関西の龍×狩人 作:1R1分1秒KO
龍司はゴンとともに船に乗ってハンター試験会場へと向かっていた。
「(それにしてもこんな小っさい船で移動するとは思わんかったわ。どんだけ期待していないんや?それで満席になるどころかスカスカになるのも気に食わん。)」
龍司は志願者数百万人近くのうち合格できるのは10人以下という過酷な試験だとゴンから聞いていたが容易すぎた。この場にいるのは船員、龍司、ゴン、ハンモックで寝ている金髪の美少年、ニヤニヤしながらエロ本を読んでいる黒スーツのチンピラという状態だった。もちろん最初こそは数が多かったが荒すぎる船長の運転について行けず脱落してしまったのだ。
「(どうやら今のところ大丈夫そうやで…ミトはん。)」
龍司はくじら島の方向に向かってそう思っていた。先ほどまで憤怒していたとは言え安堵もしていた。そう…あれは数日前の事だ。
~数日前~
ゴンは眠り、ミトと龍司だけが起きていた。
「リュージさん…何でハンターになろうと決意したの?」
ミトがそう尋ねると龍司は決意した顔になった。
「ワシは元の場所へ帰りたいんや…せやけど帰る手立てがない。パスポートを作るにしても身分証が必要や。」
「その身分証がハンター資格証…って言いたいの?」
「せや。それさえあればワシは元の場所に帰れる。自分勝手なのはわかっとるが…ワシをハンター試験に行かせて貰えへんか!?」
龍司はミトに頭を下げ、長い数秒が経ちミトはため息を吐いた。
「わかったわ。だけどリュージさん…ゴンのことをお願いします。あの子には危険な思いをさせたくないんです。」
「任せとけや。ミトはん…」
~現実~
こんな出来事があり龍司はハンター試験を受ける資格を得ていた。もしここでゴンが脱落するようなら奮い立たせるのも自分の仕事だったがどうやら順調だったので安堵していたのだ。
「で…お前たちは何でハンターになりたいんだ?」
しばらくすると残った龍司を含めたハンター志願者達に船長がそう質問した。
最初に答えたのは龍司だった。
「ワシは身分を証明して故郷に戻る為や…故郷で待っとる人間がおる。ワシはそれに応えなあかんねや。」
「それはどんな人物だ?」
「ワシのたこ焼きを待っとるお客はんや。ワシは故郷でたこ焼き屋をやっていたんやけど事故で国に戻れんようになってもうた。せやからハンターの資格証が必要なんや。」
「…理由はわかったがたこ焼きってなんだ?」
船長は単なる好奇心で聞いたがそれがいけなかった…
「たこ焼きは粉もんの食べもんでな、たこ焼きの生地を一口サイズのボール状にして焼いて食う食べもんや。中にタコが入っていることからたこ焼きちゅー名前が付いたんや。」
龍司はそこまでいうとたこ焼きの鉄板を取り出した。何故そこまでアピールするのかというと龍司はたこ焼きが好きすぎてたこ焼きを語ると周りの空気を読まなくなる。
「これがたこ焼きに使われるプレートや。この穴の中に…」
その後10分間に及ぶ龍司のたこ焼き講座が続いた。龍司を除く全員がそれを聞いてたこ焼きを食べたくなったのは事実だが少しうんざりしたのも事実で船長は好奇心で深く追求するのをやめようと決意した。
その後ゴンと金髪の少年クラピカが理由をいって最後の1人となった。
「俺はレオリオ…俺がハンターになる理由は金よ。金さえあればなんでも買えるからなぁっ!」
チンピラことレオリオは高笑いを始めた…その行為は龍司にとある人物を思い出させていた。
「(あの笑い方といい、金に執着する部分といい…千石かいな。)」
かつて近江連合には近江四天王と呼ばれる人物がいた。東城会の五代目となってしまった元近江連合本部長の寺田、当時の近江連合本部長の高島、そして当時の近江連合の会長郷田仁の息子である龍司…そしてもう1人こそが今のレオリオに似ている千石という人物だった。
千石は金にものを言わせて自分のライバルを襲わせたり、二匹の虎を使って自分のライバルを殺そうとしたりした。最後にはそのライバルが大切にしている子供を人質にとっていたので龍司の気に障り殺された。
「(こいつはまだ間に合う…千石みたいにさせる訳にはあかん。)」
そんな理由から千石の評価は限りなく低く、レオリオに千石と同じ道を歩ませないために誘導するしかなかった。
「レオリオ、金で品性は買えないよ。」
クラピカがレオリオに指摘するとレオリオのこめかみに血筋が見えた。
「あぁっ!?てめえのクルタ族だかポルタ族だがなんだか知らねえが滅ぼしてやるよ!」
その言葉はクラピカの禁句だった。クラピカは静かに怒り始め、木刀を持った。
「取り消せ。その言葉。」
「取り消さねえよ、表へ出ろ!」
バシャッ!!
