姓はロロノア 名はリィナ   作:ぽんDAリング

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ふと、気付けば前回の投稿が6月半ばだった。2ヶ月半程経過していた事にビックリです。


20・前途多難

意識だけはハッキリしているというのに身体が全く反応せず動こうとしても出来ない。地中へ生き埋めにさられたらこんな感覚なのだろうと、意味不明な事を感じつつ少しばかり落ち着きを取り戻していた。

 

そんな折、自身の身体が溶けてゆく様な、消えてゆく様な何とも言え無い感覚に襲われた。

 

先程の声、意識と離別した身体や今この身を襲う不可思議な感覚。今度は何が起こるというのか。身体は動かないものの警戒だけは怠らない様に外へ向ける感覚を研ぎ澄ます。

 

と、同時に先程の状況とは一変して一陣の風が頬を撫でる。背には誰かの温もりを、自身から見て下方から聞き覚えのある声が二つと威圧感。

 

一体、これはどんな状況だ?

 

深まる私の困惑を無視して二つの声の主は気配を消した。私の背にある温もりだけは依然として残ったまま。

 

数秒か、はたまた数分も過ぎ去ってしまったかもしれないが静寂が占める中、何やら爆発音らしき音が聞こえ、微かに大気が揺れる。ソレが合図だったかの如く急に意識と身体が繋ぎ合い反射的に身動ぐ。

 

やっと、やっとだ。僅かにだが身体が動いた。待ち焦がれた瞬間が訪れたのだと目蓋を開こうとして思わず呆れてしまう。

 

どこに『目蓋を開こう』と考えてから目蓋を開く人間が居るというのだ、と。

本来ならば意識せずとも脳が起動したなら反射的に目蓋は開くのだから。

 

それだけ現状が異様なのだと今更認識する。なので、この後私に投げ掛けられる言葉の異様さに素早く気付けたと言えるだろう。

 

目蓋を聞くと空の眩しさに思わず目を細めてしまったが、視界の中でぼやけて見えた顔は互いに知っている人物だ。私を妹として可愛がり、姉さんと呼べば嬉しそうに微笑み私を見てくれるロビンさん。

 

そのロビンさんの口から、ほとほと困惑し疲弊した声で『あなたは誰?』と発せられた言葉の意味を迅速に咀嚼し理解し即答する事が勿論出来……なかった。

 

私は瞬間的に思考を深めて言葉の意味を探るもロビンさんが私を認識していないという異様さに思わず素直な言葉で返していた。

 

私はリィナだよ、と。

 

私の返答に困惑し硬直するロビンさんを不思議に思いつつ、視線を自身の身体へと移し更なる異様さを目の当たりにする事となる。

 

若干、そう若干ではあるがナミさんやロビンさんには劣るものの大きさや形、張りと柔らかさはソコソコのモノだと自負している女性の象徴たる膨らみが萎んでいる…

 

なんということだろう。これではまな板ではないか…サンジさん、野外調理する時は是非私をお使い下さい。

 

等と呑気に現実逃避している場合では無い。

 

私には心強い悪魔の実の能力がある。萎んだ胸も能力で思うがままに調整可能だ。序でに、まるで生まれたての小鹿の様に力の入らない身体の変調も治そう。

 

思い至ったのならばその時点で即座に発動し終えている。私の能力は考えた時には既に実行し終えている便利な能力なのだ。

 

そう、その筈なのだが…全く変化が起きていない。今度はちゃんと想像し思い描く通りに能力を発動させる。だが、何も起きない。

 

これには流石の私も困惑し硬直してしまう。何故?どうして?という疑問ばかりが脳裏を埋め尽くす。

 

その間にロビンさんは我に返ったとばかりにハッと息を吐き出し、横抱きにしていた私の上半身を起こし挙げて背を支える。その動作に私も我に返り互いに顔を見合わせてしまう。

 

「あの、私が見る限りあなたは男の子だしリィナさんには見えないのだけど…冗談でそんなことを言っているのなら怒るわよ?」

 

先に口を開いたのはロビンさんだったが、またもやその言葉の意味が理解出来ずに動揺する事しか出来ない。

目線を自身の身体、手足へと泳がせつつ辛うじて微力ながら何とか手を動かして自身の身体を弄った。

 

