止めてください!!師匠!!   作:ホワイト・ラム

2 / 103
まさか続くとは!!
まさに予想外!!
10月7日訳あって追記しました。


孤立無援!!無関心な人々!!

俺……じゃなかった、私は詩堂 善(しどう ぜん)

仙人を嫌々……ではない、心から仙人目指して頑張ってます!うん……そう、たぶん。

 

 

 

早速ですが私は……

「さあ善?今日はどんな修行をしようかしら?」

今死にかけてます!!誰でもいいから助けて!!

 

今の善の置かれている状況を説明しよう!

後ろで手を縛られて正座させられてい居る善。

目の前には善の師匠が右手に4枚の紙を、左手に黒く蠢く光弾を構えている。

そして足元には……黄色いシミが付いた師匠のお気に入りの羽衣!

何故そうなったかって?それは今から説明しよう!

 

 

 

今朝

「あー、ねむい……マジでヤバイ……」

日々の疲れがたまり足取りの重い善。

半分意識のない状態で朝食を作っていた。

お椀にたまごを割り入れ、しょうゆをたらし手早くかき混ぜる。

がちゃ!「あ”!?ヤベ!!」

箸に手が当たりたまごを半分ほど、零してしまう。

卵「ふッ……アンラッキーとダンスッちまったぜ……」

無残な卵!!

「あーあ……掃除しなくちゃな……」

そう言って適当な雑巾を探す。

「あ!これがいいや」

近くに落ちていた布を折り畳み拭く。

「よし!」

そう言って再び調理に戻る善。

朝食も完成し、師匠も起こし、芳香も呼んだ。

いざ食事をしようとした時、師匠が一言。

「ねえ善?私の羽衣知らないかしら?丁度貴方が台所に置いた布位のサイズなのだけど?」

笑顔。見た目麗しい師匠が今まで見た事のない笑顔を浮かべていた。

ただし今までのどんな顔より恐ろしかった。

「あ……こ、これです……か?」

善は震えながら朝、卵を拭いた布を師匠に差し出す。

「ああー!これこれ。仙人にはこれが無いと雰囲気、出ないわよね」

張り付いたような笑顔でそれを身にまとう。

「あらー?どうしてここが汚れているのかしら?善、な・ん・で・か・知らない?」

わざとらしく黄色いシミを指でなぞる。

「ひ、し、師匠?ごめんなさい!!朝、雑巾と間違えて使ちゃいました!!」

「あらあら……うふふふ」

 

 

 

そして冒頭へ戻る!!

 

「怖がらなくていいわ。失敗は誰にでもあるもの、けど私も修行の加減間違えそうね」

いっそう左手の光弾が大きくなる。

(アレ?コレ食らったら死ぬんじゃね?)

師匠の顔を見ていると、なんだか視界がぼやけ始める善。

「あら?泣くほど修行がうれしいのね。今日の修行は好きに選ばせてあげるわ」

そう言って善の目の前に4枚の紙が置かれた。

「コレにはそれぞれ修行内容が書いてあるわ。好きなのを選びなさい?」

①師匠の全力弾幕耐久(∞時間コース)

②芳香と一緒にキョンシー体験(一生コース)

③妖怪の山に遊びに行こう!!(全裸コース)

④岩の中で精神集中(私が飽きるまでコース)

死刑宣告!!オン!パレード!!

 

「あの……師匠?これって師匠に殺されるか、芳香に殺されるか、妖怪に殺されるか、一人さみしく死ぬか選べってことじゃないですか?」

「アラ、そんな事は……有るのかしら?」

殺る気満々の師匠!!

「……芳香……助けて……」

横で見ていた芳香に助けを求める。

「善。②番にしないか?」

死体なのにすごくキラキラした目でこちらを見てくる。

味方はいない!!

 

「師匠……本当に済みません!!マジで許してください!!」

必死で頭を床にこすりつける。

「そうね……芳香が「良い」って言ったら許してあげる」

すさまじくイキイキした笑顔で師匠がそう話す。

「芳香!!俺を許してくれ!!最悪意味もなく『良い』とだけ言ってくれればいいから!!」

善の必死の思いが神に通じたのか!

