今回はクリスマスの特別編。
作者は今年もボッチでした……
さみしくねーし……
1人の人生超楽しいし……
皆さんどうもこんにちは。私の名前は
まだまだ駆け出しですが、実は仙人やっています。
私の師匠は邪仙で、年齢1400歳以上の超年増で、我ままで自己中で、無茶ぶりと自分の事が大好きで、善悪や良心の呵責が一切なく非道な行いを簡単に行える所謂サイコパス気質な危険人物……
ですがそれでも毎日楽しく過ごしています。
さぁ、今日も師匠とその手下のキョンシーの芳香と一緒に修業――
「あらぁ?何か今、聞こえた気がしたわねぇ~?
半人前で、仙人モドキで、下半身と脳が直結して、ドジで運が無くて、そのくせお調子者の私の弟子が何か言ったのかしら?」
うぐっ!?師匠、いつからそこに……?
「最初からだぞー!」
いでで!?噛むな噛むな!!
幻想郷の冬。
善たちの暮らす仙窟の前の墓は皆、雪で白化粧をしている。
そんな中、一人の男が――
「ふん、ふーん、ふふふふーん♪」
善が鼻歌を歌いながら上機嫌で、部屋の隅に飾ってあった日捲りカレンダーを引っ張る。
ビリっと、小気味の良い音と共に、一枚カレンダーが外れる。
手に持ったカレンダーの日付は12月23日。つまりこの一日後は――
「ついに来たぞ、この日が……!」
12月24日
その日は何の日か!?
なんて、質問はもはや野暮を通り越して、わざとらしさすら感じるほど有名な日。
とある聖人の誕生日にして、子供がサンタクロースにプレゼントをねだる日!!
だが、もう一つ。もう一つこの日には意味が有る!!
それは、それは――
「リア充の日だぁ!!ほぉうい!!」
余りの嬉しさに、善が破ったカレンダーを投げすて、コロコロと床を転がり始める。
そう、毎年毎年、クリスマスの日は男子シングルパソコン使用型だったが、今年は違う!!
今年の自分は画面の向こうにいた、バカップル側の人間へ生まれ変わったのだ!!
「うっほほほほほぉい!!」
上がるテンション!!高速化する善の床ローリング!!
奇声を上げて、床を転がり続ける!!
――そして、不意に感じる冷たい視線!!
「はっ!?」
「善……?何をやってるの?
悩みがあるなら、相談……乗るわよ?」
「ぜん……大丈夫か?つらい事があるなら、行って欲しいぞ?」
壁から上半身を突き出した師匠と、部屋の入り口で心配そうにこちらを見つめる芳香。
初めて見る位優しい目をして師匠が、逆につらい!!
「あ、いえ……大丈夫です……」
なんとも気恥ずかしい気持ちを抑えて、善が視線をそらしながら話す。
「え、クリスマス?やらないわよ?」
「え”!?なんで!?」
居間の中、朝食を食べながら放った師匠の一言に、善が絶句する。
「だって、
他所の宗派のお祝い事をなんで祝わないといけないのよ?
現に去年はやってないでしょ?」
さらっと、話す師匠だが善は不満げだった。
「今、外の世界じゃみんな祝ってますよ!?
この季節普通じゃ、外では何処行ってもクリスマスソングが流れて、おもちゃ業界でも11月12月が商戦が激化するし、みんなクリスマスムード一色ですよ!?
っていうか、家が道教なこと自体今日初めて知りましたよ……」
善が芳香に、追加のごはんをよそいながら話す。
「そうね……私の教える仙術は、道教の物だけど――
善は、私が教えた事を覚えていくから道教とは関係ないのよね」
「そう……ですね」
善がそれに同意する。
そう、仙術とは道教の力によるものだが、善本人は『道教』という宗派に興味などなく、自身の師匠が使う技を覚えていくことで仙人となっていっている。
その為、自身が道教の術を使っているという自覚が全くないのだ。
「ま、宗教とか、気にしたこと無いんですよね~
命蓮寺にだってしょっちゅう行ってるし……」
なんて風に善がおもい浮かべる。
日本人はあまり宗教にこだわらないタイプが多い。
国によっては、ドッグタグに名前や年齢、血液型の他に自身が信仰している宗教の名を書くものもあるらしいが、善にとっては不思議な話だった。
それどころか、クリスマスに騒いで、初詣に神社に行って、葬式には坊主を呼ぶという正に宗教の坩堝とも言える国で生きてきた善には、土台興味自体無い話だった。
「なー、善。外では、えーと、栗?升?に何をするんだ?」
善の隣、味噌汁を飲み干した芳香が善に尋ねる。
どうやら外の世界のイベント事に多少の興味があるらしい。
「クリスマスな。クリスマス。
さっき師匠が言った様に、有名な聖人の誕生日を祝う日だ。
といっても、半分それは形だけで、もっぱらサンタが子供にプレゼントを持ってくる日に成ってる」
「サンタ?」
「白いひげをした、おじいさんがトナカイの引くソリで、プレゼントを持ってくるんだ。
良い子にしてないと、プレゼントは貰えないんだよ」
得意げに善が説明するが、芳香がプルプルと震えている事に気が付く。
「どうした?何かあったか?」
善が心配して尋ねると――
「うぐ……!
