悪魔より悪魔らしい……だがサイヤ人だ   作:アゴン

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life 26

 

 

 一誠が皆に聖剣破壊の案を出してから数日後、ブロリーは今日も用務員としての雑用を淡々とこなしていた。

 

「ブロリーさん。お疲れ様ッス」

 

「匙か、……時間も時間だしそろそろ飯にするか」

 

「ウッス!」

 

 午前の仕事も一通り完了し、昼休みの時間も十二分に余っている事から、ブロリーは手伝いに来た匙に昼食の誘いをし、匙もこれを快く受けた。

 

生徒会の仕事の延長として度々用務員の仕事を手伝ってくれている匙。最初の頃は書類関係以外の体力仕事ではあまり目立った活躍のない男だったが、少しずつ力を付けて荷運びもこなしていけるようになり、今ではこうして余裕で昼食を共に出来るまでの力を付けていた。

 

力が付いた匙が手伝う時は書類関係の仕事も教えてくれた事もあり、この日の昼休みはかなりの時間を休められる。

 

ブロリーと一緒に仕事をしたおかげで匙は鍛えられ、匙が書類仕事を教える事でブロリーは学び、今では二人は学校の仕事に於いては信頼できる相棒同士となり、また親しい友人となっていた。

 

これを見越した上でこの二人を一緒に行動させていたソーナ=シトリーの高い知略性が伺える。

 

 汗を拭いブロリーは手製のおにぎりを、匙は母の作ってくれた手作り弁当をそれぞれ口に頬張る。

 

「ブロリーさん。なんか毎日オニギリばっかりですけど……飽きないんですか?」

 

「あぁ、オニギリはご飯の中に色々な物を詰められるからな。手軽で簡単だからよく作る」

 

「朱乃さんには作って貰わないんですか?」

 

「朱乃?」

 

 何故そこで朱乃の名前が出て来るのか……不思議に思いながらブロリーは匙に言い返す。

 

「朱乃には色々世話になっているからな。今もリアスの手伝いとやらで忙しいみたいだし、あまり迷惑は掛けられない。それに、自分の事は自分でやれとソーナにも言われているからな」

 

 現在、朱乃はリアスと共に冥界にいる魔王達に例の聖剣の事について指示を待っている最中である。

 

複雑となった現状を説明する為、否応なしに時間はかかり、また修道女の二人の捜索に使い魔達を総動員させている事もあり、現在のオカルト研究部はてんてこ舞いとなっていた。

 

そんな彼女にこれ以上負担は掛けたくない。そんな思いを元にブロリーは自炊という選択をし、極力自分の事は自分で済ませるように心構えている。

 

 ……だが、その一方でブロリーを心配している朱乃の心情の事など、ブロリー自身は気付かない。

 

「……なぁ匙、ソーナから何か話は聞いていないか?」

 

「それって……例の人造人間って奴らの事ですか?」

 

「あぁ」

 

ソーナは冥界の四人の魔王の一人、レヴィアタンの妹。冥界の魔王と面識のある彼女ならば何らかの情報をえているのではないかと思ったが……。

 

「……すんません。俺は何も……」

 

「……そうか」

 

申し訳なさそうにうなだれる匙。彼に気にするなと言い。ブロリーは仕方ないかと自分に言い聞かせる。

 

何せ同じ魔王を兄に持つリアスも奴らについての情報を得ていない様子なのだから。

 

(オーフィス)

 

 脳裏に刻まれた泣きそうな顔。それを思い出す度に胸の奥が熱くなるのを感じる。

 

一度はアーシアを死なせ、朱乃との約束も破り、今度は助けを求めたオーフィスを……。

 

(っ!)

 

ギリッと、奥歯を強く噛みしめる。

 

悔しい……とても、とても悔しかった。だが今すぐオーフィスを助け出す術などブロリーが見いだせる筈もなく、今はジッと状況が動くのをを待つ他なかった。

 

「……ブロリーさん? どうかしたんですか?」

 

手にしたオニギリを口にせず、ボーッとしているブロリーに匙は訝しげになりながら声を掛ける。

 

「あぁいや、……なんでもない」

 

一瞬オーフィスの事を言い掛けたが、それは呑み込む事で何とか堪える。そうだ、これは自分で片を付けなければならない事だ。自分の問題にリアス達や匙達を巻き込むわけにはいかない。

 

自分の事は自分で何とかする。それがソーナの教えてくれた教訓だ。

 

