止めてください!!師匠!!   作:ホワイト・ラム

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スイマセンかなり遅れてしまいました。
週に2、3回くらいが目標なんですが難しいですね……

別にエタル気は無いので大丈夫です。


コラボ!!東方医師録~オペオペの実を食べた名医~2!!

俺……じゃなかった、私の名前は詩堂 善(しどう ぜん)

ただ今、仙人目指して修行中です。

師匠の修行は厳しいけど、きっとそれも私の事を思っての事。

 

うん……そう、たぶん。おそらく、きっと……あれ?どうして涙が出るんだろ?

と、兎に角今日もがんばります……はぁ……

 

 

 

 

 

月が照らす暗い暗い森の中……

そんな中で何かが目覚めようとしていた……

 

此処は何処だ……

 

私?僕?我?朕?……違う……『我等』だ……我等は誰だ?

 

解らない……我等が誰なのか……何のために生まれたのか解らない……

 

ああ、だが……ああ、そうだ……一つだけ……一つだけ解るぞ……

 

欲だ……我等の……我等の欲望は解る……

 

もっと大きく……もっと広い世界で……

 

腹いっぱいに命を喰らおうか。

 

 

 

 

 

「いただきます」

両手を合わせて善が目の前の料理に手を付ける。

今日のメニューは白米に焼き魚、菜の花のお浸し、煮豆、豆腐とねぎの味噌汁だ。

箸で煮豆を掴む善。

 

「あ……」

 

その時手元が狂い、掴んだ煮豆が盆の上から落ちる。

 

「うーん……まだ少し本調子じゃないかな……」

 

そう言いながら落ちた煮豆を、拾い盆の上に乗せる。

その時自身の近くにいた人物の視線に気が付いた。

 

「どうしました?墨谷さん?」

 

「……いえ、医者として患者の回復はうれしいんですけど……少し速すぎはしませんか?」

そう言って複雑な顔をするのはこの診療所の主 墨谷 狼だった。

それに対して善は愛想笑いを返した。

 

「ははは、墨谷さんの処置がかなりいいからですよ。本当にきれいにくっつけてくれたのですごい速さで回復しちゃって、自分でもびっくりなんですよね」

そう言って自身の右手の指をワキワキさせる。

善が狼に助けられたのは一昨日の事だった。

指が落ち肉が裂けた患部を狼はその場で神業ともいえる技術で治療したのだ。

 

「……私だけの力ではありませんよ、オペオペの実の能力で確かに治療しましたけど詩堂さん自身の体も普通と少し違うみたいですね」

失礼、と声を掛けて善の回復しつつある右手を取り興味深そうに眺める。

指が全て揃い豆を掴むなど繊細な動きを可能にしている。

重ねて言うが脅威的な能力である。

 

「ん?『オペオペの実』?」

 

「知りませんか?この世には食べた者に能力を与える『悪魔の実』が存在するんですよ、私が食べたのは『オペオペの実』その実のお陰で私は何処でも神業的な技術で手術が出来るんですよ、もともと私も医学部の学生だったんですけどね」

 

そう言って自身の白衣の裾を持ってアピールする。

個人の趣味でその格好をしている訳でなく、れっきとした医者らしい。

 

「そんなそんな便利な物が実在するなんて……探してみようかな……」

 

「ははは、なかなか難しいですよ?泳げなくなるデメリットとか有るし……何より私には能力がもう一つあってそのお陰で手に入れて部分も大きいですかね」

 

「能力が二つ?」

 

「正確にはオペオペの実は後で手に入れて物なのでこっちが私本来の力に成ります。

たまーにですが、あちこち……場合によっては異世界や平衡世界、極端な場合に成ると2次元にしか存在しない物まで引き寄せてしまうんです。

コントロールが効かないのが問題点ですけどね」

 

「ふーん……私も『ソレ』で呼ばれたんでしょうかね?」

 

「さぁ?人を呼び寄せた事は今まで有りませんけど……さっきも言った様にコントロールは出来ないのでその可能性は否定できませんね。

まぁここは幻想郷です、ひょっとしたら帰る方法も見つかるでしょうからゆっくり探していきましょうか、狭いでしょうけど此処に暫く居て構いませんから」

 

「そうですか……助かります」

狼は飽くまでも平然と答えるがやはり他の世界というのは居心地が悪かった。

暗い考えを振り払う様に外を眺める。

善の知る幻想郷と概ね同じだが、僅かに違う世界。

 

(ここにも師匠は居るんだろうか?芳香は?小傘さんは?……そして俺は居るのか?)

