悪魔より悪魔らしい……だがサイヤ人だ   作:アゴン

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life 18

 

 ────それは数日前、特訓の為に部長の別荘で過ごして二日目の夜の事だった。

 

 特訓に疲れ、ブロリーさんを含めた全員が寝静まった時間。“俺達”は別荘の広間にいた。

 

「赤い龍の帝王(ウエルシュ・ドラゴン)ドライグ……それが、お前の名前なのか?」

 

『そうだ。それがお前の左手に宿る者の名だ。これからは一緒に嫌というほど戦うことになるんだ。覚えておくんだな』

 

俺の神器、赤龍帝の籠手に宿る龍ドライグ。それは遙か昔に悪魔、天使、堕天使の三竦みの戦いに無理矢理割り込んで滅茶苦茶に引っ掻き回したという二天龍の一角の名だった。

 

といっても、今本人からこうして聞かされただけだからあまり実感湧かないけど……。

 

いや、重要なのはそこじゃない。問題なのはその次だ。

 

「それ、本当なのか?」

 

『あん?』

 

「俺が払う対価ってヤツだよ。対価さえ払えれば俺は一時的お前の力を得られるんだろ?」

 

俺は皆を起こさないよう、なるべく小さな声量で訊く。

 

悪魔や堕天使、天使のどこにも属せず、唯一単身で戦ったとされる龍の王。

 

結局は一時同盟を組んだ三陣営によって討たれ、神のシステムの一部となって時代によって様々な使い手に移り渡って言ったとか。

 

おっと、話ぎ逸れてしまった。

 

つまり、俺なりに纏めると、この龍帝さんに対価を払えば俺は相当な力を得る事が出来るって事だ。

 

『あぁその事か。当然だ。とだけ言っておこう』

 

「それじゃあ!」

 

『但し、10秒だ』

 

「え?」

 

『それが、今のお前の限界だ。お前は基礎能力があまりにも低すぎる。正直、歴代の中でも最弱にな』

 

「っ!」

 

『更に言えばそれは一度きりだ。後はどんなに対価を支払おうとも、その力を得るには至らない』

 

「……そん、な」

 

『だが、それに見合った力は得られるぞ? 少なくともあのフェニックスの小僧やその下僕には一泡吹かせられるだろう』

 

……ドライグはそう言うが、それでも俺には絶望的に思えた。

 

相手は不死鳥のフェニックス。神クラスでなければ打ち倒すのは難しいし、心を折る程の連撃を浴びせるのも困難だろう。

 

10秒。それが俺に残された最初にして最後のチャンス。

 

……できるのか? 俺に?

 

いや、やるんだ! いつまでもあの人や皆の荷物になってばかりじゃいられない!

 

それに、部長と約束したんだ。最強の兵士になれって。

 

部長の期待と約束に応える為にも、俺はやらなければならないんだ!

 

『どうやら、覚悟は決めたみたいだな』

 

どうやら、顔に出ていたらしい。覚悟した俺の気持ちを察したのか、ドライグは手の甲にある宝玉をピカピカと点滅させながら話した。

 

『その時が来たら俺を呼べ。僅か10秒の短い間だが、その代わりに絶大な力をお前に与えてやる』

 

不敵な物言いだが、今はそれさえも心強く聞こえる。

 

明日も早い。俺は眠ろうと部屋に向かおうとしたとき、ふとドライグから声が掛かってきた。

 

『……一つ忠告しておこう。例の記憶喪失の男、ブロリーと言ったか? 奴にはあまり関わらない方がいい』

 

「え?」

 

『奴には俺が目覚めたきっかけをくれた存在だが、同時に危険な存在だ』

 

危険? ブロリーさんが?

