止めてください!!師匠!!   作:ホワイト・ラム

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レッツ投稿!!

今回も長くなりました。

あれー?シンプルにするつもりだったのに……

ネタを入れ過ぎたのかな?

4月28日一部修正。


輝く刃!!霊界の剣士!!

俺……じゃなかった、私の名前は詩堂 善(しどう ぜん)

ただ今、仙人目指して修行中です。

師匠の修行は厳しいけど、きっとそれも私の事を思っての事。

 

うん……そう、たぶん。おそらく、きっと……あれ?どうして涙が出るんだろ?

と、兎に角今日もがんばります……はぁ……

 

 

 

「雪の降る幻想郷、その中の人里に小さな悲鳴が走る!!

「キャ!?」

オッドアイの妖怪の少女多々良小傘が地面に叩きつけられる!!

 

「小傘さん?最近少し調子に乗ってませんか?」

善が小傘の首根っこを掴み無理やり立たせる!!

 

「そんな事は……」

ガクガクと震え、目には恐怖のあまり涙が溜まっていく。

 

「少し、私の袖が雪で濡れたんですよ……コレは一体どういう事ですか!?

御主人様を濡らす傘なんて不良品ですよね?」

善が小傘の震える瞳を覗き込むように顔を近付ける。

 

「ご、ごめんなさ……い」

 

「あなたの代わりの傘なんていくらでも有るんですよ?それとも逆に、『イザと成ったら他の人に使ってもらえばいい』なんて思ってませんよね?」

善が首を持ったまま小傘を持ちあげる。

首が圧迫されて、小傘の呼吸が阻害される。

 

「お、思ってません!!」

 

「ふぅん……確かにこんなデザインの傘、誰も欲しがりませんか……けど、私の所有物を他人に使われるのは気分が悪いですね」

 

「痛いっ!?」

再び地面に叩きつけられる小傘。

 

「私の物だと分かるように、名前を書いておきましょうか」

そう言って善が懐からナイフを取り出し――」

 

 

 

 

 

「ソレDVってレベルじゃねーぞ!!小傘さん!?もっと自分を大切にしてください!!」

遂に善のツッコミが入る!!

 

「えー、人里でコレやったら絶対驚かれるのにー」

そう言って自身の驚かし案を否定された小傘が唇を尖らせる。

 

「いやいやいやいや!!オモックソ俺、悪人じゃないですか!?何?小傘さん私の評判を下げる様に誰かから、依頼されているんですか!?それにナイフで名前刻むって、どう考えても異常ですよ!!」

 

「えー、でも善さんのお師匠さんが『最近善に節操がなくなって来たわね、背中とかに刺青で私の名前を書いておけば人前で服が脱げなくなるかしら?』って言ったたのから着想を受けたんですけど……」

 

「師匠!?何考えてるんですか!?怖!!俺の師匠怖すぎる!!」

自身の知らない所で進行していた狂気の計画!!

あまりの理不尽さに善が声を荒げる!!

その声に著しく反応するのは人里の住人達!!

小傘が下げるまでも無く善の人里での評判は最低辺である!!

 

 

 

邪帝皇(イビルキング)だ……)

(目を合わすな!!消されるぞ!!)

(なんだ?ボロボロだぞ?)

(おそらく誰かを消した帰りか……)

(戦おうと思うな、返り討ちにあうだけだ!!)

 

善の姿を見た里の人間たちがひそひそと噂を始める。

今日の善は全身がボロボロだった、服は破れ所々焦げ目までついている。

左の肩からは流血までしている。

 

「うう……主に全身が痛い……」

 

「善さんしっかり!!」

傘を支える小傘が善にねぎらいの言葉を投げかける。

 

 

 

突然だが!!ここで前回の話を振りかえろう!!

前回の3つの出来事は!?

 

1つ!!墓場にて、再度襲撃してきた化け猫橙!!

2つ!!その橙を自身の能力を以て撃退した善!!

3つ!!最早予定調和!!師匠の折檻!!

 

だが!!だが!!善の不幸はそれだけではなかった!!

折檻を受けてボロボロの善!!

当初の予定通りにみかんを買いに出かけたのだが!!

 

 

 

「やぁ、詩堂。この前振りだな?実はさっき橙が泣いてるのを見てな?」

墓石の裏から姿を現すのは橙の主!!八雲藍!!

人ひとりなら簡単に呪殺できそうな眼で善を睨みつける!!

だが顔だけは冷静そのもの!!それが一層恐怖を掻きたてる!!

 

「こ、こんにちは……藍さ……ん」

 

「なぁ?なぜ私の橙が泣いているのか……知らないか?ん?」

困惑する善の肩に手を置く。

次の瞬間肩に激痛が走る!!