そんな事を考えながら食事を再開した。

どんな場所だろうと自身は此処に居るそれが大切なのだと思い直した。

 

 

 

 

 

「この症状は……脚気(かっけ)ですね。ビタミン不足が原因です、野菜が不足しているのと……白米の食べ過ぎですかね、3~4割程度玄米を混ぜてお米を炊いてください。それだけでも改善されるハズですから」

 

 

 

「二日酔いです……いい加減にしてくださいよ?いくら頑丈だと言っても肝臓に負担がかなり掛かっているハズです、良いですか?迎え酒なんて絶対にダメです!!酔い覚ましにはブドウ糖……糖分が好ましいですよ」

 

 

 

「薪割をしていたら木の破片が手に刺さった?うーん結構深く入ってますね……殺菌した針で突いて出しますかね」

 

狼本人の幻想郷唯一の医者というのは嘘ではないらしい、早朝の開業から次々と患者がが集まってくる。

基本的に擦り傷や微熱、二日酔いなど軽傷の患者が多いが中には本格的な症状の人もいる様だった。

 

「ゲホッ……コホッ……はぁはぁ……ありがとうございます……大分楽になりました……」

一人の女性が咳をしながら狼に薬を飲ませてもらっている。

 

「大丈夫ですか?症状はある程度改善されるでしょうが無理は禁物ですよ?」

 

「はい……まだこの子たちには私が必要でしょうから……」

そう言いながら女性は傍らに立つ二人の子共を見る。

その子供は善が逃がした子供だった。

一人が額に絆創膏を貼っている。

 

「おかあさん良くなる?」

 

「苦しくない?」

2人の子供たちが心配そうに母親の顔を覗こうとする。

不安そうな顔をしていたが、狼の大丈夫の言葉に少しだけ安堵する。

 

「さて、ここからはお説教の時間です。

イイですか?この前も言いましたが夜に、しかも満月の夜に里の外に出るなんて自殺行為以外何物でもありません!!

お母さんが心配なのはわかりますが、今後は絶対にこんな事してはいけませんよ?」

狼の怒りの表情に二人の子供が委縮する。

優しい口調なのだが雰囲気は非常に尖った物となっている。

 

「ご、ごめんなさい……」

 

「もう、しませんから……」

2人の子供は母親に付き添い帰って行った。

その様子を善はベットのカーテン越しに見ていた。

 

(本当に人里の人達から信用されているんだな……ある種の英雄……か)

そんな事を考えてベットに寝転がろうとするとカーテンが開く。

 

「ああ、いらっしゃい。何か私に様ですか?」

柔和な笑顔を作り入って来た子共たちに微笑みを向ける。

 

「「お兄さん……この前はありがとうございました」」

2人が善に向かって頭を下げる。

 

「お母さんに薬が必要で……どうしても……」

 

「傷、大丈夫?」

心配そうな顔をする二人の子供たちの目の前で指を開いて見せる。

グーパーグーパー……

その後二カッと笑顔を子供たちに向ける。

 

「この通りもうすっかり良くなったよ、私の事は気にしないでくださいね」

そう言いながら二人の頭に手を置きワシャワシャとなでる。

その態度にパァッと子供たちの顔が明るくなる。

 

「「仙人様、ありがとうございました!!」」

その言葉を残し子供たちは次こそは本当に帰って行った。

不思議と心が温かくなるのを感じた。

いつの間にかフッと善は自身でも気が付かない内に笑っていた。

 

(偶にはこういうのも悪くない……かな)

そんな事を考えていると再び狼が姿を見せる。

 

「本当にすさまじい回復能力ですね……仙人ってみんなそうなんですか?

右胸の傷は不味いと思ったんですけど、骨も肺もすごく丈夫に出来てましたよ?

薄ら手術痕が残ってましたし、移植でもしました?」

 

「え?……ええ、昔ちょっと……」

狼の言葉に善の心臓が一気に跳ね上がる!!

誤魔化すように笑い右手を自身の胸に当てる。

表面上は取り繕っているが内心は決して穏やかではなかった。

右肺、そこは確か過去に死にかけた時師匠によって芳香の肺を移植した部分だった。

未知の地でも師匠と芳香は善を守っていてくれていたのだ。

 

そんな善の脳裏に此処に来る前の言葉がフラッシュバックする!!

『ついてくるな!!』『……先に帰ってろ』『次は無いぞ?』

心の無い言葉、無神経な言葉のナイフで容赦なく芳香を傷つけた事を善は思い出した。

呆然とする芳香の表情が何度も脳裏を過ぎる。

 

体の傷は狼程の手腕が有れば大体は治せるだろう。

しかし心の傷はどうだろうか?

