姓はロロノア 名はリィナ   作:ぽんDAリング

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やっとウォーターセブン上陸です。


24・上陸 そして来客

さて、そろそろウォーターセブンに着く。遠目から見ても島中央にそびえる巨大な噴水は近くで見ると余計に目を引く。壮観だ。

 

島そのものが要塞のように強固な石造りであつらえており、その内側には幾つもの大型クレーンが稼動している。そして、至る所に煙を吐き出す煙突が見えることから造船とそれに関わる産業がこの島、ひいてはこの街の主目的とした成り立ちであるのは明白だろう。

 

一味の皆はその“産業都市”を目の当たりにして瞳を輝かせながら感嘆の息を吐いている。俺はココを初めて訪れる訳ではないが、『海列車』で訪れた以前とはまったく違う情景に心を躍らせている。

 

表の居住区の方へそのまま船を進めて行くと“ブルー(ステーション)”の案内標識が見えだ。『海列車』で来たならここで降りるが今は船なのでここに用は無い。

 

というか、船で来た場合はどこに着ければ良いんだろうか?本来ならば何処かに修理の為の停泊港があると思うんだが…とキョロキョロしていると小舟で釣りをしているオッサンから「裏町へ回れ」と注意を受ける。それぞれ感謝の意を伝え指し示された裏町の方へと進路を取る。

 

ゆっくりと周遊するつもりで裏町側まで進むと、こちらが海賊船だと気付いた海辺のカフェ店員から「船はこの先の岬に泊めると良い」との助言を貰い、再び感謝の言葉を述べつつそちらへ回る。

 

この島の住民は基本的に海賊を恐怖の対象として見ない。それは、この島自体が『造船所』として成り立っているからに他ならないからだ。

 

この島を束ねる“ガレーラカンパニー”が『世界政府御用達』の造船会社という肩書きが有るから、というのも一因するが世界政府の権力を傘に着ているからという訳ではない。

 

彼らは船大工。一人一人が職人としての腕に誇りを持って職務をまっとうしているに過ぎない。

 

相手が世界政府の要人だろうが、大海賊の船長だとしても彼らにとっては『客』なのだ。それこそ五老星や四皇が来ようと、立場や肩書きなど不要とし船の新造・修理の依頼があるのならばそれを受けるだろう。

 

なればこそ、島の住人にとっては海賊であろうが歓迎すべき客でしかないのだ。

だから、俺たち海賊を見ても恐れず逆に歓迎する。まぁ、こちらとしてはその方が助かる。

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

教えてもらった岬は居住区側から見て真裏にあり、周りには建物の無い岩場で荒地になっている。周囲に他の船、特に海賊船が居ない事を確認してゴーイングメリー号を停泊準備へと移る。

 

ここなら見通しも良いから海から接近する船も陸から接近する者も発見しやすい。

 

と、安心して停泊させる作業を行っている際にゾロが帆を畳んだのだが、帆のロープを引いた拍子にマストが折れるハプニングに皆同じく肝を冷やした。

 

既にここまでガタがきているなんて思ってもいなかった。これは早急に修理が必要だと皆で認識を改め、上陸後の行動予定をナミさん主導で決めてもらう。

 

まず、この島での目的は船の修理だということを一番に説明し、その為の手順をナミさんが一つづつ確認してゆく。

 

先ずは、シフト(ステーション)で出会ったココロさんに紹介状を貰っているので“アイスバーグ”という人物を訪ねるそうだ。その人を頼り船の修理を手配する算段らしい。

 

それに伴いもう一つ。空島で貢物として捧げられた金銀財宝の換金だ。船の修理が如何ほどの金額になるかは判らないが万全に修理を頼むのならば多いに越したことはない。

 

マストの件もあったので、多めに換金しゴーイングメリー号の修理費の足しにする事に反対意見など出るはずも無かった。

 

ルフィさん、ウソップさん、サンジさん、ナミさんの四人で換金所へ行くそうだ。勿論、男三人は大量の宝物運びと護衛を兼ねている。

 

換金が済み、無事に修理依頼が終わればサンジさん主導で食料品の買い出しに移行するらしい。大量に買い込むだろうからルフィさんとウソップさんは荷物持ち要員だ。

 

チョッパーくんは医療品の補充や医学書の購入がしたいそうで、ロビンさんはそれに付き合うらしい。

 

能力があった頃のリィナ()が居た時には使用頻度の少なかった医療品も、改めて検分すると随分消費していたらしい。今後を考えるならばそれなりに買い溜めておかなくてはならないのだろう。

 

