止めてください!!師匠!!   作:ホワイト・ラム

101 / 103
今回は、11月22日=良い夫婦の日という事でちょっとした番外です。
師匠と結婚した善のその後を描いています。

さて、尻に敷かれる善の生活とは!!(ネタバレ)


番外!!良い夫婦の日!!

幸福とは何か。

それはある意味永遠の命題。

金、権力、恋人、友人、家族、健康、はたまた今日の食事にありつける事?

人によっては、まさにマチマチ。

だけど、私にとっては――――

 

 

 

 

 

暗い部屋の中、一人の少年が目を覚ます。

ベットから体を起こし、背伸びをする。

 

「すぅ……すぅ……」

自身の後ろにある布団から寝息が聞こえる。

さっきまで自身が寝ていた布団の中、もう1人の住人に目を向ける。

 

「うぅん……すぅ、すぅ……」

自身の使っている寝具の中、まさに女神や仙女と呼ばれても納得してしまう女性が眠っている。

長く美しい髪に、艶やかな色の唇。

つぶったまなこは、美しく引き込まれそうになる。

その声音は、聞くものを魅了する魔性の美声だ。

抜群のプロポーションは、否応なしに自身の心を引き付けて離してくれない。

彼女のすばらしさは到底自分程度の語彙力では現し切れない。

 

此処まで考えて、男はふっと笑った。

いけない、いけない。さすがにこれは身内贔屓が過ぎた。

そう、『身内』。彼女と自分の左手の薬指には同じデザインの指輪が輝いている。

幸運な事に彼女は少年の妻なのだ。

何時もは何を考えているか分からない彼女の、こんなにも無防備な顔を見れるのは、夫である自分だけの特権だと、少年は笑った。

 

「ん……アナタ、起きていたんですね。

おはようございます……んふ」

しばらく見ている内に、彼女が目を覚ました。

少年がじっと自分の顔を見ていた事に気が付いたのか、わずかに恥ずかしそうな顔をする。

 

「行ってらっしゃいませ。

これ、寒いのでどうぞ」

家を出て日課である早朝のランニングをしようとすると、妻が入り口まで見送ってくれた。

手に持ったマフラーを首にかけて優しく微笑んだ。

少年は手を振って、ランニングへと向かう。

 

 

 

「おかえりなさいませ。朝ごはんもうすぐ出来ますからね」

台所の中、妻がエプロンを身に着け鍋を見ている。

ほっそりした体を包むエプロン。

少年は胸が好きだったが、最近妻の腰から尻を見ていると派閥を変えるべきかと真剣に悩んでしまう。

楽しそうに揺れる彼女を見ていると、いたずら心が刺激される。

 

「アナタ、どうしまし――きゃ!?」

後ろから料理中の妻に抱き着いた。

 

「もう、料理中は邪魔しないでくださいっていつも言って――

うんッ、ダメ、です……耳元で愛してるなんてつぶやいたって許しませんから!!

だ、ダメですって、言ってるのに……わ、分かりました!!私も愛してますよ?」

 

 

 

「うー、せっかく綺麗に焼けてましたのに……」

食卓の上、ごはんに味噌汁、香の物に焼き魚、そして少し焦げた卵焼きが鎮座している。

 

「謝っても許しません!!まったく、旦那様はまだ日も高いうちから何を考えているんですか!仙人たるものそういった欲は自身の中に封じておくべきです!」

どうやら今回はいつもよりお怒りの様だった。

 

「はぁ、あまりお説教してもダメですわね。

こういうのは華扇様の方が得意でしょうし……

アナタ、反省なさってくださいね?」

妻の言葉に少年が反省の意を示す。

 

「そこまで言うなら、今回は許してあげます。

今回だけですよ?もう料理の邪魔はしないでくださいね?」

妻の言葉に少年は再度頷いた。

 

「じゃ、いただきましょうか!

卵は焦げちゃいましたけど、味噌汁は少しお味噌を変えて――

え――食べさせて欲しい?私に?」

自身の箸と、目の前のひな鳥の様に口を開ける夫を見て妻が躊躇する。

 

「し、仕方ないですね。甘えん坊な旦那様ですものね?」

すぐに笑みを浮かべ、箸を旦那の方へと差し出す。

 

「おいしいですか?よかったぁ。

旦那様の為に今日も愛情たっぷりで作ったんですよ?」

二人が愛を確かめ合いながらゆっくりと、朝食をとっていく。

とても幸せな味がするのはきっと愛情が隠し味なのだと思った。

 

 

 

 

 

「だ・ん・な・さ・ま!

