止めてください!!師匠!!   作:ホワイト・ラム

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今回でコラボは終了です。
駆け足気味になってしまいましたが
私としては楽しく書けた、話です。


番外コラボ!!東方消失録2!!

前回までの仮面仙人は……!!

 

???「世界は一つではありません、あなたは9つの世界を破壊しなければならない」

突如出現した、9つのパラレルワールド!!

 

師匠「善、バックルとカードよ。使いなさい」

いま、目覚める。仙人の力!!

 

眼鏡の親父「おのれぇ……仮面仙人!!お前のせいで世界は再び混沌の時代を迎えた!!」

迫りくる怪人達!!

 

善「大体わかった……」

そして目覚める!!

 

善「俺が破壊者だ!!世界の全てを破壊してやろう!!変身!!」

真なる破壊者とは……!!

 

 

 

「いや、待て待て待て!!なんだこのOP!!ふざけ過ぎでしょ!?全然あってないよ!!」

 

 

 

本当のあらすじ。

俊君の世界へ迷い込んだ善、ステンドグラスを破壊し大目玉、今地下牢。

以上。

 

 

 

「ねぇ、遊ぼうよ」

小さな子供の無邪気な笑顔。

誰だった子供の頃に経験した過去を思い出すシチュエーションだが……

その子供は違った。

彼女の名はフランドール・スカーレット。

495年もの月日を生きながら地下牢に幽閉された存在。

狂気という名の力を身にまとい、全てを破壊し尽くす最強の吸血鬼。

その圧倒的存在の意識が今、地下牢の中にいる善に向けられていた。

 

此処で善には二つの不幸が有った。

一つはもちろん彼女に会ってしまった事だろう、そしてもう一つは善が他人の妖力を感じる事の出来ない人間だった事。

その二つが相まって……善は最悪の選択をしてしまう。

 

「いいよ、遊ぼうか。何する?」

善の何気ないその言葉に、吸血鬼は瞳を見開いた。

 

 

 

 

 

「あーあ、めんどくさいなぁ~」

そう言って紅魔館の執事 笹塚 俊は地下牢への階段を下りていた。

今日の昼前に紅魔館に侵入した、仙人モドキが地下牢に幽閉されているハズなのだ。

時刻はもう深夜近い。脱獄するならこの時間帯であろうとの事で、主のレミリアから様子を見てくるように言われたのだ。

ギィ……

湿気のせいか嫌な音を立てる錆びた扉を開け、地下牢に顔を覗かせるが……

 

「あれは……フラン!?」

見覚えのある赤いストラップシューズと赤いスカートが、床に倒れていた。

吸血鬼が倒れる。そんな事万が一にも無い話!!俊は急いでフランに駆け付けた!!

 

「オイ!!一体何を……してるんだ?」

俊は近づき唖然とした。

地下牢の部屋の中にフランは手を入れ。

何かを必死で叩いている!!

 

「ああ、俊さん。邪魔しないでください!!いま良いトコなんです!!トントントン!!」

 

「そうだよ!!この勝負!!一瞬の油断が命取りなんだから!!トントントン!!」

二人して地下牢の鉄格子の間に置かれた、箱を叩いている。

その箱の上には二つに折った、紙の人形。

俊が知る限りこの遊びは……

 

「トントン相撲じゃねーか!!」

ツッコみを入れるがふたりの紙相撲熱は止まらない!!

 

「いまだ!!『左回転式・(ガトリングラッシュ・)高速ツッパリ(ワイバーン)』!!」

 

「まだよ!!『微振動式・(グランドクロス・)自爆誘発叩き(クラッシャー)』!!」

そして遂に……!!

コトン。

 

「ぐわぁあああぁああ!!!」

 

「やったああああ!!」

片方の紙人形が倒れた瞬間、善ががっくりとうなだれる。

それとほぼ同時にフランが飛び上がり喜ぶ。

 

 

 

「待て待て待て!!なんの茶番だ!?なんで他人の家の地下牢でトントン相撲してるんだよ!!」

俊が善を捕まえ締め上げる!!

