悪魔より悪魔らしい……だがサイヤ人だ   作:アゴン

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life 04

 

 ──数時間前、事務室。

 

「ではブロリーさん、この飴玉を一袋は必ず食べて下さいね」

 

「……これは?」

 

用務員、雑用係としての仕事を順調にこなし、後は苦手な書類仕事だけとなった所、蒼那に渡された飴玉の入った一袋を怪訝に見ながら訊ねると。

 

「これは、“翻訳飴玉ミント味”で私達悪魔が冥界で造られているお菓子なんです」

 

「……それで?」

 

「本来は契約する際に言語能力を身に付けたいと願う人間に対して与えられる代物なのですが、貴方の記憶探しに役立てて欲しい為、こうして持ってきました。本来使われる原料の10倍の濃さで製造されていますから、その一袋を食べ終わる頃には貴方は全ての言語をマスターしている筈です」

 

「良く分からないが……いいのか?」

 

「貴方の真摯な態度で仕事に臨む姿勢は好感が持てますし、貴方を手伝わせていたウチの匙もどういう訳か生徒会の仕事にも進んで打ち込んでいます。これは、そんな貴方に対して私達からのささやかなお礼です」

 

だからどうぞと差し出してくる蒼那に、ブロリーは取り敢えず一粒口の中に放り込んだ。

 

口の中に広がる爽やかなミントの味わいにブロリーは結構イケると思い、その後もう二粒ほど口に運ぶのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふわぁー! スゴいです! 食べ物がいっぱいですぅー!」

 

「そうだな」

 

そして現在、ブロリーはアーシアと名乗る少女と共にスーパーマーケットなる場所へ赴いていた。

 

何やら買い出しに行きたいのだが何処に行けばいいか分からず言葉も通じない。更には道に迷って帰り道が分からないと来たものだ。

 

途方に暮れていたそんな彼女の前に現れたのが、飴玉を食べた事で言語能力を得たブロリーだった。

 

買い物がしたいけれど道に迷ってしまい、道を教えてくれと懇願してくるアーシアにブロリーは手元にある地図を眺めた。

 

見れば地図にはスーパーと書かれた建物が描かれており、場所はこれから向かおうとしたマンションのすぐ近くだった。

 

手頃な場所でもあり、これを機に買い物というものを学ぶのもいいのかも知れない。

 

ブロリーはそう思い、アーシアと共にスーパーへと向かい現在へと至のだった。

 

「コッチは見たこと無いパンが! あっちにはお魚! あ! 野菜もいっぱいです!」

 

見たこともない食材の多さに目を輝かせているアーシア。対してブロリーは食材のお試しコーナーに入り込み。

 

「美味いな。お代わり」

 

「お、お客様、申し訳ありませんがそのようなサービスは当店で承っておりません」

 

従業員をこれでもかと困らせていた。

 

「ああ、主よ。この出会いに感謝します」

 

すると、突然両手を組んで祈りを捧げるアーシアにブロリーは怪訝に思う。

 

「……何をしているんだ?」

 

「あ、ブロリーさん。今私達の主にこの出会いに対して祈りを捧げていた所です」

 

「主……て?」

 

「神様の事です。私、これでも神に仕えるシスターですから!」

 

主、神、聞き馴染めない言葉にブロリーはやはり分からないと頭を振る。

 

「……悪い。俺、記憶がないからお前の言葉の意味がよく分からない」

 

記憶喪失。その事を聞かされたアーシアは苦々しい表情へと変わり、ブロリーに向け頭を下げる。

 

「ご、ごめんなさい。私、その……」

 

「……別にお前が気にする事はない。世話になっている人もいるし、そこそこ満足な生活をしている」

 

だから気にするなと、片手を出して制するが……。

 

「……ブロリーさん。お願いがあります」

 

真剣な表情で聞いてくるアーシアに取り敢えず頷く事にした。

 

 

 

 場所を変えて訪れたのは先程アーシアと出会った場所、公園だった。

 

ブロリーの両手には沢山のオニギリや弁当の入った袋が握り締められ、アーシアもまた野菜や果物といった食材を買い込んでいた。

 

 公園のベンチの前にまで来たアーシアはブロリーに座るよう促してくる。

 

言われるがままにベンチに座るブロリーは怪訝に思いながらアーシアに向き直る。

 

「では、楽にして下さい」

 

そう言うや否や、両手を差し出してきたアーシアの掌から淡い光が現れる。

 

ブロリーが何だと思う一方でアーシアの両手はブロリーの頭を包み込んでいく。

 