わ、私、今まで貰ったことがないぞ……
私は悪い子だったのか!?」
心配そうに、目が潤み始める。
それを見た善は――
「そんな事無いぞ?
お前が良い子なのは、俺がちゃんと知ってるからな?
サンタは、その、あれだ。子供にプレゼントを配るのに忙しくてお前の事を見逃していたんだよ。
きっと、今日あたり、枕もとにプレゼントが送られてくるんじゃないか?」
芳香を抱きしめて、諭すように教える。
その言葉を聞いた芳香が安心して、頬を緩めた。
「そうかー、なら、今日は早めに寝ないとなー」
善の諭され、あっさり上機嫌になった芳香が嬉しそうに話す。
「あらあら……頑張ってね?
お・と・う・さ・ん」
「違いますから!!」
師匠の言葉に、善が否定して見せる。
「あー、あとは夕飯にごちそうを食べたりするかな?
パーティとか、それが転じて男女のお付き合いに……」
「御馳走!?くりすますはご馳走が食べれるのか!?」
実に芳香らしい部分に注目して、目を輝かせてみせる。
「へぇ、外ではそんな事に成ってたのね……
善だけは部屋で、一人でパソコンして居そうだけど……」
グサァ!!
「あうふ!?」
何か、何かが善の心の奥に深く深く突き刺さった音がした!!
「ち、ちげーし!!友達いなくねーし!!いなくても平気だし!!
クリスマスとか興味ねーし!!
あー、お部屋中、最強だわー!!一人きりのユートピアだわー!!」
悲鳴の様に叫ぶ善!!
なぜか視界は滲み、鼻から汗が染みだすがまぁ、季節外れの花粉症という事で気にしない事にする!!
「……そこまで、したいならクリスマスする?」
「良いんですか!?」
体操座りで落ち込む善に、師匠が話しかけた瞬間凄まじい勢いで目が輝く!!
「あ、と……そこまで、したかったの?」
「もちろんですよ!!リア充のイベントに参加するんですよ?
TVに映ったバカップルに殺意を抱いて、ゲームのクリスマスイベントに虚しさを覚えて、クリスマスになんで自分は恋人がいないんだって……ずっと!!
思ってた私にも春が来たんですよ!!」
「あ、ああ……そうなのね……うん、好きにしなさい。
ええと、芳香も楽しみにしているみたいだから、ご馳走作ってあげてね?」
善の全身から漏れ出す、マイナスオーラに流石の師匠すら怯んだ!!
「御馳走食べれるのか!?」
「ああ、勿論だ!!腕によりを掛けて、すごいごちそう作るからな!!」
「おー!!やったぁ!!」
善と芳香が手を取り合って、ぴょんぴょんとその場で飛ぶ。
(この二人のテンションには偶に付いていけなくなるわ……)
尚もはしゃぎ合う二人を見て師匠が小さく汗をぬぐった。
「よぉし!!クリスマスを全力で楽しむ!!
楽しむんだぁあああああああああ!!!」
「まずは何をするんだ?」
墓場の真ん中で、叫ぶ善に芳香が尋ねる。
「クリスマスのごちそうに必要な物を集めるぞ」
「御馳走だー!!」
善は芳香を連れて、人里へ向かった。
「えーと、後は……」
人里の中、短髪に白頭、そして背中と腰に差した2本の剣。
冥界の館、白玉楼に仕える庭師兼剣術指南役の半人半霊の庭師――魂魄 妖夢だった。
「すいません、この店の野菜とりあえず全部ください」
「は、はいよ、妖夢さん……」
若干引き気味な、八百屋の店主が妖夢からお金を受けとる。
ガラガラ……
妖夢が食材が山盛りに成ったリアカーを引いて人里を歩く。
「えーと、次は……お肉ですね」
メモを見ながら、妖夢が角を曲がると――
「よし、肉は十分だな」
「おー、たくさんだな!!」
妖夢と同じく大量の鶏肉を抱きしめた善が歩いていく。
「詩堂さん!?その大量の肉は?」
「どうも、妖夢さん。ちょっと、お祝いがありまして――食材が必要なんですよ」
「そ、そうなんですか……実は私も幽々子様に言われて大量の食材が必要なんですよ」
お互いが笑みを浮かべて、お互いの食材に目を向ける。
それと同時に、里の中の食糧事情を大よそ理解する。
「詩堂さん、私の主の為――」
「妖夢さん、私の夢の為――」
「「その食材おいていってください!!」」
人里の真ん中!!
