悪魔より悪魔らしい……だがサイヤ人だ   作:アゴン

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life 13

 

 

「ふぁぁぁ~……朝か」

 

 

 本日も晴天なり、澄み渡る青空の下でブロリーは今日もブロリーは眠りから目を覚ます。

 

その際、横の盛り上がったタオルケットに視線を向き、徐に引き剥がすと。

 

「………むにゅう」

 

ブロリーの大きなシャツをパジャマ代わりにして、一人の幼い外見の少女が気持ちよさそうに寝息をたてていた。

 

大男と同じ部屋、同じベッドで寝かされている少女。

 

端から見れば通報モノの光景、どうすればいいか一瞬判断が遅れるブロリーだが、寝ぼけ眼で頭を掻き。

 

「顔、洗お」

 

ひとまず、洗顔してシャキッとする事にした。

 

本日も、ブロリーは平常運転であった。

 

ベッドから起き上がり、洗面台へと向かうブロリー。

 

すると、自分の寝間着が何かに引っ張られている事に気付き、振り返ると。

 

「……おはよう。静寂の根源よ」

 

眠たそうに瞼を擦りながら、ブロリーの寝間着を掴んでいる少女が。

 

ブロリーのワイシャツは人よりも二回り以上も大きく、そのサイズは少女を丸々包み込んでいる。

 

しかし、胸元の隙間からは確かな柔肌が覗き、更にそこから女性特有の膨らみが見て取れる。

 

少女の柔肌。いけない性癖を持つ男性ならここで襲い掛かっても不思議ではない。

 

「……飯、食うか?」

 

「うん。ごはん、食べる」

 

しかしブロリーはそういった感情は全くと言って良いほ持ち合わせてはいない。

 

朝食の誘いに乗り、少女もまたブロリーと同じ様に洗面台に向かい、顔を洗う。

 

互いに同じ髪色であり、同じ黒い瞳を持つ二人が同じく顔を洗う。

 

仲睦まじいその光景は恋人というより親子に似たものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「むぐむぐ、あぐあぐ」

 

「はぐはぐ、はぐはぐ」

 

 朝の食卓の並べられた皿の上にある幾つものオニギリ。

 

朝は米派であるブロリーの食事に少女は文句も言わず、遠慮もせずにオニギリを頬張っている。

 

黒いワンピースを着た少女が、頬に米粒を付けながらオニギリを頬張る……なんともシュールな光景だ。

 

 

「……美味いか?」

 

「うん、美味しい」

 

少女の美味いというコメントに、ブロリーも心なしか嬉しくなる。

 

しかし、いつまでも訊かない訳にはいかない。全てのオニギリを平らげると、ブロリーはコップに注がれている水を飲み干し、少女を見る。

 

「……俺は、ブロリーだ。おまえは?」

 

「───我はオーフィス。無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)と呼ばれてる」

 

「そうか」

 

何とも淡白な受け答え。ここに一誠がいればそれは見事なツッコミの応酬が見られた事だろう。

 

「……お前は、俺を知っているのか?」

 

真剣な眼差し。そう、ブロリーが知りたいのは目の前の少女の名前なんかじゃない。

 

この少女は自分の事を“静寂の根源”と呼んだ。それはつまり自分の事について知っているのと同じ意味だ。

 

ブロリーの問に、オーフィスと名乗る少女は、手にしていた食べかけのオニギリを皿に置いて。

 

「……幾千、幾万、幾億もの光が集う輝きの海」

 

「?」

 

「星海の輝きが消え失せ、残されたのは何処までも続く静寂。その中に……お前がいた」

 

 詩……なのだろうか?

 

オーフィスから告げられる言葉に理解出来ないブロリーは、もっと分かり易く応えて貰おうと、別の質問をする。

 

「……お前は、俺が何をしていたのか、誰なのかを知っているのか?」

 

「我が知っているのは、お前が静寂を生み出していた光景だけ」

 

「………そう、か」

 

少女の答えに、ブロリーの表情は一気に落胆のモノへと代わる。

 

もしかしたら失った記憶の全てを得られるかと思っていたのに、空回りときたものだ。

 

目の前の少女、オーフィスが知っているのは彼女の目の前で起きた光景、そしてそこで自分を見掛けたというだけ。

 

話の内容もイマイチ理解出来ないし、ブロリーは取り敢えずオーフィスからこれ以上話を聞いても無駄だと悟り、並べられた皿の後片付けに入る。

 

