悪魔より悪魔らしい……だがサイヤ人だ   作:アゴン

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life 16

 

 

 ライザーとリアス、二人の上級悪魔にレーティングゲームの舞台として用意されたのは、リアス達の通う駒王学園だった。

 

その完成度は壁にうっすらと残った汚れから、僅かな皹まで寸分違わず同じモノとかなり高い。

 

そんな完璧に再現された学園という戦場で……。

 

「参ったな……」

 

「ニャンニャン、見つけたニャン」

 

「ここから先は通さないにゃ」

 

 現在、ブロリーは新校舎に通じる廊下で二人の少女と相対していた。

 

頭部には獣の耳、格好はどこかの部族の民族衣装で、どこか自分と似た服装である。

 

……たしか獣人の類だったか?

 

「お前はライザー様から特に痛めつけろとご命令があったにゃ!」

 

「悪いけど、ここでジ・エンドにゃ!」

 

可愛らしい語尾とは裏腹に、既に戦闘体勢に入る二人。

 

本来なら自分は今回、合図があるまでは隠密行動担当で相手に悟られる訳にはいかないのだが……。

 

どうやら運動場や体育館だけではなく、自分達が通りそうな場所には殆ど配置させておいているようだ。

 

(……そう言えばあの鳥、かなりの人数を引き連れていたな)

 

と、今更ライザー陣営の駒の数の多さに気付く。

 

というか、今の今まで完全に忘れていた。

 

一体どれくらいの人数だったのか、ブロリーは確認しようと、リアスと連絡する為に、支給されたインカムに手を伸ばすと。

 

「よそ見は────」

 

「いけないにゃ!」

 

「っ!」

 

ブロリーの隙だらけの姿に、二人の獣人の拳が叩き込まれる。

 

顔に、腹に、背中に、足に、腕にと狭い廊下を逆手に利用し、二人はジャングルに住まう野獣の如きの動きで、ブロリーを翻弄し弄んでいた。

 

 二人の連撃にグラリとブロリーの巨体が崩れた所へ。

 

「これで!」

 

「トドメにゃ!」

 

二人同時に放たれた蹴りが顔面へと捉え、ブロリーはその巨体ごと吹き飛び、何度も転がりながら地面に這いつくばった。

 

倒れ伏したブロリー。それを見た二人は……。

 

「イェーイ! やったにゃ!」

 

「まずは一人、撃破(テイク)にゃ!」

 

互いに手を叩き合いながら、ブロリーの撃破を確信する。

 

「いやぁ、ライザー様が警戒していたからどんな奴かと思っていたけど」

 

「全然大した事なかったにゃ」

 

軽口を言いながら振り返り、他のメンバーの所へ合流しようとする二人。

 

リアス達の駒はブロリーを含めたったの六つ。喩え一つ失っただけでも戦力に大きな打撃を受けることになる。

 

そんな下手に負けられない状況だったと言うのに、早速一名脱落。

 

しかも切り札らしき駒がたった今自分達にやられたのだ。

 

この分だと、リアス=グレモリーの投了(リザイン)も時間の問題か。

 

 ルンルン気分廊下を後にする二人。早く合流してこのゲームに終わらせて主の寵愛を受けよう。

 

どうせこのゲームは自分達の……主であるライザー=フェニックスの勝利で終わるのだから。

 

二人の獣人、ニィとリィは上機嫌で廊下から新校舎へと移動するが。

 

ふと、違和感を感じた。

 

……おかしい。例の男を撃破したというのにアナウンスのコールは未だに流れてこない。

 

 唯でさえ、あの男は危険だと認識されれば強制的にフィールドから消えるというのに、リタイアという言葉処かアナウンスが流れる気配すらない。

 

二人が振り返り、男が倒れているであろう場所を見ると。

 

そこには男の姿はなかった。

 

「まさか、アイツまだやられてなかったにゃ!?」

 

「見た目通り、頑丈な奴にゃ!」

 

いなくなったブロリーに酷く憤慨する二人。

 

仕留めたと思ったのに実は生きていて、しかも惨めったらしく逃げ返った。

 

男の醜いまでのしぶとさに、二人は余計な手間が増えたと苛立ちを覚え、後を追おうと足に力を込める。

 