───暖かい。アーシアの放つ光の気持ちよさにブロリーは目を細めその暖かさに身を委ねる。

 

暫くするとアーシアの掌から発していた光は消え、ブロリーも終わったのかと目を開く。

 

「え、えっと……どうですか?」

 

「どう……とは?」

 

「えっと、ブロリーさんは先程記憶が失いと言いましたよね? 記憶喪失は頭部に怪我を負った事が原因で発症する事が多いらしくて……その」

 

「さっきの光で、それを治したと?」

 

ブロリーの問いにアーシアは静かに頷いた。

 

「……これといって思いだした事はないな」

 

ブロリーの何気ない一言、だがアーシアは涙目になりあうあうと狼狽し。

 

「ご、ごめんなさい! 私、お役に立てなくて!」

 

何度も何度も頭を下げてくるアーシア、彼女の態度にブロリーも「おぉう」と驚きの声を漏らす。

 

「だから、気にしなくていい。記憶の方は自分で探す」

 

「あぅぅ……、本当にごめんなさい」

 

ブロリーの言葉にアーシアは頭を下げるのを止めるが、それでも涙目は戻らず、終始謝り続けるのだった。

 

 

 

そして日も暮れ、辺りが暗闇に包まれた時間。ブロリーはアーシアを送る為に薄暗い街道を歩いていた。

 

「あの、本当に今日はありがとうございます。お買い物に付き合って頂いてその上送って下さるなんて……」

 

「……別に、俺もこの辺りの事は知りたいから」

 

周囲の地理を把握すべくアーシアの家まで送る事になったブロリーだが、どうやら彼女の方は何も役に立てていなかった事が余程ショックのようだ。

 

何とかするにも、彼女の気持ちなど分からないブロリーには気が利いた台詞なんて言える訳もなく、二人はただ会話の無いまま歩いていく。

 

重苦しい沈黙の中、先に口を開いたのはアーシアの方だった。

 

「あ、あの……ブロリーさん」

 

「?」

 

「ブロリーさんはさっきの……私の力を見てどう思いました?」

 

力、というのはあの光の事だろうか? 振り返って上目遣いで訊いてくるアーシア。その瞳には不安と怯えが入り混じり、肩は僅かに震えている。

 

「……さっきも言ったが、俺は記憶喪失だ。お前の力は俺には分からないし、正直聞かれても困る」

 

「そう……ですか。そうですよね。ごめんなさい、変な事を聞いてしまって」

 

「ただ、お前のあの光は暖かくて優しくて……何だか安心した」

 

「……え?」

 

ブロリーの付け加えられた言葉が信じられなかったのか、アーシアはポカンと呆然としている。

 

 

「どうした?」

 

「あ、いえ……そんな事言われたの初めてでしたから」

 

俯き、モジモジと指をつつき合わせているアーシア。頬が赤く見えるのは街灯の光の所為だろうか?

 

怪訝に思うブロリーにアーシアは顔を上げ。

 

「あの、本当に今日は色々と、ありがとうございます! 私はこの先にある教会にいますので、今回私はお役に立てませんでしたけど、何か相談事がありましたら是非来て下さい!」

 

「……はぁ、まぁそれはいいとして、ここでいいのか?」

 

「はい! 教会はもう目と鼻の先ですから!」

 

そう言い残すと、アーシアは此方に何度も振り返り、その度に頭を下げる彼女にブロリーは取り敢えず手を振り返す事で答える。

 

やがてとある大きな建物の中へ入っていくアーシア。周りの建物とは違う雰囲気を醸し出す建築物にブロリーはあれが教会だと理解し、その場を後にする。

 

「あれぇ? アーシアちゃん、買い出しは終わったの?」

 

「フリード神父、はい! これ、皆さんの分です!」

 

「ありがとちゃん、……って、ブロッコリーや人参ばっかしなんですけど?」

 

「ブロッコリーさんも人参さんも、栄養がタップリなんですよ!」

 

「………」

 

その後、教会ではブロッコリーと人参尽くしのスープが毎晩出されたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ピピピピ、ピピピピ、ピピ……

 

「……朝か」

 

けたたましく鳴り響く目覚ましに起こされ、眠気に抗いながら上体を起こす。

 

辺りを見渡すと見慣れない風景にブロリーはここが朱乃の家の神社とは別の部屋だと認識する。

 

「……そうか、確かここはリアスが用意してくれた……」

 