妖怪の握力で善の肩に藍の指がめり込んでいく!!

指が肉に食い込み骨を軋ませる!!

 

「痛い痛い、いたい!!!藍さんやめてください!!」

必死で藍の指を肩からどかそうとするが藍は一向に離さない!!

それどころか!!尚も力を強く込め始める!!

「あ”あ”あ”あ”入ってる!!指入ってますから!!」

 

「ん?私はなぜ橙が泣いていたか聞いているだけだぞ?」

飽くまで素面の顔で「なぜ?」を繰り返す藍。

最強クラスの妖怪だけあり善が勝つことが出来ないのは明確である。

しかし!!そんな善に救いの手が差し伸べられた!!

 

「そこまでです!!藍様!!」

善と藍の間に小さな影が割って入る!!

 

「ちぇ、橙!!なぜ私の邪魔を――」

 

「藍様は黙ってください!!」

狼狽える藍をその場で一喝する!!

 

「あ、え……橙?」

 

「善さんから手を離してください」

確かな意志の籠った瞳で藍を射抜く。

普段見せ無い橙の迫力に藍がたじろぐ。

 

「しかしだな――」

 

「はやく!!」

 

「わ、わかった」

遂に橙の言葉に従い、藍が善の肩から手を離す。

 

「善さん、ここは私に任せて先に行ってください」

なんだか主人公を救う仲間みたいな台詞を言い放つ!!

*この状況に成ったのはほぼ100%橙の責任です。

 

「わ、解りました……橙さん、ありがとう」

左肩を抱えながら善は橙に背を向けて歩き出した。

途中で尻餅をつき、泣きそうな顔をしている小傘を拾い人里に向かう。

 

 

 

「あの後どうなったんだろう?」

 

「さぁ?出来ればあの二人には関わりたくないです……」

小傘が2人の事を考えながら、善と人里を歩いて行く。

ひとまず、今日の夕飯と明日の分の食材を探す善。

みかんを買いに来たのだが、最初に買うと1箱分を抱えたまま雪の降る里の中を歩くことに成るので最後にまわす。

 

「「このみかんください」」

果物屋にて善ともう一人の少女が同時に一つのみかんの箱を指さす。

 

「は、はひ……ど、どちらがお買い上げです……か?」

怯えた様子の果物屋の主人が2人に尋ねる。

 

「私に譲ってはくれませんか?私の主人が必要としているので」

そう言って少女が善に話す。

白い髪をボブカットで切り揃え、腰と背中に計2本の剣の様な物を背負っていた。

善の目の前に白い人魂の様な物が揺れる。

 

「それは出来ませんね、私の師匠に手に入れろと言われているので」

善自身も譲る事は出来ない!!

このまま帰ったら何をされるのか解らない!!

 

「あ、あのう……妖夢さん?本日は日を改めては……」

果物屋の主人が白髪の少女に向かい、小さく声を掛ける。

妖夢というのが彼女の名前らしい。

 

「それは出来ません!!主の命は絶対です。すいませんが妖怪さん、このみかんは譲れないんですよ」

 

「私は妖怪ではありませんよ……良く間違えられるんですが。さて、こちらも同じく譲る事は出来ません、私も師匠の命は絶対なんですから」

そう言い放つ善!!帰ったら名前を書かれる訳にはいかないのだ!!

周囲の住人が2人の様子を見つけ集まり始めている。

喧嘩にしろ、騒ぎにしろ野次馬根性というのは何処にも有る様で好奇心を僅かに含んだ無数の瞳が2人を見つめる。

 

「そうですか……なら、ここでの争い毎の決め方は1つですよね?」

その言葉と同時に妖夢が懐からカードを取り出す。

弾幕で決めようと言うのが彼女の提案らしい。

 

「残念ですが私にカードは有りません、肉弾戦でも構いませんか?」

何も持ってないと言った風に自身の両手をぶらぶらさせる善。

その様子に妖夢がため息をつき自身のカードを懐にしまった。

 

「わかりました、私もカードは無しでやります。剣も峰打ちにします

さて、一応剣と拳を交えるのも同志お互い自己紹介と行きましょうか?

私の名は魂魄 妖夢。白玉楼の庭師にして剣術指南役です。

以後お見知りおきを」

 

「コレはご丁寧にどうも……

では私も、私の名は詩堂 善。仙人志望の仙人モドキです。

以後お見知りおきを」

 

2人が目で合図を交わし同時に距離を取る!!

妖夢が楼観剣を抜き正眼に構える。

善がマフラーをたたみ、近くに居た小傘に渡す。

両人の間に張りつめた空気が流れる。

 

妖夢は人里でも、良く名を知られている。

人里でも良く買い物をする姿を目撃している、しかし彼女を有名足らしめているのはそこではない!!

