姓はロロノア 名はリィナ   作:ぽんDAリング

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久しぶりの投稿です。言い訳はあとがきで…


17・デービーバックファイト

『さぁ!キバガエル海賊団とのゲームが終了したばかりだが本日二度目のゲームだぁ!!ヤロー共、準備は良いかぁ!!!』

 

けたたましく鳴り響く大砲やスピーカーから流れるアナウンス、それに沸き立つフォクシー海賊団の面々。一部の人員を屋台や売り子に割いているにも関わらず相当な数だ。

 

それは端から見ればお祭り。しかし、これは海賊同士の“仲間”と“誇り”を賭けた正真正銘の『勝負』なのだ。

 

だが、主催者側として盛り上がりを見せるフォクシー海賊団の船員達と、マイペースに屋台の食べ物を頬張り、お酒を飲み始める麦わら海賊団。

 

私とロビンさん、クザンさんはステージ上に用意されたソファーに座り、提供された焼きそばやフランクフルトなどの軽食を頂いている。

両海賊団共に飲み食いしつつ楽しそうに活気づくそれらを眺めて考える事は同じ事だろう。

 

((思っていたのと違う…))

 

勝負というものは、もっと殺伐としていて緊張や殺気の漂う息の詰まる雰囲気を醸し出すモノだと思うのだが…

 

『さぁ、これからフォクシー海賊団が誇る、我らのアイドル ポルチェちゃんから誓いの宣言が始まるよ~!』

 

司会進行を務める宴会隊長 イトミミズという人の何とも間の抜けたアナウンスが響き、喧騒が成りを潜めしんと静まる。

 

「さーて、野郎共!いやん、良く聴いてね!!

“敗戦における三ヶ条”を宣誓する前に、今回の『特別ルール』を説明するわよ!!

まず一つ、この件は海軍本部 大将 青雉の観察の元行われる!だけど、ゲームには関与はしない確約を得てるからいつも通り(・・・・・)存分に力を発揮して頂戴!」

 

ステージ上に居座るクザンさんは歓声に応える様に軽く右手を挙げて振っている。

 

「そしてもう一つの特別ルールは、スリーコインゲームとは別の特別賞品としてこの二人が贈呈されてるわよぅ!!

僅か八歳にして懸賞金7900万ベリーが掛けられたミステリアスな雰囲気のお姉さま!“考古学者”ニコ・ロビン!!!」

 

引き攣った苦笑いで軽く手を挙げて歓声に応えているが、その背後には『不愉快』を具現化した様なオーラが漂っている。

 

「更にもう一人!17歳にして海軍本部 大佐にまで上り詰めた超実力派海兵!世界政府さえ恐れる能力(ちから)を持ち、退役後に兄を追って海賊へ転身し、5億ベリーが掛けられる程の超大物!“偶像(アイドル)”リィナこと、ロロノア・リィナ!!!」

 

私も片手を挙げ笑顔を魅せようと試みるが、頬がひくついているのが自覚出来る。

 

「オーソドックスルールの変更は無いから一勝毎に相手側から一人船員を奪っていき、先ず二勝した方が自動的にニコ・ロビンの獲得が出来るわよ!

三戦全勝すればロロノア・リィナも獲得!!

つまり、全勝したらスリーコインゲームで三人、特別賞品で二人!合計五人の獲得よぅ!!」

 

『うぉぉおおおぅ!!!』

 

フォクシー海賊団の面々が喜色満面といった風に雄叫びを挙げているのだが、その声色に違和感を受ける。

 

まだゲームは始まってすらいないのにも関わらず、『ゲームに対する奮起』の声よりも『既に全勝した結果』を喜ぶ者達が多く存在しているのだ。

 

やっぱり“美人の航海士”が良い。

 

それと“マスコットの船医”だろう。

 

あと“一人”か。

 

まぁ、これ以上“男”は要らねぇけどな。

 

けど、“剣士”はあの海賊狩りだぞ。

 

あの“船長”の懸賞額も大したもんだ。

 

似た会話を交わす者達の輪がいくつもあり、そのどれもがナミさんとチョッパーくん、あと一人を誰にするのかという話題で勝手に盛り上がっている。

 