「それよりも匙、お前達の方は大丈夫なのか?」

 

「え?」

 

「何だか此方の事情に巻き込んでしまったみたいだから……気になってな」

 

 同じ魔王という兄弟のいるリアスとソーナ。普段の日常生活に於いては互いに不必要に干渉せずに日々を過ごしてきた。

 

だが、聖剣が、更に言えば堕天使の幹部がこの街に潜んでいる。そんな事態になってはそうも言っていられない。

 

そんなソーナ達の巻き込んだ原因に、多少なりとも関わったブロリーは申し訳なさそうに匙に訊ねた。

 

「そっスね。最初はビビりましたよ。すんごい昔から伝わる聖剣やら堕天使が出てきて何かやらかすって聞かされた時はビビり過ぎてマトモに眠れなかったスよ。でも、同時に思ったんス。そんな奴らをいざというときに止めるのは今は俺達しかいないって」

 

 弁当を全て食べ終え、立ち上がる匙の横顔は、一つの決意をした漢の顔をしていた。

 

「この街には俺の家族がいる。生徒会の皆や学校のダチだっている。そんな俺が生まれ育った街で堕天使がよからぬ事を考えていると思うと、なんかこう……好きにさせて溜まるか! みたいになって」

 

 静かに闘士を燃やす匙。目の前の少年がいつもより少しだけ大きく見えた。ブロリーが匙に関心していた時、それにと言葉を続けて……。

 

「俺、実は一つ夢を持ってるんスよ」

 

「夢?」

 

「はい。俺はいつか会長と……主のソーナ=シトリーとデキちゃった結婚をする事なんです!」

 

 周囲に誰もいない事を良いことに声高々と宣言する匙に、ブロリーは目を丸くする。

 

「……ソーナと?」

 

気恥ずかしそうにしながらも匙の瞳はランランと輝かせていた。

 

「はい! 俺みたいなモテない奴にとってデキちゃった結婚はかなりハードルが高いんですけど……でも、それでも会長といつかデキちゃった結婚をしてみます! だから、こんな所で死ぬわけにはいかないんです」

 

堂々と口にする匙。その姿にブロリーは眩しさを覚え、同時に自分に対し強い劣等感を抱いた。

 

(目標……か)

 

 思い返してみれば、自分はこれまで記憶の捜索しかやるべき事などなかった。だが、記憶の事を後回しにした今、別の目標を立てた方がいいのかもしれない。

 

最後のオニギリを手に思考を巡らせていると、やがてブロリーは一つの答えを見出す。

 

「……匙、俺も決めたぞ」

 

「ブロリーさん?」

 

オニギリを頬張り、呑み込んだブロリーは徐に立ち上がり……。

 

「俺は、今よりもっと強くなる」

 

 静かに、たった一言。自分の決意を口にした。

 

 アーシアを一度死なせ、朱乃との約束を破り、そしてオーフィスを泣かせてしまった。……もう十分だ。

 

あんな想いをしないように、二度と約束を違えないよに、そして……大事なモノを奪われないように、ブロリーは強くなる道を選ぶ。

 

そして、その為にも───。

 

「───匙」

 

「は、はい」

 

「絶対、生きて勝とう」

 

「─────っ! う、ウッス! 勿論ッス!」

 

 まずは、もうすぐ起こるであろう戦いに生き残り、勝つ事から始めよう。

 

 

 

 ───────所で。

 

 

(デキちゃった結婚ってなんだろう?)

 

 匙から聞かされる新たな単語に疑問に思ったブロリーは。

 

(あとでソーナに聞いてみよう)

 

 その後、匙はソーナに白い目で見られた事は別の話になるので割合しておく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして夜。魔の動きが本格化し始める頃の時間にそれは起こった。

 

熟睡していたブロリーの携帯から電話の呼び出し音が鳴り、出るや否やリアスから合流して欲しいと言われ、ブロリーはタンスにしまった戦闘服に着替え、すぐさまマンションを後にする。

 

話の内容はリアス達の前に堕天使コカビエルとイカレた神父フリードが現れ、重傷の紫堂イリナに投げ渡すと宣戦布告を言い渡してきたのだ。

 

その事が切欠になり、紫堂イリナをアーシアで治癒させた後、リアスは自分の眷属とソーナ達に協力を申し出た。

 

 ────遂に、古の堕天使とその部下達が動き出したのだ。

 

