悪魔より悪魔らしい……だがサイヤ人だ   作:アゴン

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life 12

 

 

 “レーティングゲーム”

 

それは爵位持ちの悪魔達が行う、下僕をチェスの駒として戦い合わせて競い合うゲーム。

 

下僕である兵士、騎士、戦車、僧侶、女王を用いて悪魔同士で戦い合う。

 

ただのゲームと侮ることなかれ、レーティングゲームにおけるその強さは悪魔の上下関係に大きく影響を与え、転生の下級悪魔であっても上級悪魔に出世する事も可能なのだ。

 

「──と、こんな所だけど。分かったかな?」

 

「はい、ありがとうごさまいます。祐斗さん!」

 

「なる程、そういう事か」

 

「いや、ブロリーさん、アンタ前に説明して貰ったでしょ!?」

 

木場から改めてレーティングゲームについて説明を受けたブロリーは、アーシアと共にウンウンと頷いていた。

 

「あ、あれ? でも確か部長って成熟した悪魔じゃあ……」

 

レーティングゲームは爵位持ち、それも成熟の悪魔でしか行えない。

 

しかしリアスはまだ学生の身、成人ではなくまだ悪魔としては未成熟。

 

そんな一誠の疑問に応えるようにグレイフィアは説明する。

 

「公式なレーティングゲームは成熟した悪魔しか参加できません。しかし、非公式の純血悪魔同士のゲームならば、半人前の悪魔でも参加できます。この場合、その多くが──」

 

「身内同士、または御家同士のいがみ合いよね」

 

グレイフィアの説明にリアスが嘆息しながら付け加える。

 

「つまり、お父様方は私が拒否したときのことを考えて、最終的にゲームで今回の婚約を決めようってハラなのね? ……どこまで私の生き方を弄れば気が済むのかしらっ!」

 

自身の父兄に相当苛ついている様子のリアス。その並々ならぬ殺気に一誠は固唾を飲んで見守っていると。

 

「では、お嬢様はゲームを拒否なさると?」

 

「まさか、こんな好機はないわ。いいわよ。ゲームで決着をつけましょう、ライザー」

 

グレイフィアのその一言に完全に火がついたりは挑戦的……いや、挑戦状を叩き付けるリアスの物言いにライザーの口元がにやけさせる。

 

「へー、受けちゃうのか。俺は構わないぜ。ただ、俺は既に成熟しているし、公式のゲームも何度かやっている。今の所は勝ち星が多い。それでもやるのか、リアス?」

 

リアスの物言いに対し、更に挑戦的な態度で返す。

 

そんなライザーに対しリアスは勝ち気な笑みを浮かべた。

 

「やるわ。ライザー、アナタを消し飛ばしてあげる!」

 

「いいだろう。そちらが勝てば好きにすればいい。俺が勝てばリアスは俺と即結婚してもらう」

 

互いに睨み合う両者。激しい眼光がぶつかり合い、今にも火花が散りそうだ。

 

「承知致しました、お二人のご意思は私、グレイフィアが確認させていただきました。ご両家の立会人として、私がこのゲームの指揮を執らせて貰います。よろしいですね?」

 

「ええ」 「ああ」

 

グレイフィアの問いに了承する二人。

 

確認したグレイフィアがペコリと頭を下げ、二人の間から一歩後ろに下がる。

 

その際。

 

「……?」

 

ブロリーの方へ一瞬だが視線を向ける。何だと思い振り向く頃にはグレイフィアはリアスとライザーの方へ視線を向けていた。

 

……一体、何なんだ?

 

グレイフィアの意味深な視線に戸惑うブロリーだったが。

 

「所でリアス。キミの下僕が矢鱈少ないみたいだが……まさか、ここにいる面子で全員なのか?」

 

ライザーは戸惑う一誠に視線を向けると、途端に嘲笑を浮かべる。

 

明らかに挑発の色が含まれているライザーの一言に、リアスは片眉を吊り上げる。

 

「ええ、そうよ。尤も、ブロリーは違うけどね」

 

リアスの返答にライザーはおもしろおかしそうに笑い出した。

 

激怒したかと思えば今度は笑っている。起伏の激しいライザーを尻目にブロリーは朱乃に訊ねる。

 