それは過去の異変の解決者としても確固たる実力!!

彼女の剣技は目を見張る物が有り、神業と呼べる剣の実力者だ!!

 

その実力者が正体不明の謎の妖怪(少なくとも人里の人間にはそう見える)邪帝皇(イビルキング)と戦うのだ!!

それに興味が湧かない方がおかしい!!

人々が息を飲む中、二人は相手の出方を伺い会っている。

そんな二人の心中は……

 

 

善side

(やばいよ!やばいよ!!やばいって!!何この人!?堂々と剣抜いたよ!?何?人里って帯刀アリなの!?

「どーせ模造刀背負ってるだけだよね」とか思ってたけど模造刀背負った痛い子じゃ無かったよ!!マジモンの真剣じゃん!!斬るとかじゃなくてKILLしてくる人だよ……

あ~すごい目でこっち睨んでるよ……絶対やばいって……

なんでこんな事に成ったんだろ……あー、お家かえりた――だめだ、師匠に殺されるわ……

詰んだんじゃね?)

 

善!!心の中でさっそく涙目!!現代日本で過ごしている善にとって本物の刀など見た事は無かった!!それが今!!自分を切ろうとこちらに向けられている!!

恐怖!!形を持った死の恐怖が善の体を震わせる!!

 

 

 

妖夢side

(ううう~どうしてこんな事に成ってるんですか……

前々から人里で噂だけは聴いてましたけど……この人が邪帝皇(イビルキング)

見た目は普通の人じゃないですか。もっとわかりやすく危険人物感出してくださいよ!!

一瞬普通の人だと思って喧嘩売っちゃったじゃないですか……

しかもカード封印なんて、完璧コッチ嵌めに来てますよ!!

あ!!こっちを見ながら笑ってる!!しかも武者震いまで!?こ、殺される!?

ああ、白玉楼に帰りた――だめです、幽々子様に殺される!!

あれ……私の人生……詰んだ?)

 

妖夢!!こちらも心中では涙目!!幻想郷の噂として善の事は聴いていた!!

曰く人里に危険な人物が居る、曰く鈴仙を捕食しようとした、曰く命蓮寺に出入りする大妖怪と関係が有る、妖怪の山を我が物顔で散歩する、など様々だ。

しかし彼の実態は全く掴めておらず、稗田家の当主すら彼の幻想郷縁起を作るのに苦労しているらしい。

自らの力を隠すと言う、能力者にして異端の彼。

何者か不明だが、彼が師と仰ぐ人物は有名だった。

邪仙を仰ぐ邪帝!!この組合わせは何か良くない事が起こると確信させるには十分だった!!

 

かみ合わないお互いの認識!!

そして生まれる空虚な虚構の敵!!

この膠着状態に先に動いたのは善だった!!

 

(目に雪が、入る)

妖夢の姿を見ながら目の近くにきた雪を払おうとする。

その姿は妖夢には腕を振るい、何かの力を使おうとしている様に見えた!!

 

(マズイ!!何か来る!!)

楼観剣を構えたまま、横にステップを繰り出し移動する!!

彼女の感が直線上に居るのは危険と判断したのだ!!

 

「危なかったですね……」

必死で避けて自身の体に何の傷も無い事を確認した妖夢が小さく声を漏らす。

 

(オイ、今の見えたか?)

(いや……避けたのは解るが)

(攻撃の動作っぽいのは邪帝がしたぞ)

(攻撃自体は全く見えなかったぞ)

2人の無音の攻防に住人たちが噂を始める。

弾幕の様に派手さは無く寧ろ不可視の攻撃は、ひどく不気味な物に思えた。

*実際には目に入った雪をどかしただけです。

 

「埒が空きませんね!!こちらから行かせてもらいます!!」

攻撃された(と思い込んだ)妖夢が剣を構え善に切り掛かる!!

普通ならこんな事は、まずありえないのだが今回はコンディションが悪かった!!

踏み込む瞬間!!雪でぬかるんだ泥に足を取られる!!

剣はむなしく善の足元に軌道を描き、善はそれを難なく飛び上がる事で回避する。

妖夢が滑って地面に転び、善を見上げる形に成る。

 

(いま……足の腱を狙ってきたぞ!!勝利の為なら容赦はなしか!!)

 

(千載一遇のチャンスを逃がした?いや、違う!!コレは『余裕』!!

いつでも倒せると言う彼のメッセージ!!)

更にお互い勘違いが進む!!

疑心暗鬼がお互いの心に満ちる!!

常にくるストレスに善が遂に音を上げる。

 

 

 

両者のストレスと緊張がピークに達した時!!

その場でゆっくりと両手を上げる!!