合流地点として集まったのは一誠達の学び舎であり、そしてブロリーの仕事場である駒王学園の目と鼻の先にある公園。

 

「済まない。遅れてしまった」

 

 既に集まっていたソーナとリアスとその眷属達。だが、その中には見知った人物の姿は見えず、不思議に思ったブロリーはその人物の名を口にする。

 

「……? 木場は?」

 

 木場の不在を指摘すると、その場の全員が押し黙る。拙い事を聞いたかとブロリーは困惑していると。

 

「─────先輩なら、きっと来ます」

 

 そう言ったのは小猫だった。木場が来るのを信じているのだろう、その瞳には確信に揺るがない強い光を宿していた。

 

そして、リアスとソーナは木場の到着を待たず、作戦の内容を始める。

 

「現在、堕天使コカビエル思われる堕天使と人間数名が校舎にいることが判明しているわ。私達の目的はただ一つ、魔王様方の救援ぎ来るまでに何としても足止めし、持ち堪える事よ」

 

 ソーナのシンプルにして分かりやすい説明に一同は頷く。それを見ると今度はリアスが皆の前に一歩前に出る。

 

「本来ならソーナ達が結界役として学校周辺に待機してもらう予定だったけど、新たに不安定要素が加わった事により彼女達の力も借りることになったわ」

 

 リアスの言う不安定要素、それは言わずもがな人造人間の事だろう。全員に緊張が走る。そんな中リアスは更に説明を続ける。

 

「そして、今回は事態が事態の為に学園周辺に特殊な転移結界を張っているわ。これにより私達は被害の出ない特殊なフィールドへと転移するわ」

 

 ソーナ達も戦闘に出張ってくる為、結界で被害を少なくさせる手段は限られている。だからリアスは上層部の悪魔達に連絡を取り、こうした特別処置を決行させる許可を得ていたのだ。

 

「私達が突入次第、すぐに術式を発動させて転移し、魔王様の援軍が来るまで死ぬ気で食い止める。それが今回の作戦よ」

 

 作戦の概要。そしてその為の手順と手段、それら全てを説明した後、リアスとソーナはブロリーに視線を向ける。

 

「正直、貴方には今回の件に巻き込みたくはなかったわ。悪魔でもない、人間でしかない貴方を……悪魔と堕天使のいざこざに巻き込んで。でも、お願い。力を貸して、私達だけで奴等と戦うのは無理だから、恥を忍んでお願いするわ」

 

そう言ってリアスは深々と頭を下げ、ソーナも同様に頭を垂れる。

 

リアスはプライドの高い女性悪魔だ。自分の領土で勝手をされて、それだけで内心怒り心頭の筈。その上勝てる部分が少ないからといって外部の者にその手伝いをさせるのは彼女のプライドを大きく傷つけた。

 

だが。

 

『大事な下僕達を死なせる位なら、私のプライド位簡単にへし折ってみせる』

 

その言葉は嘘ではなかった。自分のプライドよりも下僕を失う方が怖い、だからリアスは今最も力のあるブロリーに助力を求め、こうして頭を下げるのだろう。

 

今も彼女の心中はこれで良かったのかと葛藤の中にある。ならば、それを消すのが自分の役目だろう。

 

「……頭を下げる必要はない。俺はリアスやソーナに頼まれたから来たんじゃない。自分の意志でここに来たんだ」

 

 朱乃に命を救われ、リアスに居場所を与えられ、ソーナに色んな事を教えられ、匙や一誠、アーシアといった友人もできた。

 

余計な事をしてきた自分が、少しでも恩を返せるのであればこれくらい安いものだ。

 

────それに。

 

「あの学校は俺にとって大事な仕事場なんだ。無くなってしまっては俺も困る」

 

仕事が無ければお金も無い。唯でさえ食費で大変だというのに学校が無くなれば死活問題の騒ぎではない。

 

それを聞いたリアスとソーナは目を丸くさせ、遂には大きく笑い出す。

 

「アッハハハ! まさかそんな心配をするなんて、これもソーナの教育の賜物かしら?」

 

「私もこんな心配をするなんて想像もしていなかったわよ。───でも、貴方らしいわね」

 

笑うリアスに吊られソーナもまた口元を弛める。そんな主達を見て眷属達も少しだけ緊張が和らぎ、それぞれ笑顔が見える。

 

 そろそろ作戦が始まる。ブロリーはアーシアの横に並ぶと小声で彼女に先日の発言について謝罪する。

 

