止めてください!!師匠!!   作:ホワイト・ラム

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皆さんこの時期って、暖房とかどうしてます?
私は基本的に炬燵頼りなんですが、ガスヒーターとかホットカーペットに憧れます。
コンビニの肉まんを思う日々です。


修行再開!!邪仙達との生活!!

俺……じゃなかった、私は詩堂 善(しどう ぜん)

仙人を嫌々……ではない、心から仙人目指して頑張ってます!うん……そう、たぶん。

 

 

 

すっかり冬支度の済んだ、自分の部屋で善は優しい夢に包まれていた。

胸の豊満な女性に抱きしめられ、優しくなでられる夢だ。

目の前の美女に、善の理性はどんどん炎にさらされた蝋燭の様に、ドロドロに溶けていく……

しかし夢は儚く消えて行く物……

美女はだんだんと姿が薄れてゆく。

それを必死で追いかける善!!

そして遂に、力いっぱいその美女を抱きしめる!!

 

「もう離さない!!ずっとこれからは一緒だ!!」

それに驚いた美女が、かわいらしく声を上げた。

 

「アン!ダメよ善?隣で芳香が見てるわ」

その声は紛れもなく師匠の物!!

抱き着いたと有ったらタダでは済まない事が容易に理解できる!!

 

「ひぃ!?すみませんでした師匠!!つい自分を抑えきれませんでした!!」

その場で土下座の姿勢を取ろうとして、足が絡まる!!

 

ドシーンと体に衝撃!!

 

「はッ!!……夢か」

真っ暗な自分の部屋で目を覚ます善。

どうやらベットから落ちてしまった様だった。

窓から光が入ってこない事を鑑みると、まだ夜中であることが想像できた。

 

「うーむ、途中まで凄まじく楽しい夢だった……気がする。夢の続きってどうやったら見れるんだろ?まぁ、いいや」

無理な注文だと分かっていながら、夢の続きを見れる事を期待し再びベットに横になる。

 

 

 

「……どうしたの?急に起きるなんて……布団を取ったら寒いじゃない……」

 

「ああ、すいません。ちょっと淫夢という奴を見まして……すごいきれいな女の人に抱き着くんですよ……」

そう言いながら、布団にもぐりこんだ。

 

「あら、さっき急に抱き着いてきたのはそういう事なの……」

 

「はい、すいませんね……寝ぼけちゃって……」

愛想笑いを浮かべながら、再びゆっくりと眠りの世界へ落ちていく……

 

訳 に は い か な い !!

 

少しずつ善の寝ぼけていた頭が、警鐘を鳴らし始める!!

 

(あれ?夢の続きか?コレ?そんな馬鹿な……さっきに声は間違いなく師匠……そしてこの触れている柔らかい物は……)

ふにふにッ!!柔らかい!!

ふにふにッ!!素晴らしい!!

 

「んッ……ダメだって言ったでしょ?芳香が隣に居るって言ったばかりじゃない……見られてもいいの?」

 

(やばくないか!?師匠じゃね!?いや待て、落ち着け詩堂 善。師匠は自分の部屋で寝ているハズだ……コレは夢に違いない!!明晰夢とかいう奴で……)

必至に自分に良い訳をするが、流石に色々と限度が有った!!

 

「あの……師匠?なんで私の布団に?それとこれって現実ですか?」

おそるおそる会話を試みる。

出来れば完全に夢で有ってほしいのだが……

 

「……現実に決まってるじゃない?」

 

 

 

その言葉に遂に善のキャパシティがオーバーする!!

 

「なんでアンタ此処に居るんだよ!!自分の部屋はどうした!?なぜここで普通に寝てるんですか!?」

ベットから立ち上がり、机の上に有ったマッチで部屋の隅の灯りに火を着ける。

すると薄暗い灯りで、寝間着の師匠の姿が浮き彫りになる。

何時もの様に青い薄い生地の寝間着で、寝相の悪い師匠らしく肩や胸さらには太ももから白い肌が大胆に露出している!!

 

布団に寝乱れた女性!!パッと見、完全に事後です!!ありがとうございます!!