妖夢の剣と善の拳が再び相まみえる!!
進化した善の力と、さらに磨きのかかった妖夢の技がぶつかり合う!!
一時間後……
「んじゃ、私はこれだけ……」
「それでは、私は……」
善と妖夢がお互いのリアカーに食材を分ける。
一時は死者が出るのでは?とさえされた二人の戦いだが、危険を察知した人里の住人が大量の食べものを持ってきた事により、お互いある程度の食糧が手に入り大よそではあるが満足して去っていく。
余談ではあるが、善が街中の鳥肉を買い占めたことにより、妹紅も焼き鳥屋が大打撃を受けるのはまた後の話。
妖怪の山、中腹……
「さ、さむいよ……ねぇさん……」
「寒いね、穣子ちゃん……」
神社の中、秋姉妹の静葉、穣子の二人がくっついて震えている。
冬も本番真っただ中、外を闊歩する雪女の姿に怯え、秋が過ぎさり参拝客のいなくなった中で震えあがる。
その時――
バァン!!
神社の扉が大きく開け放たれる!!
「ひゃう!!」
「ひゅう!!」
二人が同時に冷気に身を縮ませ抱き合う。
「穣子さ――あっと、お邪魔でした?」
扉の向こう、入ってきた善を見て二人が疑問符を頭に浮かべる。
「えっと……神様なら、姉妹でもあり……なのか、な?」
善の言葉に穣子が自身の状態に気が付く。
誰も居ない密室の中、ピッタリと体をくっつける女が二人――
「ち、違うから、ねぇさんと私は――ぐえ!?」
「誤解だよ?詩堂君!」
弁明する穣子を蹴飛ばし、静葉が善に駆け寄る。
「どうも、静葉様。今年の紅葉も綺麗でしたよ?」
「そんな……綺麗なんて……」
善の言葉に、静葉が照れて見せる。
「いてて……で?今日は、参拝?それともまた『仕縁』を――」
「やりませんよ?実は、少し用意してもらいたい物がありまして――」
善が穣子に頼み込む。
そして、紅魔館から借りてきた一冊の本を取り出す。
「?」
「むりむりむり!!出来ないって!!」
善の話を聞いた穣子が、全力で否定する。
「お願いします!!クリスマスケーキには、どうしてもイチゴが必要なんです!!」
必死で拝み倒す善の欲するものは、ケーキには欠かせないフルーツのイチゴだった。
人里で探した善だが、まだイチゴ自体で回っていないのか、季節が合わないのか、入手する事は出来なかった。
そこで、豊穣を司る女神の所へ来たのだが――
「えっとね?詩堂君。私は確かに神様だよ?
けど神様だからって、勝手に植物をはやす訳にはいかないんだよ?
そんな、図鑑に載ってる写真を見せられた所――で!?」
突如後ろから、静葉が穣子の首根っこをつかむ。
「ねぇ……穣子ちゃん。詩堂君は私たちの為にいつも一生懸命だよね?
今年はずいぶん助けられたよね……?
ちゃんと信仰してくれる人には……ちゃんとお返しをすべきじゃないかな?」
目の光が消えた暗い瞳で、静葉が穣子の瞳を覗き込む。
その瞳が訴えている「やれ」とさらに言うと「やらないと殺るぞ」という脅しも多分に含まれている。
「ね、ねぇさん!?だって全然知らない果物だし、図鑑の情報だけじゃ無理――」
「穣子ちゃん?無理は嘘つきの言葉なんだよ?」
「ひっ!?」
静葉が「ちょっと待っててね」の言葉と共に善と芳香を神社から外に出す。
そして扉が閉まると同時に――
『ねぇさん!?無理無理!!止めて!!無理だって!!
あああ、無理、むりぃ!!そんな、そんなに!?けど、うわ……
うわぁあああああ!!!いやぁあああ!!!は、あひ、ひふぅ!?』
「善、何か聞こえてくるぞ?」
「芳香、産みの苦しみは神様もいっしょって事なんだよ?
だから、ちゃんと毎回いただきますするんだぞ?」
なんて風に、教育っぽい事を言っている内に、再度扉が開いた。
「はい、詩堂君のお望みのイチゴ……」
静葉が籠いっぱいのイチゴを持って現れた。
「わぁ!ありがとうございます静葉様!!