「……ブロリー」

 

「なんだ?」

 

「また、来てもいい?」

 

「別に、構わない」

 

オーフィスの言葉にブロリーもあっさりとこれを承諾。

 

食器のを洗う水の音が、リビングに響き渡る。

 

「……じゃあ、また来る」

 

「……? 何か言ったか?」

 

水の音の所為で聞き取れず、何か言ったであろうオーフィスに聞き返すが、返事は返ってこない。

 

振り返れば其処には誰もいなく、テーブルの上には彼女が寝間着代わりにしていたワイシャツが置かれていた。

 

「……帰ったのか?」

 

既にこの部屋には人の気配がしない。何処かへと姿を消したオーフィスにそう結論付けたブロリーは、引き続き食器洗いに専念する。

 

……奇妙な奴だった。

 

喜々として抱きつき、自分を静寂の根源とか呼び始め、自分の事を知っているのかと訊けばそうではないと言う。

 

まぁ、次に会えばもう少し話を訊けばいいかと思いつつ、ブロリーは食器の全てを洗い終えると。

 

 

ピンポーン

 

 

部屋全体に響き渡るインターホンの音、誰かと思い玄関へと向かい扉を開けると。

 

「おはようございます。ブロリーさん」

 

「……朱乃?」

 

そこには大きなリュックを横に置いた朱乃が立っていた。

 

大きなリュックだ。どこか出かけるのか? ブロリーの湧き上がる疑問に朱乃はいつものように笑みを浮かべて。

 

「修行です。付いて来て下さい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほらほらイッセー! 早く来なさーい!」

 

「う、うひぃ~!!」

 

 背中に尋常じゃない量の荷物を背負い、俺はひたすら山道を歩く。

 

悲鳴を上げながらも遥か前を往く部長達に追い付く為、俺は山の斜面を半分涙目になりながら足を動かした。

 

空は抜けるほど青く快晴であり、周囲には自然豊かな木々が生い茂っている。

 

小鳥が囀り、まさに登山日和と言えよう。

 

……この荷物さえなければ。

 

「ほら、イッセー。早くなさい」

 

遥か前方から再び部長の檄が飛んでくる。隣にはアーシアが俺を心配そうに見ている。

 

「……あの、やっぱり私も手伝った方が」

 

「いいのよ、イッセーはあれぐらいないと強くなれないわ」

 

二人の会話が聞こえてくる。ありがとうアーシア。鬼ですね部長。

 

幾ら修行の為とはいえ、この荷物はキツすぎる。

 

背中には巨大なリュックサック。更に肩にも荷物がかけられている。

 

俺のとアーシアと部長と朱乃さんと、計四人分の荷物らしいが……本当にそれだけか?

 

衣服や日用品だけではこうも重くならないぞ?

 

 

「し、死ぬ、死んじゃう!」

 

もう無理! 俺は我慢の限界にとうとう腰を下ろそうとする。

 

「部長、山菜を摘んできました。夜の食材にしましょう」

 

涼しい顔の木場が俺の横を通り過ぎて往く。

 

奴の背中にも巨大なリュックを背負っている。なのに苦もなくすいすいと山道を登っていく姿に言葉を失う。

 

しかも途中で山菜を摘んでいく位なのだから、奴の体力は相当なものだ。

 

「……お先に」

 

更に小猫ちゃんが俺以上の荷物わ背負い、平然と俺の横を通り過ぎて往く。

 

か、怪力少女、ここに極まる。

 

驚きに打ちのめされている俺に、更なる衝撃が襲い掛かる。

 

「一誠、大丈夫か?」

 

「あ、あれ? ブロリーさん?」

 

目の前に現れる記憶喪失の男、ブロリーさん。この人もレーティングゲームに異例だが参加する事になり、俺達同様この修行に参加している。

 

朱乃さんと一緒に部室に来たときは嫉妬心に渦巻いていたが、すぐにそれは鎮静化した。

 

部長が言うにはブロリーさんは上級悪魔以上の力の持ち主だと推測し、力の使い方さえ覚え込めば相当な戦力になると言っていた。

 

頼りになる戦力が増えた事に、俺は素直に嬉しくなった。

 

……って、そうじゃない!

