止めてください!!師匠!!   作:ホワイト・ラム

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さて、今回もコラボの最終回デス。
最初に話すと、今回ビックリするほど話が長くなりました……
やりたいことを詰め込み過ぎた結果ですね……

次回よりまた通常回に戻る予定です。
よろしくお願いします。


コラボ!!星の一族の末裔が幻想郷で暮らす様です3!!

「『皇帝(エンペラー)』!!」

メギャン!!と独特の効果音と共に善の右手に金色のリボルバーとオートマチックピストルを合わせたような銃のスタンドが現れる。

 

「スタンド……お前もか?だか、なんだそれは?ずいぶん小っちゃいスタンドだな?

何かの道具か?」

妖怪が、自身の背後にスタンドを出現させる。

濁った白とでも言うべきらカーリングの、頭に角の様な物が生えた人型が妖怪を守る様に立っていた。

 

「そうか、ここの妖怪は『銃』を知らないのか……

そして……『アレ』がスタンド像か」

ウェザーリポートを自身の視界に収め、善がつぶやく。

 

「まぁいい!!さっさと、トドメだ!!ウェザーリポート!!」

妖怪が指を指すと同時に、ウェザーリポートが腕に風を巻き付け殴ってくる!!

フォン!!

と風を切り善の右拳がウェザーリポートの左拳と空中でぶつかり合う!!

 

「ぐぅああああああ!?」

ウェザーリポートの腕にヒビが入り、妖怪が苦痛の余り悲鳴を上げた!!

 

「なるほどね……能力は共存可能か」

善の右手の指の間から、赤い気を纏った弾丸が覗く。

コレはエンペラーの弾丸。

出現と同時に善が指の間に握りこんでいたのだ。

 

「スタンドはスタンドで狩れる。なるほど一回クッションが有れば俺の『抵抗力』もまだまだいけるな!!」

今度は妖怪に向かいエンペラーを構える!!

右手で銃身を握り、左手を添え抵抗する力を纏わせる!!

 

「ファイア!!」

マズルフラッシュが瞬き、3発の銃弾が発射される!!

 

「く……はぁ!!ッ――その程度!!叩き落せ!!ウェザーリポートぉ!!」

 

『シュアー!!』

弾丸にウェザーリポートの拳が向かう!!

先ほどよりもずっと早く、そしてずっと大きな竜巻を纏っている!!

ウェザーリポートが銃弾を叩き落す瞬間、弾そのものが移動コースを変える。

 

「あ……え?」

 

「弾丸だってスタンドなんだ。これ位出来るさ」

驚く妖怪のしり目に善がニヒルに笑いかけた。

弧を描くように3発の弾丸が、スタンド像を避け……

追い込むかのように、妖怪に襲い掛かる!!

 

「グぅ!?」

妖怪の右肩に弾が食い込む!!

 

「がはぁ!!」

今度は左膝!!

痛みを堪え妖怪が前を向く。

最後の一発の弾丸が軌道を変え、眉間めがけて気を纏いながら飛んでくる!!

 

「や、やめろぉぉおっぉお!!!」

恐怖にかられた妖怪が叫び声を上げるが弾丸は止まらない!!

ピスッ……

驚くほどあっけない音がして、妖怪の額に最後の弾が命中した!!

ドサッと音をたて、力なく地面に倒れた。

それと同時にウェザーリポートの姿が書き消える。

 

「あーあ、変なの拾っちゃったな~。

コレ外せるかな?

ん、呼吸も楽になったな……」

そんな事を呟きながら深呼吸をし、善が妖怪の横を通り過ぎ墓場の家に帰ろうとする。

セーちゃんと芳香たちの無事の確認が最優先だった。

「…………おい、もう立つなよ」

 

「……ウェザぁああああありぽおおおおおおとぉおおおおお!!」

善の背後から、出現したウェザーリポートが手刀を善の頭部に振り下ろす!!

 

ガギィン!!

 

「馬鹿な!?」

ウェザーリポートの一撃はエンペラーで止められていた。

そしてそのまま、腕を掃いのける!!

後ろに振り返り妖怪を蹴り飛ばす!!

