止めてください!!師匠!!   作:ホワイト・ラム

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スイマセン
前回から更新に時間が出来てしまいました。
改めて謝罪します。
最後にこれだけ。

さとりファンの人ごめんなさい。


妖の巣窟!!地霊殿!!

俺……じゃなかった、私の名前は詩堂 善(しどう ぜん)

ただ今、仙人目指して修行中です。

師匠の修行は厳しいけど、きっとそれも私の事を思っての事。

 

うん……そう、たぶん。おそらく、きっと……あれ?どうして涙が出るんだろ?

と、兎に角今日もがんばります……はぁ……

 

 

 

 

 

はぁ、はぁ……はぁ、はぁ……

車輪が激しく回転する音に混ざって、息が荒くなっているのを妖怪、火焔描 お燐は感じていた。

自分は妖怪だが、その辺の理性なく生きている奴らとは違う。さっきまでお燐は自身をそう思っていた。

しかし今はその考えも正さねばならぬだろう。

偶然旧都を歩いていたら、あまりに香しい死体の匂いにつられてしまった。

「いい匂いだなー」などと考えている内に無意識でその死体を持ち去ってしまっていた!!

自分の本能を激しくこの死体は刺激した!!

気が付きくと自身は死体を運んでいた!!

 

「にしても……やけに重い死体だね……ん!?」

猫車の死体が、僅かに動いた!!それだけではない!!

何かをその手で掴んでいる!!

(今更だが)死体のその手の先を見る。

 

青い布?タオルだろうか?それが自分の後方まで――

「うえぇい!?」

奇妙な叫びと共に、お燐は猫車を急停止させる!!

その、視線の先には……!!

 

 

 

「……う…う……マジで……意識……が……」

青い顔で口から泡を吹く少年!!

さっきのタオルの正体はマフラーだった!!

そのマフラーは少年の首に巻きついている!!

つまり――

「ええ!?首つり!?アタイを使った新手の自殺!!?」

お燐が驚きの声を上げる!!

 

 

 

封分後……

「いやー、本当に申し訳ない」

お燐が善と、芳香の二人組に頭を下げる。

 

「私を死体扱いとは無礼だぞー!!」

芳香がお燐に対して抗議の言葉を発する。

まぁ、何と言おうと本人は死体なのだが……

「あはは、ごめんごめん……それよりお連れさん大丈夫?」

お燐が、芳香の隣の善に視線を送る。

 

「ああ、キツかった……本当に一瞬、河原見えた……」

何事もなかったかの様に自身の首を動かす。

 

お燐の見立てでは、ほぼ確実に死んでいたのだが……

どういう仕掛けなのだろうか?

ひっそりと首をかしげる。

 

 

 

「なぁ芳香?手を放したのはしょうがない、俺も力不足だからな……けどマフラー掴むのはやめろ!!マジで死にかけたからな!?」

大層御立腹の善が、芳香を糾弾する!!

死にかけたのだから無理もない!!

 

「すまない、掴みやすい所に有ったから……」

 

「そこを掴んだら俺は命を落とすんだよ!!リアルで死ぬこと覚悟したわ!!!」

良い訳をする芳香の言葉を無視し、怒鳴りつける!!

 

「す、すまないー!!ゆるしてくれ!!」

涙目の芳香がそう言って許しを請う。

 

「まったく……まぁ、芳香の事は一旦置いといて、えーと……火焔描さんでしたっけ?」

善が、お燐に向き直り名前を確認する。

 

「うん、お燐で良いよ。そっちの方が慣れてるから」

バツの悪い物を感じながらお燐は自身の主に呼ばれているのと同じ呼び名で呼んでもらえるように指定する。

「解りました、お燐さんなんで芳香を攫ったんですか?」

 

やはりそこに行きつくかー、と思いながらもお燐が口を開く。

「いや、ごめんよ?アタイ実は死体を運ぶ系の仕事してて、あまりにも良い死体だったから夢中になっちゃって……職業病って言うの?」

あはは、と笑いながら自身の頭の後ろを掻く。

 

「良い死体?それほどでもなー」

 

「芳香お前よくよく考えろ!!褒められて無いぞ!!」

照れる芳香に、善が突っ込みをする。

それに対して芳香がハッと表情を変える!!

「そ、そうだったのかー!!」

 

「いや、あまりにもいい匂いが――」

そこまで言うと同時に、善がお燐の口をふさぐ!!