 

「あ、あの、ブロリーさん。お荷物の方は?」

 

そう、俺がブロリーさんに訊きたいのは出発までは彼の背中にあった荷物が消えていた事についてだ。

 

小猫ちゃんの更に倍はあるだろう巨大な荷物を背負っていたのだが、早々にブロリーさんの姿は山の中へと消えていった。

 

……ま、まさか。

 

俺は自分の疑問にある解答が浮かび上がる。

 

「あぁ、荷物はリアスの別荘に置いてきた。今からちょっと忘れ物を取りに行く」

 

「………っ!」

 

絶句。俺はブロリーさんの何気ない一言に衝撃を受けた。

 

俺がちんたらとしていた合間に既にブロリーさんは部長の別荘に辿り着き。し、しかもこれから忘れ物を取りに戻るとまで言い出した。

 

「リアスにここの場所を教えて貰ったから、そんなに時間はかからないと思う。だから、先に始めていてくれ」

 

そう言うと、ブロリーさんは軽快な足取りで山を下っていった。

 

「ち、ちくしょぉぉぉぉぉうっ!!」

 

俺は悔しさに涙を流しながら叫び、山の斜面を走った。

 

ちくしょうっ! この修行で絶対に強くなってやるからな!!

 

俺は今までの自分にサヨナラを告げ、猛ダッシュで山を駆け上がったが。

 

「ん? 一誠、どこに行ってたんだ?」

 

いつの間にか先に別荘に辿り着いていたブロリーさんに、俺は心が折れそうになった。

 

……お願いだからブロリーさん。

 

 

少しは手加減して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 訪れたグレモリー家の別荘、普段は風景に隠れており、人前には現れない仕組みとなっている木造建築物。

 

リビングに荷物を置き、ブロリーは一足早くジャージに着替え、外で準備運動の体操をしていた。

 

朱乃に言われるがままに付いてきたのはいいが、用務員としての仕事も片付けないままで来てよかったのだろうか?

 

今更思い浮かぶ疑問にブロリーは腕を組んで唸っていると。

 

「ここにくる前、私がソーナに話を付けといたわ」

 

ブロリーの疑問に応えるかのように、リアスが背後から声を掛けてくる。

 

その後には他の下僕の面々がジャージに着替え、既に修行への準備は完了しているようだ。

 

「ぜぇ、ぜぇ、……や、やっと修行か」

 

訂正、一人が既にほぼ満身創痍だった。

 

「アナタの力の制御の為と言ったら二つ返事で了承したわよ」

 

……どうやら、ブロリーの力の加減の無さにソーナ=シトリーも相当参っていた様子。

 

彼女に教わった力加減の方法でもまだ制御出来ていない部分が大きい。

 

触れるだけで、ちょっとした接触で相手を吹き飛ばしてしまう自分の力。

 

今後そんな事が起きないように、その強大な力を完全に自分モノにする。それがブロリーの今回の修行で目指す目標である。

 

「もしそれでも気になるのなら、後で連絡を入れればいいわ。一応ここも携帯は使えるようにしてあるから」

 

「あぁ、そうさせて貰う」

 

幾らリアスが手を回したとは言え、やはり直接話をするのが礼儀というものだろう。

 

リアス、ソーナ、そして朱乃。彼女達のお陰でブロリーは徐々にこの世界に於ける常識を持ち始めていた。

 

……そこに少々天然が入るが。

 

「では、早速始めましょう。イッセーは私と基礎トレーニング。朱乃はアーシアに魔力の運用について教えて上げて」

 

「ウッス!」

 

「朱乃お姉さま、宜しくお願いします」

 

「ウフフ、此方こそ宜しくね」

 

それぞれやるべき事を示され、各地持ち場に行く眷属の面々。

 

ポツンと残されたブロリーがこれからどうするか迷っていると。

 

「ブロリーさん。アナタは僕達と一緒に組み手をお願いします」

 

「ん?」

 

声を掛けてくる二人の男女、グレモリー眷属の騎士と戦車がブロリーに挑んできた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、うっわー……」

 

 リアスの鬼のようなしごきに耐え続け、遂にはやり遂げた一誠。

 

厳しい主の特訓を耐え抜いた褒美に少しばかりの休息を得ていた一誠は、何となく他のメンバーが気になり足を運んでみると。

 

「すげぇ……」

 

目の前の光景に、一誠はただそれだけの言葉しか出なかった。

 

山に生い茂っていた木々は薙ぎ倒され、その一部が荒れ果てた荒野となっている。

 

現在も根本から引き剥がされ、宙を舞っている。

 