 

「がハァ!?……うぐッ………お慈悲を……」

倒れた妖怪の腹を踏み、善が顔面にエンペラーを突きつける。

 

「師匠を子供にした『セト神』の使い手は何処だ」

善の問いの妖怪が息を飲む。

善の目的はあくまで『セト神』の奪還、本来襲い来るスタンドとの戦闘は目的ではなかった。

 

「ここには……来てない……というよりも、もう来ないハズだ……」

 

「なぜ?」

 

「アイツは、鞍替えしたんだ……俺よりももっと大きな力を持ったスタンド使いの妖怪に引き抜かれたんだよ!!」

善はじっと妖怪の言葉を聞いていた。

 

「その妖怪の特徴とスタンド能力は?」

 

「それは俺の知る限りで悪いんだが――」

妖怪がぺらぺらと、スタンドの説明を始める。

しゃべりながら妖怪が、チラリと目くばせする。

視線の先には、小柄な子供程度の身長の別の妖怪。

 

無言で頷き、善の後ろから影を伸ばす。

手に包丁のような錆びた刃物を持つと、影も同じように形が変化する。

無音で、影を伸ばしていく。

これぞ師匠を幼女にしたスタンド!!セト神!!

善の目の前の妖怪の話しなどすべて嘘だった。

全ては善を油断させるための罠だった!!

影さえ触れてしまえば、妖怪たちの勝利は決まったも同然。

スタンドとはまさに無敵の能力!!

セト神の影が善の影と交わり、一瞬にして善を無力な子供に変える!!

 

 

 

…………ハズだった。

 

「はぁ……エンペラー」

ため息をつき。その体制のまま善がエンペラーを後ろに向かって数発ぶっ放す!!

 

「ぎゃぁああああああ!!」

少し離れた墓石の後ろから叫び声がし、何者かが地面に倒れる音がした。

 

「警戒を怠ったとでも?私が?師匠すらハメた奴ら相手に舐めた態度をとるとでも?」

尚も妖怪を見下ろし善が、口を開いた。

その悠然にしてまさに『君臨者』と呼ぶにふさわしい姿に、妖怪は改めて人里で呼ばれている善の二つ名を思い出した。

 

「はぁ……はぁ……頼むよ、見逃してくれ!!もう、もう人は襲わない!!アンタ等にも手は出さない!!な!な?頼むよ!!俺はスタンドを拾って調子に乗ってただけなんだ!!あ、謝るから許して――」

 

「お前、覚悟してきてる妖怪だろ?」

 

「え?」

 

「相手を『始末』するってんだ、逆に『始末』されるかもしれないって危険を、常に覚悟しているんだろ?」

妖怪の目の前に再び、エンペラーの銃口が向けられる。

 

「ハッ……はぁッ……!!

うぇ……ウェザーリポ――」

パァン!!パァンパパンパパン!!!

スタンドを出そうとした妖怪に向かって、ありったけの弾丸を善は打ち込んだ!!

 

「あ……ぎぃ……」

妖怪意識を失い、気絶する。

頭部の周りをキレイに銃弾が討ち抜いていた。

 

「ま、弾丸だってスタンドだからこの位置からでもハズせるんだよね~

さ~て、承太郎さんに早く引き渡すかな」

そういって気絶した妖怪と、同じくさっき撃った妖怪を墓石の裏から引きずりだし自身の家の方へと向かっていった。

 

 

 

 

 

「ふぅ、『セト神』に『ウェザーリポート』確かに回収したぜ」

承太郎の手の上で2枚のDISCがくるくる回る。

 

「お前の中の『エンペラー』も含めて、残りは4枚か……

DIOの所の『記憶』と『ザ・ワールド』でさらに2枚……

そうすると残り発見できてないDISCは2枚……か」

苦々しく承太郎がDISCを見る。

あれ以来、いくら探してもハーミットパープルで念写出来ないのだそうだ。

 

「くっ、しばらくかかりそうだな……」

そう言って承太郎は自身の湯呑からお茶を飲む。

 

「ふぅん……スタンド能力……ね。

興味あるわー」

青髪の女が、いつの間にか手にしていたDISCを手の中で触る。

彼女こそが、セト神で子供の姿にされていた善の師匠らしい。

何というか……危険な感じのする美女だった。

 

「返せ、触っていいもんじゃねー」

そういって師匠からスタンドのDISCを取りあげる承太郎。

 

「あら、冷たいのね……まぁいいわ。

ぜ~ん、あなたのスタンドを見せて頂戴」

 

