ガンマン八号さんの作品、東京喰種~復讐に生きる妖~とのコラボです。
ガンマンさんの作品はどれも、味があり素直にすごい作家さんです。
初めての東方Project以外の原作に、手探り状態ですがどうかよろしくお願いします。
俺……じゃなかった、私の名前は詩堂 善(しどう ぜん)
ただ今、仙人目指して修行中です。
師匠の修行は厳しいけど、きっとそれも私の事を思っての事。
うん……そう、たぶん。おそらく、きっと……あれ?どうして涙が出るんだろ?
と、兎に角今日もがんばります……はぁ……
「詩堂、悪いか厄介事を引き受けてくれないか?」
九つの尻尾を持つ妖狐で幻想郷の賢者の式である妖怪、八雲 藍が自室で休んでいた善の声をかける。
「あの……藍さん?一体何処から入って来たんですか?」
手に持っていたベットの下に隠してあった本を、藍の汚物を見る様な視線に耐えながら再び元の場所に片づける。
(あと、あと数秒あとだったらヤバかった……)
ベットの下に戻したすてふぁにに別れを告げ再び藍に向き直る。
善はあまり藍に良く思われていないのを知っていた、そして藍に勝てないのも理解していた。
「普通に、ドアからだ。お前の師匠には昨日すでに話を通してある」
「ああ、そうなんですか(師匠……このタイミングで藍さんを私の部屋に呼んだな!?)」
座布団を取り出し、机の前に置く。
それに対して藍は何の反応もなく、腰を下ろした。
「さて、本題に戻ろうか。実は紫様が冬眠しているのは知っているな?」
「ええ、前お逢いしましたし……」
「実は紫様はたまーにだが、寝ぼけて外の世界とのスキマを開いてしまう事が有るのだ」
申し訳なさそうに、藍が説明する。
善は雲行きが怪しく成って来たなーと、現実逃避気味に考えていた。
「偶然ほかの世界につながった様なんだ。詩堂お前には――」
「絶対行きませんからね!!」
藍の言葉を遮って善が口を開く!!
何処につながるのか、何がいるのか、などなど全く不明の世界!!
生きて帰れる保証はどこにもない!!
そんな、事を善がする訳がないのだ!!
「なぜ断る?あわよくば始末――ではなく、外の世界の文化に触れられるぞ?」
「い、今!!『始末』って言いましたよね!?『始末』って!!何をする気ですか!?」
善はいきり立って藍に詰め寄った!!
ポロリと本音を漏らす藍!!善としては別の所がポロリとして欲しかった!!
「ああ、うるさい!!お前は大人しく私と来れば良いんだ!!」
善の腕を掴み藍が何処かへ善を連れ去ろうとする!!
その表情には全く自制心というものが無い!!
「お待ちなさい!!」
そんな藍の目の前に、行く手を遮るように師匠が立ちはだかる!!
「む?邪仙か……邪魔をするなら容赦はしないぞ!!」
「善は私のかわいい弟子です。そんな危険な事を、ただでやらせる訳にはいきませんわ!!」
牙をむき、師匠にすら威嚇する藍!!
それに対し、懐から札を出し空気中に構え術を展開する師匠!!
その必死な姿に善の心が熱くなる!!
ジーンと目頭が熱く成り、いつもとは違う涙が込みあげて来る!!
「師匠……アナタって人は……普段、厳しいけどこんな時は何だかんだで助けてくれるんですね……」
「勿論よ。私はかわいい弟子を見捨てたりしないわ!!善にそんな危険な事、
「あれ?」
再び響く師匠の言葉、その小さな違和感に善が気が付く!!
「そうか、タダではだめなんだな?いくらだ?」
「!?」
藍がそう言いながら、牙をしまう。
いつもの余裕のある表情になりながら、師匠に言葉を投げかける。
「そうね、危険そうだし……これくらいはどうかしら?」
何処からかそろばんを取り出し、はじきながら藍に見せる。
「ちょ!?師匠!?藍さん!?」
「……却下だ、高すぎる。足元を見た積りか?…………これでどうだ?」
「うーん……手厳しいですわね……こう、ならいかが?」
師匠と藍がお互いに、そろばんの数珠をはじき合う。
この間善の意見はまったくの無視である!!