2人は文字通り冷水をかけられ、興奮していた様子はなくなる代わりに冷水をかけた人間は誰なのかを見た。
「頭冷やせや、アホが。」
そこには龍司がいた。かつての龍司だったら止めたりはしなかったが今は違う。それだけ丸くなり、大人しくなったというべきだろう。
「今表へ出たら確実に海に落とされる。そうなったら試験どころやない。やるんやったらハンター試験が始まってからにするんやな。」
「「う…」」
その言葉に何も言えなくなる2人は小さくなった。…レオリオは龍司の強面の顔を見てそうなったとも言えるがクラピカは違った。龍司の顔を見ても萎縮していないのだ。それに気づいた船長と龍司はクラピカの賞金首ハンターになる覚悟が出来ているということに気がついた。それでも小さくなっているのは龍司の言ったのは正論だからだ。
「それより…」
バンッ!
龍司が口を開くとドアが開き、そこには船員が顔を真っ青にしていた。
「船長大変だ!カッツォが流されちまった!!」
おそらくそのカッツォは船員だろうと判断すると龍司とゴンは即飛び出した。それに続いてクラピカとレオリオも飛び出した。
「うわぁぁぁっ!」
ガシッ!!
そのカッツォが海に面する寸前、ゴンが飛び出し、カッツォの足を掴んだ。
「ゴン!」
龍司は宙に浮いたゴンの両足を掴んで釣りの要領で引き上げた。
「危機一髪や…」
龍司は呟くとホッと一息ため息を吐いた。なおクラピカとレオリオはゴンに説教したのをきっかけに仲直りをしていた。その後、龍司一行は船長に気に入られ無条件でハンター試験会場の島まで船で移動し、一本杉を一直線に向かえというアドバイスまで貰ってそちらへと向かった。
その道を歩いて行くと老婆と仮面を被った男達が前に現れた。ちなみにだが道中ハンター試験会場行きのバスがあり、レオリオはそこで待とうとしたが「このバスに乗った奴らはハンター試験会場まで行けない」という噂を聞いて先に行った龍司達と合流したのは余談だ。
「ドキドキ二択クイ~~ズ!!」
「突然大声出すなや!ボケ!」
龍司は目の血走った老婆が突然大声を出したことに苛立ち、怒鳴り返した。龍司はかつて極道時代、関西の龍と呼ばれても関西という地方限定が嫌だからという理由からキレたり、近江連合を手っ取り早く乗っ取るためにクーデターを起こしたりと短気な性格なのだ。いくら丸くなったとはいえその本性は変わらない。
「これから一問だけクイズを出題する答える時間は5秒。もし間違えたら即失格。今年のハンター試験は諦めな。①か②で答えな。それ以外のあいまいな答えは失格だよ。」
「ちょっと待てよ。この4人で一問だけってことか?もしこいつが間違えても俺達まで失格ってことだろ?」
レオリオはクラピカを指してそれに疑問を尋ねた。
「あり得ないね。その逆の可能性が高くて泣きたくなるよ。」
クラピカは不機嫌そうにそう言ってレオリオに反論した。
「逆に言えばこの4人のうち1人が知っていれば答えられるってことだよ。」
「確かにの…1人でごちゃごちゃ考えるよりかマシかもしれん。」
「ちょっとどいてくれないか?あまり時間をかけるようなら俺が答えるぜ。婆さん…それでも構わないよな?」
別の男が割り込み、老婆に聞くと頷いた。
「うむ…では問題。お前の母親と恋人が悪党に捕まり1人しか助けられない。①母親②恋人…どちらを助ける?」
「①だ。恋人はまた探せばいいが母親は1人しかいねえ!」