「あ……はい……」

師匠の言葉にボロボロになった善が反応する。

師匠がもとに戻った時、徹底的に折檻されたらしい……

顔が痛々しくはれ上がっている。

 

「え、エンペラー……」

善の右手にエンペラーが出現するが……

 

「何もないわよ?」

不満げに師匠が言葉を漏らす。

当然と言えば当然だが、スタンドはスタンド使いにしか見ることが出来ない。

『見せろ』と言われても一般人に見せる事は不可能なのだ。

 

「はぁ……使えない弟子ね」

がっかりと言った様子で師匠が善なじる。

 

「で、承太郎さん。例のDIOとか言う奴のスタンドは?」

 

「農耕をしているだろう場所を当たっても結局いなかった。

農具が後ろに写っているから、絶対それに類推する場所に居るハズだが……」

そう言って承太郎が湯呑に口を付ける。

どうやら、探しているDIOという男は見つからなかった様だった。

 

「善、私にもお茶」

承太郎と善の会話を区切るかのように師匠が横から口を出す。

 

「はいはい、解りましたよ」

師匠の言葉に善が何処か嬉しそうに台所に入っていく。

やはり、善にとって自身の師匠が無事に戻って来た事が嬉しいのだろう。

たとえそれが、自分自身に無茶を言う師匠であっても……

承太郎はそんな二人を見て少しだけ、懐かしい気分になった。

 

(師か……悪くないな……ああ、そうだ……師というモノは人生に必要だよな)

そう思い承太郎の脳裏に()()()()()()嘗ての師の姿を思い浮かべる。

にぎやかで楽しい時間が過ぎていく……

 

 

 

そろそろ夜が来る…………

 

 

 

 

 

深夜その時間にDIOが目を覚ます。

僅かに物音がした気がする。

 

(チィ……このDIOが野郎どもと雑魚寝とは……眠れもせん!!)

僅かに苛立ちを感じ、せんべい布団から身を出す。

 

「少し散歩でも行くか……」

誰につぶやくでもなく、DIOが長屋から出る。

冬の空気に触れ、寒さで身が締まる。

夜の中は静寂で包まれていた。

吐く息が白く染まり虚空に消えていく。

 

「今日は新月か……月さえも見放したか」

自嘲気味にDIOが笑い、今日耕した土地に目をやる。

かなりの範囲で開墾され、しばらくすれば畑なり田んぼなり使えるようになるだろう。

 

「コレを私がやったのだ……下賤な仕事だろうと、このDIOにかかればこの通りだ」

今日の事をDIOが思い出す。なんだかんだ言ってまともに働いてしまった。

なぜか解らないが、もう少しここで土地を耕したくなった気がしたのだ。

久しぶりに動かす体が、働くことを心地よく思っているのかもしれない。

 

「よう、土井。こんな時間にどうしたべ?」

 

後ろを振り返ると、この開墾グループのリーダー格の男が立っていた。

年老いた細い腕だが筋肉が程よくつき、まさに働く男の体だった。

いつからいたのか、DIOにも解らなかった。

 

「ふん、お前か」

 

「お前は無いだろう?お前は……

一応お前たちの中心の積りなんだぞ?」

 

口調は怒っているがそれでも、楽しそうに聞こえるのは気のせいだろうか。

 

「知らん。このDIOが声をかけてやっただけで、十分だ」

 

「ははは!!この前からどうしたんだ?ヤケに自信満々で、お前らしくも無い……

まぁ、仕事もきっちりするし、性格もそんだけしっかりしてれば十分だろ」

何処か感慨深そうに話した。

 

「十分とは?」

 

「わしももう年じゃ……体が若い頃みたいに動かん。

そろそろ潮時じゃろうて……な?

初之瀬に次の長を任せるつもりじゃったが、お前の方がふさわしい様じゃ」

DIOの脳内に初之瀬という男の姿がよぎる。

一日中壁に向かってぶつぶつ言っていた危ない男だ。

今日は珍しく外に出たようだが、じっとDIOを見ていただけで、結局鍬を握る事は無かった。

 

「あんな奴と比較していたのか?」

不機嫌に成りながらもDIOが口を開いた。

その感情は相手にも伝わった様だった。

 

「はは……何でか知らんが、少し前妖怪に襲われて以来あの様子じゃった。

心配したが、何も話してくれんのだ……

今夜も何処かへ出かけたみたいじゃしの……わしの力不足じゃな……」

自嘲気味に男が笑った。

 

「さて、帰ろうか?ここは冷える……わしはもう少し初之瀬がかえって来るのを待とう――おや?珍しいな、この季節に蚊か」

 

バチィン!!