「…え。……何、これ?ウソ、えっ?…………あっ!」

 

付いてる。股の間に付いている。ここ数年忘れていた棒の感覚が今はある。

そうだ。ロロノア・リィナとして、女性として生きた二年間ですっかり喪失していた思考。

 

元々、俺は男だったじゃないか…

 

そう意識すれば後は早かった。順応した、と言うよりは元に戻ったと言う方が正しいのだろう。

 

今まで身体が女性だったから意識までも女性に引っ張られていたのだ。今は身体が男に戻ったのだから意識は男へ引っ張られる。

 

しかし、これはどういう事だ?何故、今更男に戻った?

 

そこで一つ思い出す。自分の意識の中で話し掛けてきた『声』。一度状況が変化した際に聞き覚えのあった二つの声。その片方の声。あれは…

 

女性だった時の、ロロノア・リィナが女性の身体だった時の音声だ。

 

それらに気付いた瞬間から一つ一つのパズルのピースが組み合う様に、断片的な記憶の一つ一つが繋がっていく。

 

転生、俺、ロロノア・リィナ。…そして、あの女と憑依。

 

「…ロビンさん。俺の話を聞いて貰って良いですか?それから、ロビンさんが見た事を教えて下さい。」

 

先程から何も言わず、ただ俺の行動を見詰めていたロビンさんは俺の言葉に小さく頷く。

 

「聞かせてもらうわ。勿論、私からも話す。様子がおかしかったリィナさんから、詳細はあなたに話を聞く様にと言付かったもの。」

 

あの女、見た目はロロノア・リィナであるあの女がそんなことを言ったのか、との驚きで俺は目を見開くが直ぐに頭の中を整理して俺の話を始める。

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

特設ステージ前に取り残されたままの俺とロビンさんは会話の内容に頭痛を催しながら、それでも話を進めていく。すると、デービーバックファイトの三戦全てが終了した麦わら一味の六名がこちらへ向かって来ているのが見える。

 

遠目に見ても和やかで晴れた顔つきをした皆の足取りは軽く、結果は良好であると理解出来た。

 

だが、こちらの様相に気付いたルフィさんたちは一度足を止め、皆で顔を見合わせてから走り寄って来る。

 

 

「…誰だ、お前?リィナと青雉はどこ行ったんだ??」

 

俺は未だに上手く身体に力が入らない為、ロビンさんに身体を預ける様に座り込んでいるのだが、サンジさんから『羨ましい、代われ』と怒声を浴びる。

 

サンジさんだけで無く、仲間たちは様々な声をあげているが一つ一つに反応を示す余裕が無いのでルフィさんだけを見て応える。

 

「…始めから説明しますから、少し待って貰えますか?まだ身体が思うように動かなくて…」

 

肩を竦めて如何ともし難い状況を示すと、ルフィさんは腕を組み顔を傾けるお馴染みの仕草をとる。

 

それから俺は目を伏せて幾度目かの能力を行使する。勿論、体調を回復する為の能力をだ。本来ならば思い描く通りに快調するはずなのにその兆候は全く無い。

 

…やはり、能力が無くなっている?

 

今まで使っていた能力は『境界を操る能力』だった。その応用で『境界を操り万物と同化』することで移動、戦闘、治癒を可能としてきた。しかし、それが使えない。

 

どんな怪我や体調不良でも能力にて部分的に大気と同化し、健康な状態をイメージしながら自身の身体を再構成するとその通りに復元することが出来た。今はそれが出来ない。

 

以前と今。違うのは何か。

 

…と、思考の海に潜りかけるがルフィさんから少し離れた場所で騒動しているゾロとサンジさんの叫声を耳が捉えたので再び目を開けてロビンさんへ視線を移す。

 

「ロビンさん、俺が目を覚ます前の事をみんなに説明して貰って良いですか?…あと、ゾロとサンジさんは仕方ないので『ハナハナの能力』で黙らせて下さい。」

 

ロビンさんはゾロとサンジさんの扱いに少しだけ頬を引き攣らせつつ頷き、能力で二人の身体に無数の手を咲かせて口を塞ぎ、四肢を羽交い締めにして黙らせた。

 