「……?……いいぞー」

「あら、お許しが出たみたいね、今回は許してあげる。羽衣(コレ)しっかり洗っておきなさい」

そう言って黄ばんだ羽衣を善の頭に乗せる。

「は……はい師匠……」

縛られた善はしばらく蠢いていた。

 

 

 

その日はいつもより少し修行が厳しかったそうな……

午前の家事と修行が終わり善は買い出しに出かける。

「買い出しに行ってきますー」

そう言って人里に向かう善。

 

「ねぇ芳香?さっきなんで「いい」なんて言ったの?うまく行けば善を芳香の仲間(キョンシー)に出来たのに……そのために羽衣の偽物まで用意したのよ?」

師匠が芳香に話しかける。

「善には生きていてほしいぞ!できるなら本人から……ん?アレ?なんだっけ?」

「もう!!芳香は本当にかわいいわ!!」

師匠が芳香の頭をなで抱きしめる。

 

「うわ!なんか急に寒気が……まあ、いいか……」

人里に向かっていく善。

計画とは本人の知らないところで侵攻する物である。

 

 

 

門番という仕事を知っているだろうか?

門を守り侵入者を排除する鉄壁の警備員。

ここ、吸血鬼の紅い屋敷以外に、人里にも出入り口を守る門番が居た。

屈強!里一番の力持ち!鉄壁の意志!小さな英雄!

今代で58代目となる里の門番は数々の名声を持っていた。

しかし彼は今……門の前に居ない……

とある人物を発見し恥も外聞もなく逃げ出したのだ

(ひいい!!ヤツが来た!!なんでだ!!もうだめだ!!)

門の影で子供の様に震えている。

 

「あれ?今日も門番誰も居ない……平和なのか物臭なのか……」

ため息を吐きながら人里に入ってく来るのは善。

にぎやかな人里の人間に緊張が走る!!

(おい、アレって……)(邪仙の弟子の……)(前、自分を実験でキョンシーにしてた……)

(目を合わせるな!!魂が吸われるぞ!!)(常に7人分の魂を体内に宿しているらしいぞ?)(だから7邪王(イビルキング)なのか……)

 

(やっぱり仙人の修行者って珍しいのかな?じろじろ見られてる……)

そう言いながら街中を歩く。

見事なすれ違い!!

「あ!肉屋に兎肉が有る!しかも安売り中だ!!買っていこう!!」

芳香が肉好きなため、安価で手に入るウサギ肉を善は良く買っていく。

(ひぃ!!こっちに来た!!)(逃げろ!!)

モーゼの様に肉屋に並んだ人が割れる。

(入れてくれるなんて親切だな……)

そう思いつつ肉屋の主人に目的の品を注文する。

「すみませーん。お肉が欲しいんですけど……」

店の奥から顔面蒼白の肉屋の主人が出てきた。

「い、いらしゃい……ませ!」

「あ!肉が……」

「う!ウチに人肉は有りません!!すみません!!娘と家内にだけはどうか!!」

店長がいきなり頭を下げる。

「いいや。人肉じゃなくて兎肉を……(大丈夫かこの肉屋……幻想郷では常識にとらわれてはいけないらしいけど……)」

「儀式用ですね!!わからましたた!!」

そう言って店の奥から絞めた兎を持ってくる。

因みに言えてない。

猟師が撃ったのか僅かに血が滴っている。

(あー、安いってこういう事(精肉前)か……何とか捌けるしまあいいや)

善は兎を10羽買っていった。

 

「ぜーん!此処に居たか!!」

街中から芳香が現れる。

「どうしたんだ芳香?急に?」

「薬が無いから、買って来いって言ってたぞ!」

「ああ、了解……早く買わなきゃどやされる……そうだ芳香!今日は兎鍋だぞ?」

袋の兎を見せる。

「やったー」

善は予定を切り上げ永遠亭に向かおうとするが……

「あ!クスリの販売来てる!ラッキー!」

ブレザーを着たうさ耳の少女を見つける。

永遠亭の薬は人気だ、早くしないと売り切れる。

もし買えなかったと師匠が知ったら……

善の脳裏に朝の四択が再び!

