止めてください!!師匠!!   作:ホワイト・ラム

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予告のとおり長くなりました。
連続になります。

2月17日一部修正。


抗え!!邪仙の弟子よ!!

俺……じゃなかった、私の名前は詩堂 善(しどう ぜん)

ただ今、仙人目指して修行中です。

師匠の修行は厳しいけど、きっとそれも私の事を思っての事。

 

うん……そう、たぶん。おそらく、きっと……あれ?どうして涙が出るんだろ?

と、兎に角今日もがんばります……はぁ……

 

 

 

 

 

(自身の気を体に流す!!丹田から両足、両手へ!!身体能力を向上させる!!)

普通の人間の身体から、超人の様な動きへ。

仙人の気を纏う戦い方、善はその方法を半場自己流で行っていた。

思い出すのは昨日師匠にキョンシーにされた時の事。

キョンシーの脳のリミッターを外す戦い方。

だが、今回は違う!!

リミッターを外すのでなく、体の身体機能を底上げする!!

結果は似ているが仕組みはほぼ逆の戦い方である。

だが、似ているからこそ善は戦うことが出来ていた!!

 

「うおおおおぅうう!!」

気を左手に流し、目の前の妖怪を殴打する!!

仙術などではない、気を使える格闘家の様な力任せの一撃!!

人間には十分必殺と言える威力!!

だが!!

「なんか止まったかぁ!?もろいぜぇ!!」

妖怪自身も、人間とはスペックが違う!!

たとえ人間に効く攻撃でも、妖怪には殆ど効果が無い場合もある!!

遠く必殺とはならない!!

逆に野太い腕であっさりと地面に押さえつけられる。

「モドキでも仙人なんだよなぁ!?食ったら格が上がっちまうかもなぁ?」

そう言って善の頬をべろりと気持ち悪い舌が舐める。

 

(くそぅ!?どうすれば!!今までの事は無駄じゃないだろ!?)

善が内心で舌打ちをする。

善はただ悔しかった、『勝てない』という現実に。

その事は、過去の自身の努力を否定されるのと同じ事!!

師匠の期待を裏切るのと同じ事!!

 

(師匠は、きっと俺なら勝てると思った声を掛けてくれたハズだ。なのにこの醜態かよ……!!)

この事態に善は無力感を感じた!!

しかしそこに良く知る声が響く!!

 

「善!!何をしてるの!!気を溜めるだけじゃないでしょ!!溜めたら外に出すのよ!!」

他の妖怪を叩き伏せながら師匠が激を飛ばす!!

 

(出す……?……でも出るトコなんて……!!)

その時思い出す師匠の言葉!!

『手の中にあるなら穴をあければいいのよ』

自身の右手!!切られつなげられた五本の指!!

 

「……穴、あったぜぇ!!」

目の前の妖怪の顔面に右手をくっつける!!

気の流れを指の傷痕から放出!!さらに自身の『抵抗する程度』の力を付着!!

 

「……ぎぃやあああああああ!!?!は、はがはがああああ!!」

目の前の妖怪が痛みで、跳ね上がる!!

その顔は、まるで手で掴まれたような形で崩れていた。

 

「な、何をしたぁ!?」

 

顔面を押さえながら妖怪がこちらに聴く。

「なるほどね……気を使って内部に抵抗する力を送り込んだが、こうなるのか……良いね!!シャイニングフィンガー(仮)と名付けよう!!」

 

ニヤリと笑い自身の好きなアニメの技の名前を仮で付けた。

そう言った善が、飛び上がり妖怪の胸に自身の右手をくっつける!!

 

「気の通り道って知ってるか?無理やり流されるとスゲー痛いんだぜ?」

 

「へ!?……ぎゃぁああああ!!?」

バチバチ!!という音と共に妖怪が跳ね上がる!!

そして白目をむいて気絶してしまった。

 

「どうよ?ホンの激痛程度だったろ?」

 

ゴキゴキと自身の右手の指を鳴らす。

「さぁーて……抵抗させてもらいますかねぇ!!」

確かな効果、それが善に自信を与えた!!

