今回は音無 仁さんの作品 東方消失録とのコラボ作品となっております。
作中キャラクター同士がすでに面識のある状態で登場しますが、こちら単体でも楽しめるようになっております。
気になった方がいらっしゃれば、仁さんの東方消失録を読むことをお勧めします。
『神々しい』そんな言葉が一瞬だけ頭を過ぎった。
俺自身そんな事を思う日は来ないと思っていた。
神様という存在を見た事は有るけど……なんというか俺にはどうしても『神々しい』という感想は出なかった。
けどソイツは違った。
青、黄色、緑、白、そして血の様な赤。
そんな結晶と、それに乱反射する光を全身に纏ってソイツは空から降りて来た。
そして俺に気付いたのかどうか解らないけど、確かこう言ったんだ……
幻想郷、師匠たちの家にて……
「思いがけない物が出来た様ね」
とある女性が目の前の、幾何学模様の掛かれた青い光を発するサークルを見てつぶやく。
「あの……師匠?コレなんですか?」
そう聞くのは仙人志望の少年、詩堂 善。
ただ今この女性に弟子入り中。
「食べれるのかー?」
その横でぼんやりとした目で、青白い肌に額にお札を張った少女、芳香が聴く。
「あら、お腹が空いてるの?けどコレは食べられないわ。実は太子様たちは『仙界』という空間を作って修行したりしているのだけれど、私も久しぶりに作ってみたのよ、けど失敗しちゃったたみたいね、何処に通じてるのか解らないのよ」
困ったように……イヤ、おそらくその表情はフェイク!!
実は新しく面白そうな物を見つけたと、内心うれしくてしょうがないに違いない!!
善は今までの経験でそう理解した!!
そして次に予想される師匠の言葉は……
「ぜ~ん」
「絶対に嫌です!!」
「まだ何も言ってないじゃない?」
師匠が口を開くと同時に断る!!
そしてさらに善が言葉を続ける。
「どうせ様子を見て来い、とかでしょう!?いやですよ!!どこに通じてるのかもわからないし、出た先に全身武器で武装した傭兵とか、吸血鬼とか、異世界に通じてたらどうするんですか!?」
尚も怪しげに青い光を揺らすサークルを指さす。
「善ったら馬鹿ね~。そんな事有る訳ないじゃない?ファンタジーやメルヘンじゃないのよ?」
「有る訳ないぞ~」
そう言って善を笑う邪仙とキョンシーの二人組。
「ツッコみ待ちですか?目の前に邪仙とキョンシーというメルヘンの住人がいるんですけど!?」
大声でその事を二人に指摘する。
二人はハッとしたように顔を見合わせる!!
「……なんにしろこんな危ないモノ、さっさと片してくださいよ。何かが逆にこっちに入ってきたら危ないですし……」
そう言っていたのも束の間、サークルから黒いグローブを嵌めたサムズアップした男の腕らしき物が出てきた!!
ダダン・ダン・ダダン!!ダダン・ダン・ダダン!!
「アイル、ビー……」
「ほら!!言わんこっちゃない!!色々と危ない人が出てきましたよ!!ほら、しまって!!しまって!!」
「確かにコレは、少し危険そうね!!」
グローブの男(仮)を必死にサークルの中に押し戻す善!!
師匠も今回ばかりは素直にしまってくれた。
「ふ~危なかった……」
何とかグローブの男(仮)を押し戻した善。
「アレが出てきたらどうなってたんだー?」
「たぶんターミネイトされたんじゃないか?」
芳香の質問に汗を拭きながら答える善。
「はぁ、残念だけど今回は止めておくわ、流石にどこに行くか解らないのは危険すぎるわね」
そう言って地面に書かれたサークルを、少しづつ消していく師匠。
善は何とか今回の危機は去った、と胸をなでおろした。
しかしそうはいかないのがこの邪仙の恐ろしい所!!
「そうだわ!!せっかくだし消す前にゴミを捨ててしまいましょう」
師匠がパチンと手を叩き、それが合図だったように芳香が姿を消した。
数秒後……
「持って来たぞー」
芳香が手提げカバンを隣の部屋から持って来た。
「ああ、コレコレ。早めに処分したかったのよ~」
そう言った師匠がウキウキしながらカバンから取り出すのは……
「す、すてふぁにぃ!!(春画)どうしてここに!!」
「あら、知らないと思っていたの?善が何処にすてふぁにぃを隠しているか、知ってるわよ?」
ニヤリとカバンを持ち上げる師匠。
もちろんカバンの中にはすてふぁにぃが大量に有る事だろう!!
