめの境地!!
「善!!何時もの猫だ!!」
「追い出しても追い出しても入ってくるんだよな……橙さん、後で布団に付いた毛取っておいてくださいね?
寝る時、芳香に付くと困るから………」
何だかんだいって、最終的に善にツケはやって来る事を知っている。
「で?紹介してくれる仕事って言うのは?」
「簡単ですよ、マヨヒガでの仕事です!!
具体的には私の部屋で寝転がりながら天井のシミの数を――」
バタン!!
橙の言葉を無視して、善は押し入れの戸を閉めた!!
つっかえ棒をして、押し入れを開かなくする!!
中から激しく戸を叩く音が聞こえる!!
(ぜんさーん!!あけてー!!すぐに終わりますから!!大丈夫!!初めてでも優しくしますから!!さぁ!!恥ずかしがらずに!!)
尚もくぐもった橙の声が聞こえるが善は気にしない!!
無視して外に出かける準備を再開する!!
「善、あの仕事しなくていいのか?」
「あ、うん。大切な物を失ってしまうからね。
この世には、お金よりも大切な物が有るんだよ」
嫌にいい笑顔をして芳香の頭を撫でる。
支度を済ませた善が出ていった後も、しばらく橙の戸を叩く音は聞こえていた。
「ほぅ……それで儂の所に来た、と?」
命蓮寺の離れの一角に善が座っていた。
目の前に居るのは狸の親分のマミゾウだった。
「うん……人里、特に商売の事なら俺よりも詳しいかなって思って」
そう話す善の前でマミゾウがキセルを口に咥え、試案する様に腕を組む。
「ふぅ~む。いきなり来て仕事を寄越せとは……はて、今善坊に出来そうな仕事は……
よっと、何か有ったかの?」
ヒョイっと、違い棚から一冊の本を取り出しぺらぺらとめくる。
しばらく無音の部屋に、紙をめくる音だけが響いた。
「む。これじゃな……!」
マミゾウが一つの仕事を見つけ二ヤリと嗤う。
数分後、詳しい内容を知る狸と善は再び、人里に向かう事になった。
木製の扉を誰かが叩く。
此処は人里の家の一部、商売をしていたが家主の無計画が祟って結局潰れた反物屋だった。
「ちッ!誰だよ……こんな時間に……」
ぶつくさ言いながら元反物屋の主人が、扉を開ける。
そこに居たのは小さな少年の様な妖怪。
背中から覗くのは、その小さな身には不釣り合いなくらいの大きさの狸の尻尾。
狸の妖怪の様だった。
「こんにちは……二ツ岩組の者です……貸したお金の返済期限が――」
気弱な性格なのか、怯えた様に言葉を発する。
「ああ?悪いが返せるモンはねーよ。こっちも、金が無くて――うっ!?」
男の視線が後ろに、向かった瞬間言葉が止まる!!
何時もの妖怪の後ろに居たのは――!!
「
善が暇そうに立っていた、その時あくびをするのだが、住人の乗っては大口を開けてこちら等を威嚇している様にしか見えない!!
「ああ!?」
更に横に居る、キョンシーを発見して男が情けないレベルの悲鳴を上げる!
(
消す気か、俺を消す気満々じゃねーか!?
ああもう!!妖怪相手に金を借りたのがいけなかったのか!?)
「す、すいませんでしたぁあああああああ!!!
ま、まだ新しい仕事が見つかってないのでゆるしてくださあぁあああいいいいい!!」
その場で、男が土下座して地面に自身の頭を激しくこすりつける!!
「え、あの……ちょっと?」
豹変した態度に、狸の少年自体が躊躇する。
「ど、どうか命だけはぁあああああ!!!」
尚も土下座を続行する男!!もはや、プライドや意地などすべてがどうでもいい!!
といった感じである!!
「ぜーん。なんであの男、善の座り方してるんだー?」
「芳香、アレは俺が独自に考えた座り方ではなくて、相手に対して許しを請うポーズなんだよ……
うーん、頭のこすりつけ具合が悪いな、悲壮感が足りない……」
芳香の言葉に若干心を痛めながら善が、男のポーズの問題点を上げていく。
最早土下座のプロというべきレベルの善からすればフォームはまだまだの様だ。
「流石善だな!!しょっちゅうしてるもんな!!」
あはは、と楽しそうに芳香が笑った。
あはは、と善も渇いた声を漏らした。
「と、兎に角、払えないって言うのなら一回親分の所まで来てもらっていいですか?