 

「なんでってもう忘れたの?」

髪を気だるげにかき上げながら、師匠が微笑む。

その言葉にゆっくり善は昨晩の事を思い出した。

 

 

 

 

 

~回想~

命蓮寺に修行に行ったり、他の場所に行ったりなどして、善は約10日ぶりに師匠たちと暮らしている洞窟の家に戻ってきた。

しかし

善が見たのは驚きの光景!!

床一面に服は散乱し、キッチンなども使ったのか洗ったのかすら、解らない食器や調理器具で溢れ、さらにゴミまで点在する。

まさに惨劇と言っても過言でない悲惨な状況下に有った!!

 

「あの……師匠?なんでこんなに汚れが溜まってるんですか?」

おそるおそる師匠に聞いてみる。

可能性としては善が気が付かないうちに長い年月がたったか、解りやすい所で言えば空き巣が忍び込んだかだが……

しかしいずれも答えは違った。

 

「ああ、家事をする弟子……じゃなくて奴隷が居なくて、散らかってしまったのよ……」

わざとらしく困ったような顔を善に向ける。

その眼は『掃除しておいて♥』と言っている。

 

「なんで言い換えた!?奴隷じゃないですよ!?弟子です!!弟子!!師匠の中では弟子と奴隷が同意語なんですか!?」

 

ムキになって師匠に詰め寄る善だが……

「似たような物だもん」ニコ

 

「『物だもん』じゃありませんよ!!かわいく言ったもダメですからね!?

……とにかく掃除は明日するとして……師匠たちこんな状況で何処で寝てたんですか?足の踏み場も有りませんよ?」

散らかりきったリビングを、物を踏まない様に気を付けて歩こうとした。

 

「善の部屋で寝てたわ、今日もお願いね」

 

「はぁい?!」

また師匠がおかしな事を言い出したと思ったら、首筋に衝撃が!!

それ以降記憶が無いため、そのまま連れてこられたのだと思われる。

 

~回想終わり~

 

 

 

 

「思い出した?」

 

「ええ、思い出しましたよ……いや、ずぼらと言うか……ウオッ!?」

師匠と善が話している時ガシッ!!と足首を掴まれる!!

 

「……ううぉ……善……?お早よ……」

師匠と一緒に来ていたと思われる、芳香が善の足首を掴んでいた!!

 

「お、おう。芳香おはよう……こうして見るとリアルにゾンビ映画のシーンだな……」

若干頬を引きつらせながらも芳香を立たせる。

すると芳香がキョロキョロと首を動かし、部屋を確認し始めるする。

 

「あれー?ここ善の部屋だぞ?……なんでみんなで寝てるんだ?」

覚えていないのか不思議そうに首をひねる。

 

「ああ、それなら……」

善が説明しようとする時、師匠の言葉が横からそれを遮った!!

 

「善の計画なのよ……芳香、善がしばらく私達と一緒に居なかったのを覚えている?」

 

「覚えてるぞー」

 

この時点で善は嫌な予感がしていた。凄まじくしていた!!

いや、もう既に何度も繰り返された、当たり前の様に知ってる未来!!

師匠はなおも言葉を続ける。

 

「そのせいで、善の情欲が溜まり過ぎてしまったのよ……昨晩善は夕食に睡眠薬を混ぜて……芳香を連れ込んで部屋で……部屋で人前ではとても言えない事をしようとしたのよ!!」

 

「な、何だってー」

どういう技術なのか、涙を流しつつ芳香に説明する師匠。

そしてびっくりするほど棒読みな芳香。

 

「アナタを人質に善は私に身体を要求したの……私汚されてしまったわ……」

そして遂に師匠が泣き崩れる。

 

「……あの師匠?茶番はもういいですか?そろそろ朝のランニングに行きたいんですけど……」

 

「あら、もう乗ってくれないのね……成長なのか倦怠期なのか……さみしい物ね」

そう言って師匠はつまらなそうに唇を尖らす。

 

「さぁて、芳香ランニング行くぞ?終わったらまた一緒にストレッチだからな?」

 

「わかったぞー!!」

うれしそうに善の後を付いて部屋を出た。

 

師匠は起きたばかりの頭で、ぼーっと善と芳香の出て行った扉を見ていた。

しかしやがて布団に再び横に成り、目を閉じた。

 