ケーキ作ったら、明日持ってきますね」
「気にしなくていいのに……ありがと」
ニコリと静葉が笑いかけた。
「所で、穣子様は?お陀仏?」
「生きてるわよ!!なんとか生きてるわよ!!」
扉を開けて、穣子が飛び出してくる。
何かがあったのか、服装は乱れ息も荒い。
「本当にありがとうございますね!!」
「うっさい!!あんた結構質悪いわよ!!
邪仙!!不遜なのよ!!あと、仕縁ちゃんやって!!」
「やりません」
ニコリと笑うと、再びお辞儀をして帰っていった。
「にゅふふふふふふ!!ここまでです!!」
材料を集めて、墓場に帰る善と芳香の二人の前に、橙が立ちふさがった!!
「あ、橙さん……寒くないんですか?」
勝手に猫イコール寒さに弱いの図式が出来ている善がいつもと同じ格好で家のドアを前に立つ橙を見る。
「善さん知ってますか!!今日はクリスマスです!!
藍しゃま曰く子供が出来る日なんですよね!?」
此処まで聞いて、善は嫌な予感がしてきた。
「にゅふふ……今こそ、例のヤツをやる時ですね!!
プレゼントは私です!!さぁ!!思う存分けだものに――」
バサッ!!と音をたてて、橙が自身の服をめくる!!
白いお腹には赤いリボンが掛かっており、過ぎ捨てたスカートの下もリボンのみだった――が!!
ひゅう~
「寒!?さむいです!!」
橙が吹き付ける風に、一期に服を戻す。
当然外で全裸にリボンなんてしたら寒くて居られないだろう。
脱ぎ掛けた服をおずおずと着なおす。
「今日の夕飯は少し豪華ですよ?」
「わぁ~い!!」
善の言葉に平然と、橙が家の中へと入ってくる。
その様子を見て、善と芳香が笑い合って家の中へ入っていく。
「わぁ……!」
芳香が目の前の、ローストチキンに目を輝かせる。
食卓には、スープにチキンに、ローストビーフにサラダに、ポテトグラタンにと善が工夫を凝らした料理が所せましと並んでいる。
「少し多めに作っておいて正解でしたね」
橙が遊びに来た後、すぐに小傘も遊びに来て、さらこいし(実は最初からいたらしい)と予期せぬ大人数に成ってしまった。
「ねぇ善?ごちそうって、言ったけど……少し量が多すぎない?」
まさかのローストチキン一人一個という暴挙に師匠が、苦笑いを浮かべる。
「そんな事無いぞー?」
むしゃむしゃと芳香が食べ進めていく中――
「そうだ、お酒持ってきたよ?」
小傘曰く以前マミゾウからもらった酒を持って来て、善以外のみんなが飲んで騒ぐ。
会場が最高潮に高まったら、主役のケーキの登場だ。
小傘、こいしが見たことも無い外界の菓子に目を輝かせ、にぎやかにお祝いが過ぎていく。
「んん……ふぅあ……」
夜中、みんな揃って雑魚寝してしまった居間から善が外に出る。
片付けをしなくては、と思ったがせっかく気分が良いのだ。
明日にさせてもらおう。
「あーさぶ……あ、雪だ」
中庭へ抜ける廊下の中、しんしんと音もなく降りそそぐ雪に善が頬を緩める。
通りで寒いと思ったら……なんて考える。
「ふぅ……ついに俺も恋人持ちか……
急に知らない場所に来て、師匠に弟子入りして、何回も死にそうになって……
最後には恋人まで出来た……か。
恋人が出来るまですごい遠回りしたな……ん?」
不意に、気配を感じると後ろには善の大切な大切な人物がいた――
善は彼女に笑みを浮かべて返す。
「愛してるよ。ずっと、ずっと」
雪の中、照れることもなく善は確かにそう言った。
それを聞いた彼女も優しく微笑み返して――
「うわっぷ!?」
突然飛び掛かられ、二人並んで空を見る。
尽きることなく、雪が降ってくる。
横を見ると、彼女と目が合い――どちらともなく笑った。
くしょん!!
善がくしゃみをして、また笑った。
もうすぐ新しい年が始まる。
そしてこれからもずっと――
ラストは、師匠か芳香どっちかはあえて書いていません。
最後にあなたが思った方が、正解です。
実は、こっそり付き合っていた橙だよ!!とか、妾の小傘ちゃんだよ!!とか、はぁ!?こいしちゃんに決まってるんだろJKという考えでのありっちゃアリです。
すべては受け手の貴方次第です。
次は1月1日かな?
それか、今頂いているコラボかな?
それとも、クラピーを主役にした完良の内容保管か……