止めてください!!師匠!!   作:ホワイト・ラム

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後一回で命蓮寺編は終了の予定です。
寺の次は何処が良いかな~?



蘇る苦痛!!過去から来た刺客!!

俺……じゃなかった、私は詩堂 善(しどう ぜん)

仙人を嫌々……ではない、心から仙人目指して頑張ってます!うん……そう、たぶん。

 

 

 

ギリッ……ギシッ……

「……ん?……響子先輩……?」

誰かが床を歩く音で善はゆっくりと目を覚ます。

そろそろ起床し寺の掃除を始める時間かと思い、ねむい目を擦り障子の方に目を向ける。

しかし障子に映ったのは、響子の影ではなかった。

「なんだ?……あれ?」

明らかに響子より高い身長、しかし聖や星よりもずっと体が細く見える。

なぜ『見える』などと曖昧な言い方をしたかというと、全体のシルエットがはっきりしないのだ。まるで夢でも見ている様なぼんやりとし、はっきりしない姿……

そしてその影がこちらを向き、障子に手を掛ける。

僅か、ほんのわずかに障子が開き向こう側に広がる闇から、それを切り裂くような真っ赤な目がこちらをじろりと覗いた。

善は過去にこの瞳を何度も見ている。人間の天敵、圧倒的力を持つ妖怪(捕食者)の瞳だ。

 

 

 

「善さーん!!起きてくださーい!!」

元気な響子の声がして布団から起きる善。

慌てて障子を見るが先ほどの瞳はもういない。

そもそもアレ(・・)が現実だったかどうかすら解らない。

「……夢か?」

起き抜けの為、しっかりした確証はいずれも持つことが出来なかった。

「善さーん!!!!!」

そう思うと再び響子の声が、先ほどよりずいぶん大きくなっている。

完全に怒る前に支度をせねば。

「はーい!!今着替えます!!」

そう声をかけ支度を始めた。

寝間着から着替える時、空気が肌に強い寒さを感じさせた。

胸の傷はもうかなりふさがっている。

季節は秋から冬へ、善が師匠から治療を受けてからもう3日が経っていた。

 

 

 

「ぎゃーて~!!ぎゃーてー!!おんわーかそわか!!はら~ぎゃ~てー」

もうすでに日常に成りつつある響子との掃除をしながら、善はふと口から息を吐く。

吐いた息は白く染まりつつ空に消えて行った。

「なにしてるんですか?」

息を吐く善に響子が不思議そうに尋ねる。

「ああ、響子先輩。息を吐いてるんですよ、ほら、もう白くなってる。もうすぐ冬ですね……」

消えてゆく自分の白い息を見ながら話す。

「へぇ~善さんは自分の息で冬を感じるんですね、私は雪が降ったらって考えてます!!」

響子と二人、息が白く染まるのを見つつ掃除を続けた。

そうしてると視界の端に芳香を見つけた。

「あ、芳香じゃないか!どうした?また会いに来てくれたのか?」

思わずうれしくなって芳香に話かける善。

芳香もこちらを視界に収めるが……

「詩堂……善?」

何故かフルネーム呼び……

「なんでフルネームなんだよ?まあいいや、せっかくだし修行終わったらどこか行かないか?」

今日は午後から休みを貰っている、時間が有るため芳香を誘うのだが……

「あ、ああすまない。やることが有るんだ、じゃ、じゃあな……」

そう言って歩いて帰って行ってしまった。

 

カランコロン、カランコロン……

掃除を続けていると、芳香が行ったのと逆の方から下駄の様な音が聞こえてきた。

「あれ?こんな時間に来客?」

違和感を感じつつも、客人に不作法をする訳にはいかない。

襟をただし来客者を迎えようとするが……

(……うえ!?酒臭い……誰だよ?こんな朝っぱらから飲んでるの……)

強烈な酒の匂いに顔をしかめる善!!

正直酔っ払いなどには関与したくない!!

「あ!マミゾウさーん!!」

決して歓迎的でない態度の善を余所に、対照的に非常に友好的に手を振る響子。

そして朝日に照らされるように、ゆっくりとその下駄の主が姿を現した!!

茶色い服に腰に付けた帳簿に徳利、そして眼鏡と大きな縞々の尻尾。

何処か落ち着きを感じさせる女性が現れた。

(マミ……ゾウ?)