そんな荒れ狂う暴風を生み出しているのは、記憶を失い若干天然気質な男、ブロリーだった。

 

彼が腕を振るう度に衝撃波が唸りを上げ、暴風となって周囲の木々を薙ぎ、或いは引き剥がして等と、様々な異常気象を起こしている。

 

 

そしてまた、彼を相手する二人の眷属悪魔に一誠はまたもや驚愕する。

 

荒れ狂うブロリーの攻撃を避け、次には隙を見付けては返し刀を浴びせる騎士の木場祐斗。

 

そして、薙ぎ倒された木々を援護射撃として放つ小猫。

 

全員化け物だ。とんでもない力を有している三人に、一誠はただ驚きに打ちのめされていた。

 

「……やはり、あんまり上手く行っていないようね」

 

「部長?」

 

声が聞こえたので隣に振り返って見ると、紅い髪の女性、リアスが目の前の光景に嘆息しながら眺めていた。

 

そして後からはひとまずトレーニングを終えた朱乃とアーシアも、此方に合流してきている。

 

「は、はわわわわわ! な、何だか凄いことになっています!」

 

アーシアはブロリーの引き起こしているスペクタルな光景に目を回している。

 

しかし、朱乃は困り顔でアラアラと頬に手を付いていた。

 

「やはり、まだ振り回されているみたいですわね」

 

「えぇ、あれじゃまるで扇風機ね」

 

木場と小猫とのブロリーの戦い方を見て、リアスと朱乃はやはりダメ出しの如く反応を見せる。

 

 

「えっ!? ぶ、部長。朱乃さん。ブロリーさんの力凄いじゃないですか! 一体何がいけないんです?」

 

「あのねイッセー、どんなに凄い力を持っていても当たらなければ意味がないのよ。加えて言えば彼の攻撃の一振り一振りは派手だけど、その分力が分散していてキレが落ちているの。この超常現象が起きているのも偏に彼の力が無駄に溢れた結果、ともいえるわね」

 

リアスのその言葉は確かに的を射ていた。

 

ブロリーの一発一発は見た目こそ派手だがその分力が分散しており、鋭さとキレが著しく低下している。

 

それでも、そんじょそこらの雑魚相手には一撃で屠れるだろうが、相手は全ての悪魔の駒を使い戦略、戦術、そして自らの力に加え、レーティングゲームの経験者である不死鳥の名を冠する強敵。

 

ただ闇雲に力押しで挑んでもカウンターで返されればそれだけで手痛い仕打ちを受ける事だろう。

 

俊足の速さでブロリーを翻弄する木場。

 

見えてはいるし、追い付けない訳でもない。しかし、ただ振り回すだけの自分の力に心なしかブロリーの表情が悔しそうに歪んで見える。

 

「で、でも、やっぱりブロリーさんは凄いですよ。悪魔でも神器持ちでもないのにあの二人相手に一歩も引いていない時点で、充分凄いと思います」

 

「……そう、ね」

 

確かにそう。ブロリーの力は凄い。

 

我が眷属が誇る騎士と戦車を相手に怯まず、そして一歩も退かずに渡り合えている。

 

本当、人間にしておくのが勿体無い位に……。

 

 

(そう、彼が本当に人間であればね)

 

先日、堕天使達が根城にしていた教会から感じたモノ。

 

禍々しく。それでいて覇気に満ちた力の波動。

 

あれはまさしく上級……それも最も高い位置にいる最上級の代物。

 

当時現場にいた木場と小猫の言う金髪碧眼のブロリーの姿は、まさに超越者と呼ばれるに相応しいという。

 

それほどまでの彼が、はたして“あの程度”で終わるのだろうか?

 

(いずれにしても、それはこの合宿で見出せるわ。必ずね)

 

不敵にほくそ笑む主に怪訝に首を傾ける一誠とアーシア。

 

ふと、徐に朱乃がリアスに耳打ちする。

 

「……それで部長、例の物は?」

 

「然るべき所に送ったと、今朝通達があったわ。恐らく、今頃はあの方が一通り調べてくれている筈よ」

 

こそこそと内緒話をしている二大お姉さま。

 

聞かされることはないだろうと察したアーシアと一誠は取り敢えずブロリー達の戦いに巻き込まれないよう、もう少し離れてみるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ブロリー達の住む街から電車で八駅ほど離れた市街。

 

人気のない廃棄されたビル、その屋上を目指して足を向ける一組の男女の姿があった。

 