お洗濯もおわったので、夕飯のお買い物に行きましょう?

何が食べたいですか?

え?私が食べたい?もう!何を言っているんでしょうね?

だめですよ?まったく仕方のない人。

罰として、今回の買い物はずっと私の手を握っててくださいね?

私を困らせた罰ですよ?」

可愛く笑う妻に、微笑みを返し腕を差し出す。

 

「じゃ、失礼しますね?」

腕に愛しい妻が抱き着いた。

そのままたわいも無い会話を繰り返しながら、夕飯の材料を買いに行く。

 

 

 

 

 

「旦那様!あなたの愛妻がお背中を流しに来ましたよ?

うふふ、朝の仕返しです。今回は私がびっくりさせちゃいましたね?」

入浴の最中、タオルのみを身に着けた妻がタオルを手に風呂場に入ってくる。

 

「あ、背中大きい……旦那様もちゃんと男の人なんですね。

とってもたくましくて立派な背中……

なのにとってもすべすべですね?女として少し嫉妬しちゃいます」

優しく妻が背中を流してくれる。

言い得ようのない幸福感が少年の中からあふれてくる。

 

「アナタ?え?ええ。一緒に入りましょうか……

ちょっと狭いですけど……ピッタリ体をくっつければ……

その、流石に夫婦と言えど、多少、恥ずかしさが……」

ピッタリとくっついた湯舟の中。

妻の体温を感じながら、のぼせる一歩手前までお互い微笑み合う。

 

「そろそろ、出ましょうか……」

妻が先に湯舟から出て、首だけをこちらに向ける。

 

「アナタ……このあとは、その……

いっしょに寝るのだけど……

沢山ご奉仕しますからね?朝はあんなこと言いましたけど、妻として夫に求められるのはうれしい事なんです。

今夜は、おあずけした分まで沢山可愛がってくださいましね?

それから、子供の名前。今から考えて下さいね?」

甲斐甲斐しい妻の言葉。

それを聞いた夫はもう我慢など出来る訳もなく――

 

ドガッ――!!

 

「に”ゃ!?」

冷たい床の衝撃で、善が目を覚ます。

時計を見ると深夜の丑三つ時。

草木も眠るという時間帯だが、腰の痛みで目が覚めた様だった。

 

「またか……」

自身の使っているベットからは、白いほっそりした足が一本突き出ている。

しばらくしてそれが、引っ込むと同時に壁を蹴飛ばすすさまじい音がする。

間違いない。あの足の一撃で自分は腰を蹴られベットから叩き落されたのだ。

 

「うん……」

善の左手には、輝くシルバーリングが一つ。

そして自らのベットを占領している師匠にも同じものが。

 

優しくて、知的で、優雅で巨乳←(重要)で夫を立ててくれて、夜はちょっぴり大胆←(すごく重要)な奥さん。

そんな人と一緒の新婚が始まると期待!!

――していた時が善にもありました。

 

「実際はそうじゃないんだよな……」

深夜の部屋、冷たい床の感覚が心に響く善。

死神撃退後、師匠に気に入られ色々あって、婚約。

というか、その後は師匠は凄まじい勢いで物事を進め、わずか3日後には式と書類提出が終わっていた。

 

「神霊廟に行くわよ」

 

「はい?」

師匠の言葉を受けていくと、廟には飾り付け&神子がスタンバイ完了状態!!

着替え、入場、神子による仲人の後、指輪交換と余韻もへったくれもなく、気が付いたら指にリングがはまっていた状態。

因みに書類等はその時、既に提出済み。

準備はすべて師匠が一晩でやってくれました。

ジェバンニもびっくりだよ!!