……が。

 

「どこを見ている?」

 

「「っ!?」」

 

不意に背後から聞こえてきた声、聞き慣れず、自分達達とは違う太い声に、二人は互いに顔を見合わせ。

 

恐る恐る、振り返ると。

 

「……やぁ」

 

そこには、つい今し方打ちのめした筈の男(ブロリー)が二人の背後に回り込んでいた。

 

「な、なん……で?」

 

焦燥、驚き、そして得体の知れない男への恐怖に、二人は大量の冷や汗を流す。

 

ほんの数秒前までは、コイツは地面に寝ていて、そして自分達は新校舎に向かおうと歩いていた。

 

アナウンスが流れない事に違和感を覚え、振り返ると奴の姿はなく、そして声が聞こえるといつの間にかいなくなったブロリーが自分達の背後……即ち新校舎側に佇んでいたのだ。

 

……訳が、分からない。

 

自分の理解を越えたブロリー(化け物)にニィが呆然としていると。

 

「ニィ! しっかりするにゃ!」

 

「り、リィ?」

 

リィの檄がニィの虚ろな意識に喝を入れ、彼女の気を引き締めさせる。

 

「こうなったら、あれで仕留める! 合わせるよ!」

 

「──っ! 分かった!」

 

もうコイツをただの木偶の坊だと思わない。あの赤龍帝の力を宿した少年同様……いや、それ以上の相手のつもりで挑むしかない。

 

二人は狭い廊下を再び足場として利用し、縦横無尽に跳ね回る。

 

「……おお」

 

その光景を見て、ブロリーは素直に感心の声を漏らす。

 

レーティングゲームには、こんな戦い方もあるのかと、俊足で跳ね回る二人の獣人の戦士にブロリーは面白いなと内心呟く。

 

「喰らえ! これが私達二人の────」

 

「必殺奥義!」

 

「「牙通牙!!」」

 

跳躍し、更に回転の勢いを付けての突進技。

 

しかしその突進に魔力が練っているのか、回転した二人はオーラを纏い、触れたもの全てを抉りながら突き進んでくる。

 

幾らブロリーが頑丈でも、直撃を受ければただでは済まないかも知れない。

 

ブロリーは向かってくる二人に合宿で習った新たな自分の戦い方を思い出し。

 

「えーっと、確か……こう、で」

 

さながらボクサーの構えを取り、突っ込んでくる二つの渦に対し。

 

「シッ」

 

ブロリーの左腕が、一瞬ブレる。

 

小さく、二つの左ジャブを放ったのだ。

 

すると、唸りを上げていた二つの渦は完全に消滅し、二人の獣人は仰向けとなっている。

 

顎にうっすらと赤い痕を残すと、二人はやがて淡い光に包まれ、フィールドからその姿を消した。

 

同時に。

 

『ライザー=フェニックス様の兵士二名、リタイヤ』

 

戦場である駒王学園に、グレイフィアのアナウンスが響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ライザー=フェニックス様の兵士二名、リタイヤ』

 

 戦場に流れるグレイフィアさんのアナウンスに、俺は思わずガッツポーズを取った。

 

まだゲームは始まって数分しか経っていないのに、ライザーの兵が二人も脱落したのは俺達にとって嬉しい誤算だ。

 

やったのは恐らくあの人、ブロリーさんと見て間違いないだろう。

 

というか、それ以外考えられない。

 

「イッセー君、そっち一人行ったよ!」

 

「貰ったぞ! グレモリー家の兵士!」

 

「なんとぉぉぉっ!?」

 

 俺は横から殴り掛かってくる顔半分を仮面で覆った姉ちゃんの右フックを上体を反らす事で避ける。

 

しかし。

 

「ちょこまかと!」

 

「いい加減、やられなさい!」

 

「うぉぉぉぉぉぉっ!?」

 

上から降り注ぐ魔力の弾幕。上にはライザーの僧侶らしき巫女服の女の子が俺に狙いを付けてくる。

 

「……無様」

 

あうっ! そんなジト目で睨まないでよ小猫ちゃん! 俺だって精一杯やってるんだからさ!