細かい部分は、その時に……物品回収でも構わないそうですが……」
「な、なら!!売れ残った反物が有ります!!す、すぐに持って来ますからあああ!!」
狸の少年と話していると男が、家の中に走りこんで上等な反物を幾つも持って来た。
それを受け取って少年が満足げに頷いた。
「これだけあれば問題ありません、返済は完了という事にしていきますね」
カバンから伝票を取り出しさらさらと、メモを書き終ると男に渡した。
「あ、ありがとうございますうぅぅぅぅぅぅ!!!」
去っていく3人を見ながら、男はいつまでも頭を下げ続けていた。
「ふぅ……何とか一件おわったぞ」
狸の少年がメモを見ながら、一人つぶやいた。
「一回反物をバァちゃんの所へもっていきますか?」
反物を背負いながら善が、狸に聞いた。
正直いって、これを背負ったまま一日中歩くのは骨が折れる。
「あ、大丈夫ですよお孫さん。この近くに親分の系列がやってる質屋が有りますからそこに置いて置きましょう」
そう言って近くにある店を指さす。
「バァちゃん、いろいろ商売に手を出してるんだな……」
改めてマミゾウの影響力の大きさに善が驚く。
偶に、離れの掃除を任されたり茶屋に行ったりするが、善本人が思っている以上にマミゾウの力は人里では大きい様だった。
*本人は気が付いていないが、善も同じくらい
「お孫さんもすごいですよ!!いろんな妖怪と知り合いなんでしょ?
この前の宴会もそうだったじゃないですか!!」
狸の子が目を輝かしながら善に話す。
「ん?宴会?あれ?その時会ってた?」
ずいぶん前にやったマミゾウ達との宴会を思い出す善。
確かに無数の狸が居たので、この子が混ざっていても不思議ではない。
「嫌だなぁ。お孫さんが僕に芳香ねぇさんの場所を聞いたんですよ?」
その言葉に善が合点がいった。その場でポンと手を叩き合わせる。
「あー!!覚えてる覚えてる!!あの時の子か。
人間に化けれる様になったのか!!」
まるで知り合いの小さな子の成長を見る様な気分になり、狸の子を頭を善が撫でる。
「あー!私が善を食べた時の事だな!!」
芳香が懐かしそうに善の肩を叩き話す。
何故か少しよだれが零れているが、気にしてはいけない!!
「そうだよ!!あの恐怖はもう味わいたくないな……
にしても……よくそんな昔の事覚えてるな?もう少し記憶力が悪いと思ってたぞ?」
「ふふん!!私は善の事はちゃーんと覚えてるんだぞ?
なんて言いながら、謝っていたか全部言えるぞ!!
まずは――むぐ!?」
「言わなくていい!!言わなくていいから!!むしろそこは忘れろ!!」
善の情けない部分を、暴露しようとする芳香の口を善が必死になって抑える!!
「あはは、お孫さんと芳香ねぇさんは仲がいいですね」
そう言って、狸の少年が笑いかける。
そんな事を話しながら質屋に、受けとった反物を収める。
「さて、午後からもお願いしますね」
軽く食事を済ませた後、狸の子が立ち上がり歩き出す。
まだまだ、やるべき事は有る様だった。
「あ!!善さーん!!」
人込みを歩くと、小傘が歩み寄って来る。
話によるとベビーシッターの仕事だった様だが……
「もう仕事終わったんですか?」
「うん!!予定より早く繰り上がって……
善さんは何を?」
小傘が何時ものメンバーに居ない狸の妖怪の子を見て、不思議そうに語る。
「いろいろありまして……今は、借金取りみたいな事をやってます……」
「お師匠さん……か」
善の気まずそうな顔と、その態度でおおよそ起こりうる内容を予測した小傘が同情の視線を送った。
この妖怪、だんだん師匠の行動に慣れてきている様だった。
「私も手伝うよ!!」
借金取りの部分に何か感じ得る所が有ったのか、小傘が意気揚々と言った具合で善たち一行に加わる。
「ごらぁ!!金返さんかい!!人として当然の事ちゃうんかい!!」
「ひ、ひぃいいい!!すいませんでした!!」
まるで黒塗りの車に乗ってそうなお兄さんの様な口調で、住人を脅す小傘!!
何処から持って来たのかサングラスまでかけて、やる気は十分の様である!!
から回っている感が否めないが……
この妖怪!!すさまじくノリノリである!!
