止めてください!!師匠!!   作:ホワイト・ラム

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遅れてすいませんでした!!
雪で指先が……動かない……



何時からだろう?雪が降っても騒がなくなったのは……

まぁ?私は今でも騒いでるんですが!!



破壊衝動!!旧時代の地獄!!

俺……じゃなかった、私の名前は詩堂 善(しどう ぜん)

ただ今、仙人目指して修行中です。

師匠の修行は厳しいけど、きっとそれも私の事を思っての事。

 

うん……そう、たぶん。おそらく、きっと……あれ?どうして涙が出るんだろ?

と、兎に角今日もがんばります……はぁ……

 

 

 

 

 

「やっと着いたようね」

目的地に着いた師匠が、うれしそうに目の前の旅館を見上げる。

和風でずいぶん古い様だが、なかなかの大きさで風情あふれる建物だった。

 

 

 

「やっと……着きましたか……早く部屋で休みましょうよ?」

息も絶え絶えにそう話すのは弟子の詩堂 善。

その体には複数の荷物が絡み付いている!!

実はここに来る前に、買い物を従った師匠たちに旧都中を連れまわされたのだ!!

女性に買い物という事で半分予想できるだろうが……

アレもコレもと、言った具合に、ドンドンドンドン善が持つ荷物が増えて行った!!

最終的に持って来た荷物は倍以上に膨れ上がっている!!

 

 

 

「それくらいで息切れするなんて……まだまだ修行不足ね」

そう言いながら師匠は、荷物を持って両手がふさがる善の胸に手を当てる。

その瞬間思い出すのは、僅か半日まえの出来事!!

師匠曰く『気の流れる管を慣らす修行』だそうだが……

その修行!!実はものすごく痛い!!どれくらい痛いかというと加減を間違えると全身がバラバラになる事もあるという!!

 

「いやですよ?アレ、すごく痛いんです……今本気で体力とかやばいんですけど……しないでくださいね?ホントにしちゃダメですからね!?」

逃げる事も、守ることも出来ない善。

最早命乞いに近い状況だが、善が言葉を発する度師匠の口角がゆっくり上がっていく。

 

パチッ!!

 

「ひぃ!?」

と僅かに、胸にしびれるような感じがして悲鳴を上げるが……

 

「うふふ、冗談よ。こんな所でしたりはしないわ……こっちは家に戻ってからたっぷりしてあげるわ、すぐに拡張してガバガバにしてあげるから、楽しみにしていてね?」

心底楽しそうにそう話す!!

これぞ邪仙流の修行なのか!!

 

「な、なんか言葉が師匠が言うといやらしい意味に聞こえます……」

 

「まぁ。私がそんな人にみえるの?こんな清楚な私をつかまえて。酷いわ……悲しくなって来た……えい」

 

バチバチィ!!

 

「ぐわーぁ!?結局やるんですか!!!」

結局やります。

その後、特に問題も無くチェックインした善たち一行。

旅館の女将に部屋に案内される。

 

 

 

「おおー!!広い!!」

善が目の前の畳張りの部屋に目を輝かせる。

善はこういった旅館などの嗅ぎなれない匂いに、旅行できたという実感を感じるタイプだった。

 

「そうかー?墓場の方が広いぞー」

芳香が、机の上の菓子に熱い視線を送りながら善に話す。

 

「アッチは野外だろ?師匠たちの家でこんな広い部屋は無いって事」

そう話しながら芳香の視線に気が付いたため、備え付けの急須にお茶葉を入れ手早くお茶の準備をする。

 

「お茶、師匠も飲みますよね?」

 

「ええ、お願いできるかしら?」

 

それだけ聴くと湯呑みを三つだしそれぞれ注いでいく。

「ほい、芳香お前の分、熱いから気を付けろよ?師匠の分もここに置いておきますよ?」

 

そう言って机にお茶を置いて、もう一つの湯呑みを芳香の口元へ持って行く。

ずずず……と音を立て、芳香が美味そうにお茶を飲む。

 

「ぷはー!!もう一杯!!」

 

「……俺の分やる」

そう言った善は自分のお茶を芳香に差し出す。

 

「饅頭もほしいぞ!!」

 

「わかったわかった」

そう言って芳香の分の饅頭、さらに一瞬迷って自分の分の饅頭を芳香に差し出す。

はぐはぐと饅頭に食らいつく芳香。

そんな様子を見て師匠は微笑んでいる。

 

「どうしたんです師匠?」

 

「なんだか、あなた達すっかり仲良くなったわねって思ってたの」

自分の湯呑みを手の中で弄びながら善にそう話す。

何時もとは違う穏やかな表情だ。

その言葉に、善は弟子入り前の事を思い出す。

 