 

善は自身の腕を武器に、妖怪達に戦いを挑む!!

素早い妖怪は攻撃の瞬間に、力の強い妖怪は攻撃後の隙に、防御の高い妖怪は正面から堂々とその体に、気と抵抗する力を流し込む!!

 

「ごはぁ!!?」

善の倍近くの体躯を持つ妖怪が、痛みに転げまわる!!

 

「思ったよりやるわね?」

師匠が、善の傍に来て満足そうに笑う。

今の善はそれに笑い返す余裕さえあった。

「ええ、もちろん。師匠のお陰ですよ」

振り返りもせず、近寄った妖怪にシャイニングフィンガー(仮)を叩き込む!!

「子供の成長って早いわー。おむつを替えてあげたのがずいぶん昔の様ね」

 

「私は外来人です、師匠に替えてもらった事なんてありません……よっと!!」

心の中で礼をし、右手を振るう!!

すぱーんと音を立て妖怪がまた一人吹き飛ぶ!!

 

そして遂に……

 

「さぁて……残るはアンタ一人みたいだな?」

 

「覚悟は出来てるかしら?」

リーダー格の妖怪に向かって、善と師匠が構える。

 

「ヒュー!!スゲーな、出来るだけたくさん声かけたつもりだけど……やべーな邪仙も、モドキも。しょーじき言って舐めてたわ……」

そう言いながら、余裕で煙草をふかし始める。

善も師匠もこの妖怪と戦った事はある、大した力は無かったハズだがなぜこんなにも余裕なんだろうか?

 

その時善が恐ろしい物に気が付く。

 

「……おい……おまえ……それって……」

震えながら、妖怪が腰かけている物を指さす。

 

「あれぇ?気付いちゃった?そうだよ、これが此処が潰れたワケさ」

そう言った、バンバンと()()を叩く。

 

「ここは幻想郷……忘れられたモノの楽園だ。2~3個くらい忘れられた不発弾ぐらいあるよなぁ!!」

妖怪の足元には、乱雑に不発弾が積み重なっていた。

 

 

 

「俺も仮にも灼熱地獄のある場所生まれなんで、熱とかには強い訳よ。けどオタクらはどうだい?チーとばかし厳しいんじゃねーの?運よく避けたとしても……あの死体は燃えちゃうよな?」

そう言った天井に梁に縛られた芳香を見る。

 

「おまえ、卑怯だぞ!!」

 

「卑怯で結構!!俺のプライドの方が何兆倍もおもてぇんだよ!!」

その瞬間天井を突き破って、真っ赤な太陽が床に着弾する!!

「な、なんだ!?」

善が驚き、警戒する。

 

 

「ハズレか……まぁ、いい……誘爆するまで止めんなって言って有るしな」

善が穴の開いた天井から、外にいる人物を見る。

それは……

 

「お空さん!?」

その言葉通り少し離れた、高い建物からお空がこっちを狙っていた。

 

 

 

 

 

「うにゅ?爆発しないよ?」

お空が疑問に思って隣の妖怪に話しかける。

お空の用事とはこの妖怪に会う事だった。

「なぁに……気にするこったねぇぜ?爆発するまで撃てばいいんだからな」

 

額に大きな角を持つ青いツナギの良い鬼、通称ヤらないか鬼ぃさんがそこにいた。

この鬼、実は解体業者なのだが今日は前々から、不発弾のせいで手が出せなかった建物を破壊する事に成った。

だが危険なため、お空に協力を願いでたのだ。

無論、中で何が行われているかなどお空も鬼ぃさんも知りはしない。

 

 

 

「次の一発で、ここは吹き飛ぶかもな!!あばよ仙人ども!!」

妖怪がのけぞって笑う。

 

「善、芳香はしょうがないわ……運よく残ってたら直すから逃げるわよ!!」

師匠が善の手を掴む。

その声には珍しく焦りが滲んでいた。

 

「そんな、芳香を見捨てるって――」

『ありえない』善はそう言おうとしたが、言葉を飲み込んだ。

目の前の師匠は今まで見た事の無い位辛そうな顔をしていた。

 

「辛いのは私も一緒よ!!けどしょうがないわ!!」

善は理解する、師匠自身も辛いのだと、悔しいのだと、自身の無力が呪わしいのだと……

そんな師匠の瞳に善は、見覚えがあった。

 

その瞳に善の過去のトラウマがフラッシュバックする!!