「師匠?……落ち着きましょう?争いは何も生みません。それに私の敬愛する先人の言葉にこういう物が有ります『書を焼く人間は必ず人を焼く』と……本は雑に扱ってはいけません……それをゆっくり地面に置いてください」
焦りながらも、師匠を説得しようとする善!!
しかし自体は一向に好転しない!!
「けど善。これを見て?袋閉じがすごく丁寧に破いて有るの……この本は刃物を人間に使わせて殺人鬼を作る、きっとコレは人を惑わせる悪魔の書よ?こんな物は無い方が良いに決まってるわ?」
という訳で……
「師匠!!早まらないで!!話し合いましょう!!」
「善のすてふぁにぃをサークルにシュート!!」
師匠が珍しくハイテンションで、すてふぁにぃをサークルに投げ入れる!!
「ファアアアアア!!!!君だけは何が有っても守る!!」
やけに主人公らしいセリフを吐きながら、すてふぁにぃを追ってサークルに飛び込んだ!!
それと同時にサークルが不安定になり消えた……
「しまったわね、まさか消えるなんて思わなかったわ……まぁ、何かの拍子で帰ってくるわね」
「超エキサイティングだなー」
二人は楽しそうに、善の消えたサークルを見ていた。
右も左もわからない、滅茶苦茶な空間が善の目の前に広がっていた。
しかし残念な事に止まる術も、戻る術も善は有していない。
何かに導かれるように、誘われるように……
何処まで続くのかすら解らない、異次元のトンネルを善は通って行った。
そして遂に光の出口を目にする!!
「やった!!遂に出口が見えた!!」
そう思ったのも束の間!!
出口は空中に有った!!
もちろんだが善は空を飛ぶ術など有していない!!
ひたすら重力に引っ張られるのみ!!
「うそーん!!」
間抜けな台詞を吐きながら、出口の近くに有った真っ赤な洋風の屋敷のステンドグラスに叩きつけられる!!
紅魔館の使用人 笹塚 俊は今日も自らの職場の掃除をしていた。
何時もの様にメイドの十六夜 咲夜と共に分担していた。
俊が現在いるのは通称「玉座の間」荘厳なる装飾品に囲まれ、豪奢な玉座に座す主人の為の空間。
紅を基調とする玉座の後ろには、ち密な細工が施された巨大なステンドグラスが飾られている。
毎回ここの威厳と美しさとの前には、威怖の念を抱かずにはいられない。
しかしこの「王座の間」には有る重大な秘密が有った。
その秘密とは……
「ふー……だいぶ良く成ったぞ。けどなんでレミリアとパチュリーはこんな物を作ったんだ?滅多に来ないくせに……」
そう言って俊は額の汗をぬぐう。
そう!!此処はこの館の中心っぽく見えるのだが、実は二人が「かっこいいからなんとなく」作った部屋!!
当然だが人が来ること自体滅多にない!!
しかし使わなくても汚れと言う物は勝手に溜まる物なので、掃除をする者が必要になる。
毎日咲夜が掃除しているのだが、まかせっきりにしてはいられない。
今日は咲夜に頼んで、一緒に掃除を手伝わせてもらっているのだ。
「ご苦労様。俊、貴方のお陰で助かったわ」
「気にするなよ、何時も咲夜は頑張ってるだろ?俺も偶にはやってみたくなっただけだ」
「それでもよ、手伝おうって心使いがうれしいのよ」
そう言って優しげに笑う咲夜。
その瞬間、玉座の間に聞きなれない音が響いた!!
コツッ!!コツッ……パリーン!!
「な、なんだ!?」
「なにが!?」
俊と咲夜が同時に甲高い音のしたステンドグラスの方を見ると……
少年が両手を広げ、ステンドグラスを砕きながら紅魔館に侵入してきた。
『神々しい』そんな言葉が一瞬だけ俊の頭を過ぎった。
場違いな感想なのは重々承知の上だった。
しかし
ソイツはまるで他者の罪を受け入れ、許す聖者の様に穏やかな顔で
ステンドグラスの青、黄色、緑、白、そして血の様な赤を全身に纏いながら空から降りて来た。
そして……
「ぐはぁ!?チョー痛てぇ!!うわ!?ガラスが刺さった!!痛い!!ナニコレ!?マジで痛い……!!」
みっともなく地面に激突し……ガラスで溢れた地面を転がった後。
「ハッ!すてふぁにぃ!?すてふぁにぃは何処だ?あ!あった!!有ったよ!!すてふぁにぃ!!良かった!!もう離さない!!」
そう言って大量の本が入った紙袋を抱きしめた!!