「アーシア、この間は済まなかった。あんな事を言って……」

 

主。即ち神の存在を全否定したブロリーはその信仰者であるアーシアに深く傷付けたと知り、何度か謝罪する機会を窺っていたが。

 

ブロリーは仕事、アーシアは悪魔としての仕事と互いに顔を合わせる機会もなく、学校で出会っても顔を背けられる事もしばしばあった。

 

その為に今まで謝る事はなく、こうして今までズルズルと引きずってしまったのだ。

 

「い、いえ! 私こそブロリーさんを避けてしまって……本当にゴメンナサイ!」

 

 ブロリーの謝罪にアーシアもまた謝罪する。互いに蟠りの無くなった二人を見て。

 

「それじゃあ行きましょう。堕天使に私達の力を見せつけてやりましょう!」

 

『オォッ!!』

 

 覚悟は完了した。後は生きて返って来るのみ、これから起こる死闘を皆で乗り切る。そう強く信じて。

 

まだ幼く、若い悪魔達は一人の人間と共に学園の門を潜る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ブロリーさんとも合流し、俺達は堕天使コカビエルのいる学園へと足を運ぶ。

 

正面から堂々と入り込む俺達の目に映ったのは異様な光景だった。

 

校庭の中央に三本の剣が神々しい光を発しながら宙に浮いている。それを中心に怪しい魔方陣が校庭全体描かれ、更に剣に呼応する様に発光している。

 

その中央には初老の男────だ、誰だ?

 

「バルパー・ガリレイ、聖剣の研究に没頭した─────祐斗の仇よ」

 

────っ!

 

こ、コイツが木場の仲間を言いように殺して、木場の復讐心の元凶!?

 

部長の言葉に俺は怒りのボルテージが上がり、部長自身もその綺麗な顔を憤怒に歪めている。

 

当然だ。部長の大事な下僕を、そして俺達の仲間である木場をあんなに怒りで狂わせた張本人が目の前にいるのだ。平然でいられる訳がない。

 

「漸く来たか。やれやれ、待ちわびたぞ」

 

空から聞こえてくる声に視線を向けると、そこには黒いローブを纏い十の翼を生やした男────堕天使コカビエルがいた。

 

宙で椅子に座り、余裕の態度でこちらを見下ろしている。……余裕そうに足なんか組みやがって!

 

「バルパー、聖剣の統合はあとどれぐらいで完了する?」

 

「ふむ、以て十分といった所か。ただ統合するだけならまだ楽だったのか、どこぞの誰かが聖剣を砕いてしまった為に少しばかり手間取りそうだ」

 

 そう言ってバルパーが取り出したのは一つの袋……ってあれ! ブロリーさんが砕いた聖剣の欠片じゃねぇか!

 

「……コカビエル。貴方ね! 封印を解いたのは!」

 

「物を保管する時はもっと厳重にするべきだったなぁサーゼクスの妹よ。ちょっと力を入れただけで簡単に引き出せたぞ?」

 

 っ!? 嘘だろ!? アレって部長と朱乃さん、更には会長と副会長が総出で厳重に……それこそ幾重にも結界と封印を施した強力なヤツだったんだろ!?

 

それを簡単って、これが堕天使幹部の力なのか!?

 

俺達がコカビエルの力に戦慄している間に、バルパーは聖剣の欠片を他のエクスカリバーに振りかけていく。すると聖剣はその輝きをより一層激しくなっていく。

 

「それで? サーゼクスは来るのか? それともセラフォルーが俺の相手か?」

 

「お兄さまとレヴィアタンさまは来ないわ! 代わりに私達が────」

 

ヒュッ! ドォォォオオオオンッ!

 

風きり音のあと、爆音が轟き、辺り一帯に爆風が広がっていく。

 

爆風に堪え、舞い上がる砂塵の先にある光景に俺は言葉を失った。

 

「た、体育館が!」

 

 俺達が授業でいつも使う体育館が……か、影も形もなくなっていた。 消し飛んだのか! 今の一撃で!?

 

「……つまらん。まぁ、少しは余興になるか」

 

体育館のあった場所に巨大な光の柱が斜めに突き刺さっている。あれってもしかして堕天使が使う光の槍か? う、嘘だろう? デカすぎだろ! 堕天使の姉ちゃんが放つ槍なんてあれに比べたら物干し竿と爪楊枝ほどの差しねぇか!