「朱乃、何でアイツは怒ったり笑ったりしているんだ?」

 

「そうですね。色々残念だから、じゃないでしょうか?」

 

「そうか……大変なんだな」

 

きっと、記憶のない自分と同じ様にライザーもきっと見えない所で苦労しているんだな。

 

ブロリーがライザーに向けて、所謂可哀相なモノを見るような視線を送る一方で、当のライザーは指をパチンと鳴らすと。

 

部室にライザーが現れた際に出現したものと同じ魔方陣が幾つも現れ、そこから続々と人影が現れる。

 

「な、なな……」

 

魔方陣から現れる人影、その人物達を目にした一誠はこれでもかと目を見開かせて驚愕を露わにしていた。

 

やがて魔方陣による光は収まり、ライザーの周囲には総勢15名の眷属悪魔らしき者達が集結した。

 

鎧を着込んだ騎士、フードを深く被った魔導師、チャイナ服を着ている者、双子、etcetc……。

 

下僕悪魔はチェスの駒数と同じで最大で15名まで従える事ができる。

 

上級悪魔は悪魔の駒を魔王から15個ほど譲り受け、それを下僕にしたい者に使う事で主従の関係を結ぶという。

 

ただ、その下僕となる際にはその者の潜在能力が高いと、駒の消費は倍になる。

 

その場合、騎士が一名とか、戦車が一名という事もあるという。

 

一誠もその身に赤龍帝の籠手をウチに秘めていた事により、リアス=グレモリーの兵士は八つ使用した事により、リアスの兵士の下僕は一誠のみとなっている。

 

故に、そういう特殊な例がある場合、下僕が15名揃わない上級悪魔もいる。

 

だが、ライザーの場合悪魔の駒を全て使用している為、レーティングゲームに参加できる人数は王を含めて16名なのだ。

 

壮観。全ての駒を使用してのライザーの下僕悪魔達に一誠はあらゆる意味で言葉を失っていた。

 

「と、まぁ、これが俺の可愛い下僕達だ」

 

両脇に美女を侍らせながら、堂々というライザー。

 

それに対して……。

 

「う、うぉぉぉぉん」

 

「お、おい、リアス……。この下僕くん、俺を見て大号泣しているんだが?」

 

涙を滝の如く流している一誠に、ライザーは軽く引き、リアスは困り顔で額に手を当てていた。

 

「その子の夢がハーレムなの。きっと、ライザーの下僕悪魔達を見て感動と悔しさで泣いているんだわ」

 

ライザーの下僕悪魔達、それは全て女性で構成されている。

 

ハーレム王という野望を掲げている一誠にとって、目の前の光景は桃源郷、或いは理想郷(アヴァロン)に見えた。

 

「きもーい」

 

「ライザーさまー、この人気持ち悪ーい」

 

そんな一誠をみてライザーを囲む女性は心底気持ち悪そうにしていた。

 

そんな女の子の体をライザーはナデナデしながら慰めて。

 

「そう言うな、俺の可愛い下僕達。上流階級の者を羨望の眼差しで見てくるのは下濺な輩の常さ。アイツ等に俺とお前達が熱々な所を見せ付けてやろう」

 

そう言うと同時に、ライザーは隣の女の子の一人と濃厚なディープキスを交わす。

 

舌を絡ませながら水音を鳴らし、女性悪魔は官能的な喘ぎ声を出しながらライザーに足を絡ませている。

 

卑猥な光景を目の当たりにした事でアーシアは、顔を真っ赤に染め上げて頭をボンッとパンクさせている。

 

木場や小猫も頬を赤くしながらも顔を背け、一方でグレイフィアは我関せずと平静のご様子。

 

リアスも嫌なモノを見たと嘆息しながら額に手を置いている。

 

そして。

 

「朱乃、前が見えないんだが?」

 

「ブロリーさんにはまだ早いですわ」

 

ブロリーは朱乃に両手で目隠しをされている為、何が起こっているのか分からずにいた。

 

やがて朱乃の目隠しから解放され、ブロリーの視界に赤い籠手を出現させた一誠がライザーと対峙している姿が映ると。

 

「お前みたいな女ったらしと部長は不釣り合いだ!」

 

ライザーに指を突き付けて一誠が物申した。

 