 

普段のあの人の姿を見ると、人畜無害という言葉が思い浮かぶんだけど……。

 

真剣な声色に対し、俺はドライグの言葉に首を傾げると。

 

『奴は、あの男にはありとあらゆる意味で底が見えないんだよ。おぞましい程に』

 

その震えたドライグの言葉に、俺の脳裏にはある光景が浮かび上がっていた。

 

それはあの時、あの教会で見せたブロリーさんの……いや。

 

金色の戦士の背中だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 右の脇腹を、大剣ごと切り裂かれたシーリスは、夥しい血を撒き流しながら地に伏せていると。

 

『ら、ライザー=フェニックス様の騎士、一名リタイア』

 

震えた声で目の前で起こった出来事を簡潔に纏めたグレイフィアのアナウンスが流れる。

 

同時にシーリスの体は淡い光に包まれ、フィールドから姿を消した。

 

「……何だ。貴様は?」

 

下僕をやられた事による怒りよりも、目の前の男に対する疑問の方が、ライザーには大きかった。

 

金色に逆だった髪。碧眼に輝く双眸。身に纏う黄金の炎は周囲の大地を照らしている。

 

(……これが、祐斗や小猫が言っていた。黄金の戦士)

 

驚愕に驚いているライザー達の一方で、比較的落ち着いているリアスは二人からあった報告の内容を思い出していた。

 

それは、一誠達がアーシアを救出に向かった時。

 

アーシアが神器を抜かれ、一度は死したその時。ブロリーにある変化が起こった。

 

それは────怒り。

 

離れた位置からでも寒気を感じるほどの怒りに、二人は近付く事はなかった。

 

(でも、一体どうして? 何故彼は今、あんな姿に?)

 

金色の姿。その姿になるにはブロリーが一定以上の怒りが引き金(トリガー)になるのではないかと、リアスは考えた。

 

だが、今のブロリーが怒る場面など、少なくとも現時点では見当たらない。

 

ライザーにバカにされたから? それとも観戦している貴族悪魔達に見下されているのか?

 

……どちらも違う気がする。確かにライザーに一誠がバカにされていた時は怒っていた様子だったが、ゲームが始まる時は何事もなかったように振る舞っていたし、貴族悪魔達に関してはバカにされている事すら気付かないでいる程だ。

 

一体、何が彼を彼処まで怒り狂わせるのか?

 

(……まさか、彼の記憶に関係しているの?)

 

ブロリーの力が激的に向上したのも、例の金色形態になったからと見て間違いない。

 

いや、それは向上というより元からあったものが引き出されてきたという方が正しい。

 

金色形態になる事で、彼の奥底に眠る記憶が蘇り、その結果以前の……記憶を失う前に戻りつつあるのだとすれば。

 

リアスが、目の前に変化したブロリーにある程度の考察を立てていると。

 

 ブロリーの視線が僅かに動いた。

 

「………」

 

 ブロリーはシーリスを切り裂いた時に手に付着した血、それに視線を落とすと。

 

「「「っ!?!?」」」

 

美味しそうに舌でナメ取り、不気味に嗤っているブロリーに、全員の背筋が凍り付き、同時に足に根が張ったようにその場から動けなくなった。

 

悪魔の血を、人間がなめたらどうなるのか分かったモノじゃない。

 

だが、そんな考えなどこの場の誰もが考える余裕などなく。

 

「この、化け物がぁぁぁぁっ!!」

 

身を覆う恐怖を振り払うように、叫びながらライザーは跳躍する。

 

背中に不死鳥を連想させる炎の翼を広げ、手には特大の火球を生み出し、渾身の力でもってブロリーに向けて打ち出す。

 

迫り来る炎の塊。しかしブロリーは避ける素振りなど見せず、ただ嗤い。

 

着弾した火球が猛烈に弾け、その場一帯の大地ごと焼き尽くし、砕いていた。

 

「はぁ、はぁ……ど、どうだ! 身の程知らずめ! コレが不死鳥である俺の力だ!」

 

焼け野原となった地面を見て、ライザーは愉悦に顔を緩ませる。

 

ふと、此方に向けている視線と交差する。

 

レイヴェルだ。何だか顔を真っ青にしているが、自分が負けると思っていたのだろうか?

 

確かにブロリーのあの姿には驚いたし、シーリスを瞬殺した時などは身震いを感じたが、今はこうして自分が立っている。

 

勝ったのだ。あの男に、散々自分を虚仮にしてくれたあの忌々しい男に。

 

砕け、ただの荒れ地となったあの場所に奴がいないのが何よりの証拠。

 

今頃は炭となった奴に大勢の医療スタッフが集い、治療に当たっている事だろう。

 

ライザーは自らの力と勝利を誇示する為、左腕を天高く掲げる。

 

そこに。

 

「お兄様!」

 

絶叫にも似たレイヴェルの叫びが、フィールドに響き渡る。

 

どうしたんだろ? 何か問題でも起こったのか?

