てんこうぐらし!~SCHOOL LIVE! IF STORY~   作:委員長@バカ犬

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プロローグの最後にて、二日前と記入していましたが、すみません。一週間に修正しました。


第1話「いへん」

あの日…あいつらが現れたあの日。

弥涼の通う如月(きさらぎ)学園高等部は一学期の期末テストのため、午前中に学校が終わっていた。

勉強には多少自信がある。テストもその殆どは答えられた。

問題なく終わりそうだと安堵し、溜め息をもらす。

 

「すーずちゃん!一緒に帰ろ♪」

 

そんな弥涼に後ろから声をかけてくる少女がいた。弥涼のことを「すずちゃん」と呼ぶのは一人しかいない。

秋風水奈(あきかぜ みな)。同じ二年二組の友人だ。保育園の頃から付き合いのある幼なじみでもある。

茶色い髪を短く切りそろえ、まだ幼さの残る顔立ちをしている。それでも弥涼より背は高いのだが…。

 

「水奈か、ええよ。今日は剣道部も休みやしな…」

 

テスト期間中は部活動も休みだ。弥涼は剣道部の部長も勤めていた。

かといって修行を怠りたくもないので、親に買って貰った木刀を袋に詰め、鞄と共に担ぐ。

 

「ほな行こかー」

 

「うん!」

 

そう言って二人とも教室から出て行く。

 

まだ昼にもなっておらず、少しずつ近づく夏の兆しとでも言うべきか…学校の外は日差しが少し強い気がした。

ふと思い立ってスマホを立ち上げてみる。

 

「あー…また迷惑メールが着とるなぁ…」

 

「そろそろアドレス変えたほうがいいと思うなー」

 

「なんかそういうのってめんどいやん?後でメアド変更のメールを全員に送らなアカンし…」

 

メールの通知の多さからそう呟いたが、メールアプリを立ち上げた時、その表情が凍り付く。

 

「なんやこれ……全部オカンからや…」

 

「えっ?何か悪いことでもしたの…?」

 

「んなことするわけないやん…えっと…」

 

メールの履歴は全て今日の午前中だった。

 

 

 

未読メール

 

10:14 オカン 早く帰ってきて

10:17 オカン 早く帰ってきて

10:23 オカン 早く帰ってきて

10:25 オカン 逃げて

10:27 オカン 逃げて

10:35 オカン (無題)

10:51 オカン けにてしここてそてそなてめてなてき

 

 

 

 

何が起きているのか、すぐに理解することは出来なかった。

メールは全て本文には何も書かれていなかった。いや、最後のメールだけは…意味不明な文字の羅列があった。

弥涼は母親との二人暮らしで、父親は早くに事故で亡くなっていた。

今まで女手一つで育ててくれた。そんな母親からの、何かの危険を知らせるメール。

最後は一体何を意味していたのだろう。

 

続けて電話の着信履歴も見る。

これも複数回母親からかかってきていた。

数分おきに、絶え間なく…

こちらも10:50を最後に通知はなかった。

 

「オカン…?何があったんや…!?」

 

「やだ…怖いよ弥涼ちゃん…!!」

 

二人とも顔は真っ青だ。弥涼は急いで母親に電話をかける。

prrrrrrrr.......prrrrrrrr.......prrrrrrrr.......prrrrrrrr.......

 

……なかなか出ない

 

「何しとんねんオカン……はよ出んかい!!」

 

つい独り言が漏れる。すると、ようやく電話が繋がった。 

 

「…っ!もしもし!オカ……っ!!」

 

ガリッ!!ガリガリッッッ!!!!と耳をつんざくような音がスピーカーから響いてくる。まるで、何かをすり潰すような音だった。

そして、かすかに聞こえた。何かの呻き声。

 

「オカン?……オカンッッ!!オカンなんやろ!返事せんかいッッ!!」

 

何度もスマホに向かって叫ぶも、返事はない。最後にもう一度何かをすり潰すような音がした後、電話は切れてしまった。

 

「…すずちゃん…これって…」

 

「ごめん水奈…ウチ、急いで家に帰らなアカン!!悪いけど、警察と救急車呼んどってや!!」

 

「待って…!待ってよすずちゃん…!!」

 

走らずにはいられなかった。状況を理解することができない。受け入れたくない。理解したくない。

きっと母は無事だ。帰ったら「ドッキリでしたー♪」とか言ってくれるんだ…。

そんな叶うはずもない期待を根拠もなく浮かべながら弥涼は走る。

 

 

水奈もそれに続いた。何となく、一人でいたくなかったからだ。ここで別れたら、二度と弥涼と会えなくなってしまう気がしたから。だから走る。

剣道部部長の弥涼の足には到底追いつきやしないが、走った。

警察と救急車を呼ぶ暇なんてなかった。

ここで友達を見失いたくなかった。

 

二人は、巡ヶ丘市にある弥涼の自宅までひたすら走りつづけていった。




というわけで、弥涼の過去回想パート1でした。
原作に救いをもたせる反面、オリジナルは果てしなく救いのない展開となるかもしれません。
鬱展開でも覚悟していてください…


【挿絵表示】


水奈のイラストです。

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