 

「ぐはぁ!?」

 

蚊を叩き殺すと同時に、男が体中を何かに叩きつけられたような衝撃が襲い倒れる!!

目を見開き、口から血を流していた。

ひょっとしたら、骨折もしているかもしれない。

 

「おっとっと?爺さんしか掛かんなかったかぁ~!!

あ~あ、便利だけど使いこなすのスゲームズイな!!」

DIOに視界から隠れるように、一体の妖怪が立っていた。

ぶよぶよっとした体に、短い手足が生えていた。

そしてその後ろには黄金のボディをしたスタンドが立っていた。

 

「ゴールド・エクスペリエンス……」

DIOがそのスタンドの名を口に出す。

 

「あへッ?オタクこいつが見えんの?俺らだけじゃ、ねーんだ。

ツッても?俺たち4人は全員見えるんだから?他の奴にも見えてもおかしくねーっしょ?」

驚いたようにな顔を一瞬だけしたが、再びへらへらと語り始める妖怪。

 

「お……は…………D……が……る」

 

「はぁ!?何か言いましたかーーーーーー?」

僅かに聞こえたセリフに耳に手を当て、妖怪がDIOを挑発する。

 

「お前は!!このDIOがやると言ったのだ!!」

DIOを守り立つかの様に黄金のシルエットがこちらにも出現する。

相手のゴールド・エクスペリエンスよりも太くたくましい体、威圧する鋭い眼光!!

そして手の甲に有る時計の様な意匠。

 

「ザ・ワールド!!」

 

「ゴールド・エクスペリエンス!!」

2体の黄金の体を持つスタンドが、夜闇の中でぶつかり合う!!

 

「俺の!!スタンドの力を教えてやるぜぇ!!それは――」

 

「『生命を生み出す力』だろう?知っているさ!!」

ザ・ワールドが野太い腕での一撃をゴールドEに振るう!!

その瞬間ゴールドEが横の岩を叩き、そこから木の枝を生み出した!!

 

「ぐぅ!?」

木の枝を殴った、DIOが苦しみだす。

その胴体には人の拳の様なくぼみが出来ていた。

 

「生まれた生命へのダメージは、攻撃した相手の体に戻る……知らなかったのかい?」

 

「知っていたさ、だから力を押さえこの時間を待っていた!!」

 

「え?――うお!?」

突如妖怪の目の前を砕けた石の破片が襲う!!

破片によって視界が奪われる!!

 

「なに――をした?」

 

「ふん、さぁな!!だが、このザ・ワールドは世界を支配する力を持つとだけ言っておこうか!!」

 

「粋がる――な!?」

妖怪の目の前から、DIOがスタンドごと消えた。

そして自身のすぐ後ろに立っていた。

妖怪には理解できていなかった。

これこそがザ・ワールドの能力、『時を停止』する力だった。

もっとも本体との相性か、2秒ほど止める事が精いっぱいだが……

「な、なにが……」

 

「貴様は、喧嘩を売る相手を――間違えた!!!

WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!!!!」

ザ・ワールドの拳が妖怪の顎を殴りあげる!!

ゴールドEで反撃をしようとするが……

 

「ふん!!無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ぁ!!」

 

「ぐぅあああああああああ!!!」

数えるのもおっくうになるほどの正拳突きラッシュを受け妖怪が吹き飛ぶ!!

人、一人殺せないのなら、その力を相手に効くまで打ち続ければ構わない!!