 

「お前は役には立たない!!」

 

「幻想郷では、働かない奴は生きては行けんぞ!!」

 

「たぶんだけど、妖怪に食われて終わりだよな?」

 

過去に何度も体験した、自身の無力を呪う記憶……

何も出来ず、ただ逃げるだけの、目を背けるだけの自分がいる記憶……

負け犬、敗北者、そんな不名誉な称号を受け取らざるを得ない自分……

何事をも、どんな理不尽さえも受け入れざるを得ない弱者の瞳……

師匠の目には、僅かだがそんな過去の自分に似た物が見えた。

 

(そんな目をしないでください……あなたはもっと未知で不思議で底知れない人で在ってくれ!!)

善の中で激しい感情が渦巻く!!

だが、同時に何故は冷め理解している部分もあった。

(…………しょうがないよな、芳香とは俺以上に長い付き合いだもんな……それに二人はすごく仲がいいし……俺自身も、二人には笑顔でいてもらいたい……

二人の内どっち欠けてはいけない……

じゃ、まだ終われないよな……!!)

 

善は一瞬で決断を済ませる。

後は師匠がくれた自身の能力を信じるだけだ。

静かに自身の右手を握る。

 

「師匠、コレ持っててください……燃やしたくないんで……」

ふわりと、師匠に芳香からもらったマフラーを渡す。

少し汚れて一部ほつれかかった所も有るけど、道具に無頓着な芳香が選んでくれた品物だ。

燃やしてしまいたくはない。

 

「善?何を……?」

師匠が不思議そうにこちらを見る。

「さぁて……最後のもう一足掻きだな!!」

 

そう言うと同時に走り出した。

一瞬遅れて、師匠が何をしようとしているのかを僅かに理解する!!

 

「善!!やめなさい!!」

 

「俺がそう言って止めてくれた事ありましたっけ?」

最後にニヤリと笑いう、その言葉だけ残し善はもう振り返りもしない。

 

 

 

(決断は済ませた。自身の身なら何が起きようと後悔は無い!!

目指すは、二人の無事だけ!!

両足に全力で気を流し込む!!そしてリミッター自身も無理やり外すぅ!!)

 

善は右足で思い切り地面を踏みしめ跳んだ!!

ブチ、ボキッ!!と言った嫌な音が右足なら痛みと共に響いてくる!!

散々痛めつけられた身体での、更に気を消費してでの戦闘。

極めつけに自身の限界に逆らう無理なジャンプ、すでにボロボロ過ぎた体に、無理な負荷が掛かり骨や筋肉が耐えられなくなっているのだ。

だが、そんな事は足を止める理由にはならない!!

 

「もう一回!!」

飛び出した先で、屋根の瓦を今度は左足で思い切り踏み込む!!

再び響く痛み!!激痛!!

やはりここでも先ほどと同じような痛みが走る!!

骨、筋肉、神経全てが悲鳴をあげる!!

だが、だが!!その一歩はお空に届く一歩!!

目標に向かえる一歩!!

しかし無残に事に……!!

 

()()()いくよ~」

お空の手から2発目の太陽が発射される!!

しかも軌道上は善の目の前!!

一瞬だが善の顔が恐怖に歪む!!

しかしそれも、すぐに表情を変える!!

 

「いいぜ……いいぜ!!却って好都合だ!!俺の実力見せてやる!!」

地霊殿で見たよりもずっと大きく、凄まじい熱量を持った灼熱の紅球!!

善はもう移動手段はない!!逃げれない!!たとえ逃げる手段が有ったとしても善はもう逃げない!!