 

「ちょっと!?いきなり何を……!!」

 

「お燐さん!!最近芳香は自分の匂いとか気にしてるんです!!そこを突いちゃダメです!!」

こっそりと善がお燐の耳元でささやく。

そして取り繕う様に、笑顔で向き直る。

 

「……善……私、クサいのか?におうのか?」

今にも泣きそうな顔で善に尋ねる!!

お燐の罪悪感が刺激される!!

 

「何を言ってるんだ!!そんな事無いぞ?芳香最近お風呂とかスキンケアとか気にしてるだろ?俺はちゃーんと知ってるんだからな?」

ヤケに良い顔で、芳香にサムズアップする!!

「うう……ぜーん!!」

「芳香ー!!」

芳香が善の名を呼びながら抱き着き、善もそれを喜んで受け入れた!!

熱く抱擁な交わす二人!!関係ない人間から見ると凄まじくウザったい!!

しかし!!

「うえ、くさ……なんか腐った系の匂いが……」

圧倒的不快な匂いにボソリと善が零す!!

芳香ショック!!

上げて落とすスタイル!!

 

「……おまえ、服に血付いてるぞ……尻と背中……」

 

「え!?どこだー?」

善が芳香の背中から尻に掛けてべったり付着した粘度高い血液を指摘する。

 

「あー……ソレ、たぶんアタイのせいだね。猫車は死体運ぶ用だから、死体の血が溜まってたみたいだね……」

お燐がそう言いながら、自身の猫車に溜まった血を見る。

 

「……はぁ、仕方ないね。すぐそこ地霊殿だからそこで洗濯すると良いよ」

責任を感じたお燐が2人を自身の家に誘う。

 

 

 

 

 

「うお……すごい豪邸……」

 

「墓場と同じくらい広いなー!!」

 

善と芳香の二人組が、目の前の屋敷を見上げて感嘆の声を発する。

全体的に洋風な屋敷だが、旧都の街並みに非常にマッチしている。

 

「えへへ、そうかい?ここはねこの地獄の支配者のさとり様の家なんだ、コレ位の立派さ普通さ」

何処か得意気にお燐が胸を張る、彼女に促され二人は地霊殿の門をくぐった。

 

 

 

「あら、お燐お客さん?」

玄関を開けると同時に、奥から少女が歩いてきた。

ねむそうな半目に、胸に付いた赤い目とそれから伸びるチューブ。

彼女こそがこの家の主にして、旧都を治める妖怪の長である。

 

「はじめまして。詩堂 善です。こっちは私の連れの芳香です」

 

「うえーい!!ゾンビでーす!!」

かしこまった善と逆になぜかテンションが高い芳香。

 

「さとり様実は――」

 

「ええ、大体わかりました。お燐は芳香さんをお風呂に、洗濯は他の者にさせます」

トントン拍子に話が進み、芳香はお燐と一緒にお風呂に善はさとりが接待してくれることとなった。

 

 

 

 

 

「どうぞ、洗濯にはしばらく時間がかかるから、それまでゆっくりしてね」

客間に連れられた善にさとりが紅茶を差し出す。

久しぶりだと思いながら、紅茶に口を付ける。

 

「ごめんなさいね。ウチのペットが無礼を働いた様で」

 

「いいえ、構いませんよ。ちゃんとアフターケアしてくれたみたいですし……」

戴きます、と口に出し善が紅茶を飲む。

表面上はこれだけの会話、しかし善の心の中では様々な言葉が渦巻いていた。

 

そんな善をさとりのサードアイはジッと見据えていた。

(スゴイ豪邸だな、いくら位するんだろう?)(紅茶久しぶりだな……久しぶりに飲むと特別な感じがする……)(芳香は大丈夫か?お燐さん芳香の事攫おうとしてたしな……)(お、客間にステンドグラスが……あー、俊さん元気かな?)(師匠は今頃何してるだろう?)(首の痛みも大分引いてきたな)(さとりさんか……地底のボスって言うくらいだからきっと妖怪なんだな?)(一応仙人だっていうのは黙っておこうか)

 

浮かんでは消えていく、善の心の中の言葉たち。

本人は気が付いていないが、さとりのは全てお見通しで有る。

 

さとりはその名の通り覚りの妖怪。

相手の考えている事を全て見透かす瞳、サードアイを持つ妖怪である。

 

 

 

 

 

「うふふ……ずいぶん、落ち着かない様ですね?」

にっこりとさとりが笑い善に話しかける。

 

「そ、そんな事無いですよ?ただ、洋風の家って珍しいなっておもって……」

善が、必死に取り繕い平然を保とうとする。

だが、そんな事はさとりのサードアイの前では無意味だった。

 

(あーあ、慌てちゃって……どんなに誤魔化しても無駄なのに……)

そう言って自身の心のなかでひっそりと、ほくそ笑む。

さとりには実はサードアイを使い、相手をからかう趣味がある善はそのターゲットに選ばれてしまった!!

