「ふぅ...一段落ついたか...」
今ハジメは総隊長室で書類整理を終わらせた、昨夜から夜通しの作業だったため流石に疲れた表情を見せていた。
「俺が目を通さなければならない書類だけでもこれだけの量、事務員をもう少し増やすか...」
そんな事を考えながら椅子から立ち上がり、仮眠を取ろうと考えたが今さら眠る気にもなれず、入隊希望者達の顔でも見に行こうかと思い、部屋から出て一階へと降りていく、その道中廊下ですれ違った隊員から敬礼を受け本人も軽く返しながら目的地へと歩いて行く。
入隊希望者の集まる一階受付部分はワイワイガヤガヤと随分騒がしかった、ざっと見てみれば殆どが剣や槍をもった男達、警備隊希望者ばかりで事務方は殆どいなかった。
その事に若干頭を悩ませながらも再び見て回る。
そんな時、一瞬...ハジメは何かを感じた、長い戦いの経験から直感が鍛えられたハジメは受付の方を見る、そこには剣を手にした少年の姿があった
「誰だアイツは」
近くに居た隊員に声を掛ける。
「お疲れ様です総隊長殿!!、あれは一平卒ではなく隊長から志願したいと言った少年です。」
「そうか、随分と自信家だな、いやあれは単なる世間知らずだな。」
「はっ、自分もそうおもいます。」
「だが興味が湧いた。」
「は...はぁ。」
◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯
「だから、これでも腕っぷしには自信があるんだって、俺の腕を見てくれよ、使えそうなら隊長クラス辺りから仕官させてくれよ!!」
「だから馬鹿も休み休み言え、いきなり隊長クラスから仕官なんて出来る訳無いだろ!!」
「随分騒がしいな、何を手間取っている?」
「いやな、このガキが....ってええええええええ!?」
「喧しいぞ、騒ぐな。」
「はっ、申し訳ありません!!」
受付担当の隊員がハジメを見た瞬間、『スワッ!!』と字幕が出そうな位に素早く立ち上がり敬礼を行った。
それを見た少年は今度はハジメに懇願する。
「おじさん偉い人なんだろ、だったら俺の腕を見てくれよ、絶対役に立つからさ、これでも1級危険種の土竜を1人で倒せるし、腕には自信があるんだ!」
「このガキ!!、無礼にも程があるぞ!!」
「いやいい、所でコイツを少し借りるぞ、こっちに来い、少し話をするぞ。」
「え?、あっはい。」
言われるがまま少年はハジメの後をついていく、つれてこられたのは大舎の中にある食堂であった。
そこで二人は向かい合った席に座り、ハジメは煙草に火をつけ、会話を始める。
「そうか、お前は故郷の村に仕送りをしたいがために帝都まで来たのだな。」
「はい、国の徴税が厳しくて今でさえ故郷の村は...」
「そうか、だからといってお前を贔屓する訳にはいかんな、お前程にではないにせよ、ここに来る奴等は何かしらを背負ってる奴が殆どだからな。」
「...そうですか。」
「それに理由はそれだけじゃない」
「え?」
「一つ確認するが、人と戦った経験...いや、人を切った事はあるか?」
「い、いや有りま...せん。」
「だろうな。まず対人経験が無いのは致命的だ、その様子だと仲間を率いて指揮を取ったことも無いだろう。隊長とクラスにもなると数十人もの人数を束ね、状況を把握し、即座に最適な判断を下す咄嗟の冷静な判断力が必須だ、個人の力はもちろん必要だが必須じゃない、腕っぷしだけでは勤まる程『隊長』の肩書きと役職は軽くない。」
「…そんなぁ」
「まぁ確かに腕っ節があるのは悪いことじゃない、技能や判断力ならば鍛えれば何とかなるものだが、まずは一般隊員からだ、それでいいなら俺の権限で一先ず仮採用してやる。」
(力があるのは事実だしな、逃す手はない。これくらいの贔屓なら問題はないだろ。)
「あ、ありがとうございます!!」
「先走るな、まだ仮採用だからな...所でお前、名前は何だ?」
「え...タツミです、タツミって言います!!」
これが本来出会うはずがない
・・・ちょっと駆け足ぎみだったかな?