「あー、まだ高いな……お前の弟子はこれくらいの価値が有るのか?」
「ええ、少なくとも私にはありますわ……えい!」
「ぐわわわー!!師匠!!アナタって人は!!」
二人の隙を付き逃げ出そうとした善!!突如師匠の投げた札によって体を拘束される!!
「くそぅ……邪仙め。駆け引きに慣れている……では、この値段に紫様が外から持って来た名酒5本でどうだ?」
「6本」
「くぅ……わかった……それで手を打とう」
その言葉と共に、藍と師匠が手を取り合う。
詩堂 善!!!売却完了!!
「善、元気で暮らしなさい」
そういってハンカチを取り出し、札で拘束され藍に担がれる善を見送る。
「ドナドナってどんな歌詞だっけ?」
芳香が現れ連れていかれる善に向かって、敬礼のポーズとうろ覚えのドナドナで送り出す!!
歌の効果も相まって、売られる子牛の気分である!!
「鬼!!悪魔!!人非人!!外道!!年増!!死体マニア!!エセ清楚!!」
涙を流しながら、師匠に対して必死に罵詈雑言を送るが札束の数を数える師匠は全く気にしない!!
「えい!」
「ぎゃはぁ!?」
師匠の一発の光弾で善が焦げる!!
藍は全く気にせず善をマヨヒガに連れて行った。
「さぁて、橙を誑かす不穏分子は排除しなくてはな……なるべく危険な世界に繋がっていてくれよ?」
幻想郷の何処かに有る穴を見ながら、藍がつぶやく。
その手にはぐるぐる巻きで縛られ猿ぐつわを噛まされた、善が握られてている。
見下すその顔は完全に悪人のものである!!
「むー!!むーむむ!!」
「ん?なんだ?今更お前の戯言に興味はない。
では、なるべく苦しんで死んでくれ」
二ヤァ!!と擬音の付きそうな笑顔で善をスキマの中に押し込む!!
スキマ特有の浮遊感が善を襲い、目が無数に配置された上下左右の無い空間に落とされる!!
「ああくそ!!ドイツもコイツも俺を良いようにしやがって!!帰ったら全員ぶん殴ってやるからな!!」
猿ぐつわが外れた善が、届かぬ思いをむなしくコダマさせる。
「ぺプツ!?」
急に明るい空間に善が落とされる!!
顔面に食らう、固い感触、何処となく臭い空気。
体に張られた札を弾き飛ばしながら、善が立ち上がる。
「幻想郷じゃない……この地面、コンクリートだ。家もあるし車も走っている……それに……東京見たいだな」
善の視界に入って来た『赤いタワー』を視界に収め確認を済ませる。
「帰って来たのか?……ひゃうん!?」
故郷の事を思い出しながら善が一人つぶやく。
その時!!自身の尻を触る感触が善を襲う!!
「へー、ここが善さんの故郷ですか」サワサワ
飛び上がりその感触の主を見ると其処にいたのは……
「橙さん!?どうして此処に!?」
藍の式神、化け猫の橙だった。
「善さんが、藍様と逢引しているのを見て追って来たんです!」サワサワ
「逢引?むしろ取引された結果なんですけどね……付いてきてしまったのはしょうがないですね…………あの、橙さん?そろそろ私の尻から手を放してくれると嬉しいんですけど?」
「嫌です、このさわり心地……やっぱり時代は尻ですね!!」
「見た目幼女が言っていい言葉じゃない!!」
その後、橙がいれば藍が迎えに来る事を期待して、善は橙と行動を共にすることにした。
『外』の話を聞いた事が有るのか、橙は警戒心というのが殆どなかった。
むしろかなりはしゃいでいるいる様に見える。
「あれが車ですか!?はやーい!!」
車を見ては大声を出し。
「ええ!?一日中開いてるお店!?店員さん眠くないんですか?」
コンビニのシステムを見て驚愕をする。
「うわー!!すごいすごい!!」
公園の遊具ですさまじくはしゃぎ続けた。
いつもなら嫌な顔で追い払う善だが、無邪気に遊ぶ橙を見ていると庇護欲求を刺激されつい優しく成ってしまう。
「善さーん!!」
善に甘えるように飛びつきその流れで、善の尻に手を伸ばす。
「……コレさえなければ……ね?」
誰かに聞かせるように善がつぶやいた。
尚も橙は善の尻を触り続けている!!