あと、俺とゾロは船の警護ってことで留守番だ。ナミさん曰く、ゾロは一人だと昼寝するだろうからと俺がお目付役を任された。

 

船の停泊場所は見通しが良いので俺が周辺の警戒さえしていればゾロは昼寝でも鍛錬でも好きにしてて良いだろうと快く了承した。

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

ザザー…ン、ザパー…ンと岬に打ち付けられた波が潮騒を奏でる中で俺とゾロは互いに木刀を持ち向かい合っている。

 

何気に決闘のワンシーンみたいだなぁ、と朧気な記憶の欠片を脳裏に浮かべ微笑む。

 

せっかく二人での留守番なんだから船上では出来ない稽古をやろう、と言うゾロに快く賛同し岬に降りての剣の打ち合いだ。

 

男の身体になって初めての大地。木板張りの船上とは違って、踏み込んだ時の弾力はほぼ無い。その分脚力は直接作用する。

 

思い切り踏み込んだ時に伝わる衝撃で甲板を踏み抜く心配も無い。なので、この身体(・・・・)になってから初めて全力を出せるかも、と言うのは俺にとっても嬉しい事だ。

 

「…準備は良いか?」

 

「勿論。」

 

ゾロは片手で木刀を構え、俺は木刀を両手で握り構える。先ずは全力の半分くらいで脚を踏み出してゾロへ接近する。

 

初手は上段からの振り下ろし。カンッと木刀のぶつかる快音が鳴り防がれた事を示す。

 

弾かれた木刀の剣先は左側へと流された。瞬時に木刀から右手を離して体を左へ回転させ、遠心力を用いて横凪ぎの一閃へと切り替える。

 

しかし、ゾロは回転中に一瞬目を離した俺の隙を突いて更に肉薄していた。遠心力の付いた木刀を下から掬い上げ軌道を逸らし、同時に俺の右足を払って体勢を崩す。

 

ゾロは掬い上げた木刀を切り返し、袈裟斬りで俺の空いた胴へと木刀を打ち込んでくる。

 

俺は崩された体勢の中、辛うじて地に着いていた左足で後方へ跳び間一髪で難を逃れる事に成功した。

 

一旦、間合いを取り一息吐く。実際に相対したのはほんの数瞬。凡人には何が起こったのか見えて無いだろう

 

今のは危なかった。まだ全力は出していないが一本取られかけた。普通の剣士ならあの横凪ぎの一閃は一歩引いて避けるか、木刀で防ぐかだろう。ゾロの力量を見誤っていた。そもそも、ゾロを『普通の剣士』と考えた俺が悪い。

 

「次、七割で行くね。」

 

「…なんなら全力で来いよ。」

 

ゾロの獰猛な笑みに応えるように俺も頬を引き上げる。傍から見ると互いに極悪人の顔なんだろうな、なんて思いつつ右脚で大地を踏み抜いた。

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

「だっー!チクショーッ!!」

 

地面に汗だくで大の字になっているゾロが叫んでいる。あれから何度打ち合っただろう。全力の八割くらいまではほぼ互角の千日手状態での打ち合いだった。

 

互いに一手読み違えたら負けって状態で勝ったり負けたりを繰り返しながら、全力の八割五分を出し始めてからは俺に軍配が上がり続けた。

 

因みに、“六式”も“覇気”も使わずにだ。ゾロは“鉄塊” しか覚えてないからね。俺も自力だけでどれだけやれるか試したかったし。

その結果、ゾロは悔しくて叫んでるんだけど。

 

凄く意地の悪い言い方になるけど、『普通の人間(ゾロ)』と『転生者()』の差ってやつだと思う。更に『悪魔の実の能力者』ってなるとそれはチートだ。

 

そんなのが俺の他に六人も居るという。いや、あの女も含めたら七人か…俺を入れたら八人。シールと話した時点での状況だったからもしかしたらまだ増えてる可能性もあるのか?

 

そんな事を考え出したら切りが無い、と頭を左右に振って思考を切り替えると街の方からこちらへ向かってくる人影が遠目に確認出来た。

 

ナミさんたちが戻って来たのかとも思ったが雰囲気が違う。自身の感を信じ“見聞色の覇気”を展開すると、感知したのはやはり見知らぬ男達のようだ。

 

武器を持った奴らが七人。こちらを伺いながら足音をたてないようにゆっくりと忍んでいる。

 

「いや、忍べてないから。バッチリ見えてるし。」

 

純粋に呆れてしまった俺は小声で突っ込む。それに気付いたゾロは首だけを動かして俺の目線を追う。

 

「…なんだあいつら?」

 

「多分、強盗かな。俺がやって良い?」

 