「小傘さん!?何をしているんですか!!明らかに怯えてるじゃないですか!!」
小傘の服を掴み、怯える人の前から連れ出す善。
小さな声で、小傘を叱りつける。
流石にコレはまずいという善なりの判断だ。
「いやー前読んだ、外界の本にこんな場面が有って……いつかやってみたいなーって思ってて……」
「ダメですってば!!完璧ガラの悪い人ですからね!!」
「この家の分終わりましたよー」
狸の子がほくほく顔で、高そうな日本刀を持ってくる。
今回も物品回収に成った様だ。
(この狸の子……意外と
楽しそうにする狸の子を見て善がそう判断する。
その後もメンバー達の回収作業は続く。
「さて、今日の分は全部終わりましたよ」
やり切った顔をして、狸の子が帳簿を見る。
そのまま、マミゾウの入る離れまで帰っていく。
「おお、お疲れさまじゃな」
行くときと同じように、マミゾウがキセルを吹かせながら善たちを迎え入れる。
狸の子の帳簿を確認しながら満足げに頷く。
「うむうむ。ようやった、ようやった……
さて、とこれからどうするかな……」
そうすると再び、マミゾウが試案を始める。
「バァちゃん。もう、お金の回収はいいの?」
あれですぐ終わると考えていない善が疑問を話す。
影響が大きい分、回収しきれない所も多く有ると思っていたため少し拍子抜けだった。
「ん?お前らが帰って来る少し前な?貸してた奴らが命からがらといった様子で、わしの所に直接会いにきての。
金を返すなり、物品を渡すなり、期限の延長を頼むなりしていったわ」
かかとのどを鳴らし、笑うマミゾウ。
実の事を言うと、コレは半場予想通りの結果である。
人化したばかりの狸に自信を付けさせる目的と、善の悪評を使い里の中の滞納者を一斉に慄かせる事に成功したのだ。
「ほれ、給料じゃ。若干色を付けておいたから、感謝するんじゃぞ」
そう言って善にそこそこの厚さの有る封筒を渡した。
「バァちゃん、ありがとう……」
「さて、お前のお陰で助かったわい。もう一件、住み込みの仕事を見つけといてやったでの、早速行ってみるがいいぞ」
そう言って別のチラシを、善に渡した。
「何から何まで……うん、今から行ってみる!!
芳香、師匠にコレ渡しておいてくれ」
それだけ言うと、小傘と芳香にもらった給料袋を押し付け出て行った。
「ふむ、忙しい奴じゃな……ま、いいか。
活力にあふれておる事は良い事じゃしな……」
「本当のおばあちゃんみたいだなー」
マミゾウの言葉を聞いて芳香が話す。
「キョンシーの嬢ちゃんか……お主の主人の方が儂より年上なんじゃよな……
もう少し若つくりすべきかの?」
マミゾウが一人悩み始める。
「ほっと!!はっと!!」
気功翔脚を使い善が、跳ぶ様に走っていく。
目的は渡された紙に書かれた住所の場所。
住み込み・制服貸与・3食、食事付・体の丈夫な人優遇・家事手伝いの簡単なお仕事です……等のうたい文句がそのチラシの載っていた。
貰った休みは一か月。その期間帰る事の出来ない善にとって、住み込みと食事が付くのは善にとって非常に好ましい条件である。
逃す訳にはいかない、好条件なのだ。
しばらくして立ち止まり、確認の為再び懐からチラシを取り出す。
「えーと……霧の泉近くの――チルノ達の居た所だよな……
確認を済ませると、視線の向こうに霧に隠れてうっすらと紅い壁の様な物が見える。
「あれか!!」
そう言って善がその場所に向かって走り出した。
カチャーン!!
紅い絨毯の上に、紅茶が零れる。
割れたカップが、一瞬にして消え絨毯のシミまでもがきれいに掃除される。
そしてテーブルの上に落としたはずの紅茶が、湯気を立ててのっていた。
その紅茶に口を付け、小さな影が面白そうに口を開いた。
「へぇ……これは面白い運命が来たわね――」
二ヤリと嗤うその口には小さな尖った歯が見えていた。
遂に舞台は、あの場所へ!!
なんだかんだ言って、一番良く書かれている場所な気がする。
某メイドの兄弟に成りたい人や、某吸血鬼姉妹の兄弟に成りたい人が多いのかな?
一度でいいから、それ系を描いてる人の合作が見て見たいです。
何人兄弟になるのやら……