「みんな、よく聞いて。まず、デービーバックファイト中にリィナさんに起こった事を説明するわ。」

 

ロビンさんの緊迫感を孕む雰囲気と言動に、ナミさんとウソップさんはただならぬ事態が発生していると理解し静かに頷く。ルフィさんとチョッパーくんは良く判って無さそうだが真剣な表情で説明を待っている。

 

ゾロとサンジさんは…無理矢理抑え付けられて尚、暴れているので鼻息が荒い。恐らく 少女版リィナに危機が迫っていると考えて落ち着かないのだろう。

 

ロビンさんは皆を見渡して大きく頷き、一度大きく息を吸い込んで言葉を紡ぐ。

 

「先ず、デービーバックファイトの三回戦が始まるまでは何も無かった。私はリィナさんとステージ上のソファーに座って話をしていたわ。」

 

説明が始まり、皆は静かにロビンさんの話に耳を傾ける。しかし、俺…リィナが何者かの襲撃を受け倒れた経緯を説いたところでゾロが一際激しく暴れ出す。

 

「っ?!…っぷぁ!!リィナは!!!リィナは無事なのか???!!!」

 

ロビンさんの説明が途中なのにも関わらず、ゾロは口を塞ぐ拘束を無理矢理解いて焦燥のまま問い質す。

 

そんなに心配して貰えるなんて妹冥利に尽きるなぁ…今は男だけど。

 

「リィナさんは無事よ。だから落ち着いて聞いてちょうだい。

…穿たれた胸の傷は心臓を貫通していたのだけれど、すぐに青雉が気転を利かせて能力で応急処置を施したから心肺機能は何とか正常に動いたわ。後は、意識が戻ったらリィナさんの能力で自分の傷を元に戻せれば大丈夫なはずだった…」

 

そこまでの説明を済ませて、ロビンさんが視線を落とし俺を見詰める。その意味を汲み、俺は頷く。

 

「…その後、リィナさんの意識は戻ったの。戻ってすぐに能力で傷を元に戻したのだけど…それは別人だった。

姿や能力そのものはリィナさんなのだけど、雰囲気や話し方が別人だったのよ。

青雉は直ぐそれに気付いて“お前は誰だ”と尋ねた。リィナさんの姿をした誰か。今は謎の人物と言っておくわね。

青雉の問いに謎の人物は“ドリフトの相棒”だと答えたわ。十中八九、転生者集団のリーダー。そして、海軍本部中将であるドリフトの事でしょうけど…

私はその時状況が飲み込め無くて、困惑のまま動けなかった。

それから、謎の人物が手を振るうと“この子”が気を失った状態で私の腕の中に突然現れたの。謎の人物は『後は“この子”に聞け』と言い残して青雉と共に何処かへ転移して居なくなったわ。

実を言うと、私自身何が起こったのか理解出来ない事の方が多いの…ごめんなさい。」

 

眉間に皺を寄せ苦しそうに歯噛みするロビンさんに皆の視線が集まる。皆一様に困惑を隠せない表情で言葉を出そうと口を動かしている。

 

「…では、次に補足、という形で続けますね。」

 

俺が口を開くと皆こちらへと視線を向ける。これから説明をする身としては一人一人の視線が痛い。

 

「先ず、ロロノア・リィナの事ですが…俺の説明が終わるまで良く聞いて下さい。

いいですか?説明途中での質問は受け付け兼ねます。出来れば両手で口を塞ぎ、覚悟を決めて聞いて頂きたいです。

よろしいですか?」

 

早く続けろ、と言わんばかりのキツイ視線を放ちつつ皆一様に肯くのを確認し、大きく息を一つ吐き口を開く。

 

「では、先ず一つ目。俺がロロノア・リィナです。」

 

簡潔に告げたのだが簡潔過ぎて伝わらなかったようで、皆は俯き拳を強く握り締めフルフルと小さく震えている。

 

あ、これ総ツッコミ受けるパターンだ…

 

「「「「「「舐めてんのかテメェはぁ??????!!!!!!」」」」」」

 

「いや、だから覚悟を決めてから聞いてって言ったじゃないですか。」

 

こうなる予測はしていたから事前に忠告したはずなのだが、回避は出来なかったようだ。うん、分かってた。

 