「……任せた。俺ぁ、疲れたから寝る。」

 

寝る、と言い終えると地面に大の字のまま寝息をたて始めるゾロを尻目に、ふぅ…と一息吐く。因みに、これは汗だくのまま横たわるゾロに対してのため息だ。

 

俺は全力を出していない。ましてや、“六式”と“覇気”を使わずに薄らと汗をかく程度にしか動いて居ない。それがゾロにとっては悔しいんだろう事は分かる。

 

ゾロの事だから先程の打ち合いを忘れない内に、夢の中でも俺と剣を合わせて睡眠学習的な修行をしてるんだろうな、と修行バカっぷりに対してのため息だ。

 

「…んじゃ、さっさとやっちゃいますか。」

 

こっちにコソコソと歩み寄る強盗(馬鹿共)の相手をしてやるとしよう。

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

「で、遺言はそれで良い?」

 

俺は先程の強盗七人組に“剃”で近付き、“覇王色の覇気”で気絶させてから縄で簀巻きにしてゴーイングメリー号の手摺りに括り、縁から外側に吊してある。

 

俺は地面から吊された強盗共を見上げる形になっている。そして、目を覚ました命知らずの強盗共に対話を試みたところだ。

 

こいつらは口々に罵詈雑言を吐くか、意味不明な事を叫ぶか、かなり上から目線の言葉しか出さないから少しイラッとする。

 

終いには「俺達はあの(・・)フランキー一家だぞ!俺達に手を出せばアニキが黙ってねぇぞ!!」と他力本願な事を言い出すし。困った馬鹿共だ。

 

とりあえずコイツらの言う事をまとめると、賞金首のゾロとルフィさん、ロビンさん目当てって事。俺とゾロを倒した後、船内で待ち伏せつつ戻って来た一味全員を一網打尽してボロ儲けって寸法らしい。

 

自称・賞金稼ぎ兼解体屋だと言っているのでゴーイングメリー号も解体して使える部分は売り払う予定だったのだろう。

 

俺が留守を守っている状況で、大切な家族(仲間)と大事な船がそんな末路を辿るなんて許容される訳が無いだろう。

 

「ねぇ、オマエらさ。俺たちを殺るつもりで来たんだよね?だったら、殺られる覚悟も決めてるはずだよね?なのにグダグダとつまんない事ばっかり。

……でさ、その虚勢が遺言で良いのかって聞いてるの。わかる?

オマエラがどのフランキー一家か知ったこっちゃ無いんだよ。そのアニキって奴が何者かなんて関係ないの。降り掛かる火の粉は払う。火の粉が大きいか小さいかなんて関係ないでしょ?

大体、賞金稼ぎを自称してるんだから返り討ちに遭ったら自分たちの実力不足って事を理解しないと。

それを上の奴にチクって報復させるぞって脅し文句立ててさ。恥ずかしく無いの?オマエラの言動が一家の品格を下げてるって分からない?

『わざわざ下っ端の尻拭いをする情けないアニキが居る一家ですぅ。』って自分たちで吹聴してるのと一緒だよね。『俺たちアニキの足手まといなんですぅ。アニキが居ないと何も出来ない下っ端なんですぅ。』って大声張ってる様なもんだよ?それで良いの?

『俺たちは一家の名に恥じない漢に成るぞ!』って気概は無いの?『アニキに錦の旗持たせてやりてぇ!!』って大望も無いの?一家の名(看板)掲げる(守る)モノであって威光を振りかざす為の(守ってくれる)モノじゃ無いよ?

俺はオマエラの事もそのアニキの事も良く知ってる訳じゃない。オマエラ一家がこれまで何を成して、これから何を成そうとするのかも知らない。だけど、何も考えず居る事だけは辞めなきゃ。責任も覚悟もアニキに押し付けるだけじゃホントに役立たずの足手まといで終わるだけだよ?

………それを踏まえてもう一度聞くけど、虚勢が遺言でホントに良いの?」

 

ほんの少しだが言いたいは言った。これでさっきみたいに吠え出すんなら一厘の慈悲も無く瞬時に物理的に息の根を止めてやるつもりだ。

 

…いや待てよ。それは逆に慈悲に満ちている気がする。ここは生まれてきた事を後悔する程に嬲る方が良いのかもしれない。

 

何せコイツらはゾロの命を狙ったんだ。それくらいな方が『慈悲は無い』と大手を振れるはずだ。

 

 




読んでいただきありがとうございます。

仕事、資格、免許、そして引っ越しとバタバタしてますが、もっと早く投稿出来るようにしたいです。

相も変わらず亀進行ですが完結まで行けるよう努力します。

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