IS~自称策士は自重しない~   作:reizen

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#94 一組の違和感

 教室のレイアウトやそのほか小道具などの準備をオルコットに任せたら、思いの外……いや、結構予想通りな結果となった。貴族様のセンスは凄いよ! 流石現役貴族様!

 とまぁ、某大将のようなセリフを思いながら、俺は広報のために衣装を着て看板を持っていた。

 

「……凄い」

「流石は織斑君。すごく似合うよ」

「黒もいいけど、やっぱり白がよく似合う」

 

 と称されているもう一人の男は少し疲れている風なので、頭痛薬を渡した。

 

「急いでこれを飲みなさい。少しは楽になるわ」

「あ、ありがとう」

 

 織斑は普通に受け取る。……こうまで警戒心がないと逆に心配すらしてしまうから怖い。

 

「別にいいわよ。あなたが稼ぎ頭になるのだから。当然の処置」

「う、うん」

 

 しかし気のせいか、さっきから織斑の顔が赤い気がする。まさか当日になって疲労が溜まった状態だとは思わなかった。戦力にカウントする気ならちゃんと管理しておけよ、楯無の馬鹿。

 

「あーっ! ずるい!」

「ちょっと何よあの子!」

「抜け駆けしてんじゃないわよ!」

 

 周りが急に喚き始めるが、俺はもちろんそんなものはスルーだ。そもそも抜け駆けなら専用機持ち数人がいつもしているんだから今更だろう。

 それに優勝賞品が俺が最も欲しい物が含まれている以上、是非とも織斑には活躍してもらわないといけないのだ。

 

「というか、桂木はどこに行ったのよ!!」

 

 一人がそう叫ぶが、件の「桂木」とやらは席を外しているのだ。……見た目的にはな。

 そう。何を隠そう俺は今、女装をしている。以前はああ言ったのはあくまでも馬鹿を欺くためだ。

 

(しっかし………ばれないな)

 

 口止めをしておいたこともあるが、だとしてもおかしいだろう。仮にも17になる男が女装して、何で誰も俺を男だと気が付かないんだよ。

 まぁ、ボイスチェンジャーを使っているから余計にばれないんだろうけどさ。

 

「ところで織斑君、織斑先生は今どこにいるかわかる?」

「いや、流石にそれはわからねえよ。ところで、君は―――」

 

 織斑の言葉を途中から無視。せっかく磨き上げた化粧技術を使って少しはマシにしてやろうと思っていたのに。 すると入口から歓声が沸く。そこには山田先生がメイド服姿でいた。

 

「じゃあ、私はこれから宣伝に行ってくるわ。ラウラ」

「あ、ああ」

 

 ラウラの手を繋いでそこから退散。本音にあることを頼んで特注メイド服で胸が普段より大きく、さらにエロくなった山田先生とすれ違う。

 

「あれ、あなたは―――」

 

 平然とスルーして俺は放送室へと向かう。

 そこにはもうすぐ開始時間だからか虚さんがスタンバイしていた。

 

「あら、あなたは………誰ですか?」

「いや、この人は………」

 

 ———ちょっと待てよ

 

 今、俺は女だ。身体構造はともかく女装をしているのは間違いない。

 だが見た目は女同士で、レズプをしても合法ではないのか? 今ここで虚さんとあんなことやこんなことをしても女同士だからという理由でスルー………いや、流石に犯罪か。

 でも実際のところ、学園内のそういう事情は気になる。

 

「あなたは………」

「桂木悠()、16歳です」

「………………………はい?」

「虚さん、そろそろ時間ですよ」

 

 そう言うが、虚さんは俺を見てばかりで中々放送しなかった。

 なので近づいて顔の前で手を叩いて音を出すと、正気に戻ったようで、

 

「あ、すみません。……早速放送しますね」

 

 そう言って始動時間を知らせる放送を流す虚さん。何故か彼女は慌てた様子で放送を進行させていき、今度は俺たちの番になった。

 俺は某ドラゴン少女のBGMを流しながら宣伝を開始した。

 

