関西の龍×狩人   作:1R1分1秒KO

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5ヶ月以上もかかってようやく書き終えました…その上平均文字数に届きませんでした。解せぬ…


第8話 トリックタワー攻略2

 ゴンの勝利後、次はクラピカが前に出る。

「げへへ……次は俺の番だな」

 囚人の方からそう声が聞こえ、正体が見えてきた。龍司を彷彿させるような筋骨隆々の大男。顔は生々しい傷跡がいくつもあり100人中99人の人間がそれを見た場合、第一印象は「余程ヤバイことをやらかした危険人物」と評価すると思われる男。それがクラピカの相手だ。

「貴様が私の相手か」

 だがそれに動じるほどクラピカは凡人ではない。クラピカは100人中99人の人間ではない。むしろ一人の側に所属する。何一つとして問題はなかった。

 

「勝負あったの。ワシは寝る」

 龍司はもはや見るまでもない。と言わんばかりに眠りについた。その理由はクラピカとあの男の実力を見切っていた。あの男ではクラピカには勝てない。それどころか一般人にも負けるだろう。つまり見かけだけのハッタリ男ということだ。龍司は神室町や蒼天堀で鍛えた相馬眼ならぬ相人眼を持っており、林等の人物を郷龍会に引き込んでいる。もっとも龍司の最大の宿敵は人を見る目がないのはご愛嬌というやつである。

 

「……ジ……! リュージ!」

 それからしばらく時間が経ち、龍司が起きるとゴンが目の前に映った。

「ゴン、なんやねん? もう終わったんかいな?」

「いいや。まだ試合があるよ」

「クラピカは負けたんか?」

「勝ったよ。ついでにレオリオも頭脳戦で勝って今のところ全勝だよ。でも向こうが『次の試合、デスマッチでこっちが負けたら賭けられる時間全てをあげる。ただし勝ったら時間制限の半分貰う』って条件を出してきたから続けることにしたんだ」

「ほなら次はあの坊主か。それなら心配あらへんな」

 龍司がキルアの方へ向くとキルアが気づき、互いに笑った。

 

「リュージ、キルアのこと信頼しているんだね」

「当たり前や。ボール取りゲームの時であの坊主は会長はんが手抜いとったのを分かっとった。あれは中々出来る芸当やない。あの年でなくともそれが出来る言うんは相当な実力が必要や。余程の相手でもない限りキルアが負けることはあらへん」

 そして向こうの相手がフードを外し、前に出てくる。その相手はクラピカと戦った男にも勝るとも劣らない大男だが何よりも違うのはドス黒い雰囲気を醸し出していた。

「「!!」」

 レオリオだけでなくクラピカがその顔を見て驚愕していた。

「あいつは解体屋(バラシや)ジョネス……!?」

「あ? 解体屋?」

「146人の犠牲者を出したザバン市史上最悪の大量殺人犯だ。奴が解体屋と呼ばれる訳は奴の殺し方にある。奴の殺し方は自らの持つ驚異的な握力で人を50以上のパーツに解体して殺したことから由来されている」

 レオリオとクラピカが解説すると龍司が頷き、感心していた。

「ほう、中々こっちの奴らもやるやないか」

 龍司の台詞の根拠はかつて蒼天堀で行われていた闘技場、三途の川底にある。

 三途の川底は様々な犯罪者がシャバに出られることを願って戦わせるようにした場所だ。当然ジョネスのような輩も大勢いる。

 龍司も一度だけ出場してみたが偶々龍司と闘ったのがあまりにも低レベルすぎて飽きてしまい、その後三途の川底へ通うことはなかった。

「まさかこんなところにいるとは……キルア、棄権しても文句は言わねえ。棄権しろ」

「私も今回ばかりはレオリオに賛成だ。命あってのハンター試験だ」

 そんな二人の肩を叩いて、龍司は鼻で笑った。

 

「問題あらへん。少なくともあの程度で殺られる程あの坊主は弱くない」

「はぁ!? 何を言っているんだ!?」

「言葉通りや。キルアはあいつよりも強い。だから勝つ……それだけや」

「リュージ、私達の話を聞いていたのか!? 相手は解体屋ジョネスだぞ!?」

「クラピカ、強さに経歴は関係ない。ただ強いか弱いかそれだけや。相手がどないにバケモンだとしてもワレ自身がそれを上回っていたら勝つ。それだけや」

「じゃあリュージはジョネスよりもキルアが強いって言うのかよ!?」

「その通りや。他に理由はない」

「……ったく! もう知るか! クラピカ、ゴン、キルアが死にそうになったら俺達でジョネスを止めるぞ」

「そうだな。ここでキルアが死んだら先に進めなくなる可能性があるだけでなく胸糞悪い」

 二人はいつでも前の舞台へと駆けつけるように構えた。しかし次のゴンの言葉によってそれは解かれた。

 