キーンコーンカーンコーン……
「にゃ!?なんですか!?敵襲!?」
5時のチャイムが鳴り響き、橙がその音に派手に反応する。
その様子に善が小さく、噴き出す。
その姿は、妖怪とは思えない位かわいらしかった。
「これはチャイムです、『もうお家に帰ろう』って合図なんですよ」
怯える橙を励ますように、しゃがみ込みんで橙の顔を覗き込む。
その言葉に橙が不安そうな顔をする。
「お家……藍様、来てくれますかね?」
「大丈夫ですよ、橙さんを大切にしているでしょ?藍さんは橙さんを見捨てたりしませんよ」
そういった、橙を引き連れ公園のベンチに二人で座る。
橙にあんなことを言った善だが内心はやはり不安だった。
(ここが俺の元いた世界だと仮定して、俺の家は東京にはない。橙さんをどうすべきだ?野宿させる訳にも……)
そんな事を考えていた善だが、自身の掛かる影に気が付き思考を中断させる。
近寄って来た二人組に橙が挨拶をする。
「……こんにちは?」
「!?――橙さん!!避けて!!――――痛ぇ!?」
男二人の変化を見て善は咄嗟に橙を突き飛ばした!!
転がった橙が見たのは、三人の男達。
一人目は詩堂 善、二人目三人目はさっきの男二人。
しかしその男二人は姿がさっきから変わっていた。
一人は肩から赤黒い筋肉とも鎧ともつかない、歪んだバールのような異形の物体を生やしている。
もう一人は先が鞭の様に無数に枝分かれした尻尾だ、こちらはオレンジっぽくより生物感が強いが同じような物質であることが分かる。
そして二人とも目が真っ黒だった。
「妖……怪……?」
橙が混乱しながら無意識につぶやく。
無理もない話だ、彼女の主の主は妖怪を保護する目的で幻想郷を作った、それは逆に言うと外の世界では妖怪は殆ど残っていないことになる。
橙は疑問に思う。
なら目の前の異形は何だ?
この未知の生き物は何だ?
そんな思考は善の腕をみて一気に消し飛んだ!!
「善さん!!腕が!!」
さっき橙を突き飛ばした時だろうか?
善の左腕からは、結構な量の血液が流れ出ていた。
「ご心配なく!!これ位ならすぐに治ります!!」
異形を見ながら善が、口を開く。
治るというのは確かだが、戦闘が圧倒的に不利に成ったのは橙でもわかる事だった。
「お前……いい匂いだなぁ……」
バールのようなものを肩から発生させた異形が、血を舐めとる。
「こんな人間もいるんだなぁ?初めてこんな上手い血を舐める」
鞭尻尾の方も自身の尻尾に付いた血を恍惚の表情で舐める。
その二人の表情に善の背筋にうすら寒い物が走る!!
その目は紛れもない捕食者の瞳、それが完全に人の姿をしているのだから始末が悪い。
人に近く、しかし人でない。そのことが酷く不気味だった。
「今日は当たりだな……」
「後ろのガキ……ん?お前もグールか?」
鞭尻尾の方が橙をみて、そう漏らす。
橙にも2本の尻尾が生えている、そのことから同族だと思ったのだろうか?