 

以前漫画で、「階段を上ったと思ったら降りていた」といって混乱するシチュエーションがあるが、こっちは「師匠に気に入られたと思ったら妻に成っていた」状態だ。

催眠術とか高速移動とかではない、もっと恐ろしい邪仙の片りんを感じた善であった。

 

「んお……善またか?」

部屋の端、布団に寝ていた芳香が今の衝撃で目を覚ます。

 

「ああ、そうなんだよ……

師匠の寝相を直さないと、俺の睡眠不足が酷く成るばっかりだ……」

もともとは善のベットのすぐ横に寝ていた芳香。

しかし度重なる師匠の寝相攻撃により落下してくる善を回避すべく、布団を敷く位置をずらしたのだ。

 

「とにかく師匠を一回起こし――いた!?いででで!!」

 

ドカッ!!バキッ!!ドゴン!!

 

師匠を起こそうとベットに近づくが、師匠の寝相という防衛能力により、ボッコボコに蹴る殴るの暴行を加えられる!!

『仙人』の前や後ろに三流や、(仮)、仮免、モドキが付く善とは違い師匠は正真正銘、本物。それも14世紀を生きる超熟練仙人。

たとえ眠っていても、その腕力は人間は勿論、大多数の妖怪を凌駕する力を持っている!!

 

「あんた本当は起きてま――セェン!?」

 

ガァンン!!!

 

「……むにゃ……ダメよぉ……アナタぁ……むにゃ……」

寝ぼけた師匠の蹴りが善の鳩尾に深々と叩き込まれた。

 

「おっご……」

芳香の目の前、白目を剥いた善が地面に倒れる。

 

「…………もう少し、寝るかー」

突っ込みに疲れた芳香は、善が動かなくなったことを確認して、再度布団に潜り込む。

 

 

 

 

 

数時間後、朝日を浴びて師匠がベットから起きだす。

 

「ふぅあ……よく寝たわ……今日もすっきりさわやかな目覚めね」

 

「むぎゅ!?」

 

「……なんで私の足の下に居るの?」

ベットから起きると丁度自身の足元に寝ていた善の顔を踏みながら師匠が話す。

 

「なんででしょうねぇ!!」

怒り気味に善が目覚める。

 

 

 

 

 

「ねぇ、師匠?そろそろ別のベットで寝ません?

あのベット一人用で、二人で寝るには狭いですよ」

朝食を食べながら、善が師匠に提案する。

エプロン着た妻にいたずら!!

なんて事柄は全くなく、修業の一環として今日も善が朝食を用意した。

 

「まぁ!なんて事……新婚一ヶ月経たずで、夫が別々に寝ようなんて……

くすん……なんて寂しい夫婦生活なの……」

大げさにリアクションして、泣きまねを始める師匠。

 

「いや、現実問題として考えましょうよ?

師匠の寝相のせいで、寝不足なんですよ?今日は腰も痛いし……」

 

「まぁ、新婚夫婦に寝不足と腰の酷使による痛みは付き物よね」

 

「寝相のせいって言いましたよね!?」

しれっとふざけて見せる師匠に善が声を荒げる。

 

「けど、あの部屋。ダブルサイズのベットを置く余裕はないわよ?

と言うか新しいベット自体買わないといけないし……」

 

「いや、だから別の部屋で――」

 

「夫婦は同じ布団で寝るものよ!!」

善の提案を突っぱねる師匠。

師匠なりに譲れない部分なのかもしれない。

釈然としない物を感じながら、善が渋々了承する。

 

 

 

 

 

「太子様、この前は仲人ありがとうございますね?」

神霊廟の応接室、師匠と善が並んで先の式で仲人を務めた神子に、礼を言いに来ていた。

 

「いや、気にする事はないよ。

私も自身の師とおとうと弟子の婚約の仲人を務められてよかったと思うよ」

二人の前に座った神子が朗らかに笑う。

そんな神子に対して、師匠が自慢する様に自身の左手のシルバーリングを見せる。

善の手にも同じ物がはまっているが実は、少しだけ違うのだ。

 

「それにしても、良くお主決心したな。

最近の若者は年の差や性格の違いを気にすると聞いていたが――」

 

「こら、布都何言ってんだ!」

布戸の言葉を、屠自古がしかりつける。

 

「そうだとも、愛する二人にそんな物些細な事さ。

詩堂君、これからもくれぐれも、くれぐれも彼女の事を頼むよ?