 

そう考えている内に、ライザーも自らに起こった変化に気付き。

 

「っ!?」

 

ライザーは、失っている自身の左腕に大きく目を開かせた。

 

肩口から、抉られた様に切り取られた腕。全身に想像を絶する痛みがライザーを襲う。

 

「ふ、ふふ……」

 

後ろから聞こえてきた嗤い声。振り返ればそこには無傷のブロリーがライザーの左腕を手に宙に佇んでいた。

 

「ククククク……エハーッハッハッハッハ!!」

 

吹き出した様に高々と嗤うブロリー。

 

楽しんでいる。目の前で痛みに耐えるライザーを見て、恐怖に震えるレイヴェルを見て。

 

ブロリーだった“モノ”は、それに面白可笑しく、心の底から喜び、楽しんでいた。

 

「こ、この……ふざけるなぁぁ!!」

 

激昂に駆られたライザーがブロリーに向かって拳を振り抜く。

 

既に左腕は再生している。そうだ。自分は不死であるフェニックスの力を受け継いだ上級悪魔なのだ。

 

最大限の魔力を練り上げ、渾身の炎を纏い、全力で以てブロリーの顔面に拳をねじ込む。

 

直撃。ライザーの一撃は吸い込まれる様にブロリーの額に打ち込まれる。

 

手応えあり。間違いなく今の一撃は人体の急所である眉間を捉えた。

 

しかし。

 

「イヤァッ!」

「っ!?」

 

ライザーの一撃に微塵も怯んだ様子を見せず、それ処かブロリーはそのまま押し進み。

 

ライザーの頭を鷲掴みにすると、そのまま勢いつけて落下し。

 

学校だった瓦礫の山に突っ込み、地面へと叩き付けた。

 

地面は大きく窪み、瓦礫も粉々になって吹き飛んでいく。

 

「のわぁぁぁぁっ!?」

 

爆風に煽られながらも何とか地面に這い蹲る事で何とか体勢を保たせる一誠達。

 

巨大なクレーターとなった大地、その中心地には未だ金色形態のブロリーとライザーがいた。

 

「もう、終わりか?」

 

「あ、あぐぅ……」

 

不敵に嗤いながらも、ブロリーはライザーの顔を掴んで離さない。

 

メキメキと嫌な音を立てて地面へと押し潰そうとするブロリーに、ライザーは顔面に炎を放つ事で抵抗するが。

 

「何なんだぁ今のはぁ?」

 

無傷。怪我はおろか焦げ目すらつかない途方もないブロリーの耐久力に、ライザーはただ「化け物め」と呟くのみ。

 

ライザーの顔を鷲掴んだまま持ち上げると、今度は無造作に投げ捨てる。

 

右手をライザーに向ける。すると、ブロリーを中心に周囲の空間が緑色に染まり、掲げた掌に集束されていく。

 

……途方もないエネルギーだ。

 

魔力は感じないが、それでも一誠達にはあれが撃たせてはならない程の威力を誇るものだと瞬時に理解する。

 

「く、くそっ! 体が……動かん!」

 

再生が追い付かない。今この状態であんなものをマトモに受けたら……。

 

体が震える。

 

怖い。目の前の化け物が堪らなく怖い。

 

圧縮されていく極光の光。緑色の輝きを放ち。

 

「今、楽にしてやる」

 

ブロリーが、極限近くまで高めた光の一撃を放とうとした。

 

刹那。

 

「ブロリーさん」

 

 

「っ!」

 

ふと、自分の名前を呼ぶ優しい声がブロリーの耳に入ってきた。

 

誰だ? そう思って振り返ると。

 

「……ダメですよブロリーさん。約束したじゃないですか。私達を守ってくれるって」

 

「……あけ………の?」

 

其処にいたのは───朱乃だった。

 

 差し伸べた彼女の手が、そっとブロリーの頬に触れる。

 

暖かい手だ。優しくて、柔らかくて安らぎを感じ、その暖かさが胸の奥に染み込んでいくようだ。

 

「私が約束したのは……優しくて、だけど少しおっちょこちょいなアナタでしたのよ?」

 

「……俺……は?」

 

「だからお願い。いつものアナタに戻って。そのまま呑み込まれたら、皆が悲しむわ」

 

 そう言って微笑む朱乃の笑顔には、どこか寂しさを感じさせる。

 

悲しむ? それは一体どんな意味を持っているのだろうか?

