千年の栄華と歴史を誇る帝国
表向きは華やかで大勢の人が行き交う帝国の首都
そう表向きは...
帝都の裏では弱者を食い物にする人の皮を被った外道・畜生・悪党・魑魅魍魎がばっこし、のさばる魔都と化していた
そんな中、悪と腐敗を許さぬ一人の男が居た。
その男が率いる組織を人々はこう呼ぶ。
【群狼】と...
==ハジメが突く【帝都群狼伝】==
宮殿・謁見の間
「悪徳貴族の粛清を終えました、陛下」
帝城に戻ってきた俺は謁見の為の大広間で陛下へ報告にきていた。
「さすがだな、ハジメ総隊長。大義である」
「はっ」
まだ幼き皇帝陛下に報告を行う
正直、報告とは言えこの場に来るのは嫌になる...
別に陛下を嫌っている訳ではないし自身に疚しいことや後ろめたい事が有るわけではない。
ただ1つ
「これで良いのであろう大臣」
この言葉さえなければどんなに良かったことか。
「ヌフフ、お見事です」
俺の背後からグチャッ、グチャッと場を弁えず肉を摘まみながらでっぷりと肥満体の身体を動かしながら大臣が現れた。
人語を解す不愉快な豚の鳴き声に一層気分が悪くなる。
出来うる事なら今この瞬間にも奴の喉笛を喰い千切ってやりたい程だ。
「相も変わらず随分裕福な暮らしをしている様ですな、手遅れになる前にその腹の余分な脂肪を落とす事をオススメしますが?」
「ヌフフ、御安心を。私の体は至って健康体ですぞ。」
「そうですか、なら私は栄養失調にならぬ様に気を付ける事にします。」
「そうすると良いでしょう、貴方はまるで痩せた飼い犬の様ですからな」
「あまり食べ過ぎると迅速な行動ができなくなります、それに扉につっかえて部屋から出られなくなるのは困りますからな。」
小さな声で「お前の様にな」と付け足したら
ピクピクっとオネストの額に青筋が浮かび出す。
嫌みや皮肉を言われ随分と頭に来ている様だ、どんどん腹を立てろ、その分だけ此方の溜飲も下ると言うものだ。
「それでは陛下、私は書類業務が残っていますので失礼します。」
「解った。所でハジメ総隊長、オネストは確かに太めだが、逆にハジメ総隊長は痩せすぎなのではと余は思うのだが?」
ハジメは確かに痩せ型だが別段気にする程でもない、と言うのも陛下の周りは裕福な貴族や官僚が多いため自然と周りは太めからぽっちゃり体形が多いのである。
「そうですか、自分では気がつきませんでしたがこれからは気を配ってみます」
「あぁ、書類が残っておるのだったな、もういって良いぞ。」
「それでは失礼します。」
謁見の間を出る際オネストの横を通る、お互いに陛下に聞こえない程の声で。
「犬風情め、処刑しますよ...」
「豚如きが、図に乗るなよ...」
お互いに睨み合い、僅かに立ち止まるが直ぐに歩みを進める。
(これ以上貴様の好きにはさせん、精々僅かな余生を有意義に過ごすんだな。)
心の中でオネストに告げる、貴様の知らぬ内に狼の牙は既に首元に迫っている、後は喰い千切るだけだ...
とな。