「みんな、おっはよー! 今日一日の学園祭、みんなは賞品が賞品という事もあって盛り上がっているみたいだけど、そんなみんなに緊急ニュース! みんなももう知っていると思うけど、一年一組では織斑一夏が執事服で接客中。ベターな注文からちょっぴり大人な注文まで、様々な特別接客内容も取り揃えているんだ!」

「そ、それに今日は特別サービスという事で、なんと織斑一夏が二つのパターンで接客してくれることになっている。なんと黒執事服に白執事服のパターンが選べるのだ。どんな風なのかはクラスの前に展示されている服装を見てくれ」

「しかもそれだけじゃないんだよ! 今日はなんと、あの織斑先生がメイド服姿で接客してくれるんだ!」

 

 たぶん当の本人は逃げ出しているだろうが、そうはさせない。

 

「だけど彼女は恥ずかしがって表に出ないだろうから、ぜひみんなで言ってあげよう! 「メイド服はいつ着ますか?」って。大丈夫。仮にも彼女は世界最強の称号を未だに持っている女性だから、それくらいはできるはずだよ。というか逃げないよねぇ」

 

 隣でラウラが震えているが、些細な問題だし気にしない方向で。

 

「あ、あとここからは注意事項、織斑姉弟を含め、基本的にホールにいる人たちにはタッチはオッケーとなっています………が、過度なセクハラなどは当然逮捕、制裁、追放、経歴曝け出し待ったなしなので、特に訪れている重役方は注意してください。ただし男女関係なく織斑一夏にのみ「R-18」レベルに達しない程度のタッチは可能となっています」

「ただし制限時間はタッチを始めてから5秒のみとなっている。また、かなりの混雑も予想される。できるだけ早い退出を心がけてくれ」

「じゃあみんな、一年一組のご奉仕喫茶に是非遊びに来てくださいね! 待ってます!」

 

 そう言ってBGMの音量を絞り、マイクを切って道具を回収した。

 

「………あの、もしかして悠夜君ですか?」

「人違いです」

「絶好の宣伝場所をお教えしましょうか?」

「喜んで!」

 

 そう言うと虚さんは俺を外に連れ出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、一年一組に地獄が訪れていた。

 悠夜……もとい、悠子の宣伝によって大半の女生徒が一夏の白執事姿を―――そして千冬のメイド服姿を見に来たのである。

 その客の忙しさに当事者である一夏はへとへとになりつつあった。当然だが、事実上のクラス代表とも言われ始めている鷹月静寐をはじめ、他の女子たちがクレーム処理を行っている。

 そんな中、一夏は一夏で疲れを見せていた。

 

(な、何でこうも人が多いんだ? さっきから「白執事服萌え」とか聞こえてくるんだが……)

 

 さらに度重なる着替えなどが疲労を蓄積していき、いよいよ限界に達し始めていたのである。

 それを見ていた箒は、接客をしながらもさっき放送した女の顔を思い出す。未だに帰ってこないその女に一言申そうとしているが、帰ってこない以上どうしようもない。

 だがその本人も、ある種の試練に立たされていることに彼らは知らなかったのだ。

 

 

 

 

 数日前に遡る。

 ほとんど見放していて、さらに妹の想い人である織斑一夏から連絡があったのだ。簡単に言えば、「IS学園に来ないか」という連絡である。

 だがそれは意外にも、弾も数馬にも響いたのだ。弾は「女の園に行ける」、数馬は「悠夜と話せるし、さらに言えば抜け出して戦うこともできる」ということだ。

 

「……それってもう一枚ないのか?」

 

 数馬が電話に耳を近づけ、弾はそう聞くと一夏は

 

「悠夜に頼もうとしたんだけど、ちょっと話しにくくて……」

「一夏が成長してる……だと!?」

「ちょっと待て!!」

 

 弾の言葉に一夏は思わず突っ込む。

 

「何だよ! それじゃあまるで俺が成長しないみたいじゃないか!」

 