……うん。一誠に対して言いたいことは色々あるだろうがここは堪えよう。

 

「ゲームなんざ必要ねぇ! 俺がこの場で全員倒してやらぁ!」

 

『Boost!!』

 

籠手の部分にある宝玉から音声が発せられ、同時に一誠の体に力が湧き上がる。

 

赤龍帝の籠手、その効果が発揮された証拠である。

 

気合いの入る一誠だが、ライザーの方は嘆息するだけ。

 

「ミラ、やれ」

 

「はい、ライザー様」

 

ライザーが小猫と同じ位の小柄な女の子に命令を下す。

 

武道家が使う長い棍を取り出し、クルクルと器用に回した後、一誠へと構え。

 

ドスンと、鈍い音と共に少女の棍が一誠の腹部に突き刺さる。

 

衝撃により吹き飛ぶ一誠、次の瞬間には床と激突する──

 

「大丈夫か?」

 

──事はなく、吹き飛んだ一誠はいつの間にか回り込んでいたブロリーによって抱えられ、床との激突は避けられた。

 

「ガハッ!」

 

しかし、腹部に重い一撃を受けた一誠は、その痛みに悶え、苦しむ。

 

「イッセーさん!」

 

駆け付けるアーシアが一誠の腹部へ手を当てて神器を発動させる。

 

悪魔すら治療できるアーシアの癒やしの力により回復した一誠はゆっくりと起き上がる。

 

そして、目の前には。

 

「弱いな、お前」

 

此方を見下ろしているライザーの一言が、一誠の心を深く抉った。

 

「今お前が戦ったのは俺の兵士だ。俺の下僕の中では一番弱いが、少なくともおまえよりも実戦経験も悪魔としての質も上だ。ブーステッド・ギア? はっ」

 

ライザーは一誠の神器を鼻で笑い、足でコンコンと軽く小突く。

 

「確かにコイツは凶悪で最強無敵の神器の一つだ。やり方次第じゃ俺どころか神も魔王も倒せる。だがな、未だに魔王退治も神の消滅も成されたことはない。この意味が分かるか?」

 

にやけた口元を更に歪ませ、ライザーは嘲笑う。

 

 

「この神器が不完全であり、歴代の使い手も使いこなせない弱者ばかりだったってことだ! お前も例外じゃない! こういうとき、人間界ではなんと言ったかな? ……そうだ、宝の持ち腐れ、豚に真珠だ! フハハハハ! そう、豚なんだよ! え? リアスの兵士くん!」

 

愉快そうに一誠の頭をペチペチと叩くライザー。

 

 

……ギリッ

 

 

一誠から奥歯を激しく噛み締める音が響く。

 

悔しい。悔しいが、言い返せない。

 

何も考えずに突っ込み、挙げ句の果てに自分よりも小さな相手に手も足も出ないで吹き飛ばされて敗北したのだ。

 

不甲斐なさすぎる自分に、悔しさに涙を流す一誠。

 

そんな一誠を更に可笑しく、ライザーが笑う。

 

と、そんな時だった。

 

「……おい」

 

「あ?」

「お前、今、笑ったか?」

 

頭を叩いていたライザーの手を、ブロリーが腕ごと掴み取っていた。

 

今まで黙していたブロリーの突然の介入。無関係な人間の癖にこうもしつこく出てくるブロリーにライザーの表情は一変し、再び苛立ちの顔付きになる。

 

「……なぁ、お前はさっきからなんなんだ? そんなに死にたいのか?」

 

今までのような燃え盛るような怒りではなく、冷たく、凍えるような殺意がブロリーに突き刺さる。

 

だが、そんなライザーの殺気に当てられながらも、ブロリーの表情は変わることなく。

 

「なら、試してみるか?」

 

そう言って、立ち上がるブロリー。

 

ライザーよりも高身長で、見下し見上げる形となる二人。

 

それがライザーの怒りに拍車をかけ、遂に……。

 

「ふんっ!」

 

拳に炎を纏わせたライザーの一撃がブロリーの顔に直撃する。

 

静まり返る部室内。アーシアは一誠の隣で顔面蒼白となる一方で、ライザーの下僕悪魔達はニヤニヤと笑みを浮かべている。

 