リアスが用意してくれたとされるマンション、それはこの街で最も物件として名高いものだった。

 

キッチン、リビング、ダイニング、テレビも超薄型の最新モデルでネット環境も完備され、エアコン等の空気調整器具もされている。

 

いずれも最高級の高品質で高価格、一介用務員程度では得られない代物ばかり。

 

しかし、記憶喪失故に物の価値観が分からないブロリーはソファーから起き上がりキッチンに向かう。

 

ソファーという物が分からないブロリーは何を思ったかベッドと勘違いをし、本来は座るだけの家財は布団代わりとして使われている。

 

寝室は物置代わりとして使っており、高級な素材で造られたベッドからはすすり泣きが聞こえてきそうだ。

 

 

そうとも知らずブロリーはコップを片手に水道の蛇口を捻り、水を注いで一気に飲み干した。

 

 

ピンポーン!

 

 

玄関から聞こえてくるインターホン、何だと思い扉を開けるとそこには制服姿の朱乃が佇んでいた。

 

「おはようございます。ブロリーさん」

 

「……おはよう」

 

ニコニコ微笑みながら佇む朱乃にブロリーは訝しげに首を傾げる。

 

そんな彼に朱乃はプクリと頬を膨らませ。

 

「もう、昨日言ったじゃないですか。明日は学校までの道のりを教える為に一緒に登校するって!」

 

……言われてみればそうだったかも知れない。悪魔の話とかで記憶の隅に置きっぱなしだった。

 

「その様子じゃあ朝御飯もまだのようですね。今ついでに作りますから待っていて下さい」

 

言うと同時に中へと入り、朱乃はキッチンに向かっていく。

 

その最中、ブロリーはドラゴンの鳴き声のような腹の虫を抑え、着替えをする為に部屋へと戻るのだった。

 

「……所でブロリーさん、何でソファーにお布団が敷いてあるのです?」

 

「……布団じゃないのか?」

 

「……まさか、アソコで寝てたんですか?」

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、朱乃に朝食を作って貰いひとまず腹を満たしたブロリーは共に学校に向かって登校していた。

 

「お仕事の方は……もう慣れましたか?」

 

「荷物運びとかなら大分慣れてきたが……書類整理とやらが難し過ぎる。毎回眩暈がして頭が痛くなってくる」

 

「あらあら」

 

ウフフと微笑みながらブロリーの隣を歩く朱乃。そんな二大お姉さまの一角と称される朱乃がポッと出の事務員と一緒になって歩いている。

 

駒王学園の生徒ならば絶対に許されない光景、それを証拠に周囲にいる生徒達からは殺意の籠もった視線と呪詛をぶつけてきている。

 

だが、ブロリーが辺りを見渡す度に生徒達は顔を背け、口笛を吹いたりしながら白々しく誤魔化している。

 

ぶっちゃけ怖いのだ。日本人離れした体格のブロリーが、無言で見つめてくるあの黒い瞳が……。

 

顔を逸らし、必死に誤魔化している生徒達にブロリーは怪訝に思いながら首を傾げ。

 

朱乃は朱乃で「あらあらウフフ」と終始微笑むだけだった。

 

───嗚呼、今日も朱乃お姉さまが野獣と共に校舎へ入っていく。

 

一緒に校舎へ入っていく二人に、朱乃ファンの男子女子それぞれの生徒は血涙で頬を濡らすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朱乃と分かれたブロリーは今日も今日とで事務員の仕事に勤しんでいた。

 

今日はそんなに荷物を運ぶ事もないし、手伝いの匙も少しホッとしている様子。

 

今は二時限目の休み時間、廊下で書類を運んでいる最中、匙が話し掛けてきた。

 

「それにしてもブロリーさんは凄いッスねぇ、あんな重たい物を平気で持ち上げるなんて……」

 

「……そうなのか?」

 

「自覚なしですか。素で悪魔の俺より力があるのに……やっぱり記憶を失くしちゃうとその辺りも分かんなくなるもんスかねぇ?」

 

「………」

 

「あぁ! す、すみません! 俺余計な事を……」

 

「……いや」

 

自分の一言が禁句だと悟った匙は必死にブロリーに謝る。

 

ここに来て早数日、記憶の方は未だ戻る気配はない。

 

嘆息しながらもブロリーは仕事の為に廊下を歩き出す。

 

すると。

 

「ほうほう、成る程成る程、貴方が噂の用務員さんですか」

 

「……誰だ?」

 

いきなり現れた眼鏡を掛けた少女。突然前に現れた事にブロリーと匙は足を止められる。

 

「私は桐生藍華(きりゅう あいか)、学園では匠と呼ばれているわ」

 

挑戦的な口調で名乗る桐生。匠と呼ばれる彼女が一体自分に何の用だろうか?