 

分からない。分からないけど。

 

目の前で笑っていても泣きそうな顔をしている朱乃を見ると、酷く胸の奥が痛む。

 

頬に触れている朱乃の手に、重ねる様にブロリーも触れる。

 

すると、身に纏っていた金色の炎は消え、髪も目も黒へと変わり、いつもの変わらないブロリーがそこにいた。

 

「……あけ、の」

 

朱乃の名を呼びながら倒れるブロリーを、朱乃が支える。

 

……眠っている。

 

余程あの金色形態が疲弊するのか、はたまた別の要因があるのか、気持ち良さそうに眠るブロリー。

 

すると、途端にブロリーは淡い光に包まれ。

 

『リアス=グレモリー様の助っ人、ブロリー様、リタイア』

 

フィールドに響き渡るアナウンスと共に、ブロリーは朱乃の腕の中から消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 陥没した大地で相対する二つのグループ。

 

「それで、どうするのライザー? まだ続けるの?」

 

 

切り札とも思えたブロリーがリタイアされ、リアス側は動揺するかと思われたが、そんな様子は微塵も見せず、堂々した態度でライザー達と相対していた。

 

それもその筈、此方には一人たりとも駒は損失してないし、元々自分達だけでゲームに挑むつもりだったのだ。

 

対してライザー側は僧侶と戦車と女王を残し、たったの四人。しかもライザー本人は多大なダメージを受けて満身創痍。

 

 寧ろ、今回このゲームに一番納得がいかないのも、リアス自身だろう。

 

ブロリーという本来なら無関係な人間を巻き込んだのだから。

 

本人の意志で参加する事になったとは言え、元々彼女はブロリーを参加させには反対だったのだ。

 

しかも、今この状況を作り出したのもブロリーで、自分達の力ではない。

 

これで勝ったとしても、勝てたのではなく、勝たせて貰ったと世間は認知し、それはグレモリー家に泥を塗る事になる。

 

グレモリー家を誇りに重んじる彼女には、それは耐え難いものだった。

 

使えるものなら、どんな手段を用いても勝ちに行くのがレーティングゲーム。

 

ライザー側も、観戦している貴族悪魔達もブロリーの参加を承諾したが、それでも、どこかリアスは受け入れられなかった。

 

「仮にここで私達が勝っても、それは私としても望まないわ。どうかしら? ここは一度ゲームを中断し、後日改めて勝負をするのは?」

 

ピクリ。ライザーの肩がリアスの言葉に震わせる。

 

「……それは、何の冗談だ? リアスよ」

 

途端に、ライザーの全身が不死鳥の業火に包まれ、背中に炎の翼が出来上がる。

 

「……やる気なの?」

 

「当然だ! 俺はライザー=フェニックス。三男とはいえ、俺とてフェニックス家の看板を背負って立つ悪魔だ! ここで引いたらフェニックス家の看板に泥を塗ることになるんだよ!」

 

 ライザーとしてのプライドか、それとも上級悪魔故の矜持か。

 

何れにしても、ライザーの覇気は本物。ブロリーによって一度は折れた誇りを、ライザーは意地で以て奮い立たせた。

 

 そのライザーの有り様に瞬時に自分が相手の誇りに傷を付けたと悟ったリアスは、心の内で非礼を侘び。

 

「なら、私達もぶつからせて貰うわよ。ライザー!」

 

甘さも容赦も手加減も、頭の内から消し、確実にライザーを仕留めに向かった。

 

「祐斗、小猫! アナタ達は戦車と僧侶を! イッセーは朱乃をフォローしながらと共に女王を打倒して!」

 