サンジさんとウソップさんが泣きそうになる盛り上がり方はやめてあげて…

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

その後、ルフィさんとフォクシーは“敗戦における三ヶ条”の宣誓を交わし、三枚のコインを海に投げ入れて開戦となった。

 

一度、それぞれの陣地に分かれて作戦会議となるのだが、私とロビンさんは『賞品』なのでステージ上から出る事が許されていない。

 

それもこれも全てクザンさんのせいだと言いたいが、フォクシーへゲームを持ち掛ける場に同行しなかった私の責任だ。

 

クザンさんがフォクシーに提示した要求は大まかに三つ。

 

一つ目は、フォクシー海賊団と麦わら海賊団でデービーバックファイトを行うこと。

端的に言えば、強制的に麦わら海賊団とゲームしろということ。

 

二つ目は、今ゲームにおいては世界政府公認で大将 青雉に一任されている事の承諾。

つまり、クザンさんの意見を取り入れた『特別ルール』を設けろということ。

 

三つ目は、『賞品』であるロロノア・リィナ、ニコ・ロビン両名と共にステージ上から観戦すること。

これは、妨害・逃亡阻止、監視の名目でクザンさんの目と能力の届く位置に私とロビンさんを留まらせる為だろう。

 

フォクシーは特に考える事すらせずに二つ返事で了承したそうだが、あれは自分達の勝利を疑っていない証拠なのだろう。

 

私とロビンさんは賞品として献上された事に異議を唱えたが、それを見越して敢えて事後報告という形を取ったクザンさんに軍配が上がった。

 

兎も角、ステージ上から動けない私とロビンさんを除く麦わら海賊団は六人。三つの勝負を六人で割り当てなければいけない。

 

オーソドックスルールによる『3コインゲーム』の誓約は基本的に三つ。

 

“出場者は三ゲームで七人以下”

 

“一人につき出場は一回限り”

 

“一度決めた出場者の変更は不可”である。

 

そしてゲームは三つ。

 

・出場者三名にてドーナツレース。

 

・出場者三名にてグロッキーリング。

 

・出場者一名にてコンバット。

 

数の多いフォクシー海賊団とは違い、麦わら海賊団は六人しか居ない。

 

コンバットは一名なので良いとして、ドーナツレースかグロッキーリングはどちらかが二名の出場となってしまう。

 

ルール上、二名の出場でも問題は無いのだが数の優位性が失われてしまう。

 

私とロビンさんはステージから出てはいけないので作戦立案と人員配置はナミさんに任せるしかない。

 

あの六人の中で的確に状況を把握して指示出来るのがナミさんしかいないのは今後の課題だと懸念し、少し頭が痛むのだった。

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

初戦であるドーナツレースは空き樽を加工して小型の舟を作って使用するようで、フォクシー海賊団から各チームに三つづつ配布された。

 

麦わらチームの選出はドーナツレースにナミ、ウソップ、チョッパーの三名。

 

不在である船大工の代わりはウソップが務めて、四苦八苦しながらレース用の小舟を作り上げた。

 

レース開始と共にフォクシー側からの妨害に遭いつつも、ウソップが空島で譲り受けた大量の噴風貝(ジェットダイアル)を駆使して機動しチョッパーの『重量強化(ヘビーポイント)』にてオールで力強く舵を切り潜り抜けた。

ナミは華麗に航海術を披露しロングサンゴ礁の“海流の迷路”を容易く突破する。

 

ロングサンゴ礁を抜けたその先、ロング(リング)ではチョッパーの『頭脳強化(ブレーンポイント)』による診断(スコープ)で渦の弱い箇所を読み、助言を受けたナミが渦流を巧みに航海し、ウソップが再び噴風貝(ジェットダイアル)を総動員し何とか切り抜ける。

 

三人で上手く連携し、それぞれの持ち味を存分に発揮することでフォクシーチームとの差を大きく広げ二歩も三歩もリードしていた。

 

一方、フォクシーチームはスタート直後の味方の支援も奮わず大きく距離を離されつつも、ポルチェ率いるカジキの魚人 カポーティとホシザメ モンダの合体泳法“魚々人泳法(ツーフィッシュエンジン)”にてロングサンゴ礁の“海流の迷路”とロング渦を難なく突破する。

 

それでも差は縮まる事無く麦わらチーム優勢でゲームは進行する。

 