いやぁ、本当に、よくぞよくぞ決心してくれたね」

くれぐれの部分にやたら力を入れた神子の言葉に善が苦笑いを浮かべる。

 

「うむ、お主の師匠は自由すぎるからな!

適当な人柱――ではなく、支えてくれる者が居ると助かるぞ」

 

「今、人柱って言いましたよね?」

布都の言葉を善が指摘するが――

 

「うふ、私を縛り付けるという意味では正解ですね。

私すっかり、今の夫に夢中で……

身も心もすっかり、染められてしまいましたわ……」

そう言って善にいとおしそうに寄り掛かった。

布都の言葉も神子の態度も全く持って、師匠は気にしていない様だった。

 

『縛り付ける』の言葉で、善が自身の指輪に目をやった。

製作は小傘だが、仕上げは師匠がやったこの指輪。

いくつかの不思議な力が付いている。

第一に外れない。引っ張っても、温めても冷やしても、自身の抵抗する程度の力を使っても外れない。

まるで体の一部になったかのように、ピッタリくっついてる。

第二に師匠の指輪に信号を送っているらしく、どこに居ても指輪の場所が分かるのだ。

師匠は「これで無くさないわね」なんて言ってたが、外れない以上無くしようなどなく……

 

 

 

「うう、妻のDVがひどすぎる……そして、その状況に慣れつつある自分が怖い……」

 

「そうよねー?私だけがアナタに染まるんじゃなくて、アナタもまた私の色に染まっているのよね?

あら、いけない。夕飯の材料を買いに行かないと。

庭で遊んでる芳香を呼んでくるわね?」

そう言って、師匠が善から離れる。

漸く、漸く善が自由に動けるようになった。

 

「うむ、その……いろいろ頑張ってね?」

珍しく神子が言い淀みながら善にエールを送る。

何時だったか、まだ結婚にあこがれがあった頃、すてふぁにぃを買いに行く本屋の店長に聞いたことがある。

結婚ってどんな感じですか?と。

本屋の主人はこう答えた。

「楽しいぞ、けど……人生の墓場ではあったな……」

今の神子たちの目は、ひどく可哀そうな者を見る目で――

 

「し、新婚生活楽しいなー!!すっごい楽しいです!!」

無理して善が笑って立ち上がった!!

指輪は外れない!!紛失防止機能までついてる!!

多分恐らく、きっと妻の愛だろう!!

 

「あ、愛がなせる業だなー!!」

なぜかほろりと来たが、きっと風が目に染みたのだろう。

善は気にせず、歩き出した。

 

 

 

「太子様……あれ……」

 

「ふふ、詩堂君も彼女も素直じゃないな。

口ではあんなことを言いながら、心の中では――」

同情する布都をしり目に、神子が小さく微笑んで見せた。

 

「???」

 

「心配する事はないよ。あの二人がうまく行くと思ったから、私の名の元に仲人を承諾したんだよ?

それにね、彼が本気で嫌がっているなら、指輪程度簡単に壊しているハズだからね」

心配ないと、怪訝そうな顔をする布都に微笑み返す。

 

 

 

 

 

「あ、華扇さーん!」

 

「うぐ、貴女は……」

善と芳香が買い物で少し空けている間、師匠が華扇を見つけ手を振って見せた。

師匠は笑顔なのだが、華扇は少し困ったような顔をする。

 

「偶然ですわね」

 

「ええ、そう――!」

手を振る師匠の指に輝くリングを見て、一瞬華扇が言葉を詰まらせた。

 

「ああ、これ?私最近再婚しましたのよ?」

 

「そうですか、仙人が結婚などよくしたものですね。

相手とは寿命も違うでしょうし、全く――」

悔し紛れといった様子で、手に持った団子を一口パクリ。

 

「相手は善ですわ」

 

「ブーっ!?」

師匠の言葉に華扇が団子を吐き出し、咽て胸を叩く。

 

「な、なんで?あの子?あの子と?

年とか全然違うじゃない!!と言うか、あの子まだ18歳以下だから外の法では――

と言うか、貴女たちやっぱりそう言う関係だったのね!!

若い男の子を仙人にして、一体何を考えているかと思えば!!」

まくし立てる様に華扇が叫ぶ。

ざわざわと周囲の視線が集まるが気にしない!!