 弾が自分の電話をオンフックにしたため、数馬の耳に届く。そしてその言葉に数馬は言った。

 

「君の売りって、突っ込んで玉砕しようが構わず突っ込むことじゃなかったっけ?」

「いやいや、それはない」

「じゃあ、そう言うことにしておいてあげるよ」

 

 そんな会話があり、数馬は電話を切る。

 

「で、どうする?」

「………どうしようか?」

「弾が行ったら?」

「え!?」

 

 まさか数馬がそんなことを言うとは思わなかった。

 数馬はIS学園に行きたくはないとは思っているが、それを覆してでも会いたい人がIS学園にいるのだ。そんなチャンスを不意にするとはとても思えない。

 

「実はこの前、フレンドコードを交換したんだ」

 

 誇らしげにそう答える数馬。すると弾は羨ましそうにする。

 

「何だよそれ。俺だって交換してぇ!」

「だけど君、持ってないよね」

「チックショー!!」

 

 弾はそう言ってベッドを殴ると、ドアがいきなり開けられた。

 

「あれ? 蘭ちゃん、どうしたの?」

「ちょっとお兄! 騒がないでよ! ……それとさっき、一夏さんの声がしなかった?」

「別に。番号知ってたら会話ぐらいするでしょ」

 

 蘭は数馬を睨む。しかし数馬はそれで怯みはせず、その喧嘩を買うと言わんばかりに笑顔を作り続けた。

 

「ふん!」

 

 蘭は自分から部屋を出て行く。弾はホッと胸を撫でおろすが、数馬はそんな弾に言った。

 

「これで理由ができたね」

「…理由?」

「そう。IS学園に行って弾がその学校の実情を調べればいいんだよ」

 

 その言葉に弾は驚きを見せた。数馬は遠慮なく続けて言った。

 

「弾はIS学園に蘭を連れて行きたくないんだろ?」

「……ああ。あまりそういうことには関わってほしくない」

「だったら、そういうことはきっちりと調べたらいいと思うよ。それに幸い―――」

 

 数馬はそう言って自分のスマホを弾に見せる。

 

「これまでの色々なイベントは何らかの妨害を受けているようだし」

 

 そこには外部からIS学園で起こっている不審な騒ぎについて騒ぐ記事が載っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それもあって弾はこの学園に来てしまった。決して、最終的に自らの欲望に負けたとか、そういうわけではない。

 

「次の人! 後ろが詰まっているので来てください!」

「———あ、はい!」

 

 呼ばれた弾は慌てて学園に設けられている受付へと向かう。その受付で外部からの来場客は入場登録を済ますのだ。

 弾は空いている受付の所に行くと、学園祭の出し物の一つなのかメイド服を着ていた。

 

(……れ、レベルが高けぇ……)

 

 しかし弾のその思いはある意味仕方がない。何故ならそのメイド服を着た身長が高い生徒は通り過ぎるたびに女には「なんなの、あれは」と悲痛な叫びを、男からは「あの子、いいな」という感想を持たれる。男性重役からお茶に誘われたのは一度や二度ではないのだ。だが、相手は弾を見るや否や顔を青くする。

 

「あ、あの……これを……」

 

 緊張してしまい、その様子に気付かない弾はチケットを出す。

 

(こんなことなら、ペアチケットを買って来ればよかった)

 

 心の中でため息を吐く弾。その女生徒はチケットを受け取ってそれがダミーでないことを確認する。

 

「はい。確認が終わりました。楽しんできてくださいね」

「………あの!」

 

 弾は意を決した。それが玉砕だろうになることは百も承知だが、今後ここにいることはできないだろうと思ったのである。

 

「もし良かったら、俺と一緒に―――」

 

 だがそれを遮るかのように、連続で弾のスマホから着メロが鳴る。それが連続で鳴り続けたからか、弾は「すみません」とそのメイド服を着た女生徒に言ってスマホを取ると、そこにはまるで呪いでもかけるつもりなのか「死」という字が送信されていた。

 

(……悠夜、さん?)