フォクシーの妨害“ウソ指示大作戦”や“ウソゴール大作戦”もナミは容易く看破し本物のゴールも目前だ。

 

フォクシーチームも魚々人泳法(ツーフィッシュエンジン)にて追いかけるが開きすぎた距離を追い抜くのは最早不可能である。

 

デービーバックファイト一回戦のドーナツレースは麦わらチームの勝利であると麦わら海賊団の面々は確信する。

 

…しかし、勝利したのはフォクシーチームだった。フォクシーの能力『ノロマ光子』による妨害を受けゴール直前でフォクシーチームが麦わらチームを追い抜き先にゴールしたのだった。

 

ゴールの直前まで圧倒的な差をつけての勝利を確信していただけに、敗北した事実が大きな落胆を呼び込む結果になってしまう。

なぜなら、勝利したフォクシーはルールに則り麦わら海賊団から一名指名し奪い取る事が出来るからだ。

 

先立って指名されたのは“船医”トニートニー・チョッパーだった。いやだ、と泣き叫ぶチョッパーをゾロが一喝し場を治め、敵味方共に感嘆の声を上げる。

 

既に一敗し敗北が許されない状況での第二戦目 グロッキーリングではゾロ・サンジが麦わらチームとして選出。

 

フォクシーチームはハンバーグ・ピクルス・ビッグパンの『グロッキーモンスターズ』と呼ばれるグロッキーリングにて無敗を誇る三者の登場によりいっそうの盛り上がりを見せる。

 

そして、運命の第二戦となるホイッスルが鳴る。

 

第二ゲーム開始直後、サンジが先手必勝と“剃”にて魚巨人(ウオータン)ビッグパンへと襲い掛かるが当のビッグパンは反応出来ずに顎をかち挙げる過激な一撃を喰らい膝を着く。

そのまま地に伏す様に上体が沈みかけるがすかさずゾロの無刀流“龍巻き”にてその倒れ落ち来る上体を跳ね返した。

 

ビッグパンの頭頂部に付けた球印がそのままゴールリングへと突き刺さり、呆然とコートを眺めたまま動けないフォクシー海賊団を尻目に第二回戦グロッキーリングは静かに幕を閉じた。

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

「しかし、こりゃあ…ガキのお遊びだな。」

 

新世界という億超えの賞金首が蔓延る海ですら畏怖される海軍大将 クザンからすれば眼前の騒動は正に『児戯』として映るだろう。

 

正直に当人の心境を語るならば、眼前の雑魚共をまとめて氷漬けにし本部に連行する事が本来の職務であり、そう出来る実力を有していながら静観に務める事は退屈でならないといった感じだ。

 

サンジの“剃”、ゾロの技量を見遣り感嘆の息を漏らすがそれでも自分には到底敵わない程に実力の差があることは看破出来た。それでもあと五年…いや、三年程新世界で揉まれたならばいい勝負になりそうだと心に小さな火を灯す。

 

クザンの目的の一つである『麦わら海賊団の見極め』に上方修正を加えた。

 

それはさて置き、現在の状況…元々の発端は五老星がロロノア・リィナを猫可愛がりした事であることにクザンは影で幾度となく溜め息を漏らしてきた。

本人達は上手く隠せていると思っているようだが、世界政府の最高権力者である5人の老人たちが己の立場を忘れ、一人の若い女海兵に入れ込んでいるというのは上層部の面々にはバレている。

 

そんな五老星が内密に大将三人へと指令を出したのだ。当然、指令内容は『ロロノア・リィナの身柄確保』だった。

先陣を買って出たのは“赤犬”サカズキ。当人は厳つい顔付きでいかにもイラつきを顕わにしてはいたが内心はお気に入りであるリィナの身柄確保任務に小躍りしていたのは誰にも悟らせなかった。

 

その裏でドリフト中将が動き五老星を言葉巧みに丸め込み任務内容を『麦わら海賊団の調査・見極め』及び『ロロノア・リィナの安全確認』へと変更。調査の名目上、一人での動向に長けるクザンに一任されることになった。

 

細かい内容はリィナに説明した通り、ドリフト中将の策略(シナリオ)通りに麦わら一味と接触し、見極め、リィナの身柄を任せようと判断し今に至る訳だ。

 