 

「『そう言う関係』が何を指すかは知りませんけど……

そう言えば、あの子、最近寝不足で腰が痛いってぼやいてましたわね。

毎晩毎晩、大変よね……若いって言っても限度があるかしら?」

 

「わ、若い?毎晩!腰痛?寝不足!?

ふ、不埒もの~!!なんてうらやま――じゃなくて!!

仙人が何んたるかを、ちっともわかってません!!

正しい仙人を育成しなくてはなりません!!わ、私も若い男を弟子に――」

 

「居ると良いですわね、今時そんな奇特な方」

仙人はデメリットが多い。

妖怪に狙われ、死神に狙われ、修業はひたすらに厳しい。

新しい仙人などめったに、希望者自体現れない。

たとえ現れても、神霊廟に行くので仙人志望のフリーは滅多にいないのだ。

 

「く、くぬぬぬぬ!!覚えてらっしゃい!!」

まるで悪役の様なセリフを吐いて華扇が逃げる様に去っていった。

 

「師匠~買い物終わりました、って華扇様?どうしたんだろ?」

 

「何でもないわよ?ちょっと優越感に浸っただけかしら?」

師匠が楽しそうに笑った。

 

 

 

その後楽しく3人で夕食を食べ、一人寂しく風呂を済ませ善がベットに入る。

師匠と寝るコツは先に寝てしまう事だ。

そうすれば、師匠が寝付くまでは眠ることが出来る。

 

「アナタ~……あら、寝ちゃってるわ……」

 

「疲れたって言ってたぞー」

部屋の端で同じく布団にくるまる芳香が説明する。

 

「あら、そうなの……確かに今日はいろいろ連れまわしたものね?

紹介もしたせいで心労もあるでしょうし……

ま、いいわ」

師匠も同じく善の眠るベットへと体を滑りこませる。

 

 

 

しばらく、時間が経ち夜中――

 

「んん……?」

なんとなく師匠が目を覚ます。

目の前には()の背中。

 

「ん~……」

善の左手に光るリングを見て師匠が目を細める。

 

「うふ、結婚しちゃった……私、また誰かの妻になったのね」

もうほとんど思い出せない、前の夫との生活。

今の夫は前の夫とは大きく違う。

金も権力も名声も、ありはしない。だが――

 

「それでもアナタが好きよ……

邪仙と蔑まれた私の為に、迷わず命を懸けてくれた。

私に優しくしてくれた、アナタが好きよ……

自分の両親を捨ててまで私を選んでくれたんだものね?

私が新しい家族に成ってあげましょうね?」

口ではそう言う物の、それだけでは無かった。

自分は優しい善を誰にも奪われたくなかった。

自分だけに愛をつぶやいて欲しかった。

自分だけの物にしたかった。

 

「けど、コレでアナタは私の物……

そして私は、アナタの物……」

自身と夫の指に光るリングを見比べて笑みを浮かべる。

 

「アナタの事を愛しています。

誰よりも、何よりも、だから私を置いて逝ったりしないでね?

私の大切な旦那様――

所で善、本当は起きているでしょ?」

 

「ギクぅ!?」

 

「あら、本当に起きてた。カマかけてみるモノね」

 

「カマだったんですか!?

そういう、心臓に悪い事は止めてください!!師匠!!」

ベットで上半身を起こしながら善が話す。

 

「いいじゃない、そ・れ・よ・り。

私の告白を聞いたのよ?返事すべきじゃない?

というか、奥さんを大切にするのは夫の義務でしょ?」

 

「あ、えっと……?」

 

「上手に言えたらキス位、許してあげるけど?」

 

「そ、それじゃあ――」

一世一代の告白台詞を善がゆっくりと口にした。

その後のセリフは善も良く覚えていない。

そう、覚えていない。

なにか、すさまじくこっぱずかしくなるセリフを言ったのは確かだろうが、唯一正確に覚えているのは、自身の妻の柔らかい唇の感触だけだった。

 

「アナタ、私を大切にしてね?」

 

「もちろんだよ!マイハニー!!」

 

「すてふぁにぃは全部捨ててね?」

 

「も、もちろんだよ……マイハニー……」

 

「先が思いやられるぞー」




2000文字以上が妄想で占められている……
なんてこった……

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。