圧倒的な、神の力を持つ炎に素手で自らの身体一つで立ち向かっていく!!

 

(右手に……力を集中!!全力で抵抗する!!)

右手を突出し!!

善が紅球に触れる!!

その瞬間、殺人的な炎の熱さと共に善の脳内の危険信号が一斉にアラームを上げる!!

本能が訴える!!

『避けろ!!逃げろ!!やめろ!!勝てない!!諦めろ!!生き残れ!!馬鹿な事はするな!!無理だ!!危険だ!!無茶だ!!意味などない!!救えはしない!!』

弱気な自分が叫ぶ!!それを無理やり精神で抑え込む!!

 

「避けない!!逃げない!!やめない!!勝って見せる!!諦めない!!生き残る!!やるしかない!!無理じゃない!!危険など知らない!!無茶でも通す!!意味はある!!救って見せる!!俺は!!自分を変えて見せる!!!!」

 

灼熱が善を襲う!!燃やそうと、消し炭に変えようと圧倒的な力で全身をを蹂躙する!!

しかし善は止まらない!!

圧倒的な力に屈しはしない!!無力な自分には帰りはしない!!

足掻い(抵抗し)て、戦っ(抵抗して)て、抗っ(抵抗し)て、のたうちまわっ(抵抗し)て、立ち向かっ(抵抗し)て、俺は!!俺は自分を変えて見せる!!」

涙を流す自分のビジョンを右手で握り潰す!!

 

その瞬間ふっと、真っ赤だった視界が開ける!!

目の前には、驚き顔のお空が立っていた。

 

善は灼熱の地獄を、地底の太陽を突き抜けた!!

その事実に善はニヤリと笑った。

 

「お空さん!!悪いけどそれ、ぶっこわさせてもらいます!!おらああああああああ!!!」

残った左手でお空の制御棒を思い切り殴りつける!!

ピシパシと何かが砕けるような音がする!!

善の拳が砕け、制御棒が折れ曲がりヒビが走る!!

 

「どうよ……俺の…実……りょ……く……」

お空に抱きかかえられるように、善は倒れた。

 

 

 

その様子を師匠と妖怪は黙って見ていた。

「そんな……馬鹿な……」

妖怪が力なく崩れ落ちる。

 

ヒュンと風を切る音が響き、上から芳香が落ちてくる。

どうやら何かを投げて、芳香のロープを師匠が切った様だった。

 

「これでお終ね、妖怪さん?」

意識を取り戻した芳香を抱きながら、師匠が睨む。

 

「おわり……?そうだな!!お前らは終わりだ!!」

妖怪は最後の悪あがきをする!!

妖怪が不発弾の一発を手に持ち、怪力で他の不発弾に叩きつける!!

まばゆい光があふれ爆発音が周囲に響く!!

 

妖怪の目の前にはもう誰もいなかった。

 

「やった……やったぞ!!遂に仙人どもを倒した!!ざまぁ見ろ!!俺様に逆らうからだ!!あ~すっきりした!!これで今夜はゆっくり眠れるな!!はははははははは!!」

馬鹿みたいにげらげらと笑いだす妖怪。

 

「何を言ってるのかしら?あなたにはもうそんな安心して眠れる日なんて一生来ませんことよ?」

そう言って師匠が地面の穴から飛び出してくる。

 

「な、なんで?」

 

「爆発というのは横と上に衝撃が行くものなの……地下に潜れば多少はね?」

そう言って自身の髪を停めたいた鑿を見せる。

 

「さぁて……私のかわいい弟子()とかわいいキョンシー(芳香)に手を出した覚悟は出来てるかしら?」

 

「食べていいのかー?」

ゆっくりと、しかし確実にいつの間にか復活した芳香と二人がかりで妖怪を包囲していく。

 

「せ、仙人さまは……そんな酷い事しませんよね!?ゆ、許してくれますよね!?」

泣きそうな顔で妖怪が必死で懇願する。

その顔には最早プライドのカケラすらない。

 