「…言いたい事はあるでしょうが後にして下さい。

続けて二つ目。本来、この世界に転生するべきだったのは俺です。これの詳しい内容も後程。

最後に三つ目。皆さんの知るロロノア・リィナの姿をした謎の女性は現在『敵』です。」

 

そこまで言ってそれぞれの顔を見渡す。やはり、俺の言葉を理解出来ないようで皆一様に首を傾げてうんうんと唸っている。

 

「皆が混乱するのも仕方ないわ。私も良く理解出来てないんですもの。」

 

ロビンさんは左手を額に添えて俯き小さく呟く。皆が合流するまでの僅かな時間に幾つか説明をしていたのだが、内容は現実味の無いもので常識からは外れているのだから無理もない。

 

「…話を続けてくれ。」

 

一拍置いてゾロが静かに言った。じっ、と俺を見詰める瞳には決意の色が宿っている。

 

真偽は兎も角、話を聞かなければ判断の仕様も無いのだ。だからこそ、全ては話を聞いてから自身で考え決断すると言う決意。

 

ゾロのそれに呼応してか困惑から浮き足立っていた皆も真剣な表情で俺の言葉を待つ。

 

俺も先程までの、若干真剣味の足りない音質を払拭する為に一度咳払いをして精神的に居住まいを正す。

 

…が、先程からどうにも落ち着かない気持ちを先ず解消したいと思いゾロへと視線を移す。

 

「説明を続ける前に一つだけ。

ゾロはリィナとの出会いを覚えていると思いますが、夜の森を彷徨い酒場に訪れた時は『俺』だったんですよ。意識としては前世の記憶が欠落した状態の俺だった訳です。身体が女になっているなんて気付いてもいなかった。それに気付いたのは風呂に入った時でした。それで…」

 

そこでふと気付き言葉を止める。それからワザとらしく大きく息を吐き出して目を瞑った。

 

違うと思ったからだ。

 

目を開らいてから改めてゾロを見詰める。それ後は自然と口が動いていた。ゾロに、ロロノア・リィナの様な丁寧な話し方ではなく『俺』の言葉で伝えたいと思ったから。

 

「ガンジお爺ちゃんと話した後、一人になって意識が遠退いて…夢を見た。多分、前世の俺が死んだ後に神様ってヤツと話した時の夢。夢と言うより記憶なんだろうけど、あまり内容は覚えてないから夢ってことで良い。その夢から覚めてゾロが名前を呼んでくれた…」

 

ロロノア・リィナとしての意識で生きた二年。そのまま今の俺に残留した記憶。どこか他人事で、でも間違いなく俺自身のモノ。

 

「シールって転生者が言ってた事だけど、俺以外の転生者って皆この世界の母親から生まれてるんだって。前世の記憶が残ってて新たな人生って違和感はあるだろうけど、『名前』を呼ばれて初めて『生まれた』事を実感するんだと思う。それは転生者でもそうじゃなくても同じはずだ。」

 

ロロノア・リィナであり、ロロノア・リィナではない俺の最初の我が侭。

 

「最初の出会いで姿形が女の子だったから仕方ないのかもしれない。あの時ゾロが意識してその名前を呼んだ訳じゃないのは分かってる。だけど、俺はあの時『リィナ』って名付けてもらってこの世界に生まれたんだ。だからさ、俺を呼んでくれよ。ちゃんとゾロの家族として俺の名前を呼んでくれよ。」

 

見た目も全然違うし、性別も女じゃない。それでも、ゾロに名前を貰って生きた二年程の記憶は残っている。

 

ロロノア・リィナとしてゾロへ向ける親愛も尊敬も憧憬も愛情も俺の中にそのまま残っている。

 

「姿形が変わっていてもあの夜に出会って家族になったのは俺なんだ。見た目だけのあの女じゃない。ロロノア・リィナは俺なんだ。」

 

ゾロは今俺を『視て』いない。ロビンさんの能力による拘束に抗っているのは『ここには居ないロロノア・リィナ()』への想いからだ。ここには居ない姿形だけのあの女の安否を心配するその姿が俺の心を締め付ける。それが何とも悔しい。

 

話し終えても見詰め合ったままでいると、ゾロが先に目線を外し小さく溜め息を漏らしロビンさんへ拘束を解く様に求めた。

 