男性の方はリアスと同じ紅い髪をしており、容姿が似ているからして彼女とは何らかの関係があると見て取れる。

 

そして、その男性に付き従うように隣に並ぶのは先日オカルト研究部の部室にも現れた瀟洒なメイド───もとい、悪魔メイドのグレイフィアの姿があった。

 

エレベーターで屋上に辿り着き、二人が進んだ先に広がっていたのはとても美しく整えられた庭園。

 

芝や草花だけではなく、木々も植えられており、設置されている水場の音が安らぎを与えてくれる。

 

「やれやれ、まさか本当に来るとはね。もうすぐ妹の結婚式があるというのに……酷い男だな、サーゼクス」

 

「式の方は順調……というより、ほぼ向こうが進めちゃってね。おかげで当日まで暇ができてしまったよ」

 

聞こえてきた声に振り向くと、庭園の中央にテーブルと椅子を置かれており、その椅子には若い男性が宙に浮かぶモニターを見つめていた。

 

「何が暇だ。そんな安いものでもあるまいよ、“ルシファー”の名は」

 

「そう言わないでくれよアジュカ。例のモノの調べが終わったと聞いたから居てもたってもいられなくなったんだ」

 

「……息子への土産話としてか?」

 

「勿論!」

 

サーゼクスと呼ばれる男性の清々しいまでのドヤ顔に、アジュカと呼ばれる男性は「親バカめ」と口ずさむ。

 

「それで、結果はどうだったんだい?」

 

先程までの軽い乗りだったサーゼクスの表情が一変し、その顔付きは真面目なものへと移り変わる。

 

対するアジュカも視線をモニターからサーゼクスへと移す。

 

「俺なりに色々調べてみたのだが……正直に言おう。殆ど分からなかった」

 

「君でも……かい?」

 

「あぁ、幸い見た限りでは乗り物なのは理解出来るがその他の技術系統、また構成されている物質等は全くの未知のモノだ」

 

分からない。そう高らかに宣言するアジュカだが、その声色は新しい玩具を前にして興奮する子供のようにも聞こえる。

 

「だが、それ故に分かった事もある。それはこの物体が人間、悪魔、天使、堕天使、神、そのどれも当てはまらない技術で造られているという事、もっと大雑把に言えばコレは地球の技術で造られたものではない」

 

地球とは別の技術。その言葉を耳にしたサーゼクスはゴクリと唾を飲み、グレイフィアは驚きに目を見開かせている。

 

彼等の視線の先にあるモノ、様々なコードやチューブに繋がれており、今は大人しく其処に鎮座している。

 

丸型の球体。それはブロリーが乗っていた小型のポッドだった。

 

 

「で、では、コレに乗ってきたと言う例の彼は……」

 

声が震える。自分の考える内容が確信を得ると知り、サーゼクスは年甲斐もなく興奮に震えていた。

 

尤も、それはアジュカの方も同じようで、その表情は冷静を装っているが口を動かす唇は僅かに震えており。

 

「あぁ、ほぼ間違い無く──」

 

一拍置いて、一言。

 

「──宇宙人だろう」

 

 

 

 

 

沈黙。アジュカの一言に庭園内は沈黙の空気に包まれ。

 

次の瞬間。

 

「「宇宙キタァァァァァァァッ!!」」

 

アジュカとサーゼクス、二人の男の歓喜に満ちた叫びが、庭園内に響き渡る。

 

「宇宙人! 遂に宇宙人が来ちゃったよ! うわ、なんか興奮してきた!」

 

「あぁ、しかもこの物体は恐らく小型の宇宙船だ! 見ろよこの美しいフォルム、最っ高だろ!」

 

「息子に良い土産話が出来た! よし、今度私も学園に行こう! 今彼は学園の用務員をしているだろし、何より今度のレーティングゲームでは彼も出るみたいだからね! 会うのが楽しみだ!」

 

「サイン、サイン頼むぞ! アジュカ君へって! いいか、絶対だぞ!」

 

 騒ぎ立てる二人の大の大人。その光景を目の当たりにしたグレイフィアは深々と嘆息し。

 

「この、ダメ魔王共」

 

思わず本音をこぼしてしまうグレイフィアさんだった。

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっとこれ、乗ってもいいかな!? いいだろうアジュカ!」

 

「悪いなサーゼクス、この宇宙船。一人乗りなんだ」

 

 




こんな魔王で大丈夫か?

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