 

「あっけないな……驚くほどあっけない。

本来の性能の10分の1も出せていなかったぞ」

DIOが倒れ伏す妖怪をみて、吐き捨てた。

そして同じく倒れる、男へと向かった。

触れるまえに、男が寝返りを打った。どうやら気絶だけで死んではいない様だった。

 

「悪運の強い奴だ……」

DIOが倒れる男に手を伸ばした瞬間。

 

「ぐ……は……!!」

男が口から血を流し、物言わぬ骸と成った。

 

「お前は……」

DIOの視線の先に初之瀬が悠然と佇んでいた。

 

『フン!!』

初之瀬の姿が一瞬ブレる、何かが動きDIOの足元に何かが落ちる。

それは獣だった、いや、正確には獣型の妖怪であろう。

 

「あ……ぎぃ……」

白目をむいた、妖怪の後ろで初之瀬がライターに火をつける。

 

『再点火したな!!』

倒れる妖怪の影から、スタンドが出現する。

黒い影法師の様な姿に、黒いマント。

『ブラックサバス』と呼ばれる()()()()使()()()()()()のスタンドだった。

 

「まさ……か……」

呆然とするDIOの前で、ブラックサバスが初之瀬に向かってその両手を突き出す!!

 

「はぁー……『マッド・チェスター(悪意のある場所)』……」

 

『チャンスをやろ――う!?』

ブラックサバスが初之瀬の背後から出現した、怪物に首を掴まれる!!

それは一言でいうと騎士の鎧を纏った機械人形だった。

黄緑色のボディを全身鎧で覆った巨体、顔の部分に3つの穴がありその一つから瞳が覗いており外を見てる様であった。

そして巨大な両腕、体の至ところからギアのかみ合う音と鎧の隙間からチューブや歯車が見える。

 

『これは……』

 

『ギヤァ!!』

じたばたと暴れるブラックサバスをマッドチェスターが殴りつける!!

 

『グぅ!?おおう!?』

殴られた部分に、数本の釘が発生する。

その釘の鋭角に引っ張られるように、ブラックサバスが後退する。

 

「お前たちには感謝している……この力はすさまじく刺激的だ」

ドロリと解ける様な不快な顔を初之瀬がDIOと二人の妖怪に対してする。

 

「2日前に、お前らに襲われなかったら……こんな力は手に入らなかった!!」

 

『ムゥオオオオオオオ!!!』

初之瀬に反応する様にマッドチェスターが震える。

 

「土井、お前もだ……ザ・ワールドねぇ?スタンドの動かし方の良い見本に成ったよ。

だが、もう不要だ……そこのジジイの様に……死ね!!」

 

『ムゥウウウウウウウウウオオオオオオオオオオ!!!!!』

マッドチェスターがDIOを倒そうとその手を薙ぐ!!

 

「ザ・ワールド!!」

DIOの意思に呼応し、同じく金色の姿をしたスタンドが腕を十字にクロスさせ体を守る!!

 

「無駄……だ!!」

まるでボールでも蹴とばすかの様にザ・ワールドが蹴とばされる!!

同じく引っ張られる様にDIOも吹き飛んでいく!!

 

「良い気になるな!!このDIOが――」

 

「もうお前は、負けてるんだぜ?」

初之瀬がその言葉を発すると同時に、DIOが体制を崩す。

 

「な、なんだ一体?この釘は!?」

DIOの腕には数本の釘が刺さっていた。

実物ではない、スタンド能力による物だろう。

 

「マッドチェスターが殴った物体は、その釘の指す方向に進み続ける。

解除できるのは俺だけだ――――そしてぇ!!!」

初之瀬が飛び上がり、DIOをさっきまで休んでいた小屋に叩きつける!!

 

「ぐぅ!?う、動けん!!」

DIOの体がピタリと小屋にくっつく。

まるでピンで刺された、昆虫標本の様だった。

 

「はぁ……屑な仲間どもにもお別れだな!!!マッドチェスター!!」

 

『シュアーーーー!!』

マッドチェスターが10本の指の穴から、無数の釘を小屋の屋根に飛ばす。

ミシミシミシッ!!

ひびが入る様な音がして、DIOを巻き込み小屋が倒壊する!!

 

「フヒッ!……あっけないなー、実にあっけないな!!

これさえ、この力さえあれば!!俺はこの世界を支配できる!!

妖怪どもに怯える、毎日ともおさらばだ!!フヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!」

 

「スタープラチナ!!!」

 

『オラァ!!』

 

勝利の咆哮を上げる、初之瀬の顔面に屈強なスタンドのパンチが突き刺さった!!