 

「そぉお?ねぇ善さんって気になったんですけど、何の妖怪なの?」

テーブルに頬付きを付き、善の目を覗き込むようにさとりが尋ねる。

その質問にギクリと善が固まった。

それと同時に再び心の中で、様々な言葉が浮かんでくる。

(またこの手の質問か……)(妖怪の誤認率がほぼ100%……だと!?)(いや、黙ってる訳には)(妖怪って仙人食べるんだよな?大丈夫か?)(やばいぞ!!今は師匠も芳香も居ない!!)(く、食われるか?いや、急には……)(なんとか切り抜けないと!!)

「い、いえ?別に妖怪じゃないんですよ?人間です、人間、年末だし師匠と温泉に遊びに来たんですよね」

 

「へぇ~そうなの……ねぇ善さん?知ってます?私達妖怪にとって仙人の肉ってすごいごちそうなの、年末位そんな御馳走食べたいですよね?…………知り合いに仙人っていません?」

ニタリと笑いさらに善を追いつめる!!

さとり自身は表情に出さないように必死だが、その内心!!楽しくてしょうがない!!

この妖怪!!なかなかのサディストである!!

 

「ひ、ひぃ!?い、いえ。知り合いに仙人様は居ませんね……スイマセン……」

(ば、ばれてる?そんな馬鹿な……)(気のせいに決まってる……)(いや、けどあまりに鋭すぎないか?)(ボロが出ない内に帰った方が……)(芳香がまだ出てこない!!!)(洗濯とかしてたらもっとかかる……)(落ち着け!!冷静に成るんだ、慌てない事だ!!)(いやだ、死にたくない!!)(誤魔化せ誤魔化せ)(何とかしないと……!!)

冷静を装いつつ、心の中で慌てふためく善をさとりが嘲笑う。

言葉のナイフでどんどんこの男を痛ぶってやろう。

さとりが自身の口角が上がってくのを感じる。

相手に悟られないように、自身の右手で口元を隠す。

 

(ああ、この人ホントにいいリアクションするのね……手元に置いときたくなるわ……そろそろ過去のトラウマでも見させてもらいましょうか)

サードイアが、ほんの少しだけ目の焦点をずらす。

心の表面的な部分から、その奥。

トラウマたちが眠る場所へ……

 

 

 

(さぁ、あなたはどんなトラウマが潜んでいるの?)

 

それは平和な午後の一時……

「うーん……なんか耳に違和感が有るな……耳掃除でもするか」

善が、少し音が聞こえにくくなったと思い、綿棒を使い自身の耳を掃除しようとした。

その時横から声がかかる。

「あら、耳掃除?折角だし私がやってあげるわ、こっちにいらっしゃい」

そう言って畳の上に正座で座り、自身の膝を軽く叩く。

青い髪に水色のワンピースの美女。

この記憶の主が『師匠』と呼んでる女性だ。

 

「いいんですか!?お願いしまーす!!」

膝の魔力にあっけなく陥落した善が、師匠の膝の上で横に成る!!

その行動スピードは、欲に駆られた彼だからこそ出来る動きだった。

 

「じゃあ、始めるわね?動いちゃダメよ?」

何時でも思い出せる様にと、膝の感触を必死で記憶しようとする!!

最早、師匠の声など聞こえたいない!!

だが、だが!!もう一つの音は聞こえた!!

 

ギュィィィィィッィン!!

 

それは機械音!!何かが高速で動く、ドリルのような回転音!!

その音が耳のすぐそこから聞こえてくる!!

 

「し、師匠?なんかやばい音しません?」

震えながら善が自身の師匠に問う。

 

「変な音?ああ、それならこのドリルの音ね」

そう言って善の目の前にかざすのは、日曜大工などで使われるハンドドリル!!

銃の様な形でトリガー部分を押すと同時に、細い螺旋状の鉄の棒が高速で回転する!!