 

「隙あり!」

 

小猫ちゃんのその一瞬の隙を突いて、根を持ったライザーの兵士の女の子が襲い掛かる。

 

というかあの子、俺を吹っ飛ばした時より速くないか? ……やっぱりあの時は手加減していたのか。

 

くそ! どんだけ情けねぇんだ俺は!

 

「ふん、随分余裕だな。リアス=グレモリーの兵士よ。戦いの最中に余所見とは……随分と舐めてくれる」

 

そうだ。自分の不甲斐なさを嘆いている場合じゃない。

 

今、ここの校庭には俺と木場、小猫ちゃんに対し、ライザーの兵士六人と戦車二人、そして僧侶一人という圧倒的不利な状況にいるのだから。

 

「それにしても、グレモリー家の次期当主がまさかこの程度とは……些かガッカリだな」

 

仮面の女、イザベラは嘆息しながら部長の作戦に呆れかえっていた。

 

……まぁ、概要の知らない奴らから見れば、今俺達に置かれているこの状況は滑稽にしか見えないだろうな。

 

森でトラップを仕込んでいた木場はその途中に兵士三名と遭遇し、結局罠の設置には失敗。

 

俺と小猫ちゃんも、体育館で戦闘するが、彼女達の猛攻に耐えきれず、堪らず逃げ出す。

 

間抜けにも校庭に逃げ出した俺達はそこで同じように逃げ出した木場と合流。

 

そして、遂には追い付かれ囲まれた俺達は現在に至り、絶体絶命に陥っていた。

 

「罠の設置も出来ず、マトモに戦う事も出来ず、ただ逃げ惑う事しか出来ない……ハッキリ言おう。お前達はクズだ」

 

……ガマンだ。ここは、ガマン。

 

「この10日間何をしていた? ただ惰眠を貪り、堕落した日々を送ったか? カーラマインではないが憤りを感じるよ」

 

イザベラから凄まじい程の怒気を感じる。

 

まぁ、怒るのも無理は無いだろう。

 

10日という猶予がありながら、目立った成長も見せず、ただ逃げる事しか出来ていない俺達に彼女は怒りを感じずにはいられないのだろう。

 

木場と剣を交わす女騎士も、イザベラと同じ心境なのだろう。鬼の形相で斬り掛かっている。

 

「折角得た新しい力も、今は逃げの一手しかないとは……その左腕の籠手は飾りか! 赤龍帝!」

 

激昂しながら俺の左腕を指すイザベラ。

 

そう、俺はあの合宿で新しい力を二つ程得た。

 

一つは洋服崩壊(ドレス・ブレイク)、触れた女性の服を破壊するというアーシアのお陰で会得した俺の願望が形となった技。

 

これを受けた双子の兵士は今、校庭の端でうずくまっている。

 

もう一つは……正確に言えば合宿中ではなく、つい先程得たものだ。

 

今まで籠手には一つしか宝玉がなかったのに二つに増え、全体のフォルムも少し変わっている。

 

『やれやれ、好き放題言われているな小僧』

 

(シッ、黙っていろドライグ!)

 

俺は籠手から聞こえてくる声に黙るよう頭の中で命じる。

 

気付かれる訳にはいかない。

 

『赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)』

 

それは倍加した俺の力を他の者、或いは物に譲渡し、力を爆発的に向上させられるサポート面に優れた能力。

 

だが、俺はこれを殆ど使わず、喩え使ったとしても一度倍加しただけで小猫ちゃん、もしくは木場の方に譲渡するだけで、

 

本人達もそれをただ相手の攻撃から避ける事だけに使っている。

 

逃げ。そう、俺達はイザベラの言うとおり逃げるという“演出”を作り出していた。

 

俺は新しい力を得て、コイツ等に危険な存在として認識された筈。だからここで何としても潰しだいと思う筈だ!

 

けど、あまり時間を掛けては“餌”としての効果も薄くなってしまう。

 

まだか……! 俺は内心で部長の合図を待っていたが。

 

「……フッ、どうやら、私達の主もこの状況に飽きたようだな」

 

「……?」

 

「見るがいい」

 

イザベラの指差す方向へ視線を向けると。

 

「部長!」

 

俺達の主、リアス=グレモリーとアーシアが新校舎の屋上でライザーと二人の女性を従えて相対していた。

 

 

……あと、少し!