 

あ、あんなものマトモに受けたら……。

 

『ビビっているのか相棒』

 

籠手に封じ込められた天龍の片割れ、ドライグが心に語りかけてくる。

 

あ、当たり前だろう! あんなものを見せられたら! 規格外なんてものじゃねぇ! 次元が違うぞ!

 

見れば部長やアーシア、小猫ちゃんもコカビエルの力に驚き、怯えている。匙にいたっては足を振るわせながら尻餅着かないよう必死に堪えている。俺だってそうだ!

 

『なに、いざとなったらお前の体の大半をドラゴンにしてでも打倒してるさ。……それに』

 

 

 

『規格外な存在は、奴だけではない』

 

ドライグのその一言にハッとなり、俺は隣にいるはずの人物に目を向ける。が、既にその人はそこにはいなかった。

 

「おい」

 

澄んだ声が、校庭に響きわたる。その声に顔を向けると……。

 

そこにいたのは─────。

 

「学校を……壊すな」

 

コカビエルの所にまでいつの間にか跳躍したブロリーさんが、手を強く握りしめ。

 

痛烈な一撃をコカビエルの横っ面に叩き込んだ。

 

「えぇぇぇぇぇぇっ!? 何やってんのあの人ぉぉぉぉっ!?!?」

 

 まさかのブロリーさんによる先制攻撃!? 体育館が壊されたのをそんなに怒ってらしたんですか!?

 

「流石ブロリーさん俺達に出来ないことを平然とやってのける!」

 

「そこに痺れる憧れるぅっ!」

 

 ……ッハ! 何やってんだ俺?! なんか匙がやたらテンションが高くなって俺もついノってしまった!

 

 地面に叩き落とされ、舞い上がる砂塵の中で這いつくばるコカビエル。信じられないモノを見るような目で地面に着地するブロリーさんに視線を向ける。

 

「ッハ!? し、真羅! 今の内に!」

 

「は、はい! 転移魔方陣、起動!」

 

 我に返った会長が真羅先輩に転移魔方陣の発動を促す。すると学園を囲むように四方から眩い光が放たれ、俺達はこことは違う別の場所へと転移させられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やがて光が収まり、俺の視界に映ったのは壮大な光景……いや、絶景だった。

 

どこまでも続く地平線。雄大に広がる大地には天に向かう岩山が幾つも転がっている。その広大な光景はテレビでしか見たことのないグランドキャニオンによく似ている。

 

「これで私達は逃げる術を失いました。ここを出るには外部からの魔方陣を解除しなけばなりません」

 

 会長の説明に俺達は本当の意味で覚悟を決める。やるしかない。コイツら全員倒さなければ俺のエッチライフは勿論、ハーレムの夢さえ潰えちまう!

 

「ほぅ、まさかここまで大層な仕掛けを施していたとは………コカビエルもどうやらあのデタラメな化け物を相手にしなければならないようだし、致し方あるまい」

 

ブロリーさん。遂に相手側からも化け物認定されましたよ。……まぁ、俺もそう思う時がおるから何とも言えないな。

 

 と、俺がそんな事を考えている内にバルパーの背後から黒い空間が現れ、そこから巨大な影が姿を表す。

 

太い四つ足、そこから生える鋭すぎる爪は見ているだけで背筋が凍る。

 

 ギラギラと輝く血の様な双眸。突き出た口から覗かせるのは凶悪極まりない牙、それらがずらりと並び、その隙間からは白い息が吐き出されている。

 

俺が知っている生き物で似ているモノがあるとすれば──────それは、犬だった。

 

だが、これが犬の訳がない。だって、犬には首が三つもある訳がないからだ!

 

そして、驚くべきはそれだけじゃない。

 

「あの人は……!」

 

小猫ちゃんの指さした方向に全員の視線が向けられる。────あ、アイツは!

 

それは、俺達が探しても見つからなかった修道女の片割れ、イリナと同じく聖剣の奪還、或いは破壊として送られてきた教会からの聖剣の使い手。ゼノヴィアが佇んでいた。

 

その手に、エクスカリバーとは違う別の聖剣が握られており、その表情は虚ろとなっている。

 

い、一体アイツに何があったんだ!? 変わり果てたゼノヴィアに戸惑っている一方。

 

「貴様、一体何者だ!」

 

「………ブロリーです」

 

堕天使の幹部コカビエルと、規格外の塊ことブロリーさんの激闘が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 




次回、伝説の超用務員対古から伝わる堕天使

に、なるといいなぁ。

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