 

「いや、だって『遊んで』って言われたし……」

 

「TPOをわきまえろよ!!お前捕まってんだよ!!幽閉されてんだよ!!なんで楽しそうに遊んでんだよ!!あと、何処にその材料有った!?」

必至に俊が怒鳴るが……

 

「まぁまぁ。落ち着いて、お菓子の箱と適当な厚紙で作ったんですよ。」

 

「フランも、レーバティンで紙を切ったんだよ!!」

フランが楽しそうに横で笑う。

 

「「作って~ワ○ワク!!」」

二人が同時に例の合言葉を話す!!

 

「仲いいな!!あんた等!!」

 

「ほら俊さんもやります?ほら、私の自信作の力士、四股名は『(クリアマン)の海』コレ使っていいですから」

そう言った奥にしまって有った、紙の力士を取り出す。

 

「やらねーよ!!それよりさっきからお前らネーミングセンス酷いな!!」

パシッと紙相撲の力士を叩き落とす!!

 

「ああ、せっかく作ったのに……ワクワク○んごめんなさい!!」

 

「ほら、フランも帰るぞ」

 

「えー!!善またね~」

そう言って俊はフランを抱き上げると、地下牢から出て行った。

 

 

 

3日後……

 

「初めて会うわね?私はこの屋敷の主、レミリアス・カーレット……3日前はよくも私の部屋を滅茶苦茶にしてくれたわね?覚悟は出来てるのかしら?」

善の目の前に薄ピンクの服を着た幼い少女が、メイドを横に立たせ、善に指を突きつけた。

彼女こそこの屋敷の主、レミリア・スカーレット。

見た目からは想像もつかないが、膨大な力を持つ種族吸血鬼の一人である。

そんな吸血鬼を前に善は……

 

「あー!!どうも!!話は俊さんから聞いてます。いやー突然の訪問に構わず泊めてくださってありがとうございます!!本当に感謝しています」

そう言ってその場で頭を下げた。

その態度には嫌味や皮肉を排した、率直な感謝が込められていた。

その予想外の態度にレミリアがたじろぐ!!

 

「え……いや、泊めるって言ってもここ地下牢だし……大したものは……」

レミリアにしては弱弱しく声を出す。

 

「なに言ってるんですか!!秋の寒空の下、墓の真ん中でキョンシーと一緒に寝た事ないでしょ!?風がバンバン吹くし、ベット代わりの墓石は冷たいし、芳香が侵入者と間違って襲って来るし……それに比べれば、ここ最高じゃないですか!!」

異様に熱く語り始める善!!

言葉の節々に彼の苦労が見て取れる。

その言葉にレミリアは、思わず涙を流した!!

 

「咲夜……この子少し可哀想過ぎない?こんな気の毒な人間なかなか居ないわ……」

 

「ずいぶん苦労してるんですね……」

吸血鬼とその従者から同情された。

 

「いやいやいや!!なんで!?なんで投獄されて喜んでるの!?普通もっとこう……もっとこう、とにかくなんか有るだろ!?明らかにソレ、投獄された奴の態度じゃないだろ!?」

レミリア達と一緒に来ていた俊が突っ込む!!

 

「善……しばらくは牢屋に居ても良いわ」

 

「ありがとうございます!!」

レミリアと善が握手した。

 

「え!?なんなの!?この茶番!!おかしいだろ!!何もかもおかしい!!」

俊が必死になって、叫ぶが誰も反応しない、誰も歌わない。

その日の善の夕食は少し豪華だったらしい……

 

 

 

翌日

 

「さっさと出ろ!!」

 

「いーやーでーすー!!」

俊は善の服を必死になって掴んでいた!!

何時まで経っても地下牢から出ない善!!

遂に俊は強硬手段に出た!!

それに対し!!

善は地下牢の鉄格子に付かんで、こちらも同じく必死の抵抗を試みる!!

 

「なんで牢屋から出るのを嫌がるんだよ!!」

 

「快適空間から追い出される訳には……いかないぜ!!」

二人の攻防が続く!!