 幾ら何でもやり過ぎだと、今まで黙していたグレイフィアも一歩前に出たようとした……が。

 

「っ!?」

 

痛みと熱に悶える処か、微動だにしないブロリーにライザーは驚きに目を見開き、ブロリーと距離を開ける。

 

今のはそれなりの力で放った一撃だ。マトモな人間なら顔面が大火傷になり、大騒ぎになる程だ。

 

それをマトモに受け、あろう事か全く利いていないブロリーに、流石のライザーも焦りを見せる。

 

「こんなものか?」

 

「──っ! 図に乗るなよ人間がぁぁっ!」

 

ブロリーのらしくない挑発に激昂するライザー。

 

彼の怒りに合わせて周囲の下僕悪魔達も戦闘態勢に入る。

 

対するブロリーもゴキリと拳を鳴らし、髪をザワザワと逆立たせる。

 

「ライザー様、ブロリー様、あまり同じ事を何度も言わせないで下さい。私はこんな争いを見るために御両家から遣わされたのではないのですよ?」

 

三度目となる触発の空気を、再びグレイフィアが散らす。

 

今までとは段違いの威圧感を出す彼女に、ライザーは苦々しく思いながら怒りを静める。

 

ライザーの下僕悪魔達も主と共に矛を収める。

 

だが、ブロリーだけは納得していないのか、グレイフィアの元へと歩み寄り。

 

「ブロリー様、何か?」

 

「───する」

 

「え?」

 

「俺も、レーティングゲームに参加する。リアスの駒として」

 

「「「っ!?」」」

 

ブロリーのその一言が部室内に響きわたり、その場にいる全員を驚愕させる。

 

特にリアスは予想だにしていなかったのか、ブロリーの案に驚き、言葉を失っている。

 

そして、それはグレイフィアも同じで即刻思い直させようとブロリーの前に歩み出る。

 

「なりません。アナタはリアス様の下僕でもなければ悪魔ですらありません。無関係な人間にレーティングゲームへの参加を認める訳には……」

 

「非公式……良くは分からないが要するに普通の試合とは違うんだろ? だったら、少しは違った内容にもできるんじゃないか?」

 

ブロリーの屁理屈に唸るグレイフィア。

 

この手の人間は下手にルールを強いらせると後でとんでもないやり方で介入してくる。

 

悪魔として長年生きてきた自身の直感が、彼女の頭にそう告げている。

 

返答に困るグレイフィア。すると、ライザーが意外にもブロリーの参加を承諾した。

 

「私は構いませんよ。此方は15名、対してリアスの方は王を含めてたったの6名。これでは勝負は目に見えている」

 

 ──それに、その男だけは潰しておかないと。

 

と、本音を隠しつつ、余裕ぶった態度でブロリーの態度を承認するライザーだが。

 

「待ちなさい。そんなの認めないわよ」

 

リアスはブロリーの参加に激しく反対した。

 

無関係な人間を巻き込んではグレモリー家の名誉に関わる。

 

仮にこれで勝てたとしても、リアスは強力な助っ人のお陰で勝てたと他の上級悪魔に陰口を叩かれるのは目に見えている。

 

自分だけではなく、誇りに思っている家族に要らぬ迷惑を掛ける事がリアスには我慢できなかった。

 

故に、リアスはブロリーの参戦を断固として反対するが。

 

「リアスよ。自分の感情で勝てる程、レーティングゲームは甘くはないぞ。下僕の力を引き出すのは勿論、使える物はなんだって使うという意気込みがなければ即敗北だ」

 

これまでの挑発的な物言いとは違い、戒めるようなライザーの口振りにリアスは押し黙る。

 

渋々と納得した様子のリアスにグレイフィアも頷き。

 

「……それでは、ブロリー様の参加の事も含めて、ご両家に確認してまいりますので、レーティングゲームは十日後に行います。尚、ブロリー様は参加する際、何らかの制限があるかもしれないのでそのつもりで」

 

 決戦は十日後、リアスの将来を決める戦いの日取りが決まった事でこの場は解散となる。

 

もうここには用はないと、そう言わんばかりにライザーは足下に魔法陣を展開させる。

 

その際に、視線だけは一誠に向け。

 