善は敵意のない事をアピールしているのだ。

 

 

 

「ど、どうです、妖夢さん……ここは引き分けにしませんか?」

藁にもすがる気持ちで、善が切りだす。

今更だが、みかんの為に命は失いたくない!!

師匠には土下座するなり小指詰めるなりで許しを請う事にした!!

 

「そ、それはいい考えですね!!!そうしましょう!!!引き分け、引き分けですよね!!」

妖夢が善の言葉に瞬時に喰らいついた!!

妖夢としても命をこんな所で捨てたくない!!

善の差し出した折衷案に飛びついた!!

安堵の内に、戦いの幕は閉じたのだった。

 

 

 

 

「では、私の取り分はこれで」

 

「はい、残りは私が」

善と妖夢が箱に入っていたみかんを平等に分ける。

量はかなり減ってしまったのは仕方ないが無血の結果なら、失敗とは言えないだろう。

 

「では、妖夢さん。また何時か」

 

「はい、今度は一緒に食事でも……」

 

お互いが相手の神経を逆なでない様に静かに分かれる。

話の内容は静かだが……

 

(『食事!?』……妖夢さんはまだあきらめないのか!?)

 

(『また何時か!?』……善さんは私を始末する気なんですね!?)

やはりお互いかみ合わない!!

仙人モドキと庭師の次の邂逅はいかに!?

 

 

 

「師匠ー、ただいま帰りました、はい、みかん」

その言葉と共に善が台所にみかんの箱を置く。

何とか必要な物を買ってくる事が出来た。

 

「あら、善お疲れ様。……所で、あの傘の子はドコ?みかん以外何も持っていない様だけど?」

 

「あ”」

 

「うー!!お腹すいたぞー!!」

空腹で暴れる芳香!!

お腹から大きな音が鳴り響く!!

 

「善、芳香がお腹を空かしているわ。コレは某ヒーローみたいに、自分の頭を千切って食べさせるべきじゃないかしら?」

 

「いやですよ!!某ヒーローは頭が交換できるんです!!私は出来ませんから!!私の顔にスペアは有りません!!そんなの無理――ぎゃー!!?」

 

「あぐあぐ……固い……けど……善の味がする」

 

「しみじみ言うな!?……ああっ!!ふらふらする……視界がぼやけ……る?」

 

「速く迎えに行かないと、無くなりそうね。あ、床の血は拭いてから行きなさいね?シミにしたくないのよ」

 

「……ししょ……う……たすけ……て……」

ドサッ

「あら、動かなくなったわ」

 

人里にて……

小傘は一人里でさ迷っていた!!

野次馬しに来た人の波にのまれ善とはぐれたのだ!!

 

「善さーん!!善さーん!!どこですかー!!わちきを……わちきを一人にしないでー!!」

哀れ小傘は一人で人里を彷徨い続ける!!

*ちゃんと回収されました。

 

 

 

 

 

余談

マヨヒガにて……

「良いか?橙、あの仙人は悪人なんだ、里の評判も芳しくない。お前にはもっと素晴らしい男がきっと居るんだぞ?」

 

藍が正座させた橙に説教をする。

藍本人は橙の反抗期ともいえるこの期間を、真摯に受け止める事にしたのだ。

辛くても何時かきっと橙は分かってくれる。

そう信じて藍は心を鬼にしていた!!

 

「……は……です……い……」

小さく橙が口を動かす。

その様子に藍がピクリと反応する。

 

「なんだ橙?言いたいことが有るならはっきり言うんだ、私はお前の言う事ならどんなことでも真摯に受け止めるぞ?」

藍は橙が反省の言葉を述べていると思い、心のなかで胸をなでおろした。

しかし!!現実はそうではなかった!!

 

「私の前に胸緯80以上の胸を置くな!!どうせ将来垂れるだけなんですよ!!貧乳がステータス!!希少価値なんです!!胸に詰まっているのは所詮脂肪です!!お腹の贅肉と同じ成分なんです!!脱巨乳!!胸にもシェイプアップを!!」

血走った目で必死に訴える橙!!

自身より遥かに下の妖獣相手に藍が、困惑する!!

 

「だ、橙?」

 

「なんですか、パイ様」

 

「パイ様って誰!?どうしたんだ橙!!」

 

「ちょっと……善さんに巨乳の愚かしさを伝えてきます!!」

 

「ま、待ちなさい!!ちぇ、ちぇええええええええええん!!!」

血走った目で、橙はマヨヒガの外に走っていった。

藍だけが「何処で教育を間違えたんだ?」と一人呆然としていた。

受け継がれる邪帝の意志!!




思った以上に、病み橙が使いやすい……
橙ファンの皆さんごめんなさい。
多分これからも病み橙出てきます。

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