*今更ですが善は囚われている人間です。

 

「お前はニートか!?ナニ?この新型ニート!!牢屋ニート?仙人ニート?」

 

「うをおおお!!!俺の抵抗力を舐めるな!!」

 

数時間後……

 

「ふふん?」

地下牢内のベットで勝ち誇った顔をする善。

牢屋の前では、俊が息を切らして両腕を地面に付いている。

 

「おまえ……いい加減にしろよ……流石の俺もそろそろ我慢の限界だ!!ぶっ殺してやる!!」

 

血走った眼をすると同時に、両脚に取り付けられた銃を手にする。

 

「ここは狭い牢屋の中だ!!避けれる物なら避けて見ろ!!」

 

「わわわ!!俊さん!?それはちょっとまずいんじゃないですか!?」

善が両手を突出し俊を止めようとするが、頭に血がのぼった俊にそんな言葉はもう無意味だった。

 

「お望みの様にこの牢屋に一生いられる体にしてやる!!」

パパン!!パンパン!!パン!!パン!!パン!!

乾いた銃の発射音が狭い牢屋の中に響き渡る!!

 

「うお!!あぶ!?あぶな!!」

善は必死になって牢屋内を走り回る!!

そして蘇るは師匠との思いで!!

 

~回想~

「ぜ~ん。今日は弾幕の耐久実験……じゃなかった。耐久を上げる修行をしましょう?」

にこやかに笑う師匠、そしてその体の周囲に形成される無数の青黒い光の球体。

 

「……今、実験って言いませんでした?」

師匠の言葉尻を掴もうとするが……

 

「あら、酷いわ。私が自分の弟子で新しい弾幕の実験をするような師匠に見えるの?」

そう言って自身の顔を自分の掌で覆う、そしてすすり泣く声が聞こえる。

 

「ああ、すいません。疑ってました、修行ならちゃんと受けますから……」

善がそう言った瞬間!!

ピタリとすすり泣く声が止まった!!

 

「あら、良かった!!善なら心よく受けてくれると思ったわ」

両手をどかし、ペロリと舌を出す師匠。

もちろんさっきのは嘘泣き!!

まんまと邪仙に嵌められた善!!

 

「じゃー始めるわよ?」

 

「は、はい……」

ピチュン!!ピチュピチュ!!ピチュピチューン!!ピッピカ!!ピチューン!!

 

「ぎゃああああ!!」

 

~回想終了~

 

(はぁ……そう言えば今日で何日だろう?帰ってないのは……師匠はともかく……芳香は心配してくれているかな?むしろ忘れてる可能性が……)

そんな考え事をしたのが、善の運の尽き!!

 

「喰らえ!!」

 

「へ!?イタァ!!」

額を撃ち抜かれてしまった!!

 

「痛たたた……」

 

「安心しろ……威力を押さえた霊銃だ、死にはしない」

一旦銃をおろし、痛がる善に対してそう言い放つ俊。

しかし幾ら威力を押さえても、痛い物は痛いのだ。

善はしきりに頭を押さえている。

 

「あー、まだ湿布あったかな?」

そう言って自身の道衣をまさぐる。実は善、この頃無駄な怪我が多くそれに対応するため、服のポケットに緊急用の包帯と湿布が隠してある。

 

「ああ、有った有った」

カチッ!!

その瞬間、善の耳に聞きなれない音が響いた。

 

 

 

 

 

1秒前

切っ掛けは些細なレミリアの一言だった。

 

「俊を探してきて」

 

「はい、お嬢様」

その命令を受けた咲夜は、自身の時を止める能力を発動させた。

事の顛末はたったこれだけの事、咲夜は善がこの屋敷に来てから何度もすでに時間の停止をしている。

この時間停止は、いつもと変わらない事のハズだった。

 

 

 

コツコツコツ……

俊を探し時間の止まった屋敷の中を歩いて行く。

俊の部屋、居ない。

王座の間、居ない。

食堂にも、居ない。

「地下牢かしら?」

咲夜は俊を探すうちに、少し前にこの世界にきた妖怪の事を思い出した。

そう思い地下牢に足を向けた。

……居た。

 

目的の人物を発見し、時間を再び動き出させようとした時。

ありえない事が起こった!!

 

「ん?俺に用かな?」

 

……!!