 

 

俺はイザベラに気付かれないよう、小さく拳を握り締めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リアスよ。俺は少々お前に失望している」

 

「……………」

 

新校舎の屋上。そこは校庭の様子が隅々まで見渡す事ができ、そこから一誠達を見下ろすライザーは、落胆の目で嘆息を零す。

 

「マトモに仕事も出来ず、中途半端に攻撃し、後はただ逃げ惑うだけ。お前達はこの10日間なにをしていた?」

 

呆れ、怒り、哀れみ。何一つマトモに抗えないリアスの下僕達。

 

「まさか……あの男がいるだけで勝てる気でいたのか? だとしたらリアス。このゲームの敗因はお前だ」

 

 レーティングゲームは力だけで勝てる程甘くはない。

 

張り巡らされた知略と策謀。綿密に編んだ戦略と戦術を駆使する事で初めてゲームに勝利する事ができる。

 

確かに力押しで勝っているチームもこの界隈には存在している。だが、リアス達にはその力すらない。

 

ただ闇雲に突っ込み、無謀に追い込まれ、無惨に散っていく。

 

10日間という猶予を与えられながら何一つなし得ないリアスに、ライザーは失望していた。

 

「お前達が今回のレーティングゲームで得た結果は、助っ人による兵士二人の撃破とお前の結婚式が決まるという事だけだ」

 

「……ライザー様、例の男の方は私が始末しておきましょうか?」

 

「いや、それには及ばんさユーベルーナ。どうせどこかで隠れながら此方に闇討ちを目論んでいるんだろ。人間は余計な知恵が回るからな。ま、俺には効かないが」

 

ここにいるだけ、それだけで自分達の勝利は確実のものとなった。

 

リアスのそばにいる神器所有者、確かにその治癒能力は厄介だが、それも我が女王による魔力の力で封じれば容易い事。

 

更に付け加えればリアス……もとい、グレモリー家は悪魔の中でも珍しい程に慈悲深い一族だ。

 

アーシアが狙われたとあれば身を挺して庇うのは間違いない。

 

自分が出した一騎打ちの案も自分にさえ勝てればどうにかなるだろうという、短絡的思考から来るものだろう。

 

事実、どうやら彼女はまだ負けている事に自覚かまないらしく、その瞳はやる気に満ちている。

 

それに、幾ら奴が力が強かろうと神に等しい一撃を放てる事もない。ましてや心を挫くまでの連撃を浴びせてくる頃にはゲームは終わっている。

 

「お兄様、早く終わらせて下さいまし、私、これから友人とお食事会がありますのよ?」

 

「分かっている。そう急かすな、すぐ終わらせるよ」

 

カップに入った紅茶を飲みながら急かしてくる妹に肩を竦ませ、ライザーは炎の翼を展開させる。

 

「残念だよリアス。実に残念だ。お前だったらそこそこいい勝負になっただろうに……実に残念だよ」

 

「…………」

 

「あ、それとも俺の気を引く為にワザとやっていたのか? だったらそんな事せずに直接──」

 

「ライザー、アナタには感謝しているわ」

 

「……へ?」

 

「10日前の私は、確かに甘い所があったし、負けることはないと自惚れていた。けど、去り際のアナタの一言で私は一つ学んだ事はあるわ」

 

「リアス? 何を言って……」

 

「それは、戦いに於いて容赦はしないという徹底したやり方よ」

 

一体、彼女は何を言っているのだろう?

 

これ以上恥をかく前に、投了を勧めようとした矢先の彼女の言動に面食らうと。

 

「みんな! 今までよく耐えてくれたわ! けど、もう我慢をする必要はないわ! 遠慮など捨てなさい!」

 

リアスのその一言が切欠に、一誠達の動きが変わった。

 

今までのらりくらりと避けるだけだった動きが、途端に鋭くなる。

 

攻撃すらしてくるようになった彼等にらの下僕達は面食らい、今度は逆に防戦一方となっている。

 

だが、それでも一時的なもので数の力には勝てず、徐々に押し負け始めている。

 

「は、はは、何だよリアス。最後にサプライズか? だったらもう少しマシな物を……」

 

「あら、何を言っているのかしらライザー」

 

「ひょ?」

 

「私の“作戦”は、まだ終了していないわよ?」

 

不敵に笑うリアス。彼女の笑みの真意ぎ分からないライザーは思わず間抜けな声を漏らしてしまう。

 

その時だった。

 

 

ゴゴゴゴゴッ

 

 

突然、激しい揺れがフィールドに襲い、ライザー達は堪らず体勢を崩す。

 

(揺れだと? そんなバカな!?)