「リアスに恥をかかせるなよ、リアスの兵士。お前の一撃がリアスの一撃なんだからよ」

 

その言葉を最後に、ライザーは下僕悪魔達を従え、魔方陣の光の中へと消えていき。

 

残されたリアスの下僕悪魔達、特に一誠は悔しそうな面持ちで拳を握り締めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせしました。ごめんなさい。遅くなりまして」

 

「……いや、気にするな。こっちが勝手に待っていただけだ」

 

あの後、悪魔の仕事は中止となり、リアスは朱乃と共に旧校舎の奥へ引きこもってしまう。

 

十日後のレーティングゲームの戦術を視野に入れて、作戦会議を行っていたらしい。

 

 時刻は既に深夜、あと数分で日付が変わる時間帯だ。

 

ひとまずの話し合いも終わった事でリアスから解放された朱乃は、待っていたブロリーと共に帰宅する事となった。

 

「それで、リアスはやっぱり……」

 

「えぇ、カンカンに怒ってましたよ」

 

朱乃から告げられるリアスの状態に、ブロリーはガクリと肩を下ろす。

 

勝手にレーティングゲームに参加すると言いだすブロリーに、リアスはそれはそれはお冠だった。

 

眷属でもない無関係な輩が参加するというのだ。これを聞いた身内の悪魔達はこぞってリアスに陰口を叩く事だろう。

 

やはり早まった事をしたか、ブロリーはレーティングゲームに参加する事を内心で後悔し始めていると。

 

「……こんな事言うとリアスに怒られるから言わないけど、実は私、ホッとしてるんです。ブロリーさんが参加すると言ってくれて」

 

「?」

 

「私の手、見て下さい」

 

そう言って差し出した朱乃の両手を訝しげに見つめると、彼女の手は小さく震えていた。

 

「……正直言って、私、怖いんです。十日後のレーティングゲームでリアスの未来が決まってしまう。そう考えると震えが止まらないんです」

 

十日後のレーティングゲームはリアスとその下僕悪魔の初陣で、同時に主の将来が掛かった一戦。

 

自分達の戦いでリアスの未来が決まるこの一戦で、彼等に掛かる重圧(プレッシャー)は相当なものだろう。

 

特に朱乃はリアスと共に過ごした時間が最も長い悪魔だ。

 

そんな彼女の重圧に知ってか知らずか、ブロリーは朱乃の手を握り。

 

「なら、俺が守ろう」

 

「……え?」

 

「お前は俺の命を拾い、リアスは俺に居場所をくれた。だから、今度は俺がおまえ達を守る」

 

それは、他愛ない口約束。

 

無責任で、且つ無鉄砲なブロリーの言葉。

 

……だが、朱乃の手の震えは止まっていた。

 

「……ふふ、それじゃあ、ブロリーさん。みんなを守って下さいね」

 

「任せろ」

 

ブロリーの淡白な一言。だが朱乃にはその一言がとても頼もしく、そして暖かに聞こえた。

 

「ウフフ、それじゃあ、楽しみにしていますね。ブロリーさん」

 

いつもの優しい笑顔を取り戻した朱乃は、ブロリーに一礼すると、自宅に向かって歩き出す。

 

ここまで来れば朱乃の家はすぐそこだ。送る必要もないだろうと思い、ブロリーも自宅のマンションに向かおうと足を進める。

 

その時。

 

「………ん?」

 

暗闇の向こうから誰か近付いてくる。

 

───人のモノではない。

 

 

暗闇から輪郭が露わになっていく人影にブロリーは拳を握り締めて臨戦態勢へと移る。

 

やがて月の明かりがブロリーと人影を照らし出し。

 

「……お前は」

 

目の前の人物に、ブロリーは目を見開き、驚きを露わにした。

 

暗闇から月の光によって姿を顕わにするソレ。

 

ソレは以前、街中で見かけた少女だった。

 

闇色に染まる黒いワンピース。

 

身に纏う服と同じく、髪も長い黒髪で瞳もやはり黒だった。

 

 

少女はブロリーに近付きにつれてその表情を柔らかくし。

 

「会いたかった。静寂の根源よ」

 

満面の笑みを浮かべてブロリーに抱きつくのだった。

 

 

 

 




いつからブロリー×朱乃だと錯覚していた?

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