「まぁ、最初は排除されかけたりしましたけど、今はなんだかんだ言って師匠と同じかそれ以上の付き合いですからね…………いたぁ!?また噛んだな!?いい加減にしろ!!」

善が噛まれた指を、自身の元に戻す。

 

「おっと、すまない」

申し訳なさそうにする芳香を、善は自身の指と交互にみなおした。

おろおろする芳香を見て善は思った。

 

(不思議な事だな……前はあんなに怖かったのに、今はもう怖く無いんだからな……)

そこで、改めて今回の状況を思い出す。

 

(あれ?そう言えば、最近『慣れ』が進行してきてないか?そうだよな?……最初は芳香が怖くてしょうがなかったし、師匠のしごき(虐待?)も慣れて来たし……さらに言うと別に師匠たちと同じ部屋で寝るのも抵抗なくなって来たな……)

善本人が言うように、今回の旅行は三人とも同じ部屋である。

少し前なら自分だけ別の部屋にしてもらおうとしていたのだろうが、今回はナチュラルに同じ部屋での宿泊である。

 

(コレってなかなかヤバくないか?ドンドンやってはいけない事のハードルが下がっている気がする……洗脳?違うよな……いや、でもこれがもっと進んで行ったら……!!)

瞬間!!善の脳裏に浮かぶのは何時かの未来!!

 

「芳香~、ぜ~ん」

師匠が自分と芳香を呼ぶ、善はそれに対して笑顔で師匠の元に走っていく。

もちろん頭には札が張られており、身体には縫い跡が有る。

 

「師匠~、またお腹の傷が開いてきたから縫ってくださーい」

服をめくり上げながら、甘えるように師匠に話しかける自分。

 

「しょうがないわね、すぐに縫ってあげるわ」

そう言って自分の腸を詰めなおす師匠とそれをうれしそうに見る自分……

 

 

 

「いやだ、いやだ、いやだ!!こんなの嫌だぁ!!!」

突然頭を押さえて、大声を上げる善に師匠と芳香が何事かと、目を見開く!!

 

「善!?一体どうしたの!?」

 

「わ、私が噛んだのがいけなかったのか!?そうなのか!?」

心配する、二人に気付き一気に心が覚める善。

軽く自身の指を拭き、芳香の湯呑みが空になったのを確認し座布団から立ち上がる。

 

「いえ、大丈夫です……ちょっと良くないハッスルをしちゃっただけです……一回、温泉行って頭冷やしてきます……」

そう二人に告げ、自身の荷物を漁り着替えを取り出すと。

のろのろとふらつちながら、この宿自慢の温泉に向かっていく。

 

「なんだったのかしら?偶にだけど私善がなにを考えてるのか解らなくなるわ……」

「私も良くわからないなー」

師匠と芳香の二人が、去って行った善を心配する。

 

 

 

一方善は……

カラン、カランと下駄を鳴らしながら旅館の中を歩いて行く。

そして、男と書かれた青い暖簾を見つけその中に入っていく。

 

「混浴じゃないのか……」

何処となくがっかりしながら善は、脱衣所で服を脱ぎ温泉に入って行った。

 

カッポーン……

 

「あ~あ~……極楽じゃ~」

何故か口調が親父クサくなりながらも、湯船で足を伸ばす。

個人では所有する事はまず無いであろう巨大な石作りの湯船に、備えつけられたサウナ、水風呂、撃たせ湯、薬草湯などのバリーション豊かなお風呂の数々。

身体を洗った善は、様々な温泉を堪能していた。

夢中で入っていたが、速い物で30分以上の時が過ぎていた。

 

「そろそろ行くかな……おっ!!」

部屋に戻ろうとした時、ガラス張りの外に「露天風呂」の看板を発見する。

コレは行かなくてはと、行先を変えた。

 

 

 

後に善は思う、この時大人しく部屋に帰っていればと……

 

 

 

「うぉ!!さっぶ!!」

外に出た善を迎えたのは寒空の冷気だった。

今にも雪が降りそうな天気の中で、露天風呂だけが誘うようにホコホコと湯気を上げていた。

 

「アチ、アチ……フウゥ……」

外にる為か、中より少し熱い温度になっている露天に自身の身体を入れる。

巨大な湯船は真ん中が竹の壁で区切られている。

 

バシャバシャっと自身の顔にお湯をかけた時、ピクリと善が反応する。

まさか!!と思い、温泉の真ん中にある竹壁にその身をピタリとつける。

全神経を耳に集中させる。

 

「……わ……い…の……ね……?」

 

「わ……し……ん…だ……ぞ……!!」

 

聞こえる!!僅かにだか聞こえる聞きなれた声!!

その時善は一瞬にして理解する!!

 

(この壁の向こう女湯じゃね!?)