どうやらそれがこちらに向かっている女性の名前らしい。

 

「おお、響子殿。今朝もお勤めご苦労さんじゃのう」

「はい!!がんばってます!!」

古風なしゃべり方のマミゾウに対して、響子がハキハキと元気に答える。

「あたたた、すまんが少し声のぼりゅーむを下げてくれんかの?二日酔い気味で頭が痛くての」

そう言って自身の頭を押さえるマミゾウ。

「……おや?そちらの方はまた新しい妖怪かの?どれ、何の妖怪じゃ?」

善に気が付いたマミゾウが善の頬を掴み、目を細めつつ善に顔を近づける!!

もちろん相手はかなりの美人!!思わずにやけてしまうのが男のサガ!!

しかも!!

(近くで見るとやはり素晴らしいサイズ!!酔ってるっぽいし触っても大丈夫か!?)

目の前のすぐ近くになかなかのサイズのバスト!!

善の中で天使と悪魔が囁く!!

「構うこたねぇよ!!バランス崩したふりして触っちまえよ!!」

悪魔が善を誘惑し!!

「なりません!!バランスを崩したふりではしっかり大きさを楽しめません!!ここは殴られるのを覚悟で前から揉むのです!!何をされようと触った感触だけは残ります!!」

天使!!お前もか!?

この仙人(もどき)に自分を律する存在は無いのか!?

(よぉし!!触りながら押し倒そう!!)

やはり自分を制御できない!!

 

「なんじゃ。普通の人間か……」

しかし時は残酷!!

マミゾウは善が人間だと解ると、あっさり手を離してしまった!!

ゆっくり離れてゆくおっぱい!!

善はそれを悲しく見送った!!

「しかしまぁ……こんな所でな……善坊、後で……いや、昼過ぎが良いかの?とにかく修行が終わったら寺の離れに有るワシん所来んさい、まっとるでよ」

そういてカランカランと下駄を鳴らしながら命蓮寺に入って行った。

 

 

 

「善さん?どうしました?」

去っていくマミゾウを見ながら、呆然とする善を不思議に思い声をかける響子。

しかし善はジッと去って行ったマミゾウを見ているだけだった。

「善さん?」

再度話しかけるも全く反応が無い。

「響子先輩……一つ聞いても良いですか?」

ゆっくりと善が響子に向き直る。

「私が知ってる事で良ければ……」

「ありがとうございます。ここ、幻想郷には忘れ去られた物、または無くなった物がやってくるんですよね?」

真剣なまなざしで響子に話す。

「そうですよ、ここは存在を否定されたモノ、忘れられたモノたちの最後の楽園です」

「ありがとうございます。忘れられたモノたちが……」

そう言って善はずっと、マミゾウが姿が消えた離れを見ていた。

 

 

 

それからしばらくして昼食時

今日の食事当番は一輪だった。

善は早々と食事を終えて自室に帰ったしまった。

「はぁ……」

響子が食事を突きながらため息を漏らす。

「おや?どうしたんだい?ため息なんてついて?」

近くに座っていたナズーリンが心配する。

「ああ、ナズーリンさん……実は朝マミゾウさんと会ってから善さんの様子がおかしくて……」

「響子もそう思います?」

横から声をかけてきたのはこの寺の住職 聖 白蓮だ。

「写経も座禅の時もどうしても気が抜けてるみたいで……何時もは真剣にやってくれてるんですけど……調子が悪いのか聞いてみたんですけど、違うって言うし……心配ですね」

聖も善の異変に気が付いているようだった。

「フム、仙人モドキが……ね」

そう思案するナズーリンの脳裏に浮かぶは先日の邪仙の言葉。

(あの邪仙め……よりによっていつ爆発するか解らない特大の爆弾を置いて行きやがって……何とか刺激しないようにしたいんだが……)

歯痒げにナズーリンがそう思い、こっそりと配下のネズミに善をいつもより厳重に監視するように指示を出す。

 

 

 

その時善はマミゾウが待つと言っていた、寺の離れの前に居た。

「……行くか!!」

意を決して離れの扉に手を掛ける。

その瞬間、脳裏に今朝の響子の言葉が蘇る。

『そうですよ、ここは存在を否定されたモノ、忘れられたモノたちの最後の楽園です』

(存在を否定されたモノ……つまり!!若い肉体を持て余したエッチなおねーさんもいるに違いない!!)