「……やっぱり善が居ると、芳香の機嫌が良いわね……命蓮寺の時もなんだかんだ言って会いに行ってたみたいだし……すこ……しだけ……妬けちゃう……わ……」

そう言って再び寝息を掻き始めた。

 

 

 

 

 

タタタタと足音を立て墓場を走る善。

そしてその後をピョンピョンと跳びながらついてくる芳香。

朝日がゆっくりと墓石たちを照らしていく。

たった数日だが、ランニングが行えなかった分とても久しぶりに感じた。

6ヶ月程度しかたっていないハズだが、幻想郷の外に居た時の事はもう既に遠い過去の事の様な気がする。

感慨深い気持ちに浸りながら、善は墓の中を走りまわった。

ランニングが終わったら芳香と二人でストレッチだ。

 

「ん~……固ったい……」

 

「もっと、もっと力を入れてほしいぞ……」

 

「芳香ぁ……お前俺が居ない間、サボってたろ?身体が……前より……固いぞ!!」

かなりの力で押しているが、前よりも体が曲がりにくくなっている気がした。

 

「善以外……やってくれないからな……もっと押してくれ……」

 

「解った……!!俺がしばらくは……やってるよ、それぇ!!」

 

「おお、感謝するぞ……」

 

「あら、二人とも精が出るわね」

二人でストレッチを続けると、師匠が墓の奥から飛んできた。

 

「善のお陰でまた、体が柔らかくなってきたぞー」

うれしそうに芳香が師匠に笑いかける。

 

「あら、それは良かったわ。最近また身体が固くなってたみたいだし……そろそろ終わりにしたら?ごはん炊いてあるから、みんなで朝ごはん食べましょ?善はお味噌汁とおかずを作りなさい」

 

「はい、解りました!!」

そう言って芳香を立たせると、墓場の奥に有る洞窟内の家に走って行った。

 

 

 

「「「いただきます」」」

3人が両手を合わせて箸を手にする。

本日のメニューは、白米と味噌汁、そしてハムエッグとサラダと言う半洋食風の食事風景である。

 

「ほら、野菜も食えよ?」

 

「解ってる」

善が箸を芳香の口元に持って行き、食べさせている。

 

「ねぇ、私達が居なかった間、お寺でどんな修行したの?教えてくれないかしら?」

サラダを突きながら、師匠が善に問いかける。

 

「命蓮寺での事ですか?そうですね、身体を鍛えたりはしないんですけど精神面での……!!痛ッたぁ!?」

突然にの痛みに善が右手をひっこめる!!

右手の親指には、見事な歯形がくっきりと残っていた。

尚も血がドクドクと流れている。

 

「おぉ……一体どうしたんだ……よ?ソーセージか何かと間違えたのか?」

指の痛みを気にしながら、芳香に向き直る。

 

「すまない、寝ぼけていた。わざとじゃないんだ、許してくれー、あと、指美味い」

おろおろしながら芳香が慌てている。

口から一筋の血と最後の一言さえなければ、かわいいと無条件で言えただろうに……

 

「まぁいい。噛んでしまった物はしょうがないからな」

 

「善、ちょっと見せなさい」

そう言うや否や師匠が善の右手を掴む。

丁度関節技を掛ける要領で!!

 

「痛!!いたた!!チョ!?入ってる!!関節入ってます!!」

残ってる左手で必死に畳をタップ!!!

ギブアップアピール!!!

 

「あら、すごいわね……噛まれた部分が死体(キョンシー)化して無いわ……」

色々な方向から善の噛まれた親指を見る。

もちろんそのたび腕を動かすので……

 

「痛い!?やばいです!!!グギって言った!!今、腕がグギって言いましたよ!?コレ以上は……これ以上はイケない!!」

グギィ!!ボキィ!!

 

「ふぁぁーぁあああ!!!」

 

善の悲鳴が周囲に響いた!!