 

そう!!実はこの竹の壁はもともとは混浴だったこの露天を仕切るための物!!

善の予想通りこの向こうにはユートピア(女湯)が広がっている!!

 

自身の持てるすべての聴覚を壁の向こうに向ける!!

僅か、ほんの僅かでも構わない!!女湯のキャッキャうふふな会話が聴きたいのだ!!

読者の諸君!!所詮音だけと侮るなかれ!!

かの有名なミロのヴィーナスは腕が無いと言う『欠けた部分』が存在する!!

しかしそれは『欠けた部分』を自身で想像することによって無限の可能性が存在する事が可能となるのだ!!

『確定』していないという事は、『自身の想像を挟む事が可能』であると同義であり、不確定にこそ自分の自由な発想を当てはめる事が出来るシュチュエーションなのだ!!

 

さて、話を理想郷の乙女達(女湯)に戻そう。

 

現在壁を経て、美女と全裸状態!!このシュチューションに興奮しない訳がない!!

更に見えない事により妄想は膨らむ訳で……

 

(何とか……何とか隙間はないか!?探せ!!探すんだ!!!)

全裸でうろうろと情けなく、壁の前を行ったり来たりする!!

この男、一応仙人志望なのだが……

明らかに欲に溺れた変態である!!

 

その時!!

 

「ぜ~ん!!あなたコッチ覗こうとしてるでしょ?ダメよ~」

 

「し!!してませんよ!?」

壁の向こうから聞こえるのは師匠の声!!

見える訳でもないのに、緊張し声が裏返る!!

 

「……ああ、居てくれたのね……良かったわ」

 

「え!?」

師匠の更なる声がした後、善は自身の身体から急に力が抜けるのを感じた!!

そして……

 

 

 

 

 

善が出て行った部屋にて……

 

「そろそろ私達も、温泉に行きましょうか?入ればきっとお肌もすべすよ?」

荷物から、自分と芳香二人分の着替えを出して師匠が話しかける。

 

「ほんとか!!早く行きたいぞ!!」

最近肌のスキンケアを気にし始めた芳香が、師匠の言葉に瞳を輝かせる。

そして師匠の目の前で滑らかに立ち上がった。

 

「あら、驚いたわ……ずいぶんきれいに立ち上がれる様に成ったのね」

 

「善が毎日ストレッチでほぐしてくれているからな!!」

まるで、布都の様にドヤ顔をする芳香。

その様子が何処かおかしくて、師匠は笑ってしまった。

 

「そうなの、それは良かったわ。さあ、さっそくお風呂に行きましょうか」

 

「おおー」

芳香を伴って師匠は女湯に向かって行った。

 

 

 

「おおー広いぞー!!」

芳香が興奮気味に、温泉を見る。

あまり人里の銭湯などの施設は使わない為、芳香にはすべてが物珍しいのだろう。

実際あちらこちらと、物珍しそうに風呂を見ている。

 

「あら、露天が有る様ね、行きましょうか」

露天風呂の看板を見つけ、自身のキョンシーを伴い外の露天にその身を浸す。

寒い外気とお湯の温度差が心地よい……

どうやら芳香も気に入った用で、目を細めている。

 

「……何かしら?」

騒がしい声に、師匠が顔をしかめる。

悲鳴の様な物がし、微かにこちらに向かっている様な気さえする。

だんだんその声は大きくなり、遂には……

 

「ここに居たかぁ!!邪仙が!!さっきはよくもやってくれたな!!」

女湯だと言うのに、全くそれを気にせず入って来たのは先ほど自分が叩きのめしたチンピラ妖怪達、前回の失敗に懲りたのか今回は数人だが人数が増えている。

正直言って自分の弟子の方がまだ、戦う力が有るのではないか?とさえ思ってしまう大した事のない妖怪達だ。

 

「まぁ、皆様お揃いで……いかがいたしました?すみませんが、私共現在休暇中なので一旦時間をおいて戴けると嬉しいのですけど?」

自分と芳香の身体を、湯船に隠しながらそう話す。

残念だが、こんな奴らに自分の身体を見せる趣味は無い。

 

「ああ?俺達はこのタイミングを狙ったのさ!!そっちは全裸、丸腰の仙人なんてこわかねぇんだ!!今夜の俺達の夕食にしてやるぜ!!」

下品な表情をしながら、妖怪どもがこちらに向かってくる。

それに対して、師匠はどうした物かと考える、手を下しこいつ等を倒すのは問題ない。

問題ないのだが……

 

「めんどくさいわ~」

しかし

有る事を思いついて、髪の中に隠しておいた札を取り出す。

湿気に対してある程度耐性が有る札だ。

そして声を上げる、正直賭けだがそんな部の悪い賭けではない。

 

「ぜ~ん!!あなたコッチ覗こうとしてるでしょ?ダメよ~」

壁の向こうに居るであろう自身の弟子に呼びかける。

 

「し!!してませんよ!?」

期待通り自身の弟子は、壁のすぐ近くに居た様だ。

 

(今更だけど……あの子はすこし自分の欲に忠実すぎるわね……最も今回はそれで助かったのだけど……)

善の声が帰って来た場所から、おおよその位置を特定する、

 

「……ああ、居てくれたのね……良かったわ」

そう言って、自身の持つ札を壁の向こうの弟子に投げる!!