 

「この前、偶然手に入れたのよ?1分間に2000回転ですって」

自慢げにドリルを回転させる。

今更だが、明らかに耳を掃除する道具ではない!!

 

「師匠!!コレ、使い方違――」

 

「ジッとしてなさい。もし手が滑って耳が傷ついたらどうするの?」

 

「み、耳どころか鼓膜や三半器官もやばいんですけど!?離してください!!やっぱり自分で――」

 

「えい!!」

ズボッと耳に何かが侵入する!!

ギュイイィッィィィィィィィイッィイッィン!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

「きゃぁあああああ!?!?!!?」

悲鳴をあげてさとりが立ち上がる!!

突然の事で善が驚く!!

 

「さ、さとりさん!?どうしたんですかいきなり!?」

慌てて、さとりに駆け寄る善だが……

その瞳はまだトラウマを覗いていた。

本人の意志とは関係なく、サードアイはさらに善のトラウマをさとりに見せた!!

 

 

 

 

 

それは有る食事時……

「おかわり!!」

善が箸を持って行っていたキョンシー(彼が芳香と呼んでいる妖怪)が勢いよくそう話す。

「芳香、そろそろやめないか?」

そう言って心配する善。

彼女はもう既に3杯以上のどんぶり飯を平らげていた。

 

「ヤダ。まだお腹すいてる」

そう言ってガンと譲らない。

「けど、もうおかず無いぞ?」

善がそう言う様に、食卓にはもう既におかずが無かった。

味噌汁なら、僅かに残っている物のそれだけというのは味気ない。

 

「大丈夫だ。イザという時の秘密兵器が有る、私の右のスカートからとってくれ」

 

「?……まぁ、良いけどさ……」

そう言って芳香のスカートの右ポケットから、一枚の写真を取り出す。

 

「おーこれこれ。これが有ればおかずはいらないなー」

そう言って芳香の見ている写真を、善が横から覗き込んだ。

 

「いいいっ!?」

それはいつぞやの手術の写真。

意識を失い胸を開かれた自分の写真!!

芳香の視線は自分の内臓が露出した部分にそそがれていた!!

 

「うへぇ。きれいなピンク色だぞ」

ジュルリと涎を垂らしながら、写真を見る。

 

「俺の分のおかずやるから、それで飯を食うのは頼むからやめてくれ!!」

 

 

 

 

 

「ひぃあああああ!!??」

更にさとりが、悲鳴をあげさらに、何かにつまずき転ぶ!!

突然の動きに完全に善は理解できていない!!

「あ、あの?一体どうしたんです?」

心配しながら善が、さとりのすぐ前にしゃがむ。

 

当のさとりはサードアイを何とか、トラウマから他の部分に向けようとした。

しかし、これが過ちだった!!

 

次にサードアイが読み取ったのは善の脳内妄想!!

正にピンク一色!!オールピンク!!健全なこの作品でほお見せできない様な妄想のオンパレード!!しかもモザイク一切なし!!

 

「ひゅう……」

立て続けに見せられた、善の心の世界に遂にさとりの精神はギブアップ!!

意識を手放した!!

 

 

 

 

 

一方善は混乱の渦中に居た。

何故かさとりが急に、奇声をあげ立ち上がったと思ったら今度は気絶してしまった。

「どうすればいいんだ?」

ほとほと困り果て、誰かを呼ぼうとするが……

 

 

 

「うにゅ!?さとりさま!?」

部屋の入口付近から声がする!!

「え?」

善が顔をあげるとそこには、長い髪、ナイスなバスト、マントか羽の様な物、素晴らしいサイズの胸、右腕に8角柱の様な物を装備した巨乳の少女が立っていた。

そしてその8角柱の様な物を善に向けた。

「【CAUTION!!】【CAUTION!!】異物侵入発見!!異物侵入発見!!速やかに処理する!!」

ヤケにアナウンスじみた声をだし、スカートから一枚のカードを出す!!

 

「核熱【ニュークリアフュージョン】!!」

 

圧倒的な炎の弾が発射され善を狙う!!!!

 

「わわわわ!?まじかーーー!!?」




べ、別に「Sなさとりん可愛いよ!!はぁはぁ!!俺を蔑んでくれ!!」とかいう理由でこうなった訳ではありません。
地底の主なので有る程度、相手を攻撃する性格だろうと考えた結果です。
チャンと理由が有るのです。
本当ですよ?

後は……私の趣味だ!!

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