 

 

 

 

 

「『抵抗する程度の力』ね……」

師匠がボソリとつぶやいた。

腕からヤバげな音がしたが、結局骨折までは行っておらず簡単な治療に終わった。

現在では親指に包帯が巻かれている。

 

「そうです、この前やっと気が付いたんですよ……簡単に言えば物事に対して抗体ができるって事みたいですね……」

 

「それで芳香に噛まれてもキョンシーに成らなかったのね」

食事が終わり、流しに食器を置いてから三人で善の能力に付いて話す。

 

「まぁ、知ってたのだけど」

 

「ええ!?なんで教えてくれなかったんですか?」

微笑む師匠に対して善は批判じみた視線を送る。

しかし師匠は全く意に介す様子は無い。

 

「あら、怒ってるのかしら?こう言うのは自分で気が付かなくてはいけないのよ。たとえば私が善に『善の能力は《女性の下着の色と形を100%当てる程度の能力》よ』と言ったら信じるかしら?」

 

「信じる以前に信じたくない」

きっぱり善が言い切る。

 

「そうでしょ?コレは他人に教えられるのではなく、自分で理解する物なの。とりあえずは『おめでとう』と言っておくわ、アナタは自分の力で能力を掴み獲ったのよ……長い間ずっと自分の中でくすぶっていたのね……アナタは人間の範疇から一歩、仙人として踏み出したと言えるわね」

そう言ってゆっくりと善を抱き寄せ優しい瞳で頭をなではじめた。

 

「ちょ!?師匠?」

 

「嫌がらないの、私は素直にうれしいのよ?太子様達より後に取った、初めての弟子がもう能力を手に入れた……アナタの師匠として鼻が高いわ……」

 

「おー、良くわからないがおめでとうー」

珍しく師匠、そして芳香が褒めてくれた。

しかしハタと優しさに満ちた視線をやめ、今度は逆に厳しい表情をする。

 

「けど慢心してはいけないわ。仙人は妖怪や死神に狙われる宿命よ、気をしっかり引き締めるのよ?」

 

「ハイ、師匠!!これからもがんばります!!」

優しさと慈愛に満ちた、邪仙と呼ばれる師匠らしくない言葉と表情に善は少しだけ心がくすぐったくなるのを感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁて……これからは少し注意の時間ね?」

やはりこの作品!!

良い話で終わらない!!

優しく善を撫でていた手がガシッと善を捕獲する!!

 

「善?あなた、命蓮寺で芳香のお札剥したでしょ?」

凄まじく責めるような視線で師匠がこちらを見抜く!!

 

「えっと……やっぱりダメでした?」

 

「当たり前よ!!突然、知り合いに服を無理やり脱がされるような物よ!?」

 

「ええ!?ソッチなんですか!?死体に戻るとかじゃなくて、ソッチ!?」

予想の斜め上を行く、内容に善が驚きの声を上げる!!

 

「善……私の、札……とったのか?」

裏切られた!!と言いたげな表情で芳香が善を見る!!

その顔に善は思わず良心が痛くなる!!

 

「え、あの、だな?仕方なくと言うか……必要と言うか、少し使ったら返すつもりで……」

おろおろしつつ芳香をなだめようとする!!

 

「うう……善に汚された……もう、お嫁にいけないぞ……」

今にも泣きそうな顔になる芳香!!

 

「よ、嫁!?……え?ナニ?芳香にとって頭のお札ってどういう扱いなの!?」

さらに続く爆弾発言にてんやわんやする!!

 

「かわいそうにね……大丈夫よ……そういうのはカウントしない物よ?悪い犬にでも噛まれたと思って、忘れなさい?」

そう言って師匠が、優しく芳香の肩を抱いた。

 

 

 

「いや……なんで!?お札ってそういう扱いなの!?」

 

「善、責任を取るのが男の甲斐性じゃないかしら?朝の私に働いた狼藉分も含めて…………死んでわびなさい!!」

師匠がまるで汚物を見るような視線を善に送る!!

 

「いやですよ!!」

 

「ほぅら……抵抗してみなさい!!」

師匠の手から無数の光弾が善に向かって放たれた!!

 

「や、止めてください!!師匠!!……うぎゃー!!!」

 




この作品のヒロインって誰だ!?
師匠か!?邪仙なのか!?邪仙がヒロインなのか!?
芳香か!?芳香なのか!?キョンシーがヒロインなのか!?
布都か!?布都なのか!?最近出番が無い子がヒロインなのか!?
すてふぁにぃ!?すてふぁにぃなのか!?本なのにヒロインなのか!?



ヒロインってなんだ……

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