「その心配はなさそうだよ?」

「ゴン、お前もか!」

「ジョネスを過小評価しすぎだ! 相手は解体屋ジョネス……我々とはレベルが違うんだ!」

 レオリオとクラピカがゴンに詰め寄り、捲したてる。それは当たり前だった。あのジョネスという男はそれほどまでに危険だと頭の中で理解していたからだ。

「リュージも言ってたじゃん。相手がどんな化け物でもそれ以上に強ければ勝てるって。ほら、もう決着がついたみたいだよ」

 ゴンがそういうとレオリオとクラピカは舞台の方へと振り向く。

 

「か、返せ……俺の心臓……」

 そこには虫の息の状態のジョネスがいた。そう、ジョネスはキルアに心臓を心臓を盗まれ、つまり綺麗に心臓だけを取り出されてしまった。あまりにも綺麗な切り口だったおかげでジョネスはわずかながらにもこうしてキルアに詰め寄ることができた。

 しかし流石に心臓がなくなったことによって力尽き、その場に倒れる。

「ほら返すよ。掌にだけどね」

 キルアは力尽きたジョネスの掌に心臓をおいて元の場所へと戻った。

「信じられん……あのジョネスを殺すとは。敵になったらと思うと恐ろしいものだ」

 クラピカはそう呟いた。

 

「ほならきっちり清算してもらおか」

「はい……」

 制限時間が増えた龍司達はホクホク顔になり、下へと進む。

 

 そして最下層の直前、龍司達は二つの道を選ぶことになった。

 一つ目は一人しか行けないが罠も何もないシンプルな道。もう一つは五人全員行けるが毒ガスが充満しており非常に危険な道。このどちらかを選ぶことになった。

 

「ふざけやがって……あの試験官頭沸いているんじゃねえのか!?」

 レオリオは八つ当たり気味に近くの壁を蹴る。危険な方の道の毒ガスの成分は身体に蓄積されれば二度と排出することはない成分だったからだ。つまり永遠に身体が動かなくなる可能性もあるということだ。一人が生き延びるかあるいは全滅するかのどちらかを選択しろといっているようなものだ。クラピカも同じような感情だった。実際この二人は相性がいいのかもしれない。

 

「(ま、俺はどっちでもいいんだけどさ。出来れば楽な方を選びたいよな)」

 その中で唯一キルアはのんびりとしていた。というのも彼はとある事情で毒が効かない体質なのだ。そのためどちらに行っても害はないも同然なのだ。

 

「……それだよ!! レオリオ!」

 しかしゴンはレオリオが壁を蹴飛ばしたことによって、攻略する方法を思いついたのだ。

「な、なんだゴン? 俺がどうしたってんだ?」

「レオリオ。今のもう一度やってみて」

「(……そういうことかいな。ひと昔のワシやったらとっくに思いついとったかもしれんが、老いたのぅ)」

 ゴンが思いついたことに龍司は理解した。ゴンが思いついた攻略法。

 それはここの壁を破壊して毒のない方の道と繋ぐという強引な方法だ。かつて龍司は東城会と近江連合の五分の盃を止める為にちまちま妨害工作を行うのでなく直接近江連合に乗り込んでクーデターを起こしたのだ。その上龍司の育ての親の郷田仁を誘拐したりと手段を選ばなかった。

 しかしその強引さは年を重ねる毎に連れてなくなり、過激な龍司を心酔していた二階堂に龍の抜け殻と言われ少しずつ龍司も老いてきたと感じるのも無理はなかった。

 そしてゴンがその攻略法を思いついたことで龍司が老いたと思えるようになったのだ。

 

「で、これがどうしたんだ?」

 レオリオが壁を蹴ると多少ではあるものの壁の破片が散らばった。

「レオリオ分からない? その壁は普通の壁と一緒なんだよ。でなきゃレオリオのキックで壁が崩れるわけないでしょ」

「……本当だ」

「幸いにもここには道具があるし、出来るんじゃ無いかな?」

「よし! やろう!」

 クラピカがそう言い、レオリオ、キルアもそれに頷いた。龍司はすでにツルハシを持っており壁を壊していた。

 

 壁を壊せ! 

 

「らぁっ!」

 龍司がツルハシを振るい、壁にヒビを作る。

「そこだ!」

 クラピカがそれに続き、スコップ(地方によってはシャベル)で壁に傷を付ける。

「うらぁっ!」

 今度は先ほどヒビを入れたところの周りにツルハシを振るい、そこにヒビを入れるとレオリオ、キルア、ゴンがその周りに衝撃を与える。

 そんな調子で何度も龍司は壁にヒビを入れ、他の全員がそのヒビから穴を掘る。その作業が繰り返し続き遂に終わりが見えた。

「これで……最後や!」

 龍司は渾身の力を込めツルハシを振るうとこれまでの手応えとは違い、壁に穴が開く感覚があった。否、実際に壁に穴が開いた。つまり一人でしか通れない道に開通したのだ。

「……やったぁっ!」

 ゴンはそれに喜び、壁の穴を広げて道を進む。

「よし、行こうぜ!」

「何でお前が仕切っている!」

 レオリオが仕切るとクラピカが怒る。しかしその顔は笑っていた。

「リュージのおっさんも行こうぜ」

「そやな……行こか」

 キルアにそう言われ、龍司もその後に続いた。

 

 龍司達第三次試験合格。


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