「…よろしい。この先を通るがいい。」
この会話を聞いた龍司は答えを出した。
「(そういうことかいな…最初はあいつと同じ理由で①や思うたけどそれは答えやない。あのオバハンは通れと言っただけで正解とは言うてないわ。せやけど②でもない。…答えはない。強いて言うなら沈黙や。)」
クラピカも同じ解答にたどり着いたが激昂しているレオリオに教えようとすると老婆に止められた。
「では問題。お前の息子と娘が誘導された。①息子②娘…助けるとしたらどっち?」
レオリオはおちょくられていると思い、数える度に血管のキレる音が聞こえ、棒を持ってぶん回していた。
「終了~~っ!!」
そして老婆が大声を出して終了の宣言を出すとレオリオはその棒を思い切り降り下ろそうとしたが…まるで万力のような力で止められた。
「止めやレオリオ。」
その万力のような力は龍司だった。龍司の力は突進してくる巨大な虎を捕まえて投げられる程にはある。もっともこれは推測でしかない。その理由は龍司より力がない者ですらそれができるので龍司もできるという訳だ。早い話が腕相撲で世界チャンピオンを負かした相手をさらに負かしたから最強という理屈だ。どうでもいいが。
「なんで止める!?このババアの首を手土産にしてハンター協会に届けてやるんだ!」
レオリオは龍司に止められたことを激怒し、解こうともがくが解けない。それだけ龍司の力が異常なのだ。
「せっかくの合格を棒に振るつもりか?」
「何ぃ!?」
クラピカの一言によりレオリオは抵抗を止め、棒を落とし龍司はレオリオの腕を解放した。
「さっきの奴は道を通った…せやけどそれが正解だと言っていないんや。そこでワシは気づいた。ほんまは答えなんぞありゃしない。言うて見れば沈黙こそが答えや。」
「その通り。本当の道はこっちだよ。一本道で2時間もすれば頂上に着く。」
その言葉にレオリオは凍りつき解凍するまで数十秒かかると溶け始めた唇から言葉が出た。
「…すまない婆さん。」
「謝ることはないさ。お前みたいな奴に会いたくてこんなことをしているんだよ。頑張っていいハンターになりな。」
その言葉を聞いたレオリオは「ああ…」とだけ返した。
「う~ん…ダメだ!わかんないや!」
今頃になってゴンがそういって答えると龍司達は苦笑した。
「ゴン…もう試験は終わったで。」
「でもさ…本当に大切な人の2人のうち1人しか助けられなかったら…どうする?」
ゴンの言葉によって龍司達は硬直した。
「(…もうワシはそないな経験をしとる。せやからワシは二度とそないなことを起こさないようにする。…それがワシの答えかもしれんな。)」
龍司は口に出さず、2人は硬直したままで黙っていた。
「どっちを選んでも正解じゃないけどどちらか選ばなきゃいけない時はいつか来るかもしれないんだ。」
「「…」」
確かに…と言わんばかりに2人は黙っていた。それだけゴンの言うことも考えられたと言える。
パンパン!と龍司は手を鳴らし重い空気を少し軽くした。
「ほなこれで重い話は終わりや。試験会場まで行くで。」
龍司はそういって道を歩くと3人は慌てて龍司を追いかけた。
ちなみに龍司は公式でも桐生よりも純粋なパワーでは上とされています。もっとも強さは桐生の方が上ですが…
なので私のランク付けだと
純粋なパワーでは冴島>龍司>桐生
強さでは桐生≧冴島>龍司
の順番と考えています。峯については色々な説があるので書きません。