深く深く傷ついた心は誰にも治せない。

善はその事を嫌というほど知っていた。

 

「……帰らなきゃ……帰って謝らないと……」

ぼそりと善の口から言葉が漏れる。

 

「詩堂さん?どうしました?」

様子がおかしくなった善を不振に思う狼。

そんな狼の目の前で善が勢いよく立ち上がった。

 

「スイマセン墨谷さん、俺帰らなきゃならないんです」

その言葉と共に、持ち物をまとめ病室から出ようする。

 

「何言ってるんですか!?傷が塞がりつつありますがあなたは未だに重傷なんですよ!!そんなに暴れたら傷が開きます!!安静にしていて下さい!!」

両腕を開き善を制止しようとする。

しかし善は止まりはしない!!自身の目的の為に狼をどかそうとする。

 

「どいてください!!こんな事してる場合じゃ無かった、今すぐにでも帰らなくちゃ……」

 

「ダメです!!絶対安静です!!いいですか?今あなたが無事なのは少し運が良かっただけです、私の到着が遅れていたらあなたは確実に死んでいましたよ。

医者は神様じゃありません!!人を助ける事なんて何人にも出来はしないんです、私達医者はその人の生きる力を助けるだけなんですだから――」

 

「だからなんだよ?俺は間違いを犯した……その事を忘れてのうのうとしてる訳にはいかないんだよ!!昨日の場所にいく!!何か帰る手がかりが有るかもしれない!!」

 

「聞き分けのない人ですね……!!あなたは自身の命が惜しくないんですか?あなたは自分の命を勘定に入れてませんよね、そんな人をほっておく訳には行きません!!

ドクターストップです!!すこし大人しくしてもらいますよ?ROOM!!」

 

狼が手を振るうと同時に透明なドームが展開される。

ROOMこの空間では狼は医者となり、この空間内の生物無生物関係なく彼の患者となるのだ。

 

「……スイマセンね……ジッとしてる暇なんて無いんですよ……」

バチバチと何かが弾ける様な音がして、僅かにROOM内の空気が歪む。

善の持つ抵抗する力が、狼のROOM自体に反発して歪ませているのだ。

 

一触即発の空気が2人の中に流れる。

 

「…………」

 

「…………」

 

「シャンブルズ!!」

狼の言葉と同時に彼の手に大太刀「狼月」現れる!!

 

「ッ!?なんですって……!!」

その剣が抜かれる瞬間違和感が走る!!

目の前に善が現れ、狼月の刃を素手で握り絞めていたのだ!!

 

「剣術の弱点は知ってます……形状的に鞘から抜かせない事なんでしょうが……狼さんの場合能力でその弱点はつけませんからね……少し痛いですか、握らさせてもらいましたよ!」

更に狼の目の前で懐から札を取り出し、額に貼り付けようとする!!

パシッと音がするが札が張られたのは、善の額ではなく狼月の鞘だった。

狼はシャンブルズで善と札の間に鞘を移動させたのだ。

 

「これ位なら余裕なんですよ!!」

更に、狼は自身の場所を移動させ善と距離を取る!!

 

「厄介ですね……身体能力と抵抗する力の噛みあわせは……!!」

 

「なるほど……こんな事も出来るのか……やりにくいな……だが!」

 

「「勝てない程じゃない!!」」

お互いが構えを取ろうとする時、来客を知らせるベルが鳴った。

 

「先生!!大変だ!!里の奴らがドンドン倒れてる!!」

大慌てで大柄な男が入ってくる!!

その肩には、同じく男が抱きかかえられている!!

 

しかし患者はそれだけではなかった。

 

「先生!!大変だ!!」「熱が下がらないんだ!!」「急に倒れてよ!!」

次々と患者が運ばれてくる。

中にはさっき治療したばかりの者も混ざっている。

全員が高熱にさらされ、汗がとめどなく流れ胸や顔に黒い斑点の様な物が現れる。

急に複数の住人が、同じ症状で運ばれ始めたのだ。

 

 

 

「何が起きてるんです?こんな事が……こんな症状……うぐ!?」

構えを解いた狼が足をもつれさせ倒れる!!

 

「狼さん!?」

善が狼を抱き上げるが、ドンドン体に汗が流れ始める!!

更に高熱にうなされはじめる!!

最後に首筋には……

 

「斑点……狼さんにも斑点が……」

他の患者の様に黒い斑点が現れ始めた。

幻想郷唯一の医者が……倒れた。

 

 

 

 

 

「いいぞ……もっとだ……もっと大きく……もっと広く……そしてより強く!!」

日差しすら入らない暗い場所で一人の妖怪が楽しそうにステップを踏んでいた。

まるで牧師の様なボロボロの黒い服に、紫の髪が翻る。

 

何事かと、その妖怪に近寄る他の妖怪が来る。

一言で言えば一つ目のサイだった。

牧師風の妖怪がそのサイを見てうれしそうに手を振るう。

 

「クギっ!?」

その瞬間サイの様子が変わる!!

体に黒い斑点が現れ、足をその場で突く。

その様子を、牧師風の妖怪がにんまりと笑いながら近寄る。

 

「苦しいか?辛いか?今楽にしてやろう」

 

サイに向かい再び手を掲げると、ビクンとサイの体が跳ね口から血の混ざったあわを吐く!!

そしてもう動かなくなった。

 

「いいぞぉ……我々の……糧と成れ!!」




えー、今回は第二話ですが、次が最後に成りそうですね。
今度は成るべく早く書きますので、よろしくお願いします。

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