数瞬遅れて手ごたえが帰ってくる。

自分の札は()()()()()()()()()()()()()()()()様だ。

 

「善、いらっしゃい。この子たちの相手をお願い」

 

「了解」

そう話すと同時に、目の前の妖怪達の目の前に自身の弟子が立ちふさがる!!

 

 

 

 

 

「な、なんじゃこりゃ!?」

妖怪の群れたちが驚いている、しかしそれも無理はない。

目の前に突然全裸の男が立ちふさがったら、誰だって驚くだろう!!

いや、正確には全裸ではない。

その、何というべきが……一応大事な所は隠れている。

足と足の間にお札が張り付いており、ギリギリ見えていない。

 

「悪いな、師匠の命令だ。俺はあんた等を今からぶっ潰す!!覚悟はOK?」

こちらを指さし、その後親指を下に向けたグーで自分の首を掻っ切る様な動作をする。

動いた!!と思うと同時に、仲間に一人が呻き声を上げる!!

気が付いて見て見ると、仙人モドキの拳が深々とソイツの腹にめり込んでいる。

 

(ワン)…………(ツー)!!、(スリー)!!」

2、3の掛け声と共に、さらに二人の仲間が倒れる。

一人は、目の前で宙を舞っていた!!

 

「ぜ~ん?ここはお風呂よ?他の人の邪魔にならない様に外でしなさい?」

 

「了解ィ!!」

邪仙が一声かけると同時に、仙人モドキが仲間を壁(旅館と外を隔てる)の向こうへと『捨てる』戦いに成った、ダメージよりも外に追い出すのがメインの様だ。

千切っては投げると言う表現が当てはまるスピードで仲間たちが、温泉の外に叩きだされる!!

 

「アンタで最後だ」

 

「え!?」

気が付いた時にはもう遅い、すぐ懐に仙人モドキが入り込んでおり自分までも壁の外へ捨てる!!

 

「がはぁ!?」

土の味が口にした時初めて自分が、投げ出され外の地面に倒れ伏したのだと理解していた。

その事実のふつふつと怒りがのぼってくる!!

 

「きさまぁ!!…………ああッ!?」

怒りにみを任せ立ち上がった時には、他の仲間はすでに全滅していた!!

死屍累々と言った惨状の中で、仙人モドキがこちらを睨む!!

 

「言ったハズだ、ラストはアンタだってなぁ!!」

空中で一回転し!!こちらに蹴りを叩き込む!!

なんの声も出せずに、妖怪は意識を手放した!!

 

 

 

 

 

無数の妖怪達の中、善がひっそりとたたずんでいた。

さっきまでの戦いの余熱がまだ体を巡っている気がする。

今回はキョンシーとして操られたが意識はしっかりしていた為、『気』の巡り直に体感できるいいチャンスだったかもしれない。

善はそんな事を思いながら、空を見上げた。

 

「あ……雪だ……」

地下で空すらないのに不思議と雪は降るんだな、と善は冷静に考えていた。

そして……

 

ポンと肩に手を置かれる。

何か?と思い振り返るとそこには大柄な女が居た。

額を見ると赤い立派な角が生えている、どうやら鬼の様だ。

 

「この辺で全裸の変態が暴れてるって聞いたんだけど……ちょっと話聞かせてもらっていいかい?」

肩に置かれた手に力が、入る!!!

 

「え?えっと?」

一瞬混乱し今の自分の状況を改めて理解する!!

天下の往来で!!全裸で!!妖怪と喧嘩!!

問題なし?NO!!問題有りまくり!!

 

「いや、コレは……」

 

「ハーイ、とりあえずコレ腰に巻いときな?泣いてる子とか居るから」

そう言って善の腰に、毛布が巻かれ……両手には縄が巻かれた。

 

「あの?ちょっと!?」

 

「ああ、言い訳なら、後で聴くから……ほら、一緒に来てね~」

そう言って鬼が善を引っ張っていく。

 

「ちょ!?え!!なんで!!!し、師匠助けて~!!!!」

哀れな善の悲鳴が地獄に響き渡った。




あー寒いなー……
こんな日は露出に限るなー
……とかしないでください!!
逮捕されます!!

読者の皆さんは善君のマネをしない様にね?

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