「あら?知りませんの?わたくしとーっても怖くて、とーっても悪ーい邪仙ですのよ?……そのお願い聞いてもらえるとおもいまして?」

白魚の様な指が妖怪の頬を撫でる……

キョンシーが涎を垂らしながら近付いてくる……

 

「ひ、ひぃ……いやだ……いやだああああああtwんwwwああああああああああ!?」

 

 

 

 

 

「まーた来たのかいアンタ?」

この世とあの世の境目……俗にいう賽の河原と呼ばれる場所に善は来ていた。

此処の船頭をしている小野塚 小町が胸をガードしながら善に聴く。

 

「死んだのか……俺?」

ボソリとそう呟く。

「まだ違うね、アタイがアンタを向こう岸に渡したら晴れて死人の仲間入りだね、けど……アンタはまだ死にそうにないね」

 

サボれて良かったよ、と小町がつぶやく。

 

「師匠が、俺を連れ戻そうとしてるのか?」

 

「正解……まったく、死をどこまで侮辱すれば気が済むのか……きっと死んだ後、四季様怒るんだろうな~……ま、アンタも同じだけどね、『抵抗する』んだろ?自分の死にすら?」

そう言って適当な石に座る。

台詞の割には何処か楽しそうにもみえる。

 

「俺の帰る場所が有るなら……俺は帰りますよ……さよなら小町さん……船の上で二人きりになれなくて残念です」

そう言って手をふる。

 

「ちょ!?ちょっと!!やめてよ!!いま、マジに背中にサブイボたったよ!!ってか船の上で何をする気なんだい!!」

そう話すが善の姿はもうなかった。

 

 

 

 

 

「あれ……ここは何処だ?」

見慣れない天井を見て善が目を覚ます。

 

「あら、ずいぶんお寝坊さんね」

 

「おはようだぞー!!」

師匠と芳香の二人が善を見下ろしていた。

 

「ここは何処です?まだ旅館?」

混乱気味な頭を何とか動かす。

 

「ここは地霊殿ですよ善さん?」

横からさとりが顔を覗かせる。

言われてみれば、そんな気もする。

 

「地底のいざこざに巻き込んですいませんでした……」

そう言って頭を下げる。

そののちにさとり達から変わる変わる説明があった。

 

あの日から3日経っていた事。

あの妖怪達は前々から問題に成っていた事。

あの建物は彼らのたまり場で結局取り壊された事

怪我人は妖怪達以外に居ない事。

お空の制御棒が修理された事。

などなど様々だ。

 

「とんだ年越しになったわね……」

ぼそりと師匠が呟く。

あの日から三日……確かに今日は大晦日だ。

折角だからと地霊殿のメンバーがそばを作ってくれる予定だ。

善の無事を確認した師匠は街に出かけてしまった。

 

 

 

両手、両足は酷い状態なので回復にもう少しかかるらしい。

傷が浅かったのか、あの状態から切断などなくちゃんと回復させたくれるのが師匠の凄い所かもしれないと善は笑っていた。

ギプスで固定され何も出来ず暇でしょうがない。

そんな折、さとりが扉を開けて入って来た……

 

「ごめんなさいね……本当にアナタ達に迷惑をかけたわ……何か私達に出来る事は……」

さとりがそう言った瞬間善は自身の頼みを心中でひっそりと話した、

 

「え?お空を……?なるほど……わかりました、準備させますね」

そう言って部屋から出て行った。

その日の深夜。

 

 

 

師匠と芳香は善の寝ている部屋に来ていた。

実は善がさとりに呼んでもらったのだ。

 

「一体どうしたの善?急に私達を呼ぶなんて?」

 

「ねむいぞー」

その時窓の外から破裂音がした。

ヒュー……パパーン!!