咲夜は反射的に牢屋から身を引いた。

そして足に刺してあるナイフを引き抜き、いつでも投擲可能な状態にした。

此処は時の止まった時間、水も風も音も光も決して動くことのない静寂と停滞の世界。

そんな世界で目の前の男は、何の制約も無く笑っていた。

 

そこにいたのは自称、仙人修行の男。

常に低姿勢で、誰にでもへこへこしているイマイチパッとしない男。

……のハズだった。

 

先ず目に付くのは何時もと違い、頭に難読な文字の掛かれた湿布を張っている点だろう。

 

「貴方は誰!?」

ナイフを構えつつ、停止した世界でその男に聴く。

 

「実際に挨拶するのは初めてか?何度か顔を合わせてるんだが……まぁいい。俺は詩堂 善 仙人を目指して修行中の男だ」

 

明らかに口調が違う、そして雰囲気も違う。

咲夜は迷う事無くナイフを投擲した!!

 

「おっと!!危ないな?」

まっすぐ飛んできたナイフを、その男は指一本で止めた。

躱すでもなく、取るでもなく、止めた。

まるでスポンジでも当たったかの様に、なんの反応も無く当たって落ちた。

 

「そうか、理解出来たぞ……抵抗しているんだ。あらゆる物に、止まった時の流れに抵抗し、ナイフの人体を切る構造に抵抗し、札の理性を無くす効果に抵抗しているのか!!やっと、やっと理解出来たぞ……ありがとう、この世界に来たお陰で俺は少しだけ成長出来たみたいなんだ……けど時間切れか……おしいな」

そう言った瞬間、善の動きが今度こそ完全に止まる。

 

カチッ!そして時は動き出した。

 

「俊。お嬢さまがお呼びよ」

 

「咲夜か、解ったすぐに……アレ?」

 

俊が何かに気が付き、牢屋を見据える。

牢屋の中には……

 

「……うー?……ああ”あ”?」

何故か額に札を張ってキョンシーと化した善!!

所在なさげに虚空を見つめている。

 

「なんでキョンシーになってるんだ?……なんかコイツの相手疲れるな……もはや予測不能だ……忙しいヤツ……まぁ、いいそんな事よりレミリアが呼んでるのか?解った、すぐに行く」

そう言って咲夜と俊は地下牢から出て行った。

(あの仙人モドキ……一体なんなのかしら……?)

 

 

数分後……

突如、地下牢の壁が青く光りはじめる。

そしてその中から細い手が現れた。

 

「YEHA!!……せっかく愛想良く出たのに、誰も居ないのかしら?」

 

「善が居たぞー」

それは師匠と芳香の二人組。

 

「何とか善をたどってここまで来たのに……檻に入れられてるのね、可哀想に……」

師匠が善を憐みの視線で見る。

 

「ぜーん、実は意識有るでしょ?そのお札新作なのよ?」

 

「…………!!……?…………!!」

 

「うん、何言ってるか解らないわ……芳香ー、善を連れて帰るわよ?おもちゃが居ないとつまらないものね?」

ニタリと動けない善に笑いかける、善の瞳が何かを訴えている様だがそこは邪仙、全くに気にはしない!!

 

「最後にお世話になった人に手紙を書いて……はい、帰るわよ?」

 

「おー!!帰るぞー!!」

二人は善を連れて帰って行った。

後に残されたのは邪仙が置いて行ったサークルの紙と、善の筆跡をまねて作った偽の手紙。

 

「(またいつか……会いそうな気がするな……できれば今度は……もっとゆっくりしたい)」

 

 

 

 

 

「善ー。ほら、今日の分の夕飯……アレ?」

俊が善を見に来たときには、すでに帰還済み誰もいるハズは無い!!

有るのは謎の模様の書かれた紙と……

 

「手紙だ……ふむふむ……?あの野郎……!!厄介なモン押しつけやがって!!」

手紙を破こうとするも、何とか押しとどまる。

 

「いつか……いつか役に立つかもしれないからな……確かに貰っておこう……」

そう言って師匠の作った異次元につながるサークルをたたみ、自身の懐に収めた。

 

 

 

「んー?善泣いてるのか?」

 

「わたし達にまた会えてうれしいのよ。さー!!帰ったらさっそく新し仙丹の実験よー」

 

「わぁーい!!善で実験だー」

 

「(……!!止めて……ください……師匠!!)」




すてふぁにぃは置いてきた!!
気にするな!!

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