今回は何時もと違う作品に挑戦しました。
上手くできたカナ?
俺……じゃなかった、私は詩堂 善(しどう ぜん)
仙人を嫌々……ではない、心から仙人目指して頑張ってます!うん……そう、たぶん。
日の出と共に善は目を覚ます。
『ねぇ?もっと一緒に寝ましょうよ?』
という布団の非常に魅力的な誘惑をはねのけ、なんとか立ち上がる。
「あー、ねむい……夕方近くまで寝てた頃が懐かしい……」
そう言いつつも台所に向かい、釜戸に火を着ける準備をする。
もちろんここは幻想郷。コンロなんて便利な物は無い。
文々。新聞というゴシップに満ちた新聞に火打ち石で火を着け、それを火種にまきをくべる。
薪とうちわで火を大きくして、やっと調理に使える状態になる。
5人分の米を研ぎ、釜で飯を炊く。同時進行で大根を刻み、味噌汁の準備をしつつと七輪を持って庭に出る。
塩を振り尾びれと背びれが焦げないようにする。
見た目を良くしようとする日本人の相手を思いやる心は素晴らしいが、今はただ塩がもったいなく感じる。
そう思いつつも名前も知らない三匹の魚を七輪に寝かせる。
焦げない様にしっかり見なくてはいけない。
以前師匠に焦げた魚を出したら恐ろしい目にあった。
「あんな思いはもう嫌だ……」ガクガクぶるぶる……
セルフでトラウマをこじ開け震えだす善。
「アノ折檻だけは本当に嫌だ……って!魚が!!アッチィ!!」
過去の過ちを思い出していたが、またしても同じような失敗をしかける。
「これ位ならセーフだよな……セーフだ、セーフだと信じたい!!」
ギリギリな魚に願いを託す!!
魚が仕上がったら大根を入れていた味噌汁の仕上げにかかる。
「今日は白みそにしよう……師匠白好きだったよな?これが有れば多少のミスも多めに……見てくれないだろうなぁ~」
自身の師匠の性格を思い出し、半分泣きそうになる善。
師匠の好きな白みそを鍋に溶かしながら入れる。
最期にネギを散らし、ホウレンソウをサッと茹でしょうゆと鰹節をぱらり。
付けておいた漬物を取り出し皿に盛る。
焼き魚とホウレンソウのお浸し大根の味噌汁と漬物の朝食が出来上がる。
「たぶんそんなに時間掛かってないよな?」
時計が無いので正確な時間はわからないがかなり手際は良くなったと思う。
以前の生活から考えたら圧倒的な進歩な気がする。
「さて、師匠を起こすかな」
そう言って台所を出る。
「師匠ー!起きてくださーい!師匠ー!」
自分の師が眠ってる部屋の扉を叩く善。
中からは返事の代わりに僅かに帰ってくる寝息。
「しょうがないな……」
一旦深呼吸をし、扉を開ける。
「師匠ー……うわ。今日はまた一段と……」
目の布団には寝乱れた善の師匠が。
髪を乱れさせ、寝間着の服が大きく開き、白い太ももや重力に逆らい生地を盛り上げる胸が見え隠れしている。
さらに時折聞こえる師匠の「ん、あ……」といた寝息が善の煩悩を刺激する。
もともと寝相が良くない善の師匠だが、今朝はより酷い。
「んん……う、」
師匠が転がり善の目の前で胸が揺れる!
プッツツーン!!
善の中で大切な何かが切れた音がした。
善の右手が真っ赤に萌える!
「シャーイニーング!!……フィンンンガぁ
「あら、善おはよう」
「おはようございます師匠!!」
姿勢をただし腰を90°曲げ挨拶をする。
(あ、危なかった……あと……あと少しで、死ぬところだった)
戦慄する善、あいさつの魔法で何とか命をつないだ。
「朝食はもう出来ていますよ」
無理に話題を作る。
「解ったわ、芳香を連れてきて頂戴」
そう言って着替えを始める師匠。
「わわ!師匠やめてください!まだ俺、じゃなくて私が居るんですよ!?」
「あら。仙人を目指す者がこれしきで心を乱すなんてダメね。心は常に平穏に、精を外に出さず内側に留め力にする。それが仙人の基本にして鉄則よ?」
口では正しい事を言ってる様だがその態度は明らかに、服を肌蹴させこちらを誘うようなポーズやしぐさをしている。
「と、とにかく芳香を連れてきます」
そう言って師匠の部屋を逃げる。
「さて、準備は良いかな」
靴ひもをキツク結び体をほぐす。
ある意味これから行う仕事は、師匠との実戦訓練より危険な仕事だ。
芳香の居る墓場を歩いて行く。
「確かこの辺……あ」
赤い中華風の服に青いスカート、頭には帽子をかぶった少女が墓の前に居た。
後ろ姿の為表情はうかがいしれないが、まだ朝早い時間、とてもではないが誰かが墓参りに来ている時間ではない。
それに少女は両腕を前に突き出したまま全く動かない、見れば見るほど不気味だった。
「……ッ!芳香?朝飯だけど……」
一回深呼吸をし、おそるおそる少女に話しかける。
「ちーかよーるーなー!ここは立ち入り禁止……なぜお前入っている!!」
芳香と呼ばれた少女が振り返る。
後ろ姿では見えなかったが、顔面にはお札が張られている。
「入ったからには……あれ?……そうだ!生かしておけん!!」
当たり前だが善は師匠の居る住居、つまりは墓の奥から来た。
それが墓を守る役目を持った芳香には侵入者に見えるらしい。
弾幕を展開しつつ、こちらに向かってくる!