 

「まぁ!!花火!!」

師匠が言うようにそれは花火だった。

実は善は師匠が地底に来るとき、花火がみたいと言っていたのを覚えていた。

そのため、善はさとりにお空を貸してもらって花火型の弾幕をあげてもらったのだ。

「どうです?……私のせいで地下で年越しする事になっちゃいましたからね……あと、芳香にもプレゼント送ったし、師匠にもって」

善は少し恥ずかしそうにそう話した。

 

「まぁ、キザなのね?その態度でいったい何人の子を泣かせたの?」

 

「恋人ってか友達自体殆どいないんですけど……」

師匠の言葉に善が、テンションを下げながら答える。

 

「本当にきれいね……地底で花火が見れるなんて……ありがと」

そう言って師匠は善の頭を撫でた。

なんだか心がくすぐったいのだが、残念ながら手も足も動かせない為素直に受け入れるしかなかった。

 

「師匠、さっき出かけたけど何しに行ったきたんですか?」

そう言えば何かを買っていたなと善が話題を振る。

 

「ああ、それ?簡単に言うと私からあなたへのプレゼントよ」

嗜虐的な顔でそう話す。

その瞳に善の背筋が凍る!!

 

「あなた、私が『やめなさい』と言ったのにあの日飛び出したわね?」

そう言って鼻の頭に指を突きつける!!

 

「いや、だってあの時は……」

 

「言い訳しないの!!良い事?弟子は師匠の命令には絶対従うものよ?私が足を舐めなさいと言ったらその場で舐めて、肝臓を出しなさいと言ったらすぐにとり出して、自害しないさいと言ったら笑って死になさい!!」

圧倒的不平等!!ジャイアニズムも真っ青なブラックルール!!

師匠はそれを堂々と言い放つ!!

 

「いやですよ!!なんですかそれ!!弟子にも人権を!!」

善が不満を言いはじめる!!しかしそれも無理はない!!

 

「さて……お仕置きを始めましょうか?」

ニヤリと何時もの微笑みで、紙袋を漁る!!

今回取り出すアイテムは!?

 

「じゃーん!!元気に成るお薬~(液体タイプ)」

怪しげな小瓶に入った液体!!

善の居る場所からは見えにくいが「赤マムシ」だの「天狗」だの「百戦練磨」だの怪しい謳い文句が書いてある!!

 

「それ……なんですか?」

善は自分の予想が外れる事を祈りながら、恐る恐る尋ねる!!

 

「何って『元気になるお薬』よ?『夫婦の愛が深まるお薬』『弟妹が出来る薬』ともいうわね?」

そう言って薬を善の目の前で振る。

 

「なんでこのタイミングで持って来た!?元気に成るってもの一部だけだし!!」

 

「一応体力回復の効果も――」

 

「要りません!!返してきてください!!」

善が必死で首を振るが、しょせん動けない身!!出来る事などほとんどない!!

 

「5本セットで安かったのよ~、その手じゃ一人で()()出来ないでしょうけど……そうじゃ無いとお仕置きにならないわよね?」

師匠がビンを片手に近寄る!!

 

「いやです!!止めて……止めてください!!師匠!!」

 

「ほぉら……いやなら抵抗してみなさ~い。お薬~ゴォレンダァ!!!!!」

 

 

 

 

 

夜もすっかりふけ、二人は縁側に居た……

 

「ねぇ芳香……この一年どうだった?」

 

「う~ん……覚えていないけど楽しかったぞ!!善がいたからな!!」

師匠の言葉に芳香がうれしそうに応えた。

そうね、と師匠も満足そうに応える。

 

「来年はもーっと楽しくなるわよ?」

 

「おおー楽しみだな!!」

除夜の鐘と月だけが2人を見ていた。

 

 

 

 

「ふおおおお!!らめぇええええ!!服がこすれりゅうううう!!!」

 

「お燐離しなさい!!妄想が、妄想が襲ってくるの!!こうするしかないの!!」

 

「ナイフを置いてください!!さとり様!!サードアイを閉ざさないで!!」

 

めでたし?

 




地霊殿編は今回で終了です。

え?出てない子がいる?全員出る訳ではないでしょ?
まぁ、そのうち出てくるでしょう……

因みに必殺技に名前いいアイディアありません?
流石にシャイニング~は不味いかと……

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