にやにや笑いを向けながらこちらを見て来る。
「……チッ……どうして捕食者っていうのは、何時も傲慢なんだ」
その視線は善の癪にさわった、コイツは蹂躙する者だ。
何も考えず、弱者から絞りとる者だ。
明らかにこちらを舐めている目だ。
「さて、食うか」
「俺も食わせろよぉ!!」
バールが善を叩き潰そうと、頭部を狙い攻撃してくる。
その後ろで、鞭が様子を見ている。
一撃に特化したバールの攻撃を避けた所を広範囲に攻撃できる鞭が仕留める作戦らしい。
「……芳香や師匠の100倍遅い!!仙人舐めんな!!」
バールの一撃を無事な方の右手で受け止め、鳩尾に蹴りを叩きこむ!!
能力は無しの仙人としての素の一撃だ。
後ろに押された、鞭を巻き込むように後ろから倒れこむ!!
「ぐふぅ!?」
「トドメだぁ!!シャイニングフィンガー(仮)!!」
バールを掴み上げ善の能力である「抵抗する程度」の能力で生成される、人体に対して拒絶反応を起こすエネルギーを気に乗せて送り込む!!
気は本来生物などに流れる物、それはこの怪物たちとて例外でなく吸い込む様に善の気を吸収していく、そして体内に入った瞬間!!
「い……ぎぃ!?」
手を触れられた部分から、爆ぜる様に血が跳び散る!!
体内の気が、抵抗物質となり筋肉や血液を弾き飛ばしているのだ!!
「ひ……ひぃああ!!」
傷を押せえながらバールが立ち上がり、逃げ出す。
いや、逃げ出した様に見えただけだった。
「お、おい!!お前!!コイツの命が惜しかったら大人しくしろ!!」
近くの20歳程度の通行人を抑え込むようにして、頬にバールを突きつける!!
「お前も何とか言えよ!!」
「……」
通行人の青年はじっと、バールを見ていた。
無言の圧力があり、バールはわずかにたじろぐ。
「さぁて!!そこのお前は同じグールの
調子を取り戻した、鞭が橙にそう言い放つ。
式を付けていない橙は現在お世辞にも強いとは言えない。
「ぜ、善さん!!」
「問題ありませんよ、すぐに片しますから」
心配する橙を慰める様にその場で、善が笑顔を作る。
しかしそれは明らかに無理して笑っている事は、誰だろうとわかり切っていた。
「こっちには人質が――」
「はぁ、厄介事はこれだから嫌いなんだ」
「え?」
この時初めて青年が口を開いた、それと同時にバールが最後に口を開いた時でもあった。
善の視界の真ん中で、バールの腹がうごめく。
そして、突き破る様に赤い触手の様な物が生える!!
さっき自分がした攻撃ではない、時間差で発動させる事や遠距離で発動させる事など自分には出来ない!!
なら、一体誰の?
自身ではない、橙がこんな力を持っているとは聞いたことがない、鞭がやったとは考えられない。
ならば……答えは?
可能性はたった一人に絞られた。
「グールは、まずいから嫌いなんだ。イラつくんだよ!!」
人質の青年の背中から、うごめく様に赤い触手が飛び出る!!
一本!二本!!三本!!!
4本目が出る頃には、鞭は完全に戦意を失っていた。
「ひ……ひあ……」
「俺を見た奴は生かしておけない。それが俺、SSレートの妖のルールだ」
その言葉を言い終わるか否かのタイミングで、6本の赤い触手が鞭をバラバラに引きちぎっていた!!
「ひ……ぜ、善さん……」
その様子を見た橙が,恐怖のあまり腰を抜かし涙を浮かべながら善を見る。
「橙さん、離れてください……本気出しますから」
懐から札を取り出し、善がいつでも使える様に構える。
しかしその男からかけられた声は意外な物だった。
「グールの女と……人間の男の……ツガイか?……安心しろ。
俺はお前たちと戦う積りはない、そんな事より逃げるぞ?
直ぐにCCGの鳩どもが来る」
「グール?CCG?鳩?あなたは一体?」
いまいち解らない言葉を善がくり返す。
「俺の名は
そうそう言って開いた哉碼の目は、片方だけがさっきの怪物の様に赤黒かった。
「そして、もう半分は……人間だ」
最近になってコラボの要請が来るようになりました。
私としては嬉しい誤算ですね。