思考の海を漂いながらもその眼はゲームの進行を見守っていたのだが、当分は座ったままだという状況に少しだけ気を緩めると待ってましたと言わんばかりに眠気を催してしまい、ふと大きな欠伸が出てしまう。

 

「ふあぁ~あ…」

 

グロッキーリングにて圧勝した麦わら一味にチョッパーが戻り、安堵の表情で仲間を見詰めるリィナとロビンを一瞥し再び一息漏らす。

 

第三回戦の始まりまでは暫し間が空くようだ。ならば、それまで少しばかり永い瞬きをしていても問題無いだろう。そんな軽い気持ちで重さを増してくる目蓋を閉じる。

 

それから数秒か、はたまた数分か…風斬り音が耳の届いた直後、ドサリとナニかの倒れる音で異変を感知した。

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

「ニコ・ロビン!俺が止血するからお前は能力で直接心臓マッサージしろ!!」

 

青雉の声で我に返り私はリィナさんの容態を確認する。

 

何が起こったのか理解するのに数瞬を要してしまった。しかし、このままでは確実にリィナさんが死んでしまう(・・・・・・)ことは明らかだった。

 

何かに穿たれた胸からは止め処なく血が流れ出てリィナさんの衣服を紅く染め上げていく。

 

青雉は躊躇せずリィナさんの衣服を破り胸元を開くと同時に傷口に手を添えて能力を使い1cm程の傷口を氷で穴を塞いだ。

 

背中も同様に服を破り直に手を添えて能力を行使する。これで応急的に心臓に開いた穴も塞ぐことが出来たらしい。

 

次に私がリィナさんの胸元に手を添えて能力を使い、心臓を包むように左右の手を咲かせ心臓マッサージを実行する。

 

体内に対して能力を使った事など無かったが問題なく発現し小さく安心する。

 

青雉は私の能力が有効に働いた事を確認しすぐに人工呼吸に取り掛かる。程なくリィナさんの身体がビクンと痙攣し、咳き込んだ後自発呼吸を再開したことで張り詰めた緊張が解ける。短く安堵の息を吐き額の汗を拭った。

 

「…よし、息は吹き返した。あとはリィナが目覚めてから自分の能力で治療すりゃいいだろ。」

 

「助かったわ、青雉。ありがとう。…でも、一体誰が、何処から?!」

 

「島内の連中じゃねぇのは確かだ。海上…には何も確認出来ねぇな。」

 

青雉と共にステージ上から海上を見渡すが見える限りでは海に船などは無い。

フォクシー一味の誰かがこちらに銃口を向けたのなら、リィナさんならば覇気で察知出来るハズ。もしかすると青雉も察知するだろう。

つまり、リィナさんの覇気の範囲外からの銃撃で、尚且つ肉眼では見えない長距離からの狙撃である可能性が高いという事。…しかし、普通に考えればいくら狙撃手の腕が良くても銃の性能的に不可能だろう。

 

「詳しくは分からねぇが何らかの能力者って線が濃厚だろうな。」

 

「…えぇ。」

 

現在デービーバックファイト第三回戦が開始された直後なので誰もステージに目を向けていないのが幸いした。観衆の眼前で襲撃があれば混乱を招くので負傷者の治療や保護、現場や犯人の検証などが難しくなる。まだ皆はリィナさんの襲撃を知らないので大事にはなっていない。

ついでに、青雉の能力で応急処置が間に合ったことは僥倖だった。私だけではきっとリィナさんは助からなかった。

 

もし、再び襲撃があっても警戒した状態である青雉がいるなら防げるだろう。そう思うとこの男が傍に居てくれることは大変心強いと思う。

 

まだ完全に安心出来る状態では無いけれど、リィナさんの目が覚めれば能力で傷や衣服も元に戻して自身の防御に専念してもらえる。それが一番安全で安心だと言える。

 

私がリィナさんを守る、と言える程の力が無い事に大きな悔しさを感じながら未だ目を覚まさない妹分の髪を優しく撫でる。

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。

仕事が忙しいのは3月いっぱいだと思っていたのですが伸びに伸びてまだ少し忙しい状態です。(言い訳乙)

今話は中途半端な所で切りました。次回で少し物語が動く予定にしています。しかし、次回がいつになるか未定です。出来るだけ早く投稿出来るようにしたいと思っています。

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