「させるかぁ!」

 

リアスが一誠達に指示を飛ばす瞬間、戦車イザベラの拳がリアスに迫る。

 

しかし、彼女の拳を一誠が籠手を盾にする事でそれを防ぐ。

 

「大丈夫ッスか部長!」

 

「イッセー!」

 

「邪魔を……っ!」

 

拳に力を入れ、一誠を押し出そうとするイザベラ。

 

此方は力に分のある戦車。駒の特性を利用し、一気に押し勝とうとするが。

 

「っ!」

 

一筋の斬撃がイザベラの腕に向かって振り下ろされる。

 

後ろに飛ぶ事で回避するイザベラだが、目の前の騎士の向けて苛立ちの表情をぶつける。

 

「さて、君の相手は僕が相手をするよ」

 

手にした刃の切っ先をイザベラに向ける。

 

「木場!」

 

「ここは僕が引き受ける! 早く朱乃さん所へ!」

 

騎士の登場に救われ、一誠は指示のあった朱乃の所へ向かう。

 

既に彼方では激しい攻防が繰り広げられているのか、爆発と雷鳴が遠くで攻ぎあっている。

 

また一方では。

 

「まさか……ここまで食い下がりますとは」

 

「…………」

 

「ですが、勘違いなさっては困りますわ。この今の状況はあの男が作ったのであって、決してあなた方の力ではないのですのよ? その辺り、理解してまして?」

 

レイヴェル=フェニックスの見下した視線が、小猫を射抜く。

 

彼女の言うとおり、この戦局はブロリーの力であって自分達の力ではない。

 

「更に付け加えれば、アナタ方はあの男を失った事で唯一の希望も無くした。これは覆らない事実!」

 

フェニックス。即ち不死鳥であるライザーはほぼ絶対的に死ぬことはない。

 

今こうしている間にもライザーはブロリーから受けたダメージを刻一刻と回復させ、次第に全快していくだろう。

 

 

そうなればもうリアス達に勝利は残されていない。一見リアス達の圧倒的優勢にも見えるが、それは危うい拮抗した状況ともいえた。

 

「とどめに……」

 

炎を纏い、背中にライザーと同じ炎の翼を広げるレイヴェル。

 

そう、彼女もまたフェニックス。ライザーと同じ生半可な攻撃ではダメージには至らない。

 

「さて、この状況で、アナタ達はまだ勝つ気でいるのですか?」

 

勝ち誇った表情で微笑む。

 

そう、喩えどんなにブロリーが恐ろしくても、どんなに強大な力を有していようと、それらは既に後の祭り。

 

少々不利な状況かもしれないが、ここで自分が踏ん張れば後は兄であるライザーも回復し、戦線に復帰するだろう。

 

手間が少しばかり増えただけ、レイヴェルは両手に炎の魔力をたぎらせ、小猫に向けて放とうとするが。

 

「……ふふ」

 

「?」

 

小猫から笑い声が聞こえる。

 

何がおかしい? いきなり笑う彼女に不愉快に感じたレイヴェルは眉間に皺を寄せて目を細める。

 

「……そうですね。確かに今の状況は結構厳しいです。だけど」

 

だけど、“想定していた最悪の事態”よりは、幾分かマシだと小猫は思った。

 

何せ、自分が危惧していた存在が自分達の中から一番早く脱落したのだ。

 

確かに不安だが、同時に安堵している自分がいる。

 

 金色の戦士。その力は絶大で今の自分達では逆立ちしても適わないというのは、既に教会で見た時から分かっていた。

 

その力が自分達にではなく、ライザーに向けられた時は、気が弛んだ程だ。

 

 

ブロリーは危険だ。それがこのゲームで小猫の中でより確実のものとなる。

 

 

そして。

 

「怪物(モンスター)に比べたら不死鳥なんて……」

 

そんな言葉を口ずさみながら、小猫はレイヴェルへ向けて駆け出して行く。

 

 

 

激動の中盤戦から、遂に終盤へ。

 

 

決着は、もうすぐそこまできていた。

 

 




なんか場面が変わりすぎてる?

読み辛かったらすみません。

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