様に見えた。

 

「ぐぅ……コイツ!!」

承太郎のスタープラチナの拳をマッドチェスターが受け止めていた。

 

「ああん?誰だお前?」

勝利の余韻に水を差された初之瀬が不機嫌になる。

 

「まさか……善に教えられて、里のハズレの農地に来てみたら……

新しいスタンド使いが生まれているとはな!!」

腕を支点にし、スタープラチナが距離を開ける。

さっき倒れていた妖怪二人から、すでにゴールドEとブラックサバスは回収していた。

 

(チィ……まさか、ブラックサバスまで――それも弓の部分までコピーしていたとはな……)

一人忌々し気に、舌打ちをする。

 

「お前も!!ぶっ潰してやるよ!!マッドチェスター!!」

 

『ボルボルボルボルボルボルボルボルゥ!!』

拳から釘を生やしながら、マッドチェスターがスタープラチナめがけて拳を振るう!!

 

「くぅ!!接近戦は不利か!?」

スタープラチナのパワーで地面を蹴り、マッドチェスターの攻撃を避ける。

 

「逃がしはしないぃ!!!」

 

『ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃギャガががぎゃぎゃ!!!』

マッドチェスターが嗤う様な声を出し、指から釘を射出する!!

 

「しまった!!スタープラチナ・ザ・ワールド!!」

承太郎はスタープラチナのもう一つの能力を発揮する。

それはDIOのザ・ワールドの様に時間を停止させる能力!!

空中でマッドチェスターの釘が停止する。

 

「やろう……マジのやばい奴だぜ……時は動き出す!!」

冷や汗をかきながら承太郎が、再び動き出す時の中で活動を再開する。

 

「ほう……便利な能力だ、だが!!」

初之瀬が承太郎に向かって土を蹴りあげる!!

無論これにもマッドチェスターの能力は有効であり、土を利用した煙幕が重力に逆らい落ちる事無く承太郎に向かう!!

 

「なにぃ!?」

釘と土の二重構造に承太郎が息を飲む!!

あの釘に触れる事は敗北を意味する。

 

「エンペラー!!」

土埃の弾幕に、赤い気を纏った数発の弾丸が穴をあける!!

チャンスとばかりに承太郎がそこから、脱出する。

 

「善。ついて来たのか?」

 

「師匠に、手伝って来い……もとい、運さえ良ければDISCの一枚でも奪取して来いって言われたんですよ……」

承太郎の後ろに善がエンペラーを構え、立ちすくんでいた。

 

「ほう、お前の師匠は油断ならない奴だな」

帽子をかぶり直し、承太郎が再び初之瀬とマッドチェスターに向き直る。

 

「アイツを倒す。手伝ってくれるか?」

 

「ええ、もちろん」

スタープラチナとエンペラーが並び立つ!!

エンペラーの銃身とスタープラチナの拳が打ち合わされる。

 

「まぁあああああああああああああど!!!ちぇすたああああああああああ!!!」

 

『ぐぎゃがやぎゃぎゃがやぎゃがやがやぎゃぎゃぎゃがや!!』

初之瀬とマッドチェスターの咆哮が重なる!!

ヒュン!!ヒュンヒュン!!

無数の釘が空中から二人を狙う!!

 

「エンペラー!!」

善のコントロールする、弾道が釘を弾き飛ばし、承太郎の道を作る!!

 

「行くぜ!!スター!!!プラチナぁあああああああ!!!」

 

『オラァアアアアアアア!!!オラオラオラオラオラオラオラァ!!』

スタープラチナのラッシュがマッドチェスターを襲う!!

 

「させるかよぉ!!」

初之瀬の蹴り上げた、石が釘に突き刺さりすさまじいスピードで承太郎に向かう!!

 

「うぉッ!!」

間一髪で避けるが、それはしょせん囮だった。

スタープラチナのわき腹に、一本の釘が突き刺さる!!

 

グンッと後ろの方向へと重力がかかる!!

突き出した拳が、マッドチェスターから離れる!!

 

「ここまで――」

 

「じゃねーぞ!!」

さっき初之瀬の投げた石を、承太郎が投げる。

俺は空中で、植物の種の様に成り、さらに成長し木の形になる!!

生命を操るスタンド、ゴールドエクスペリエンスの能力だ。

 

「なるほど!?大木を投げて、俺を潰す気だったか!?」

根を張り、巨大化していく木を見て初之瀬がつぶやいた。

 

「うっ!?」

初之瀬が驚きの声を上げる。

木の影から、3発の弾丸が飛んでくる!!