 

 それがまさか知り合いからであり、自分がそこまで呪われるようなことをしてしまったのかと思ってしまう。

 するとその女生徒は弾の耳元に顔を近付けて言った。

 

「テメェもホモか」

「―――!?」

 

 さっきとはまるで180度回転させたかのような男声。弾の顔が段々と青くなる。

 

「……ま……まさか―――」

「予想通りですのことよ」

 

 どこぞのアンドロイドを彷彿させる語尾を使うその女生徒。だが後ろにはラウラが待機しており、先ほどからその女生徒の指示に従って送信していた。

 ラウラは「何か言いたければこっちで聞け。んでもって離れろ」と送り、それを受け取った弾は「で、では」と言ってから離れていった。

 

 もちろん、これが本当の試練というわけではない。その次だ。

 

「次の方、どうぞ」

 

 メイドとなった悠夜はボイスチェンジャーを使用してそう言うと、見覚えがある女性が彼の前で立ち止まる。

 

「………………」

「……………」

 

 その女性―――チェルシー・ブランケットは持っていた貴族などが持つバッグを落とす。一目見て、それが誰だかわかったからだ。

 そしてチェルシーはチケットを出すと同時にスマホを出し、悠夜はそのチケットを無言で確認する。

 

『あなたはホモなの?』

『この宇宙から抹消されたいの?』

 

 お互いが火花を散らし、無言で作業を終える。

 そしてチェルシーはしばらく移動して誰もいないところでうなだれた。

 

「女のプライドを完全に粉砕された気分だわ」

「世の中不公平すぎるんだよ、畜生」

 

 そこには既に先約があり、黒いバンダナをつけて赤に近い茶色の髪色をしていた男子が本気で泣いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まさかこんなところに知り合いが来るとは思わなかったな。おそらく織斑がチケットを渡したのか。そしてブランケットはオルコットだな。

 

(オルコットはともかく、織斑はもう少し考えろっての)

 

 立場をわきまえず平然と友人を作っている俺が言えた義理ではないが、と付け足しながらあの馬鹿を憐れむ。そういえばラウラは誰かを誘ったのだろうかと思ってそっちを向くと、ラウラは何故か震えていた。

 

「どうしたの、ラウラ?」

「―――何?」

 

 後ろ―――つまりカウンターの方に視線を移す。そこには次の人なのか、ラウラと同じ眼帯をしている女性が立っていた。年齢は推定10代後半から20代前半と思われる。顔立ちからして外国人だな。

 

「情報通り、まだ学園にいたとはな。ドイツの恥さらしが」

「………登場と同時に私の妹を罵倒するなんて、烏合の衆風情が随分なことを言うじゃない」

「にい……じゃない、姉様」

 

 空気を読んで俺を「姉」と呼ぶと、その女性は「何?」と言った。

 

「………貴様は何者だ?」

「名を聞くなら、まずあなたから名乗るのが礼儀じゃないかしら?」

「…そうだな。私は「悠子よ」―――ちょっと待て! 貴様から名乗るのか!?」

「だって私、あなたの名前とか興味ないもの」

 

 そう言うとその女性が俺を睨んでくる。

 

「……その前に、チケット出して」

「ああ。そうだな」

 

 その女性からチケットを受け取る。どうやらドイツ軍からの出向……ドイツ軍?

 俺は思わずラウラを見る。

 

「どうやらわかったようだな。ならばその女と―――」

「はい、次の人!」

「うぉおおい!!」

 

 チケットのチェックが終わったので次の人を呼ぶと、某マフィアに所属する暗殺部隊の作戦隊長みたいに叫ぶ女性。確か名前は「クラリッサ・ハルフォーフ」だったか。

 

「ちょっと待て! ここでそう言うか!?」

「すみません。後ろに人がいますのでお進みください!」

「マイペースか!」

「ええ、そうですが?」

 