 

「その匠が俺に何の用だ?」

 

「何、ちょっと私のデータ取りに協力して欲しいかなと思いまして」

 

「こんな奴構う必要ねーって、行こうぜブロリーさん」

 

桐生の言葉に首を傾げるブロリーだが、匙は相手にする必要はないと言って彼女の隣を通り過ぎようとするが。

 

「ほう、中々の名刀の持ち主のようだね。匙 元士郎君?」

 

「っ!?」

 

「しかし、いつまでも鞘にしまったままでは宝の持ち腐れですぞ?」

 

「な、なななっ!?」

 

クキキと小悪魔気味に嘲笑う桐生。彼女の囁きに匙は書類を顔を真っ赤にしながら廊下に撒き散らし、盛大な狼狽っぷりを晒してしまう。

 

落としてしまった書類を必死にかき集める匙。そんな彼を手助けしようとするブロリーに桐生が立ちはだかる。

 

「私の眼鏡は男のシンボルのアレを測定する測定器(スカウター)! 私の視界に入った以上、最早貴方に逃げ場はないですよ!」

 

「だ、ダメだ! ブロリーさん逃げてぇ!」

 

股間を抑え、前のめりになりながら叫ぶ匙。眼鏡の視界にブロリーを捉えた桐生は不敵な笑みを浮かべながら指をワシャワシャと動かせる。

 

──しかし次の瞬間、桐生の表情は驚愕に一変する。

 

「ご、五万、六万……ば、馬鹿な! まだ上がっていくだと!?」

 

ピピピピと、眼鏡から聞こえてくる不協和音。

 

「こ、これではまるで性剣エクスカリ……」

 

 

ボンッ!

 

 

瞬間、突如爆発した眼鏡と共に廊下に大の字になる桐生。

 

「……何なんだコイツ」

 

勝手に出てきて勝手に爆発し、勝手に倒れる桐生にブロリーは何のために出てきたのか不思議に思った。

 

「早く行きましょう、次の仕事もありますから」

 

倒れる桐生の横をそそくさと通り過ぎていく匙。放って置いていいのかと疑問に思うブロリーだが、すれ違う生徒は誰も気に留めてはいない様子に、ブロリーもいいかと放置しておくことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、放課後になり、リアスに訊ねたい事があったブロリーは人気のない旧校舎へと向かった。

 

廊下を歩いている途中、“KEEPOUT”のレッテルが張られた扉を目撃するが、気にせず先に進みオカルト研究部の部屋の中へと入ると。

 

「いい事イッセー、教会は私達悪魔にとって敵地なの。迂闊に踏み込んだらそれだけで悪魔側と神側の問題になり、いつ光の槍が飛んできてもおかしくはないのよ?」

 

「……マジですか」

 

リアスが一誠に絶賛悪魔講座の真っ最中だった。

 

「やぁ、ブロリーさん。いらっしゃい」

 

「お前は確か……木場祐斗か?」

 

「うん。僕の名前、覚えてくれたんだね」

 

出迎えてくれた木場に進められブロリーは小猫の隣へと座る。

 

「……こんにちは」

 

「あぁ、こんにちは」

 

互いに挨拶を交わし、リアスの悪魔講座をBGMに暫く待ち続ける。

 

すると漸く説明が終わったのか、此方に気付いたリアスが向かい側のソファーに座り、一誠もその後ろに立つ。

 

「ごめんなさいブロリー、さっきから気付いてたんだけど一誠に私達と教会について話してたらつい……」

 

「うぅ、すみません」

 

「いや、別に気にしなくていい。それよりもお前に訊きたい事がある」

 

「何かしら?」

 

「神器(セイグリット・ギア)って、一体何なんだ?」

 

先日女堕天使が言っていた神器なるもの、今まで聞いたことのない言葉にブロリーは引っかかりこうしてリアスに訊ねて来たのだ。

 

ブロリーの問いにリアスは微笑み、席から立ち上がる。

 

「なら、説明するより実際見て貰った方が良いわね。イッセー」

 

「はい! ではブロリーさん、しっかり見てて下さいよー!」

 

一誠の肩を叩き、壁に寄りかかるリアス。何やら得意気に左手を伸ばしてくる一誠を怪訝に見ると。

 