善のエンペラーだった。

2発の弾丸が、初之瀬にめり込む!!

「ぐぅ!?こんな物!!――――がハァ!?」

 

「3発じゃねーぞ?」

木の反対側からも数発の弾丸が飛んできて、背中を攻撃する!!

 

「この――雑魚がぁああああ!!!!」

マッドチェスターが善を木に押し付ける!!

 

「はぁ――はぁ――もう、終わりだぁああああ!!!」

マッドチェスターが善の頭部を叩き潰そうと腕をふるう。

 

「ああ、もう終わりだぜ」

初之瀬のすぐ後ろで、承太郎の声がする。

 

「何故!?」

承太郎はもう、此処に近寄る事すら出来ないハズ――

疑問符が初之瀬の脳裏を支配する。

承太郎の横に立つのは、銀色の古代ローマの兵士を思わせるスタンド。

クレイジーダイヤモンド!!

その手に握るは、一本に木の枝。

それが見えない力で治され、さっき育てた木に戻っていく。

当然、木の枝を持つ承太郎『治る力』に引きずられる!!

 

「トドメ、お願いします」

ジャラ……

善のエンペラーからこぼれた、抵抗する力を纏った銃弾をスタープラチナが拳に挟む。

 

「お、おい……それ……は」

初之瀬が初めて青ざめた。

 

「お前は俺たちが裁く!!」

 

『オ~ラ、オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!!!』

 

岩おも砕く拳が、スタンドマッドチェスターを叩き壊す!!

鎧が砕け、釘がへし折れ、頭蓋を叩き潰す!!

 

「ぐぁああああああああああああ!!!!」

殴られながら、初之瀬が承太郎の後ろに控える黒いマントを纏った仮面の男を見る。

二ヤリと楽しそうに笑い、わずかに理解する。

『こいつは自分よりもずっと大きな力を持つ存在だと』

自身のマッドチェスターも、弱くはない。

むしろ使った感覚では、負ける気はしない。

しかし、このスタンドは格が違う。

ずっと上位の存在だろう……

「君は……試練だ……承太郎をより強くする為の……生贄だ」

僅かにその仮面のスタンドが口を動かす。

 

「ち、ちくしょうおおおおおおおおおおおお!!!!!!

ドチクショオオおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」

初之瀬が全身から血を流し倒れる!!

死なない程度にクレイジーダイヤモンドで治療されたが、しばらくは再起不能だろう。

 

『へへぇ……「マッドチェスター」かぁ……

貰っておこうかな?』

ブラッドの後ろに白と黒のスタンドが現れ、DISCにして初之瀬からマッドチェスターを引き抜く。

 

『停滞と猛進のスタンドか……』

ブラッドは嬉しそうに懐に、DISCをしまった。

 

 

 

 

 

「さて、ひと段落ですね。エンペラー取れますか?」

長屋を直し、DIOとザ・ワールドを回収した承太郎に善が一言そういう。

 

「なんだ、スタンドは要らないのか?」

 

「ええ、私の欲しい力はコレじゃないので。

それに、『スタンド使いは引かれあう』んでしょ?

もう、こんな騒ぎこりごりですよ……」

困った様に善が笑う。

 

「そうだな……さて、やる事は全部終わった。

ブラッド、もういいだろう?」

 

『ん~?そうだね、じゃあ――』

 

「まった!!」

世界を移動しようとする、ブラッドを善が止める。

 

「ん?なんだよ?まだ何かあるのか?」

 

「夕飯、食べる約束でしょ?」

笑いながら善がそうつぶやく。

一瞬承太郎は考え……

 

「そう。だったな。ご馳走になる」

笑いながら、墓場まで向かっていった。

 




はい、本編でオリジナルスタンドが出ました。

一体を完璧な悪人にする訳に行かず……
ちなみの能力等は此処に。

スタンド――マッドチェスター

黄緑色の機械鎧の様な姿のスタンド。
腕から、釘を発生させ釘の切っ先に対して重さ、または引っ張られる感覚を持たせる。
物に対して移動のベクトルを強制すると考えると解りやすいか?
釘の持つ力の強さは調整可能で少し邪魔になる程度から、押さえつける、押しつぶすなど使い道は多い。
重力に逆らえるので、使い方次第では空を歩ける。

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