 ………というか、そろそろ突っ込みがほしいな。

 仮にも男が女装していて、それで誰からも指摘がないのは色々と心配になる。

 

「くっ……まぁいい。ところで、桂木悠夜の所在を知っている? あの男と話がしたい?」

「彼ならおそらく執事として一年一組で接客をしているでしょう。大変混雑していると思われます」

「構わん。呼び出すまでだ」

 

 そう言ってハルフォーフさんは本人が目の前にいるとも知らずにそのまま校舎の方に向かっていく。

 

「……あの、姉様……」

「まぁ、古巣で何があったのかは聞かない……というか興味ないしね。力に縋るようで問題かもしれないけど、ルシフェリオンがあれば大抵のことは解決するし」

 

 そう言ってドヤ顔をすると、ラウラの冷や汗を流す。

 

「……彼女は悪人ではないんです。ですから……」

「わかった。オーバーキルはしないようにする」

「……しないように、ですか」

 

 ジト目をするラウラをあやしていると、今度は別の人間が来た。

 その人間は俺の姿を見るや否や、「いいものを見た」と言わんばかりに笑顔になった。さらに悪いことに、その付き添いで来たと思われるほか二人の内一人は悲壮感を出していて、もう一人は「やれやれ」と頭を抱えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、一年一組の教室ではパニックが起こっていた。

 

「………桂木悠夜がいない…だと!?」

「……はい」

 

 悠子…もとい、悠夜に「一年一組にいる」と聞かされてクラリッサは列に並ばずそのまま最前列でクレーム処理をしている生徒の一人に迫った。で、そこで真実を聞かされてしまう。

 この行列は悠夜によって形成されたようなもので、さらに日頃から生意気な態度をとる悠夜をここぞとばかりに虐めようと思っていた生徒が並んでいたのである。

 

「なぁあんだ。じゃあこの列に並んでいる意味がないじゃない」

「いや、まだよ! まだ織斑君がいるわ!」

 

 そんな会話がクラリッサの耳に届いたが、それよりも彼女が今会いたいのは悠夜だ。いないならこれ以上はこのクラスに用はない。そう言わんばかりに「悪かったな」と言ってクラリッサはその場を後にする。

 そして再び探し始めようとすると、黒い布を纏っている千冬と再会した。

 

「お久しぶりです、織斑教官。………ところで、その格好は?」

「色々あるんだ」

 

 少し重く感じた声に怯んだクラリッサは「そうですか」と引き気味に言うと、ちょうど千冬の姿を見かけた生徒が言った。

 

「千冬様!? メイド服をお召しになると聞きましたが本当なんですか!?」

「……メイド服?」

 

 何も知らないクラリッサは首をかしげる。

 千冬は反射的にクラリッサの腕をつかんで近くにある空き教室に入り、ドアを閉めた。

 

「お久しぶりですね、教官。ところで教官は伴侶を見つけたのですか?」

「生憎だが、そういうものはいない」

「じゃあ何故メイド服を着ることになっているのですか!?」

 

 そう言われた千冬は聞き返す。

 

「待て。お前はメイド服をなんだと思っているんだ」

「え? 嫁が伴侶を喜ばせるために着る嫁入り道具の一つでしょう?」

 

 その言葉に千冬は頭を抱えてしまう。

 クラリッサ・ハルフォーフ……ラウラが抜けたことによりドイツ軍特殊部隊「シュヴァルツェ・ハーゼ(黒ウサギ隊)」の隊長を務めることになった彼女はドイツ語に翻訳されたものから、日本で発売されている日本語記載の漫画、アニメを見るオタクであり、それ故にぶっ飛んだ知識を持つ女性だ。

 そんな女性は今も持ち歩いていたらしく、懐から携帯ゲーム機を出して千冬に見せる。

 それはだいぶ前に悠夜が参考の一つとして鈴音に見せたことがある、「ラブリーシスター」の続編「フレンズパート」だった。




ということでラウラのドイツ追放によって隊長となったクラリッサが登場しました。たぶん大半の人が予想していたと思いますが。

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