「うわぁあぁ!やっぱりか!!」
全力で墓場を走る善。
その後を曲がらない関節で器用にぴょんぴょんと走って追いかけてくる芳香。
弾幕の一発が善の横をかすめ、墓石に当たる。
野原家と書かれた墓石が真っ二つに割れる!
「あわわ!ごめんなさい!」
化けて出ないでねと、見ず知らずの人の墓に謝る。
「まーてー。逃がさないぞー」
弾幕をさらに展開しながら迫る芳香!
絶体絶命の状況!!
しかし善には勝算が有った!!
(確か目印の墓の角を曲がれば、師匠の居る場所!たどり付けば何とか助けてもらえるはず!)
幻原という珍しい苗字の墓を左に曲がる!!
何?説明は敗北フラグだと!?
正 解 で す !!
ツルン!!「え”!?」
足の裏から絶望的な感触!
コケに滑ったのだ!!
「いてて……」
転んだ状況からあわてて立ち直ろうとする善。
目の前には。
「おーいーつーめーたぞー」
弾幕を構える芳香。
「う、うわぁ……」
これから襲うであろう衝撃に身構える。
しかし
衝撃は何時まで経っても襲って来ない。
「ん?」
おそるおそる目開く善。
「その怯え方……見た事有るぞ?……ん?誰だっけ?……そうだ!善だ!おはよう!」
さっきまでとは打って変って軟化する芳香の態度に脱力する善。
「師匠~芳香連れてきましたよ~」
師匠が待つ食卓に帰ってくる善。
「あら、遅かったのね?まさかついムラムラして芳香を襲ってたの?」
「違いますよ……寧ろ襲われた方です……」
釜戸から白米を茶碗に付け、師匠の膳に置く。
「あらあら。芳香は善が好きね」
楽しそうに笑う師匠。
「善好き~」
そう言いながら後ろから抱き着く芳香。
抱き着くというよりむしろ体当たりだが……
「ちょ!?やめろって!!味噌汁が零れる……おっと!あぶな!」
体制を崩し味噌汁をこぼしそうになる。
配膳を終え食事が始まる。
「ほら、芳香食え」
箸を持ち魚の身をほぐし芳香の口に運ぶ。
「うまい!」
芳香は腕の関節が曲がらないので善が食べさせる事になっているのだ。
「あらあら、仲睦まじいのね」
師匠が笑いながら茶化す。
「師匠、毎日芳香を呼ぶ役変わってくれませんか?俺…じゃなくて私そろそろ死にそうです」
「ダメよ。それも修行の内、頑張りなさい」
修行。そう言われては善も口をつぐむしかない。
「解りました……」
「そうそう、怪我をしたなら食事の後で見てあげる。後で私の部屋に来なさい」
朝食の後片づけを終えて、師匠の部屋に向かう善。
「打撲が有るようね、ちょっと待っててね」
そう言ってクスリ棚から道具を取り出す師匠。
「上の服を脱ぎなさい」
師匠の言葉に服を脱ぐ善。
「背中に痣が有るわね、湿布はっておきましょうか」
ペタリと何かが張られた瞬間善の身体が硬直する。
「あ……し…しょ。また……」
不自由な体で何とか訴えかける。
「そう。またなの、許してね」
師匠の手に見覚えのある札が握られている。
ぺたりと額に貼られると同時に善の意識は消えて行った。
「善。今日は楽しかったぞ」
芳香が頬を染める。
「ん?アレ?ここは?」
善は全く状況がつかめない。
「あら?もう意識が戻ったのね。後2日はキョンシーのままのつもりだったのに、やっぱりアナタ才能あるわね」
善の師匠がにっこり笑う。
「本当に止めてください!!師匠!!」
「どうしようかしら?」
コレは嫌々邪仙に弟子入りした主人公が、日々非人道的な虐待を受けるのを読者諸君があざ笑うための物語である!
私いつもはオリジナル原作で書いてるんですが。
原作付短編を作ったのは初めてです。(連載は有る)
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