「うぉぉぉっ!」

 

雄叫びと共に一誠の左手の甲から宝玉が現れ、それを中心に赤い籠手が出現した。

 

「……これが、神器?」

 

「そう、正確に言えば神器の一種よ。他にも能力として発現する神器もあればイッセーのような装着型の神器、武器の神器と言った数多くの神器があるのよ」

 

「神器とは特定の人間に宿る規格外の力、大半は人間社会規模でしか機能しないんだけど、中には僕達悪魔や堕天使にとって脅威になり得るものもあるんですよ」

 

リアスの神器説明に木場が補足を付け足してくれる。

 

「……その中には怪我とか治してくれる物もあるのか?」

 

「えぇ、喩えば聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)何て物がその最たる例よ」

 

「もしかしてブロリーさん、アーシアにあったんスか!?」

 

身を乗り出して訊ねてくる一誠にブロリーは頷いた。

 

道に迷っている所を見かけ、一緒に買い物をして家まで送って……そこまで説明すると一誠は体を震わせてブロリーに迫った。

 

「ブロンド髪の美少女とお買い物して家まで送り届けるとか、完璧デートじゃないっスかぁぁぁ!! 羨ましい、妬まし過ぎるぅぅぅっ!! ってかアーシアまた迷ったんかいぃぃぃ!!」

 

頭を抱えて悶える一誠、何だか変な奴だなと思う。

 

「全く、貴方といいイッセーといい、どうしてこう問題ばかり起こすのかしら?」

 

「……何かいけなかったのか?」

 

額に手を添えているリアスに訊ねると、リアスは鋭い目線を此方に向け。

 

「あのね、イッセーにも話したけど教会は天使や堕天使にとっては拠点で私達悪魔にとっては敵地なのよ!」

 

「俺は悪魔じゃないんだろ?」

 

「だけど、それ以上に貴方は堕天使から狙われるとも言った筈だけど?」

 

 

顔は笑っているが目が笑っておらず、言い難い迫力を纏うリアスにブロリーは圧される。

 

一誠も「ひいっ!」と短い悲鳴をあげて下がり、木場や小猫も巻き込まれないよう離れた所で傍観に徹している。

 

「わ、悪かった。俺が悪かったから……」

 

兎に角謝ろう。このままではなにされるか分かったものではないと本能的に悟ったブロリーはリアスに怒りを静めるよう必死に謝り続けると。

 

「……まぁ、今回はブロリーが記憶喪失と言う事を含めて、初犯だったから大目に見るわ」

 

嘆息と共にソファーに座り、今回は見逃すと告げるリアス。そんな彼女にブロリーと一誠はホッと胸を撫で下ろす。

 

いつの間にかブロリーに“さん”付けがなくなっている事も気にはならなくなった位安堵する。

 

木場はそんな二人に苦笑を漏らしながらリアスに紅茶を注ぎ、主の気分を癒やす。

 

(けど、益々分からなくなってきたわ。この男、ブロリーが……)

 

 リアスは紅茶を啜りながら横目でブロリーを見る。

 

天使でもなければ堕天使でもなく、悪魔とも違う存在、ブロリー。

 

神器も宿さず、殆ど普通の人間と変わらない筈の男だが先日の堕天使、カラワーナとの一件でその考えは覆りつつある。

 

恐らくは中級の力を持っている堕天使の攻撃を意にも介さず無防備に受け止め、更には肉体のみで打ち砕いている。

 

神器を持たずに街灯をへし折り、その投擲で木々を貫くなど、その豪腕ぶりは明らかに常人を逸している。

 

(力と耐久力だけなら、小猫に匹敵するわね……)

 

記憶喪失で、常軌を逸した肉体を持つ男──ブロリー。

 

改めてブロリーに対して考察していると。

 

「部長、大公から討伐の依頼が来ました」

 

部室に入るなりとある依頼について話す朱乃、これを聞くとリアスは口端を吊り上げてソファーから立ち上がる。

 

「ぶ、部長、討伐って……何すか?」

 

「そうね。良い機会だからイッセーにも悪魔の戦いを見て貰いましょうか」

 

「……なら、先に俺は帰るか」

 

「では、また明日伺いますわ。ちゃんとベッドで寝ないと駄目ですわよ?」

 

悪魔の仕事、それを聞いたブロリーは邪魔にならないよう部室から去ろうとするが。

 

「いいえ、ブロリー。貴方にも参加してもらうわ」

 

妖艶に微笑むリアスに呼び止められるのだった。

 

 

 




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