グッと自分の手を握る!!

読者(特に男性)諸君!!君は誰しも一度は

「こんにちは、隣に越してきた美熟女でーす」

「こ、こんにちは!!」

「あらぁ?一人身なの?さみしくなったら何時でも来てね?」ジュル

とか考えた事は無いだろうか?(特に中学)

しかし誰しも年を取ると理解する。

そんなヤツいねーよ!!と……

しかしここは幻想郷!!存在を否定されたモノ(痴女い年上の女)がいるかもしれない!!

善はずっとそれを考えてきた!!

そして目の前に遂にその可能性を持った人が現れた!!

「失礼します!!」

意を決して離れの扉を開ける!!

 

「よう来たの、善坊」

マミゾウはそう言って離れの部屋でキセルをふかしていた。

「は、はじまました!!」

緊張のあまり噛みまくる善!!

その言葉にきょとんとするマミゾウ。

「何を言っておるんじゃ?初めて……おお!そうか!!姿を変えたからの!!」

ポンと音がしてマミゾウの身体が煙に包まれる!!

「ほれ、これで解るじゃろ?」

煙の中から現れたマミゾウは狸の耳と尻尾が無く、先ほどよりも姿が老いていた。

「え?……あー!!!バァちゃん!!」

善が驚き指を指す!!

「ほんに久しぶりじゃな?10年ぶりかの?」

楽しそうにキセルをふかすマミゾウ。

「俺が佐渡に居た頃だから……11年前かな?」

自身の記憶を探る善。

「あん時の泣き虫坊がな……今は邪仙の弟子か」

何処かおかしそうに喉を鳴らすマミゾウ。

「まさか妖怪だったなんて……気が付かなかったよ!!」

「ふふふ、狸の妖怪の大将じゃからな!人間一人だまくらかすのは造作もないわい」

思いでというのは不思議だ。

長らくあっていない二人は仲良く話した。

過去善がまだ幼く、マミゾウが外に居た時のほんの短い邂逅、それが再び幻想郷で叶ったのだ。

 

 

 

「どら、久しぶりになんか食わせてやろう、出かけるぞ?」

そういてマミゾウは立ち上がった。

「うん!ついて行くよ!!」

「こうした方が運び易いの?」

そう言った瞬間善の姿が煙に包まれ、頭身がガクッと下がった!!

「きゅー!!きゅー!!」

「おお、カワイイの」

タヌキの姿になった善をマミゾウは抱き上げた。

「きゅー!!きゅー!!(バァちゃん何すんだよ!!)」

「おっと、すまんの。儂の力は『化けさせる程度の能力』運び易いでの、こっちに変えさせてもらったぞ?ほれ、尻尾につかまれ」

そう言って尻尾に善(タヌキ)を乗せる。

「さぁて、行くかの」

そう言って離れを飛び出し、人里に向かっていく。

(おお!!すごい!!)

身体が小さくなった為か、いつもより景色が大きく見える。

柔らかいフカフカの尻尾に包まれながら、善は流れていく雲を見ていた。

「きゅー……」

流石は佐渡の大妖、圧倒的な安心感を誇る乗り心地は、善をゆっくりと眠りの世界へといざなって行った。

 

「ほれ、着いたぞ。善坊起き……ろ?」

マミゾウが人里の店先に降り立った時に善が居ない!!

「はて?どこかで落としたか?やれやれ探すかの……」

キセルをふかしながらゆっくりと歩き出した。

 

その頃善は……

「とーちゃーん!!タヌキ捕まえた!!」

「デカした坊主!!昼はタヌキ汁にするか!!」

「きゅー!!きゅー!!」

善の目の前に自分と同じサイズに成った刃が迫る!!

 

「きゅー!!きゅー!!きゅー!!(助けて!!いやだぁ!!いやだぁあぁあぁ!)」

*寸での所で救出されました。

 




もふもふを何とか枕にして寝たい……
動物の体温っていいよね!!

おばあちゃんキャラは意外と好きな私です。

ヒャハ!!子供は愛せ!!老人どもはたっぷりいたわってやるぜ!!ニートはハロワ行きだぁ!!ヒャッハー!!

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