 

ここは人間界とは違い異空間に生成された人工的なステージだ。

 

地震など起こるなど有り得ない、では、この揺れは一体?

 

 

そこまで思考を巡らせたライザーだが、ふと、気付く。

 

(違う。揺れているのはフィールドじゃない!)

 

揺れているのは……

 

 

 

 

 

 

 

校舎の方だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 誰もが言葉を失った。

 

観戦しているものは全員アングリと口を開き、最強の女王と称されるグレイフィアですら呆然となっている。

 

実際にあそこで戦っている者達の驚きは自分達達の比ではないだろう。

 

何故なら、フィールドの一部である新校舎がライザーの本陣ごと“持ち上がっている”からだ。

 

何が起こっている? 混乱するモニタールームに貴族悪魔の一人の呟きが響き渡る。

 

そして、次の瞬間、下にいる人物を見て。

 

「その発想はなかった!」

 

思わず、魔王様は大勢の面々のいる前で素の自分を晒してしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 学園の校舎が、浮いている。

 

いや、正確には一人の男によって持ち上がっていた。

 

男はゆっくりと此方に振り向くと、手にした新校舎を掲げて歩み寄ってくる。

 

ヤバい。ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい!!

 

ここにいては拙い! イザベラ達はブロリーから逃れようと、旧校舎付近の森に逃げようとするが。

 

「な、なんだと!?」

 

今まで相手をしていた。一誠達が、忽然と姿を消している事にイザベラ達は驚愕に目を見開く。

 

見れば、既に離れた所に避難した一誠達が此方に向かって手を振っている。

 

──嵌められた!!

 

何故、木場はトラップの設置に失敗したのか、何故一誠と小猫が中途半端に刺激し、すぐさま逃げ出しのか。

 

何故、自分達に逃げの一手を選択したのか。

 

(全ては、この時の為か!)

 

逃げることは、決して恥ずべき事ではない。

 

逃げ延び、態勢を整える事も戦場では不可欠な事。

 

それを、自分達はなんと言った?

 

クズだと? 愚かだと?

 

それは、今の自分達にこそ当てはまる言葉ではないか。

 

相手の思案に気付けず、知らずに見下し、挙げ句の果てにこの体たらく。

 

だが、今ならまだ間に合う。

 

奴等の思惑が分かった今、今度こそ各個撃破する好機。

 

奴等に近付けば、あのデカ物を振り回す事も出来ないし、逆に近付けば安全圏となる。

 

それに気が付いたのか、女騎士のカーラマインは剣を突き立てるように構え、ブロリーに向かって突っ込んでいく。

 

しかし、頭上から降りしきる雷により、それは叶わなかった。

 

上を見れば、上空に佇む雷の巫女が自分達達を逃がさないと雷の雨を振りまいている。

 

雷の檻により逃げることも叶わなくなったイザベラ達。

 

 

ふと、ブロリーの方へ見る。

 

ブロリーは彼女達の方に歩いているかと思えば、突然跳躍する。

 

朱乃は巻き込まれないようブロリーの攻撃範囲から飛行する事で避けるが、それでも雷の雨を止ませる事はなかった。

 

…………もう、ダメだ。

 

迫り来る巨大な影に、イザベラ達は諦めの笑みを浮かべ。

 

「お前達全員、───────潰れろっ!!」

 

振りかざした新校舎は、ブロリーの巨大な鎚となり。

 

逃げ場を失ったイザベラ達に向かって振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『なぁ、リアス。一つ聞いていいか?』

 

『えぇ、構わないわよ。なんでも聞いて頂戴』

 

『学校って、武器として扱ってもいいのか?』

 

 

 

その場の全員は思った。

 

 

そんな事、考えたのも実行したのも。

 

 

 

 

お前だけだ。

 

 

 

 




次回も無双してしまいますが、どうかご了承ください。

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