ロビンさんはどうしたものかと戸惑って俺を見てくるので能力の解除を促す為に首を縦に振る。

 

拘束を解かれたゾロは胡坐をかいてから頭をワシャワシャと撫で回し大きく息を吸い込んだ。

 

「っばっっかじゃねぇのかオメェは!居なくなった妹の心配してんのに見ず知らずの小僧が『俺がロロノア・リィナです』なんて言ってんのを信じられるかボケッ!!」

 

開口一番に怒鳴り声で信じられるかボケと言われてしまえば、いっそ清々しい思いで呆気に取られてしまう。

 

まぁ、これがゾロだよな。なんて、自然と笑みがこぼれるのも仕方ないのかもしれない。

 

信じてもらえないのは辛いがそれはそれとして、ちゃんと説明を続ければゾロも認めてくれる可能性がある。そう考えているとゾロは立ち上がって言葉を続けた。

 

「でもよ、お前がリィナだってのは伝わった。ありゃぁ、リィナ以外の何物でも無い。妹が弟になったってのは…ちと複雑だが、無事で良かった。」

 

言いながら俺の傍まで来ると腰を落として俺と目線の高さを合わせる。その顔は意地悪く口角を上げ、そしてのそっと右手伸ばして俺の頭を乱暴に撫でた。

 

「な、リィナ。」

 

その言葉で俺は鼻の奥がツンと痛くなった。耐えられる訳が無い。瞬間、視界がぼやけてしまう。ただ、名を呼ばれただけ。それでも、やっと俺を視てくれたのだ。嬉しいものは嬉しい。

 

ゾロの心境としては理解は出来ないが納得は出来たという感じだろう。あとは続きの説明で理解させてしまえばいいのだ。それで俺は再びゾロの家族として生きる事が出来る。()だとか()だとかの区分は関係無く、家族として。

 

「まぁ、あんなゾロへの執着はリィナ以外に有り得ないし。もはや執念って言うより怨念って感じよね?」

 

「だな。確かに!」

 

なんてナミさんとウソップさんが茶化すもんだから皆が笑っている。だけど、それはとても心地良いと感じる。

 

「怨念って…酷くない?」

 

なんて恨み言を言いはするが自身の顔が緩んでいる自覚はある。続きの説明に移ろうと思うのだが、そんなものがどうでも良くなる程俺の心は晴れた。

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

あれから数日。今俺たちは船上にて思い思いの時間を過ごしている。

 

あの日、一頻り皆から弄られて笑い合った事で緊迫感や警戒感も薄れた為かその後の話は思いの外すんなり受け入れられた。

 

俺の推測も含めた内容ではあったが一通り説明が終わると各々が何かしら口を開きかけて疑問を飲み込んだ様だった。

 

ルフィさんだけは素直に「つまり、もう肉は出せないのか?」と欲に忠実な問いを発してナミさんにどつかれていたが。

 

俺としても有難い事ではあった。状況の把握が不完全な状態で疑問を投げ掛けられても答えに窮するからだ。もう少し色々と深く掘り下げて考える時間が貰えたのは正直助かる。

 

皆が黙した意味は俺への配慮だと裏付けるかのように不必要に俺には話し掛けてこない。決してハブられている訳では無い。そう思いたい。

 

思いたいが、ジャヤと空島に続き短期間でこうも問題ばかり起こす輩を快く思わないのは当然だろう。

 

一番年下のクセにタメ口きいたり生意気な事も言った気がする。能力も失い男になった俺に価値があるのだろうか。

 

皆から嫌われたかもしれない。鬱だ…死のう。

 

 

若干、現実逃避気味になっているのには理由がある。今朝購入したニュース・クーの一面記事を読み、悩ましい出来事が起こっている事で余計に頭を痛めているからだ。考える事を止めたがる脳に休息を与える為、仕方なく俺は横になるのだった。

 

《ロロノア・リィナ大佐 海軍復帰!》

《涙の会見 その訳とは?》

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。

今回は後半に全く説明出来ていないですが、次回が説明回になります。感の良い方は先の展開を読めているのではないでしょうか。

今回からあらすじを変えるつもりでしたが、次話投稿後の方がいいのかなと思ったので今回までそのままにしときます。

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