「なぁ咲夜?今日誰か訪ねてくる予定はあったか?」
呆然としながら何とか俊が咲夜に聴く。
十中八九答えは決まっているが……
「いえ、そんな予定はないわ。それにお客様は玄関から入ってくるハズよ……」
瀟洒な彼女にしては珍しく、ずいぶんお粗末な答えだった。
「本、持ってるっぽいし。魔理沙の同業か?」
「そうかもしれないわね……」
そう言って咲夜は足元に落ちていた本を何気なく手にし……
「ひッ!?」
小さく悲鳴を上げた瞬間消えた。
彼女の時を操る程度の能力だ、床にはさっきまで咲夜の持っていたすてふぁにぃが落ちていた。
「あー、痛たたた……」
そう言っている間にも男は、自身の服に付いたガラス片をはたきながらのそりと立ち上がった。
そして一言
「う~ん?ここは何処なんだ?」
この時点で俊はこの男がこの館にとって害になる。と判断した!!
「オイ!お前誰だ?この紅魔館に敵襲とはいい度胸だな!!」
そう言って自身の足に付けていた、分割済みの棒を合体させ武器にする。
この棒は俊の基本装備であり、近距離中距離、さらに攻防に隙が無く、非常にバランスの良い武器であり「未知の相手との遭遇」と言った緊急事態に際し合理的な選択と言えよう。
一方善はというと……
混乱の極みに居た。
師匠のせいでなんやかんやあって、何処かに移動したのは分かっていた。
しかし肝心のここが何処かは全く分からない。
何とかすてふぁにぃを回収できたのは良いのだが……
「オイ!お前誰だ?この紅魔館に敵襲とはいい度胸だな!!」
目の前にはヤバそうなヤツが、ロッドの様な武器を持って構えて立っていた。
執事服を基調としている様だが……フード付のコートに二丁の銃、腰にクロスさせる様に二本の剣、さらに数本のナイフ……
見えているだけでこの数だ、さらに何か隠してると考えるべきだろう。
身も蓋もない言い方だが、街中に居たらおまわりさんに話しかけられるレベル。
(やばいよ……やばいよ!!明らかにフルコンバットな人来たよ……え?ナニこの人?傭兵かなんかなの?メッチャ武装してるよ!!)
善の頬を冷や汗が滝の様に流れおちる!!
「だんまりか?…………って!!善じゃねーか!?また来たのかよ?」
そう言って一気に脱力し構えていた武器を下ろす俊。
「イヤ、怪しい者じゃ無いですよ?私は詩堂 善、仙人の修行中にここに来たんですけど……あれ?俊さん?この前振りですね」
見覚えのある顔にこちらも力を抜く。
正直相手の武器ばかりに目が行って顔を見ていなかった。
「久しぶりは良いんだけどよ?最近の仙人は、人ん家のステンドグラスを叩き割って家に入ってくるのか?」
「え?」
相手に指摘され善は後ろを振り返る。
そこには無残な姿に成ったステンドグラスが……
(うわ……高そう……やばいぞ、思いっきり叩き壊しちまった……)
「いや、コレはちょっとしたトラブルで……もしかして不味い?」
「あたり前だろ!!一応この部屋、俺の雇い主の部屋だからな。どうなるかは知らないがお前の処遇は俺の雇い主のレミリアが決める!!付いて来てもらおうか?」
「その必要は無いわ!!」
その声に二人は扉の方を見る。
そこにいたのはさっき逃げ出したメイドの咲夜だった。
「お嬢様にはもう報告済みです。大層怒った様子で侵入者を地下牢にとらえて置けとの命令です」
「マジで?」
善が頬を引きつらせながらそう言うが、自体は好転することは無かった。
俊に連れられ善は地下牢に閉じ込められた。
湿気が多く暗くジメジメした場所。
簡素なベットとトイレだけが用意してあった。
湿気ったベットに横に成りながら、善は現在の状況を整理していた。
「うーん、今回はえらい事に成ったぞ……紅魔館か」
『紅魔館』その名前は善も聞いた事が有った。
霧の湖に有る、真っ赤な窓の少ない屋敷……
そこは吸血鬼が住み、嘗て幻想郷に異変を起こしたという……
屋敷の主の名はレミリア……
「やっべぇ……思いっきりここじゃん!!明日の朝飯は俺か?」
頭を抱えてベッドで転がる。
転がり続けて……
「ねぇ、お兄さん。何してるの?」
外から声を掛けられハッとする。
そこに居たのは身なりの良い10にも満たないであろう少女。
背中から結晶の様なモノをぶら下げ、手にはねじまがった鉄の槍の様な物。
「ねぇ、そんな所に居ないでフランと遊ぼうよ?」
その少女はニヤリと笑った。
はい、まさか本編より先に原作キャラが出るという暴挙。
しかも続きます。
因みにこの話を読んで私の作品とコラボしたいという方が居れば、気軽にメッセージをください。
特に期限などは設けないのでお気軽にどうぞ。