「コレ持っていてくれ」

さっき買った肉を芳香に渡して善は駆けだした。

「うをおおおお!!加速そぉぉぉおぉち!」

*実際には付いてません。

 

 

「ハイどうも~風邪薬に痛みどめ、夜のお供の薬まで何でもそろってますよ~」

鈴仙・優曇華・イナバはクスリを売り歩いていた。

(はあ、群がっちゃってバカみたい……)

営業スマイルを貼り付け人々に薬を高価で売りつける。

鈴仙も妖怪、常人より耳が良い。

人々の小さなつぶやきが聞こえる。

(おい、アレって……)(邪仙の弟子の……)(前、自分を実験でキョンシーにしてた……)

(目を合わせるな!!魂が吸われるぞ!!)(常に7人分の魂を体内に宿しているらしいぞ?)(だから7邪王(イビルキング)なのか……)

どうやら邪仙の弟子が居るらしく、少し里が騒がしい。

(どう考えてもおかしな噂ばかり……やっぱり地上の民は愚かね……)

冷めた考えをしていたがどうにも聞き捨て出来ない言葉が聞こえてきた。

「今日は兎鍋だぞ?」

地上の動物とはいえ自分と同じ兎、聞いていて気分の良くなるものではない。

(野蛮な物を……)

そう思う鈴仙だが……

「うをおおおお!!加速そぉぉぉおぉち!」

「ええ!?」

謎の装置の名前を言いながら必死の形相でこちら走ってくる男!!

しかも同胞(ウサギ)の血の匂いをさせながら。

そして恐ろしい事に鈴仙は気が付く。

(この声!さっきの兎鍋の声と同じ!!)

その瞬間鈴仙は恐怖に支配された!!

(この男!!まさか私を食べる気!?)

「いやー!!来ないで!!」

命の次に大切な薬箱を抱え全力で逃げる!!

「おい!どうして逃げるんだ!!」

後ろから声が!間違いない!自分を狙っている!!

必死で竹林まで駆け抜ける鈴仙。

(荷物が……重くて……捨てるしかない!!)

自分の師匠の折檻が怖いが命には変える事は出来ない!!

意を決し鈴仙は薬箱を捨てた!!

「うわ!!ヘぶ!?」

男は薬箱につまずいたのかそれ以上追って来なかった。

しかし恐怖は消えず永遠亭でしばらく震えていた。

 

 

「薬買えたか?」

いつの間にか追いかけていた芳香が追い付いてきた。

「なんか逃げられた……薬代は置いていくか……」

薬箱から必要な薬を持ちだす。

「さあ、芳香帰る……何食ってるんだ!!」

「ん?兎だけど?」

芳香の口の周りにはべったりと血が付いていた。

「食べちゃったのかよ……仕方ないまた買って帰るか……」

そうして二人は人里に戻る。

 

 

 

その頃人里では先ほどのうわさでにぎわっていた。

永遠亭の兎を7邪王(イビルキング)が襲った、誰しもがその話題を話していた。

「なあ、永遠亭の兎……」

「大丈夫だ!さすがに7邪王でも人型の妖怪は……」

「永遠亭も黙ってねーし……」

「むしろ退治されて……」

内容は希望的観測が多かったが……

その考えは再び里に現れた善を見て一変する。

 

 

「芳香ー走るなよ?」

「解ったー。兎もっと食いたい!!」

「ハイハイ、俺も食うんだからな?」

そこには口を真っ赤にしたキョンシーと7邪王が居た。

「「「「殺りやがった!!!」」」」

誰しもがそう思った。

 

 

「師匠ー帰ってきましたよ!!」

善と芳香が師匠のもとに帰る。

「あら、善に芳香お帰り」

優しい顔で迎える師匠。

「しっかりお使いは出来たみたいね。よしよし」

芳香をなでる師匠。

「あ!いま芳香は……」

気が付いた時にはもう遅い。

師匠の青い服には兎の血がべったりと……

「ねえ?善?この四枚の……」

今朝がたの紙を取り出し、善の師匠がにっこり笑う。

「本当に止めてください!!師匠!!」

「どうしようかしら?」




鈴仙ファンの人ごめんなさい!!
え?芳香が食べた兎の残り?
それなら俺の横で(冷たくなって)寝てるぜ?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。